39、パワースポット
夏休みが終わって一昨日、2学期が始まった。
今日は私と莉央くんとお姉ちゃんと潤くんの4人でダブルデートをする。
恋のパワースポット巡り(日帰りの)なんだ。
1回行ってみたかったんだよね。
めちゃくちゃ楽しみ!
9月とは言えどまだまだ暑いから今日は半袖Tシャツとデニムのショートパンツだ。
キャップも被ってくからなんかスポーティーなコーデだな。
朝、潤くんとお姉ちゃんが車で迎えに来てくれて早速1ヶ所目のパワースポットに向かった。
「ここ?」
「うん!」
「着いた!」
車を降りてキャップを被ってリュックサックを背負った。
なんか、私だけ子供っぽすぎない?
けど、仕方ないよね。実際子供なわけだし。
それに身長も、潤くんが190cmで、莉央くんが185cmで、お姉ちゃんが167cmの3人揃って高身長に対して私は157cmなんだもん。
私と莉央くん、年の差5歳の身長差28cmって差しかない!
「春雪、どうしたんだ?」
「いや、私と莉央くん、カップルに見えてるのかなって」
「別に見えてなくても付き合ってることに変わりはないだろ」
「そうだね」
莉央くんの隣に並んで鳥居をくぐった。
参拝を終えてから相性占いのおみくじを引いた。
お姉ちゃんと潤くんは大吉で続けて大吉来て!と心の中で唱えながら引いた私と莉央くんは………大凶だった。
「春雪、占いだから気にしすぎない方がいいよ」
「でも、大凶だよ」
「今から、パワースポット行くんだろ?そこでパワーもらえばいいだろ?」
「あ!ホントだ!早く行こ!」
一応、縁結びのお守りを買って、次のパワースポットに訪れた。
縁結びでよくある鐘がある場所で、なんかテレビのロケが来ていた。
そのせいで鐘の周りに人が集まって、鐘を鳴らしにいけない。
鐘のあるすぐそばに湖があった。
「春雪、湖でボート乗れるって」
「鐘の周りが空くまで時間潰そっか」
「けど、莉央くん、私と一緒に乗って大丈夫?」
「大丈夫だよ。せっかくなんだし、おみくじは気にせずデート楽しもうよ」
「うん、」
莉央くんに手を引かれて、ボートに乗りにいった。
潤くんとお姉ちゃんはスワンボートで私と莉央くんは手漕ぎのボートを借りた。
こういうボート、初めて乗ったかも。
「漕ぎ方分かるか?」
「分かんない。けど、やってみる」
オールを回すとボートが動き始めた。
すごい重いけど、進んでる!
けど、もう疲れた。
腕とか普段そんなに使わないし。
「莉央くん、交代」
「そろそろだと思った」
立ち上がって、莉央くんと場所を代わろうとするとボートが揺れてバランスを崩して莉央くんの方に倒れた。
ヤバ!莉央くん下敷きにしちゃった!
「莉央くん、大丈夫!?」
「大丈夫、って、近い近い」
「あ、ごめん」
慌てて起き上がると、莉央くんは耳まで真っ赤になった顔で私を見た。
莉央くんが照れてるのが移って私も顔が熱くなった。
さっきの顔の近さなら、もう少しでキスしてたところだった。
まあ、もう付き合ってるんだしキスしてもいいと思うけど、幼馴染みだからこそなんか恥ずかしくて付き合って5ヶ月くらい経つけど、まだ1回もしたことがない。
とりあえず、さっきのことには触れず莉央くんと選手交代してボートを漕ぐのを再開した。
「莉央くんの写真撮ってもいい?」
「え、まあ、いいけど」
「やった!」
ボートを漕いでる莉央くん、めちゃくちゃカッコいいから後でも見れるように残しておかないと。
何枚か撮っていると、スマホのカメラ越しに莉央くんと目が合った。
心臓が飛び跳ねて、スマホを自分の太ももの上に落としてしまった。
「いった~、」
「大丈夫か?」
莉央くんは心配した顔で私の顔を覗き込んだ。
急に近付くからビックリした。
「う、うん。赤くもなってないし、平気。痛かったのは落とした瞬間だけ」
「良かった、」
莉央くんはホッとしたのか、優しく微笑んで私の頭をポンポンと軽く叩いた。
ホント、これ全部天然でしてる莉央くんって乙女ゲームのヒーローじゃん。
私のこと落としにきてるじゃん!
「莉央くん」
「ん?」
「顔覗き込んだり頭ポンポンしたり、他の女の子にはしないでね。莉央くんにされたら好きになっちゃうから」
「しないけど。あ、蓮には時々するかも」
「蓮ちゃんはいいよ。妹だし。他はやめてね」
「分かった。春雪もそんな可愛い顔、他の男の前でするなよ。イチコロだから」
莉央くんは私の小指と自分の小指を絡めて約束と言って笑った。
これも絶対好きになる。
ダメだ。私からしたら莉央くんの行動1つですぐに好きだなって思っちゃう。既に好きだから。
ボートの時間を終えて、お姉ちゃんたちと一緒に鐘のところに戻ると人だかりはなくなっていた。
鐘の下に垂れてる紐を握って、莉央くんは私の手の上から握った。
そして鐘を鳴らした。
お姉ちゃんと潤くんも鐘を鳴らして縁結びのパワーをもらっていた。
ホントに相性良くなったかな?いや、凶ぐらいにしかなってないかも。
ため息をつくと、潤くんが手招きをした。
「春雪、ここから愛を叫んだら恋愛運上がるって」
「やってみる」
「頑張れ」
私は台の上に乗って大きく息を吸った。
「相性大凶でも!ずっと一緒にいたい!莉央くんのことが大好きです!」
叫び終わって振り返ると、顔を真っ赤にした莉央くんがこっちにやって来て隣に並んで立った。
そして、息を吸って湖に向かって叫んだ。
「俺も!相性占いなんて気にならないくらい春雪が大好きだ!」
すると、莉央くんに続いて潤くんもやって来た。
「ヒナ!世界で一番愛してる!」
「私も愛してるよ!バカジュン!」
みんな、照れてるからかにやけてるけど、なんかパワーもらえたかも。
てか、莉央くんに大好きって言われちゃった。
それだけでもうめちゃくちゃ嬉しい。
莉央くんの顔を見上げると、少し恥ずかしそうに目を逸らしてもう一度目を合わせた。
「なに?」
「莉央くんも私のこと大好きだったんだなって。ね、もっかい言ってよ。今度は目を見て」
「………好きだよ」
「うん!私も大好き!」
笑って莉央くんに抱きついた。
それから、近くのカフェでお昼ごはんを食べた。
ちなみに私はオムライス。
大好物なんだよね。あ、けど、お母さんの作るご飯は全部好き。全部美味しいし。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
「黄雛、俺のカッコつけるところ取るなよ」
「いやいや、ここはお姉ちゃんがカッコつけるところだから」
莉央くんはそうかなと笑って私の手を握った。
なんか、今日で一気に莉央くんとカップルっぽくなったな。
ボートで床ドンみたいになった事故のおかげ?せい?かな。
最後のパワースポットは小高い丘の上にある大樹だ。
潤くんの車でその近くまで移動すると、丘の上にまた人がいた。
またテレビでも来てるのかな?
丘を見上げて首を傾げると、スタッフさんらしい人がやって来た。
「すみません。今、映画の撮影をしてるのでご迷惑をおかけしますがこの丘には登ってこないでください」
「え、」
「分かりました」
調べたとき、映画撮影とか書いてなかったのに。
「ごめん。私がちゃんと確認しなかったから」
「気にしないで。俺は春雪とちょっと遠出するの久しぶりで楽しいよ」
「莉央くん、」
けど、この丘の上でファーストキスしたいなんて思ってたとか知られたら引かれるだろうな。
写真も撮りたかったな。好きなアニメに出てくる丘に似てるし。いや、また今度来たらいいだけの話だよね。
だから、映画なんかとか思ったらダメだ。
私だって映画観るんだし、全く迷惑をかけることなく映画を撮るなんて普通に考えて不可能だし。
「あ、キッチンカーある。クレープだって。食べるか?」
「うん」
「私も食べたい!」
「俺も食べようかな」
莉央くんにリンゴとキャラメルのクレープを買ってもらって皆もそれぞれクレープを買って私と莉央くんは木陰にあるベンチに座って食べた。
お姉ちゃんと潤くんは東屋?で食べていた。
それにしてもこのクレープ美味しいな。やっぱ、甘いものは元気になる。
「莉央くん、1口いる?」
「うん。じゃあ1口交換しようか」
莉央くんの持っていたクレープを1口食べて、私のクレープを口の前まで運んだ。
莉央くんも私のクレープを1口食べて美味いなと笑っていた。
いつもカッコいいのに笑うとちょっと幼くて可愛いんだよね。
「なに?」
「莉央くん、可愛いなって」
「それ、喜んでいいやつ?」
「うん。女子の言う可愛いって半分以上は好きって意味だもん」
「そうなんだ。ありがとう」
「うん」
あ、でも、男子って可愛いって言われるのあんまり好きじゃないんだっけ?
まあ、莉央くんは嫌じゃなさそうだしいっか。
クレープを食べ終えて、少し風に当たって休憩をした。
日陰は風吹いてたら結構涼しいな。
すると、少し強い風が吹いて私のキャップが飛ばされた。
追いかけてなんとか捕まえた。
すると、東屋で潤くんとお姉ちゃんがキスをしていた。
2人が気付いてなさそうだったから莉央くんと元いたベンチに戻った。
「周りを確認してからしろよな」
「あ、だね。でも、好きなら止めれるものじゃないんじゃない?」
「そうだな。兄貴らしい」
莉央くんはフッと笑みを溢した。
「………ちょっと、羨ましい。」
そう、小さく呟いてしまって慌てて口を両手で塞いだ。
莉央くん、聴こえてないよね?
恐る恐る莉央くんの顔を見ると真っ赤な顔で驚いた様子で固まっていた。
もしかして、聴こえてたのかな。
聴こえてたとしたら恥ずかしすぎる。
私も莉央くんとキスしたいって言ってるみたいじゃん!まあ、したいけどさ。
普通は、なんか、そういう雰囲気になって自然と、みたいな感じじゃないの?
「ごめん、忘れて。私、ちょっとトイレ行ってくる」
恥ずかしくて、とりあえずその場を走り去った。
周りも見ずに走ってたから迷子になった。
私ダサ。てか、スマホ、リュックと一緒に置いてきちゃった。
どうしよう。なんか色んな所で曲がったから、どうやって戻るか分かんない。
あ、そうだ。あの丘!って、木がいっぱいあるからどれがあの丘の木か分かんない!
16歳にもなって、こんなことで泣いたらダメだ。
泣き虫に戻ったらダメだ。
深呼吸をして、今にも溢れそうな涙を止めた。
大丈夫。管理してる人とか探せば戻れるはず。
~~~~~
疲れた~。多分、30分以上は経ったよね?
陰ばっか歩いてるから体力はまあまあ残ってるけど、余計に迷子になった。
どうしよう。
ため息をついて、その場に座り込むと大丈夫ですか?と後ろから声をかけられた。
やっと人に会えた!
「大丈夫じゃないです!迷子です!」
「迷子?」
振り返ると、帽子を深く被ったお兄さんがいた。
てか、この人結構イケメン。
って、もしかして、撮ってた映画に出てる俳優さん!?
「あの、パワースポットの丘分かりますか?大きい木のある」
「ああ、分かるけど」
「お願いします!そこまで連れて行ってください!」
「分かった」
やった!こういう縁結びもあったんだ!
パワースポット回って良かった!
それから俳優さんおよび、牧瀬四季さんに案内してもらうことになった。
牧瀬さんは18歳の高校3年生でデビュー作で主演の映画の撮影に来ていたらしい。
撮影が終わってランニングをしていたら、私を見つけて体調が悪いと思って声を掛けてくれたらしい。
まあ、体調は全然いいけど、迷子なので案内してもらうことにした。
「春雪ちゃんって、名前珍しいね」
「そうですね。けどそのお陰で名前はすぐに覚えてもらえるんですよね」
「確かに。印象に残る名前だね」
「はい!お父さんが付けてくれたらしいです。春になると暖かくて雪が溶けるから、春みたいに暖かい心を持ってほしいって」
実際持ててるかは別問題として、お父さんとお母さんでいっぱい考えてくれたんだろうなって思うと嬉しいんだ。
単純に、“はゆき”って響きが可愛くて好きっていうのもあるけど。
「素敵な由来だね」
「ありがとう!あ、ございます」
「いいよ。タメ口で」
「あ、うん」
「それにしても、春雪ちゃんはなんで迷子になってたの?」
「あ~、実は、」
一部始終を話すと、牧瀬さんはおかしそうに笑った。
「それで走ってたら迷子になったの?漫画みたい」
結構ツボにハマったのかずっと1人で笑ってる。
この人、大人っぽい人だと思ってたけど、全然そんなことない。
ただのイケメンな男子高校生だ。
まあ、つまりは唯兄みたいなものってこと。同じ年だし。
「あ~、お腹痛い」
そんなにおもしろいこと言ってないんだけど、この人笑いすぎじゃない?
「てか、それだと彼氏が心配して探し回ってるんじゃない?トイレが嘘ってバレバレだし」
「あ、確かに」
「春雪ちゃんってちょっとバカなの?」
「牧瀬さんは結構失礼」
「そんなこと初めて言われた」
「え、絶対ウソ。それか、皆思ってても言わないだけ」
「春雪ちゃんも相当失礼だよ」
だって、初対面の相手にバカとか言う人が失礼じゃないわけない!
デリカシーゼロの相手にこっちがデリカシーを気にする必要もないし。
てか、莉央くんたちに心配かけてるよね。ごめん!すぐ行くから。
「あ、丘見えてきたよ」
「ホントだ!」
「意外と低いよね」
「そうだよ。そのせいで目印もなくて迷子になったんだし」
「普通はスマホも持たずにそんなに遠くまで走って行かないから」
牧瀬さんはまたお腹を抱えて笑った。
ダメだ。私、この人苦手だ。
なんかムカついてくるし。
まあ、助けてもらった側なんだけどさ。
丘の下に着いてぐるっと回って、クレープ屋さんのところまで来た。
「案内してくれてありがとう」
「どういたしまして。それで、彼氏さんは?」
あれ!?荷物がない!
莉央くん、荷物持ったまま探しに行っちゃった!?
焦っていると「四季~!」と「春雪~!」と叫ぶ声が重なって聴こえてきた。
声の方を見ると、莉央くんと眼鏡を掛けた人が一緒に走ってきた。
「莉央くん!と、誰?」
「森さん。俺のマネージャー」
「なんで走ってるの?」
「え、だって、スマホ置いてこっそり抜け出したから」
「なにさも当然みたいに言ってるの!?散々笑っておいてそっちもスマホ置いてきてるんじゃん!」
「いや、俺は道覚えてたし」
「それはっ、」
言い返せない。
牧瀬さんのマネージャー可哀想。
ってそれよりも、莉央くんたちに迷惑かけてるから私も人のこと言えないじゃん!
莉央くんの方に走って言ってすぐに謝ろうとすると、莉央くんは私を力強く抱きしめた。
「怪我してないか?」
「うん」
「良かった」
「心配かけてごめん」
「いいよ。あ、兄貴と黄雛にも連絡しないと。けど、もう少しこのままでいいか?」
「うん」
莉央くんは走り回って探してくれたのか、シャワーを浴びたってぐらい汗で服が濡れていた。
それが、申し訳ないなと思いつつも嬉しさが勝って泣いてしまった。
ホントは、迷子になったときも不安だったし、呆れて嫌われたらどうしようって思ってたから必死になって探してくれてたって思うと自然と涙が溢れた。
ダメだ。莉央くんといると私、泣き虫になる。
「春雪、電話したいからそろそろ離れてほしいんだけど」
「やだ。また迷子になるかも」
「じゃあ、手握っとけ」
「うん」
莉央くんの左腕に抱きつくと、牧瀬さんと目が合って鼻で笑われた。
やっぱり、恩人だけどこの人無理。ムカつく。
「春雪、黄雛たちももうすぐ戻ってくるって」
「ホント、迷惑かけてごめん」
「いや、元はと言えば俺が間を空けたから」
「それはホント気にしないで。恥ずかしいから忘れて。迷子の理由話したら牧瀬さんにめちゃくちゃ笑われたし」
だからホント気にしないでと言おうとすると、さぁ~、と風が吹いた。
莉央くんは私の顔にかかった髪を耳にかけて顔を近付けた。
「仲良くなったの?」
「まさか!」
「けど、タメ口で話してなかった?」
「向こうが失礼すぎて敬語使いたくなかっただけだよ!」
「春雪のこと、名前で呼んでなかった?」
「それは、呼んでたけど」
特に気にしてなかったな。
普通に自己紹介して名前で呼ばれたから普通に受け入れてた。
莉央くん、嫌なのかな?
莉央くんの顔を見上げるのさっきよりも顔が近くなったいた。
「ど、したの?」
「ん、まあ、そうなるよな」
莉央くんは苦笑して私の頭に手を置いた。
何がどうなったの?
そう訊こうとすると、お姉ちゃんと潤くんが戻ってきた。
2人とも汗だくになって探してくれていたみたいで良かった!と言って駆け寄ってきた。
「汗ヤバい。シートで拭いたけど帰ったら即シャワー浴びよ」
「俺も」
「ヒナ、俺臭くない?平気?」
「大丈夫だよ。柔軟剤の匂いしかしない」
「良かった」
それから家まで潤くんの車で送ってもらって、潤くんとお姉ちゃんは自分たちのマンションに帰っていった。
私も家に帰ってすぐにシャワーを浴びた。
ホントに今日は色々あったな。あ、原因私か。
着替えて髪を乾かしてリビングに行くと、お母さんが冷凍庫から何かを取り出していた。
「それなに?」
「ん?あ~、アイス作ったの。食べる?キャラメル味」
「食べる!」
「莉央にも持っていってあげて」
「うん!」
お母さんは作ったアイスを紙のカップに入れた。
私はクッキーとか適当にトッピングをして蓋をしたカップを2つ持って隣の莉央くん家にいった。
インターホンを鳴らすとすぐに莉央くんが出てきて家にあげてくれた。
「美味そう。俺の部屋、クーラー効いてるからそっちで食べるか」
「うん」
莉央くんはスプーンを持って部屋に向かった。
てか、莉央くんの部屋入るのいつ以来だろ。
いつも、私の部屋か莉央くん家のリビングで勉強見てもらってるし。
莉央くんの部屋って感じだな。おしゃれで綺麗。
ローテーブルのそばに並んで座った。
「いただきます」
「あ、いただきます」
美味しい!って、私今日食べてばっかだ。
明日ニキビとかできないよね?
まあ、いいや。食べなくてもそれはそれでストレス溜まってニキビできそうだし。
アイスを食べ終えて莉央くんがカップを捨てに行ってくれた。
はぁ~、落ち着け、私。
てか、めっちゃ莉央くんの匂いがする。
こんなこと考えてるとかバレたら莉央くんに引かれる!
あ、寝たふりして驚かそ。
ローテーブルに頭をのせて薄く目を開けてドアの方を見ていると、部屋のドアが開いて莉央くんが戻ってきた。
慌てて目を閉じると瞼の裏が陰になった。
え、何?どういう状況?
「春雪、なんで寝たふりしてるの?」
目を開けると莉央くんの顔がすぐ近くにあった。
ビックリして体を起こすと、莉央くんは顔赤いよと言って笑った。
なんか、子供扱いされてる気がする。
私は莉央くんの方を向いてキスをした。
けど、届かなくて顎にキスしちゃった。
「春雪」
「ごめん」
迷子になったり、キス失敗したり。
ダサいところばっかり莉央くんに見せてる。
泣いた顔を見られないように下を向くと、莉央くんが私の顔を上に向けてキスをした。
私の涙を拭うと、もう一度キスをして抱きしめた。
「呆れないの?」
「大好きって言っただろ?ちょっとした失敗で嫌いになれないくらい俺は春雪のことが大好きなんだよ」
「私も、莉央くんのことが大好きだよ」
「ありがとう」
莉央くんは優しく微笑んで私の顔を見下ろした。
なんで、こんなにドキドキするのに落ち着く感じがしたり、居心地いいって感じるんだろう。
なんか、矛盾してない?
こういうものなのかな?
「莉央くん」
「ん?」
「私からもキスしていい?」
「………いいけど、わざわざ訊かなくていいよ。てか、訊かれるの結構恥ずい」
莉央くんは薄くピンクに染まった頬で私の頬に手を当てた。
私は今度こそ届くように背中を伸ばして莉央くんにキスをした。
莉央くんの手を握ってもう一度キスをしようとすると、インターホンの音が聞こえてきた。
莉央くんに続いて玄関に行って、莉央くんがドアを開けると何故か潤くんとお姉ちゃんが立っていた。
「あ、悪い。もしかして邪魔した?」
「なんで分かるの!?」
「春雪、その反応はダメなやつ」
「あ、莉央くんごめん」
「いいよ。想定内」
変なことを言わないように口を塞いだ。
けど、どうしても莉央くんの唇に視線が移る。
あ~!もう変なことばっか考えてる!
顔熱い。絶対赤くなってる。
お姉ちゃんと潤くんに顔が赤いのがバレないように莉央くんの背中に隠れた。
「用件は?」
「………おすそわけ」
「そんなことで雰囲気ぶっ壊しやがって」
「だから、悪いって謝っただろ。はい、梨。俺の職場の人とヒナの職場の人から別で届いたから、今めちゃくちゃあるんだよ」
梨!
私、果物の中で梨が一番好き!
「ありがとう!お姉ちゃん!潤くん!」
「どういたしまして」
「まだキンキンだから早速食おうぜ」
「お邪魔しまーす」
潤くんとお姉ちゃんは玄関を通ってリビングに行ってしまった。
莉央くんはというと、ため息をついて私に抱きついた。
まあ、正直イチャイチャが足りないのは私もだけど梨は食べたい。
背伸びをしても届かないから、莉央くんに少し屈んでもらってキスをした。
莉央くんはそのまま私を抱き抱えてもう一度キスをした。
「今日はこれで我慢か」
「うん」
一緒にリビングに行って今が旬の梨を食べた。
なんだかんだ莉央くんも梨は好きなのでパクパク食べてた。
それにしても今日はめちゃくちゃ食べたな。
やっぱり明日の肌が心配だ。いや、梨でビタミン取ったら大丈夫だよね?




