16 他が動く前に、一人で出来るだけ
集めていくのは食料。
保存の利くものを中心に回収していく。
生野菜や肉などもある程度は手に入れておく。
腐らせるくらいなら、今のうちに食べておきたい。
いずれ、新鮮な野菜や肉は手に入らなくなるのだから。
これらを回収して家に戻り、また回収に向かう。
繰り返すうちに家の中に物資がたまっていく。
それでも止まらず、あちこちに向かっていく。
今は無理をしなければならないと。
どれだけ積み上げても、食料はいずれなくなる。
食べれば消えていくのだ。
そんな食料はどれだけあっても困らない。
今、この瞬間だけが唯一の機会なのだから。
イツキ以外の者達もいずれは気づく。
食料や物資を確保しに動きだす。
そうなった時に強いのは人数だ。
イツキの能力が見せる未来では、多数の人間が食料を巡って争っている。
中には超能力を用いて戦ってる者もいる。
イツキのように力に目覚めたのだろう。
そうなったらイツキだけではどうしようもない。
イツキの能力は確かに優れたものだが、あくまで先を見通すだけ。
純然たる戦闘力はほとんどない。
せいぜい、いくらか補助を期待できるだけだ。
そんなイツキの競争相手は圧倒的な多数だ。
少なくとも数人で組んで行動している。
そうなるとイツキに勝ち目はなくなる。
一対一ならともかく、複数相手では負ける可能性が高くなる。
たとえ勝っても、損害を受ける可能性が高い。
こういった集団が出てくる前に物を集めておきたかった。
今はまだ誰もが混乱して団結もまともに出来ていない。
まとまろうとしてる者達もいるだろうが、組織的な活動にうつるほどではない。
早くてもあと何日かはかかるだろう。
それまでしか猶予がない。
時間はあるようで全くない。
たった数日で十分な量の物資を回収しなくてはならないのだ。
寝るのももったいなく思えてしまう。
「せめて誰かいれば……」
一人ではなく、協力してくれる誰かがいれば。
そう思ってしまう。
だが、能力はそういった者達の居場所を示してくれない。
全くいないのか、今はまだ近くにいないのか。
それは分からないが、とにかく今は一人で頑張るしかない。
ただ、これはこれで良いのかもとも思う。
仲間がいればと思う反面、いれば面倒も増える。
仲違いなどが発生したら悲惨な事になる。
そうでなくても、人数の分だけ食い扶持が増える。
一人当たりの割り当てが減る。
それはそれで避けたいものだった。
「上手くいかねえな」
こればかりは先を見通す能力も答えを出してくれない。
いずれ正解を出してくれるかもしれないが。
今はまだその時ではないようだった。
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