39 地球の中に潜んでいた怪物共
人々の怪物への変化。
それは偶然引き起こされたものではない。
なるべくしてそうなったのだ。
まず、人の中にも怪物になる因子が存在する。
それが溢れる地脈や霊脈に触れる事で活性化した。
人から怪物への変化は起こる理由の一つはこれだ。
なので、変化というのは正しくはない。
本性があらわれたというべきだろう。
地球の目覚め、地脈や霊脈の活性化。
これによって増大した魔力・霊力・霊気などは、本性を発揮させるきっかけに過ぎない。
怪物になったのは、そうなる本性を備えていただけに過ぎない。
何の事はない、もともと怪物だったのだ。
ただ、それが目に見える形であらわれなかっただけで。
一見して人間だったが、怪物は怪物でしかなかった。
ただそれだけだ。
だが、問題はそれだけではない。
霊脈や地脈の中にも怪物は潜んでいた。
肉体を持たない、いうなれば幽霊のような状態で。
霊魂といえば良いのだろうか。
厳密に言えば違うのだろうが、わかりやすい言葉であらわすとこうなる。
そんな霊魂の状態でエネルギーの中に潜んでいた怪物がいた。
これらは地上にあらわれると、手近にある何かに取り憑いていった。
これらの多くは死体に取り憑いていく。
既に命のなくなった存在だから入り込みやすい。
石や土といった無機物ではないから、体を奪った時点で活動が可能となる。
まだそれほど数は多くないが、既にこうした怪物も何体か出現している。
イツキの近くでも、何体か発生していた。
ゾンビ化などはこうした取り憑きによるものもある。
霊魂状態の怪物が活動するためのよりどころとするために死体を奪ったのだ。
これ以外だと、死体にエネルギーが入ることで、肉体が動くというのもある。
こちらは運転手のいない暴走車のような状態に近い。
運転手はいない、だが、自動車としての機能は残ってる。
ここにガソリンが入って、アクセルが勝手に踏みこまれてしまう。
そんな状態のゾンビも存在する。
だが、怪物が入りこんだ死体はここで終わらない。
取り憑いた死体を、周りにある魔力や霊気を取り込んで回復・修復。
怪物本来の姿に変換していく。
死体はその為の土台だ。
何もない所から肉体を再構築・再構成するよりも楽に本来の姿を取り戻す事が出来る。
こうしてそこかしこに怪物が出現するようになった。
怪物になりうる人間ももともと存在していて。
加えて、地球の中に存在していた怪物が表にでてきている。
この怪物がこれから蔓延るようになる。
あふれるエネルギーは確かに力をもたらしてくれる。
だが、これらが大きな脅威になってしまう。
利用できれば大きな力になるだろう。
だが、同時にあらわれる怪物は大きな脅威だ。
そんな怪物が人間とは別に出現して行動し始めている。
人間同士で争ってる場合ではない。
だとしても、生きていくために必要な食料などの争奪・強奪は続くだろう。
どちらも生き残るためには避けられない。
「終わってるな」
どう考えても先は見えない。
イツキの能力でも人類の先行きは残念なものだ。
種として生き残るとしても、今の状態を保つ事は出来ない。
大幅に勢力を減少させる事になる。
周りを怪物に囲まれながら。
そんな世界になってしまった。
こんな中で生きていかねばならない。
救いはどこにもない。
自らの手で道を切り開くしかない。
幸い、イツキにはその道が見えている。
どうすれば生き残れるのか。
その為にも、次にどうすればいいのか。
まずは脅威を排除していかないといけない。
だから敵を倒していった。
怪物だけでなく。
敵対する人間も。
いずれ敵にまわる連中である。
食料を求めて近隣を探しまわるようになる。
いずれイツキの貯えた物資にたどりつく。
そうなれば面倒な事になる。
確実に襲ってくるし、物資を奪おうとしてくる。
そうなる前に処分するしかない。
手間はかかるがやるしかなかった。
危険を消し去るためには。
安全を手に入れるためには。
躊躇えば自分が死ぬ、そんな事をイツキは望んではいない。
どこかの誰かのために殺されるなどまっぴらだった。
そんな自己犠牲がしたいなら、やりたい奴がやれば良い。
大事な命である。
だからイツキは自分を大事にした。
誰かの犠牲にしないために。
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