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木蓮の花咲く頃3

「失礼します。都谷先生、薬井先生がお待ちです」


 そうだ。宮瀬監督との話しで忘れるところだったが、このパーティーでは次の本の表紙をお願いする画家との顔合わせがあったのだ。


「宮瀬監督、申し訳ありませんが少し都谷先生をお借りします」

「あぁ、こちらこそ独占していて申し訳ない。都谷先生ともなると忙しいですね。先生、ドラマ、絶対に成功させましょうね」

「はい。頑張ります」

「では、宮瀬監督、失礼します」


 そう言って会場の隅へと連れて行かれる。


「もう疲れたよ。やっぱりこういうパーティーは苦手だ」

「でも宮瀬監督と話せたのならドラマ化に関して少しは安心したんじゃないの?」

「ああ、うん。それは良かった。パーティーに来た甲斐があったよ」


 まだ編集長と宮瀬監督としか話していないというのに既に疲れ果てている。それでも、宮瀬監督と会えて話しができたので、ドラマ化に対する不安はなくなっていった。

 俺の作品を知っててくれているからかもしれないけれど、キャスティングに関しても三井明役と吉行かなで役に対しては不安はない。だからきっと他のキャストだって大丈夫だろうと思えた。


「なら良かったよ。散々悩んでたからな」

「今なら頷いて良かったって思うよ」

「そっか。あとは薬井に会ったら帰ってもいいぞ」


 帰っていいと言われたので、さっさと顔を見せて帰ろうという気になる。


「なんだよ、急に元気になって」

「そうもなるよ。こういうパーティーは疲れるんだよ。それが帰ってもいいのなら用事は早く済ませて帰ろうと思うだろうが」

「まぁ、いいけどな」


 そう言って千屋は笑うが、コミュ力おばけのこいつならなんでもないだろうけれど、人見知りであまりにぎやかなところは苦手な自分としては、こんなパーティーは、俺の元気をひたすら奪うものでしかないのだ。だから帰っていいのなら早く帰りたいに決まっている。


「薬井はあっちで待ってるよ」


 そう言って会場の片隅を指さす。

 

「薬井はさダイビングが趣味で、社会人になってから潜りに行った先で偶然再会したんだ。それからよく一緒に潜ってるんだよ。だから画集にも海の絵多かっただろ」


 確かに画集には、俺が言葉を失ったあの絵以外にも海の絵は多かった。

 そうか。ダイビングをするから、あの鮮やかな青が生まれるのか。よほど海が好きなんだろうな。あの青い海の迫力はほんとに凄かった。

 あの吸い込まれるような青の絵を描いた画家はどんな人物なのだろう。俄然興味がわいてきた。

 

「千屋さん!」


 奥から千屋を呼ぶ声がした。

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