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20、2学期開始


 夏休みはとうとう終わり、新学期が始まった。学校に行くと仁くんは案の定目立っていた。それもそのはず。銀髪から急に黒髪に戻ったら皆驚くよね。ピアスはいつもと同じものをつけてるけど、雰囲気が違いすぎるもん。


「兄貴、目立ってんな」

「ね。」

「じゃ、俺こっちだから」

「うん。また後で」


唯と分かれて私たちも教室に向かった。


「仁くん、今日は午前で終わるしできるだけ寝ないようにね」

「ああ」


仁くんが教室に入るのを見届けて私も自分の教室に入って席に着いた。


「レンレン!おはよう!」

「おはよう、侑希」

「じんじん見たよ。髪真っ黒だったね」

「夏休みに染めてたからね」


ちなみに、侑希と詩音には夏休みが終わる前に付き合ったことを言った。2人とも一緒に隠してくれている。どうせすぐバレると思うけどね。


先生が教室に入ってきて体育館に移動して始業式を行った。始業式が終わって教室に戻ってホームルームを終えて帰る準備をした。


「バイバイ。レンレンまた明日」

「うん。バイバイ」


侑希に手を振って仁くんのクラスに行った。今日はバレー部が休みなので唯も一緒に帰る。仁くんのクラスの前で唯と会って一緒に教室を覗いた。


「寝てるね」

「寝てるな」

「起こす?」

「起こす」

「じゃあ行くよ、唯」


唯の背中を押しながら教室に入って仁くんの席まで行った。他のクラスってさ、1人じゃ入りづらいよね。


「仁くん、早く帰ろう」

「起きなかったら兄貴ほって蓮と2人で帰んぞ」

「さすがにそんなので起きな……」


仁くんは体を起こして唯を睨み付けた。


「冗談だって。そんなガチギレしたら超鈍感な蓮にでもバレるぞ」

「もうバレてるから別にいい。それに付き合えたし」


仁くんは眠そうにあくびをした。この前内緒にするって言ってたのは私の気のせいだったのかな?ってそんなわけないよね!?


「蓮、マジで?」

「うん、マジ。仁くんが内緒って言うから言ってなかったのに自分から言うからちょっとびっくりした」


唯は私の言葉を無視して誰かに電話を掛けた。


「もしもし、あのさ、蓮と兄貴が隠れて付き合ってたらしい!」

「おい、唯。誰に電話してんだ?」

「姉貴だけど」

「ちょっ、貸せ!」


仁くんは唯のスマホを奪い取って電話に出ていた。


「仁くん、自分で言ったくせに怒ってるね」

「ホントにな。まあ、長い間隠すより早くバレた方が後が楽だろうし」

「確かにね」


仁くんが電話越しで口論している姿を見て私と唯は顔を見合って笑った。


「蓮、悪い。姉貴、家にいたせいでお袋にもバレて昼飯食べてけって」

「今日は1人で食べる予定だったから結愛さんのご飯食べれるなら嬉しい」

「まあ、蓮がいいならいいけどいいけど」


仁くんは唯にスマホを返して荷物を持って立ち上がった。


「帰るぞ」

「だね。」

「腹減った~」

「クッキー食べる?友達にお土産で貰ったんだ」

「食う」


唯にクッキーを渡して昇降口まで行って靴に履き替えた。それから駅まで行って電車に乗った。今日は午前で終了したので席が空いていて座ることができた。


それから自分の家に荷物を置いて蒼井家にやってきた。


「レン!おかえり!」

「ヒナ、苦しい、」

「ごめんごめん」


リビングに行くとまた同じ目に遇った。今度は結愛さんだ。結愛さんの力が強すぎて声も出なかったけど仁くんが助けてくれて平気だった。


「これで蓮が変な奴のところに行くこともないな。蓮が娘になるのか~。嬉しいな」

「いや、結愛さん待って。私と仁くんは別に婚約したわけじゃなんだけど」

「そっか~。蓮はまだ仁と結婚したいとまでは思ってないか。仁、ドンマイ」


結愛さんが仁くんの肩に右手を置いてポンポンと叩いた。仁くんは私の顔を見て少し気まずそうに目を逸らした。


「べ、別に結婚したくないって思ってるわけじゃないし、なんなら結婚したいって思って……」


そこまで言うと結愛さんはニヤリと笑った。結愛さんの策略にハマったんだ。仁くんがあんな表情するからつい言っちゃったけど。


「蓮ちゃん!話は聴かせてもらった!これからは蓮ちゃんのこともお姉ちゃんって呼んでもいい!?」

「いや、ヒナと区別つかないし」

「じゃあ蓮姉は?」

「いつもの呼び方がいいな。私、春雪に“蓮ちゃん”って呼ばれるの好きだし。ダメ?」

「蓮ちゃん!」


春雪は思いっきり私を抱きしめた。私も抱きしめると春雪は嬉しそうに笑った。でも、やっぱり暑くてすぐに離れた。


「腹減った~。昼ご飯食べたい」

「冷やし中華作って冷蔵庫入ってるから食べていいよ。私と黄雛はもう食べたから」

「分かった」


手を洗ってダイニングに着いて冷やし中華を食べた。

それから夕方までずっとからかわれ続けた。


「レン、じゃんけん負けたら仁にキスしてみてよ」

「え、」

「嫌なら別にいいよ」

「嫌じゃないよ!」

「じゃあ、じゃ~んけ~んポン!」


ヒナが急に掛け声をするから慌ててじゃんけんをしてしまった。しかも、ヒナがパーで私がグーを出した。


「あ、ヤバ、マジで勝っちゃった。ホントに嫌ならいいよ」

「だから、嫌じゃないって。仁くん、ちょっとかがんで」

「え、ああ」


私は背伸びをして仁くんの頬にキスをした。恥ずかしいけど、別に嫌なわけじゃないし断ったら仁くんに私はキスしたくないんだって思われるかもしれないし。まあ、私が仁くんにキスしたかったってのもないとは言いきれないけど。


「あはは!仁兄の顔赤っ!」

「マジだ!ヤバ!兄貴タコみてえ!」


仁くんは私を後ろから抱きしめて肩に頭を乗せた。てか、密着しすぎて心臓の音が聴こえるんだけど。絶対私のも聴こえてるよね!?


「あのさ、仁くん。からかわれたからって私使って顔を隠すのやめてくれない?」

「……」

「ちょっと待って。まさかこの状況で寝かけてる!?」

「ホントだ」

「仁くんってホントに私のこと好きなの?好きな人にくっついて寝れる人なんていなくない?」


普通はドキドキするでしょ。仁くんもドキドキしてるなって思ってたら気付かないうちに寝てるし、ホントにマイペースだな。


「レンにくっついてたら落ち着くんじゃない?」

「そうなのかな?」

「うんうん」

「じゃあ、別にいいかな。でも、とりあえず移動したい」

「じゃあ部屋まで運ぶよ。唯が」


ヒナが唯の肩に仁くんの腕を掛けてよろしくと笑った。私は一緒に仁くんの部屋に行った。



~~~~~~



あれ?なんか外が薄暗い。さっき4時くらいだったよね?周りを見ると私は仁くんの部屋のテーブルにうつ伏せになって寝ていた。スマホを見るともう6時になっていた。ベッドを見ると仁くんがすやすや寝ていた。


「寝顔はホント子供みたいで可愛いな。」


仁くんの髪にそっと触れた。なつかしいな。昔はヒナと一緒に仁くんの髪いじったりしてたな。


「ん~、蓮、今何時?」

「今は6時過ぎたところ」

「じゃあ、起きねえと」

「そうだね」


仁くんは目を擦って起き上がった。


「そういえば蓮、もうすぐ誕生日だな。なんか欲しいのある?」

「仁くんとお揃いのなにかが欲しい」

「分かった。じゃあ、リビング行くか」

「うん」


リビングに行って結愛さんに声を掛けて、私は自分の家に戻った。

それから約1時間後。ジュン兄たちがバイトから帰ってきて一緒に晩ごはんを食べた。


「蓮。黄雛から聞いたけど仁と付き合ってるってホント?」

「うん」

「え、俺聞いてない。蓮、いつから?」

「仁くんの誕生日の2日後。だから、もう1ヶ月近く?」

「なんで隠してたんだ?」

「まあ、私はジュン兄たちには言ってもいいかなって思ってたんだけどそこからヒナとか結愛さんにバレたらめんどくさいって仁くんが言うから」


すると、ジュン兄は分かりやすくキレていた。


「蓮と付き合うならまず始めに俺に報告すべきだろ!」

「そんな義務ないよ」

「だとしても、」

「ジュン兄は応援してくれないの?」

「そ、そういうわけじゃない!もちろん蓮のことは応援するぞ」

「ありがとう。じゃあお風呂入ってくるね」


お皿を水につけてお風呂に行った。



翌朝、お父さんとお母さんにも同じ質問をされた。お父さんのキレ方がホントにジュン兄そっくりで私とリオ兄は思わず笑ってしまった。

仁くんと唯がチャイムを鳴らしに来るとお父さんがすごい形相で玄関に行った。


「仁、話がある」

「お父さん、電車乗り遅れるって」

「今日は休みだから車で送る」

「まあ、それならいいけど」


とりあえず仁くんと唯をリビングに入れて麦茶を飲んだ。


「蓮に彼氏とか早すぎる」

「お父さんはお母さんが何歳のときに付き合ったんだっけ?」

「……」

「私が16歳の頃ね。蓮よりも早いわよ」

「じゃあ、いいよね?それともお父さんは私に幸せになってほしくない?」

「ち、違う!分かった。付き合っててもいいから。そのかわり、浮気なんてしたら……」

「しねえよ。蓮以外好きにならねえ」


仁くんはお父さんの言葉を遮るように答えた。お父さんもさすがに驚いたのか目をパチパチとさせていた。


「一件落着?」

「だな。」

「車乗れ。学校まで送る」

「やった!」


お父さんに車で学校まで送ってもらって昇降口まで来た。まだ人少ないな。


「仁くん、授業頑張って寝ないように受けてね。私も1時間目から体育だけど頑張るから」

「分かった」

「じゃあね」


教室に入るとまだ数人の生徒しかいなかった。あんまり話したことない人たちだからちょっと気まずいな。

私は荷物を鞄から出して机に入れた。


それから10分ほどでほとんどの生徒が教室に入ってきた。なんか、すごいたくさんの視線を感じるんだけど。


「レンレン!じんじんと付き合ったってバレてるじゃん!」

「え、あ、そっか。それで視線が多いんだ」

「てか、なんでバレたの!?」

「昨日仁くんが寝ぼけて自分で唯に言ったの。しかも教室でまだ数人残ってたし廊下も人いたから聞こえたんだと思う」

「いいの?」

「まあ、唯以外ならバレても平気だったからね。唯にバレたせいで昨日は帰ってからヒナたちにずっとからかわれたけど」


まあ、それは付き合う前も一緒だけど。


それから先生が教室に入ってきてホームルームを終えて更衣室に着替えた。あ、どうしよう。飲み物持ってくるの忘れた。自販機で買お。


「侑希、ちょっと忘れ物したから先に行ってて」

「分かった」


教室に向かう途中で仁くんのクラスの前を通った。すると仁くんが教室から出てきた。


「蓮、忘れ物か?」

「飲み物持ってくるの忘れちゃって」

「じゃあ俺のやるよ。2本あるし」

「いいの?ありがとう」

「蓮のために持ってきたからな。また熱中症で倒れたりすんなよ」

「大丈夫だって。今日は体育館だし」


仁くんからスポーツドリンクを貰って手を振って体育館に向かった。


「今日はバドミントンをする。ペア組めよ」

「「は~い」」


「レンレン!ペア組も」

「うん」


それからバドミントンのラリーの練習をして体育は早めに終わった。

着替えて教室に戻る途中で仁くんのクラスをチラッと覗くと仁くんは起きて授業を受けていた。


それからお昼になって仁くんと一緒に唯のクラスに行った。


「俺も一緒でいいのか?」

「うん。だってさ、仁くんって食べてるとき無言だし。唯がいたらワイワイ食べられるでしょ?」

「確かに」


それから中庭でお弁当を食べて教室に戻った。やっぱり目立ってるな。なんか恥ずかしい。でも、仁くんが黒髪にしたからそっちへの興味も向いてくれてる。


それから放課後になってホームルームが終わって教科書をバッグに詰めていると席を囲まれた。 


「蒼井と付き合ってんの?」

「いつから?」

「どっちから告白したの?」

「どこまでした?」


と質問責めに遭った。仁くんも同じ目に遭ってるのかな?キレたりしないかな?心配だな。


「蓮」


声のした方を見ると仁くんが教室のドアの側に立っていた。


「仁くん!」

「言っとくけど余計なことは言うなよ。お前らも蓮困らせてんじゃねえよ」

「あ、ごめん」

「大丈夫だよ。またね」


荷物を持って教室を出て仁くんの側に駆け寄った。


「仁くん、助けてくれてありがとう」

「別に思ったこと言っただけだ」

「そっか。」


仁くんは頷いて私の手を握った。仁くん、照れてる。めちゃくちゃ可愛い!私の彼氏、かっこよくて可愛いとか最強なんだけど!


「蓮?」

「なに?」

「いや、別に」

「気になるんだけど。まあ、いいや」


それから家に帰ってアニメを見て1日を終えた。今日はすごい注目される日だったせいか疲れたな。



 * * * ~十数日後~



 教室の窓からグラウンドを眺めていた。すると、気がつくと英語教師が目の前に立っていた。


「蒼井な、最近授業中に寝なくなったと思ったら起きてるだけか?」

「蓮が授業寝ずに頑張れって言うから」

「じゃあちゃんと授業受けろ」

「蓮が外で体育してるから転ばねえか心配で見てたんだよ」

「いいから授業に集中しろ。そうじゃないと倉橋にサボってたって言うぞ」

「分かった」


教科書を開いて黒板に書いてあることををノートに写した。てか、英語は姉貴と蓮が得意だから教えてもらってるし俺も多少は話せるし授業受ける意味が分かんねえ。さすがに姉貴とか蓮ぐらい発音よくねえけど。


授業が終わってクラスの奴らは次の授業の準備をしていた。


「蓮と同じクラスがよかった。」

「まあまあ。でも、付き合ってるとクラスって離されるんじゃねえの?」

「2年に上がるときは付き合ってなかった」


1月は修学旅行があるってのに。なんで蓮と同じクラスじゃねえんだよ。


「拓海も里中と同じクラスが良かっただろ?」

「へ!いや、まあ、そうだけど。」

「早く告れば?」

「それがさ、()ったつもりだったんだけど伝わってなかったみたいで」

「里中って蓮みたいに鈍感じゃないだろ?」

「人のことならね。自分のことになると褒めてもお世辞だって言われるし普通に鈍感。」


拓海は俺の机に顔を伏せた。マジで邪魔。自分の机でしろよ。


「仁、どうしたら侑希に好きになってもらえる?」

「別に何もする必要ねえだろ」


すでに好きだろうし。人の気持ちって意外と分かりやすいのになんで好きな奴の気持ちは分かんねえんだろ。なんか、そこだけ分からんようなバリアとかあんのか?ないか。




 * * *




「仁くん、帰ろ」

「ああ」

「田畑先生(英語担当)から聞いたよ。仁くん授業頑張ってたって。私も体育頑張ったんだ~。だから、ご褒美にスイーツ食べて帰らない?」

「いいけど、俺のご褒美は蓮とイチャつくことだから」

「は!なに、言って」


仁くんはイタズラっぽくニッと笑って、私の頭を撫でた。すると、周りの人たちがざわざわし始めた。仁くん、その顔何!?可愛すぎる。私が壁にもたれて顔を両手で覆うと少し上の方から仁くんの心配そうな声が聴こえてきた。


「蓮、体調悪いのか?」

「違うよ。仁くんが可愛すぎて」

「蓮の方が可愛い」

「あ、ありがとう」


可愛いって言ってる仁くんが可愛すぎる!


「帰ろっか」

「ああ」


それからカフェでケーキを食べて家に帰った。仁くんもアニメを観ると言うので一緒に帰った。すると、何故か鍵が開いていて玄関に靴はないのになんだか人の気配がした。


「じ、仁くん、泥棒いるかも……」

「莉央たちじゃねえの?」

「でも、靴ないし」

「俺が見てくるから蓮は待っとけ」

「1人は怖い」

「じゃあ絶対俺から離れんなよ」

「……うん」


仁くんの腕にしがみついてリビングのドアの前まで行った。リビングには明らかに人がいる。さっきまで着いてた電気は消えた。仁くんは私の体を抱き寄せるようにしてリビングのドアを開けた。

すると、電気がついてパンッ!と大きな音がして私は驚いて目をつぶって仁くんに抱きついた。


「「蓮、誕生日おめでとう!」」


目を開くと誕生日のお祝いの飾り付けがされたリビングでヒナたちがクラッカーを持っていた。


「え、誕生日?あ、そっか。今日、私の誕生日だ」

「忘れてたの?」

「うん。泥棒かと思って怖かった~」

「仁にはサプライズのこと話してたんだけど」


私が仁くんの顔を見上げると仁くんは真顔で「忘れてた」と言い放った。


「蓮が誕生日忘れてそうだから言うなって言われたことまでは覚えてた」

「その続きの方が重要なんだけど!レン、怖がらせてごめんね」

「いいよ。泥棒じゃなかったけど、仁くんが守ってくれようとして嬉しかったし」


仁くんにありがとうと言って笑ってみせると仁くんはあっという間に真っ赤になって顔を背けた。


「兄貴、チョロすぎ」

「仁兄タコみたい」

「レン!もっと攻めたれ!」


ホントこの姉弟は誰かをからかうときはいつも以上に息ピッタリなんだから。


「プレゼント取ってくる」


仁くんは走って行ってしまった。数分後、プレゼントを取って戻ってくると仁くんは私に紙袋を渡した。中身を見るとカーディガンが入っていた。しかも、シンプルだから学校にも来ていけそう。


「ありがとう!私の席、クーラー直当たりで寒かったから明日から持っていくね!もう少し涼しくなったらお揃いで着ようね」

「ああ」


私は仁くんの顔を見上げて笑った。すると、仁くんの顔がすぐそこにあった。急に心臓の音が早くなってきた。


「おい、仁。なに俺の可愛い蓮にキスしようとしてんだよ。言っておくけど、蓮のファーストキスは俺だからな!残念だったな~!」


ジュン兄は仁くんを煽るように笑った。大人気ないな、うちの(上の)兄。てか、そんなの気にしないでしょ、普通。


「蓮、マジ?」

「え、まあ、保育園ぐらいのときにキスしてる写真はあったけど」

「マジか。ジュンに負けるなんて……」

「何の勝負をしてたの?」

「勝負っつうか。蓮の初めては俺が全部ほしかった」


待って。全部!?付き合うとか手を繋ぐとかそういうの全部ってこと?


「で、でも、手を繋ぐとかハグとかはもう初めてじゃないし。」

「それ以外もあるだろ?」

「まあ、付き合ったのは仁くんが初めてだけど。……まさか、初めて別れるのも仁くん!?」

「別れねえよ!」

「そうだよね。よかった。じゃあ他に初めてって?」

「一緒に風呂入るとか。初めての彼氏ならそれも初めてだろ?」

「初めて、だけど……。一緒に入るものなの?」


私はヒナとジュン兄に視線を向けるとジュン兄もヒナも頷いた。


「入るんじゃない?」

「入った」

「ジュン。顔と腹、どっちがい~い?」

「キスで」

「するか!」


ジュン兄とヒナは取っ組み合いを始めた。それにしても、恋人って一緒にお風呂入るんだ。


「まあ、その話はまた今度ってことで。さ、夕ごはん食べましょ」


お母さんが手をパチンと鳴らして微笑んだ。ジュン兄とヒナも喧嘩をやめてコップを持った。


「蓮の誕生日を祝って」

「「かんぱ~い!」」


それからバイキング形式で色んな料理を食べて皆からプレゼントを貰った。


色々あったけどなんだかんだ楽しい誕生日になりました。

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