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幼馴染みは恋愛フラグが多発!?  作者: 神山 仁葉
海里と羽奈ちゃん
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お試しカップル終了


 この前、羽奈ちゃんと遊園地デートをした。

お揃いのカチューシャをつけて撮ったツーショットを見ていると部屋のドアが叩かれた。

ドアを開けると、双子の妹である愛理が立っていた。

最近、唯と籍を入れて目に見えるように浮かれている。

まあ、浮かれているのは俺もだけど。


「帰ってきてたんだ」

「うん。唯が実家帰ってるから。てか、最近羽奈ちゃんとどう?」

「ん〜、どうなんだろ。」

「お試しってクリスマスまでだよね?もう1週間なんだね」

「うん」


もう12月に入って2週間以上が経った。

だけど、クリスマスの予定はまだ決まっていない。

クリスマスのデートが最後になるかもしれないと思うと怖くて誘えない。

俺は本当に、へたれだなと自分でも思う。


「ちょっと散歩してくる」

「うん」


コートを羽織ってマフラーを巻いて駅の方まで歩いた。


空はどんよりと重くて、今にも雪が降り出しそうだ。

駅の噴水の側のベンチに座っていると、愛理の旦那の唯が大福くんと一緒に走ってきた。


「海里、何やってんの?」

「唯と同じく散歩」

「へ〜、歩いてるようには見えなかったけどな」

「休憩中だよ。そういえば、大福くんって今何歳なの?」

「こいつ拾ったからな。まあ、家に来て13年目だけど病院ではすでに1歳って言われてたみたいだからもう14歳だな。人間で言ったら70歳のじいちゃん」

「元気だね」

「まあな」


唯はまたなと手を振って帰っていった。


俺も帰ろうかなとベンチを立つと、駅から羽奈ちゃんと男の人がやって来た。

その男の人は羽奈ちゃんと似た顔立ちだから、きっと兄弟か何かだろうと思っていると、羽奈ちゃんが気付いてこっちにやって来た。


「羽奈ちゃん、帰ってきたの?」

「うん。あ、紹介するね。弟の羽瑠(はる)

「羽奈がいつも世話になってます」

「こちらこそいつもお世話になってます」


羽瑠くんは笑うと羽奈ちゃんにそっくりだ。


「羽瑠くんって、何歳下なの?」

「え、もしかして愛理から訊いてない?」

「何が?」


俺が首を傾げると、羽奈ちゃんは驚いたような顔をして羽瑠くんと顔を見合わせていた。

俺、何か驚くようなこと言ったのかな?

困惑していると、羽奈ちゃんが教えてくれた。


「私も双子なんだよ。羽瑠は双子の弟」

「へ〜、そうなんだ。双子………え!そうなの!?」

「そうだよ」

「知らなかった」


羽奈ちゃんも双子だったなんて。

驚いて羽奈ちゃんと羽瑠くんを見比べると、やっぱり似ている。

どうやら、羽奈ちゃんと羽瑠くんが双子だと聞いて愛理から羽奈ちゃんに話し掛けたのが仲良くなったきっかけらしい。

まあ、同じ女子バレー部だったってこともあると思うけど。


「そういえばさ、誰?」

「俺は天宮愛理の双子の兄の天宮海里です」

「あ〜、天宮の。確かに雰囲気似てるわ」

「そうかな?」

「うん」


しばらく話して、羽瑠くんは中学の友達と会う約束をしていたらしく帰っていった。

取り残された羽奈ちゃんと俺は会うのが1週間ぶりなせいか少し気恥ずかしくて照れて笑ってしまった。

それにしても、今日は羽奈ちゃんのことをもっと知れた気がする。

羽瑠くんといるときの羽奈ちゃんは愛理といるときとも、俺といるときとも違って少し子供っぽくて可愛かった。


「そうだ。羽奈ちゃん、今から空いてる?ドライブ行かない?」


って、何誘ってるんだろ。

こんな急に誘ったって、


「行きたい!行こ!」

「うん」


家まで歩いて車を取りに戻って、隣町の公園までドライブに行った。

公園の駐車場に車を停めて、公園のなかを少し歩いた。

公園の中心には大きなクリスマスツリーがあった。

まだ明るくて電飾は点いてないけど、飾りがたくさんあって豪華だ。


「羽奈ちゃん、せっかくだし写真撮らせて」

「うん。この辺に立てばいい?」

「うん」


クリスマスツリーをバックに羽奈ちゃんの写真を撮った。

やっぱり、羽奈ちゃんは可愛いな。

羽奈ちゃんに写真を見せると、今度は羽奈ちゃんが俺の写真を撮ると言ってクリスマスツリーの前に連れてこられた。

自撮りとかツーショットじゃなくて、俺1人の写真を撮られるのは医学部の入学式以来で少し恥ずかしい。


ぎこちなくピースサインをすると、羽奈ちゃんは楽しそうに笑いながらシャッターボタンを押した。


「めっちゃよく撮れたよ。送っておくね」

「あ、うん。ありがとう」


この写真を見る度、楽しそうに笑いながらスマホを構える羽奈ちゃんを思い出すだろう。

本当に、今目の前に羽奈ちゃんがいるなんて少し前の俺なら考えもしなかっただろうな。


スマホを見つめていると、画面に雪が落ちてきた。

空を見上げると、綿のような雪が降り始めていた。


「通りで寒いと思った」

「羽奈ちゃん、マフラー使って。急に誘っちゃったからダウンしかないでしょ?」

「私がマフラー借りたら海里くんが寒くなるじゃん」

「大丈夫だよ。このセーター、タートルネックだし」

「わ、ホントだ。じゃあ、お言葉に甘えてお借りします」

「どうぞ」


笑って羽奈ちゃんにマフラーを巻いた。

これまで寒いのはあんまり好きじゃなかったけど、こういうことがあると寒くてよかったって思う。

羽奈ちゃんのお陰で冬が好きになった。

公園の駐車場近くにあるキッチンカーでホットココアを頼んでベンチに座った。


「あったまるね〜」

「そうだね」


羽奈ちゃんが白い息を吐くと、さぁ~っと空に消えていった。

やっぱりクリスマスのデートが最後だとしても、ビビってないで誘わないと他の人との約束をして今日が最後になるかもしれない。


「羽奈ちゃん」

「海里くん」



被ってしまって俺も羽奈ちゃんも顔を見合わせて笑った。


「なに?」

「海里くん、24日、空いてる?」

「空いてるよ」

「じゃあ、デートしませんか?」

「俺もそう言おうと思ってた。誘うの遅くなってごめんね」

「謝るなら私にも謝らせて。ごめんね」

「なんで羽奈ちゃんが謝るの?」


羽奈ちゃんは俺の顔を見上げて少し照れたように笑った。

深呼吸をして、俺も羽奈ちゃんの顔を見た。

心臓がうるさくて、周りの声が聴こえなくなった。

羽奈ちゃんはゆっくり呼吸をして口を開いた。


「海里くんが、好き」

「え、」


羽奈ちゃんは耳まで真っ赤になっていて、緊張しているのが分かる。


「海里くん、言うのが遅くなってごめんね。大好きだよ」

「本当に?俺の聞き間違いじゃない?」

「うん。本当だよ。聞き間違いじゃない」


目頭が熱くなるのが分かる。

ずっと片想いしていて、それが叶うわけがないと思ってた。

羽奈ちゃんが俺みたいに面白みのない男を好きになるわけがないって諦めかけてた。

けど、諦めないでよかった。

泣くなんてダサいよね。

涙を堪えて笑った。


「羽奈ちゃん、本当の彼女になってください」

「もちろん」


羽奈ちゃんは笑って俺に抱きついた。

慣れてなくて少しぎこちないかもしれないけど、ゆっくり、抱き返した。


「クリスマス、どこ行きたい?」

「あ、それなんだけど、愛理にクリスマスパーティーしよって誘われたんだ。海里くん家で」

「俺はいいけど、羽奈ちゃんはいいの?イルミネーションとか見に行かなくても」

「いいよ。海里くん、寒いの苦手なんでしょ?あったかいところでゆっくり過ごそう」


羽奈ちゃんは笑ってマフラーを取って俺の首に巻いた。

バレてたみたい。

基本的に寒がりだから、クリスマスに寒さを気にしない家で羽奈ちゃんと一緒に過ごせるのは嬉しい。

愛理はそれを分かったうえでクリスマスパーティーを企画してくれたのか、ただ単純に羽奈ちゃんと過ごしたかったのか分からないけど帰ったらお礼を伝えておこう。


公園から車で羽奈ちゃんの実家に送った。


「明日には帰るの?」

「うん。明後日からまた仕事だし」

「そっか」

「イブまで休みないんだよね」

「じゃあ、夜に時間あったら電話してもいい?」

「うん」

「バイバイ」

「バイバイ」


手を振って羽奈ちゃんは車から降りて家に入っていった。


家に帰って車を停めてリビングに行くと、愛理と唯と父さんが夜ご飯を作っていた。

今日は餃子らしく一生懸命包んでいた。

どうやら、唯は今日は夕飯はうちで食べて実家に泊まるみたい。


「ただいま」

「なんかいいことあったみたいだな」

「まあね。それよりクリスマスパーティー、いいの?せっかく結婚して初めてのクリスマスなのに」

「俺らは先月旅行したばっかだから」

「あ、そっか」


新婚旅行がてら北海道行ってたんだった。

夕食を準備してもらっている間に8歳年下の妹の彩里(さいり)の勉強を見た。

彩里は中学3年生で高校受験まであと3ヶ月を切っているから、少し焦っているようだけど、彩里の成績で焦る必要はないと思う。


母さんが帰ってきてホットプレートで餃子を焼き始めた。

全部食べ終えて、彩里はリビングの端にあるテーブルで勉強を始めた。

静かなところより、少し騒がしいくらいのところの方が集中できるみたい。


「お兄ちゃん、なんかあった?」

「え、なんで?」

「ニヤけてる」

「え!」


慌てて口を手で覆うと、彩里はニマッとイタズラが成功した子供みたいな顔をした。

ホント、外見は俺の方が似てるのに、こういうところは愛理にそっくりなんだよね。

さすが姉妹というか。


「残りの問い解き終わってから話すよ」

「え〜、早く聞きたい」

「だったらあと3問解いて」

「は〜い」


彩里は嫌いな歴史の問題を3問解いて答え合わせをした。

いつもは後回しにするのに、そんなに興味が出ることなのかな?

それか、恋バナだって分かってるのか。

彩里はワークを閉じてクルッと振り返った。


「何があったの?」

「何があったっていうか、彼女ができました」

「え!ママ!パパ!お兄ちゃん、彼女できたって!」

「相手は?」

「どんな子?」


彩里も父さんも母さんも驚いたように質問攻めにしてくる。

まあ、これまで誰とも付き合ったことがないから驚いたんだろうけど。


「羽奈ちゃんだよ」

「羽奈ちゃんって、お姉ちゃんの友達で何回か泊まりに来たことあるあの羽奈ちゃん!?」

「そうだよ」

「クリスマスパーティーも来るんでしょ?」

「うん」

「緊張するね」


この騒ぎ様、今日話しておいて良かった気がする。

クリスマスパーティーに羽奈ちゃんが来たときに話してたら、羽奈ちゃんを困らせただろう。

愛理は既に羽奈ちゃんに聞いていたのか驚いた様子はなかった。

唯もそうだから、愛理に聞いたのかな。


とりあえず、母さんと父さんと彩里を落ち着かせてクリスマスパーティーで羽奈ちゃんを困らせないように釘を刺しておいた。

初めての彼女だからとテンションが上がりすぎて余計なことを口走られたら俺も困る。


8時半をまわって唯が実家に帰った。



あっという間に12月24日がやって来た。

朝から彩里と愛理と唯と母さんと父さんと俺で事前に作っておいた飾りをつけたり、パーティー料理を用意したりクリスマスツリーのライトをつけたりとクリスマスパーティーの準備をした。

準備がほとんどできたのを確認して、羽奈ちゃんを迎えに行った。


リビングのドアを開けると、彩里と愛理と唯と父さんと母さんが5人で並んで待っていた。


「羽奈ちゃん、いらっしゃい」

「お邪魔します」

「楽しんでね」

「料理もたくさんあるからね」

「はい」


お昼ごはんはパエリアとミートローフとポテトとサーモンのサラダが並んだ。

それぞれ食べたいものを取り皿に取って食べるスタイルで、あっという間になくなった。


ご飯を食べ終えて、リビングで喋っていると、愛理がリビングから出ていって少しすると何冊かの本を持ってきた。

なんだろう、と覗くとアルバムだった。


「羽奈ちゃん、昔の海里見たい?」

「見たい」

「見なくていいよ」

「今度、羽奈ちゃんのアルバムも見せてもらえばいいじゃん」

「いいよ。愛理、早く見せて」


羽奈ちゃんと愛理と彩里は楽しそうにアルバムを開いていた。

まあ、羽奈ちゃんの昔の写真見せてくれるならいいか。

唯も昔の愛理が気になるのか後ろから覗いていた。


「愛理と手繋いでる!可愛い!」

「あ、ホントだ。可愛い」

「この写真の海里くん、泣いてる」

「どれ?」


母さんと父さんがアルバムを覗くと顔を見合わせて笑った。

俺もアルバムを覗いてみると、泣いている俺の頭を愛理が撫でてもう片方の手で俺の手を握っていた。

見た感じ、3歳くらいだと思うけど。


「この日はね、海里がお熱で愛理だけ保育園に行ってたんだけど、愛理と離れ離れになるのが初めてでそれが寂しかったみたいで愛理が帰ってきたら安心して泣いちゃったのよ」


そんな黒歴史だったとは思いもせず、母さんの話を聞いてたけど途中で遮ればよかった。

愛理はニヤ〜と嬉しそうな顔をして俺の顔を見上げた。

羽奈ちゃんは目を輝かせて写真を覗いていた。


「海里くん、可愛い」

「恥ずかしすぎる」

「海里、耳まで真っ赤だな」

「照れてる」

「照れてる!」


彩里と愛理と唯に茶化されて、見ていたアルバムを閉じて小学校の卒業アルバムを羽奈ちゃんに渡した。


「小学校のアルバムならいいよ。このアルバム見たいならこの3人がいないとき以外に見て」

「うん」


羽奈ちゃんは楽しそうに小学校のアルバムを開いた。



アルバム鑑賞が終わってしばらく話していると、もう夕方になっていた。

夜は羽奈ちゃんは家族と過ごすみたいだから、あと1時間もすれば帰ってしまう。


「海里くん、柚希さんと亮介さんは付き合ってること知ってるんだっけ?」

「うん」


「柚希さん、亮介さん、少しお話いいですか?」

「うん」

「いいよ」


羽奈ちゃんが俺の隣にきて少し緊張した様子で母さんと父さんの方を見た。


「海里くんとお付き合いさせていただいています。」

「羽奈ちゃん、」

「これからも付き合いがあると思うので、よろしくお願いします」


羽奈ちゃんは少し照れたように言うと、母さんも父さんも笑って頷いた。



羽奈ちゃんを家まで送る途中、足を止めて手を握った。


「羽奈ちゃん、好きだよ」

「う、うん。ありがとう。私も、好きだよ」

「じゃあ、甘えてくれていいんだよ。さっき、羽奈ちゃんから手を繋ごうとしてくれたでしょ?」

「え、いや、」


羽奈ちゃんの手を恋人繋ぎにつなぎ直して、羽奈ちゃんの目を見つめた。


「嫌だなんて思うわけないんだから、どんどん甘えてよ」

「なんでバレるの?」

「俺も手を繋ぎたいって思ってたから」

「そっか」


羽奈ちゃんは笑って俺の手を強く握り返した。

これからもずっと羽奈ちゃんの隣をこうして手を繋いで歩きたいな。

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