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17、買い物


 唯が部活から帰ってきて、私は蒼井家にお邪魔していた。


「結愛さん、唯は?」

「昼ごはん食べてシャワー浴びてる。出掛けるの?」

「うん。買い物。春雪に付き合ってもらおうと思ってたんだけど春雪は部活のコンクールが近くて外に行けないんだって」

「ああ、それで唯か」


結愛さんは納得したように頷いて大福を撫でた。それからしばらく結愛さんと話していると唯がお風呂からあがってきた。


「そろそろ行ける」

「分かった。じゃあ結愛さん、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


結愛さんに手を振ってバス停に向かった。


「あっついね~」

「そうだな」

「なんか怒ってる?そんなにゲームがしたかった?」

「違えよ。嫌なこと思い出しただけ」

「え、なんかあったの?」

「同じ部活の奴が蓮を紹介しろって」

「え、紹介すれば?」

「蓮は兄貴が好きなんだろ?」

「そうだけど」


なんで怒ってるんだろう?これまで応援してくれてたのに私じゃ仁くんに釣り合わないってこと?


『未来の姉を兄貴以外の男に近付けるわけねえだろ』


バスが到着したのと同時に唯がなにかを呟いた。


「え、なんて?」

「別に。バス来たし早く乗ろうぜ」

「そうだね」


それからショッピングモールに着いてメンズ向けのアクセサリーのショップに向かった。


「唯、どれがいいと思う?」

「兄貴の誕プレ?」

「そう。仁くんの誕生日の前日までオーストリアに旅行だから早めに買っておこうと思って」

「蓮が選んだらなんでも喜ぶだろ」

「だとしてもちゃんと仁くんに似合うのを渡したいの。でも、仁くんってなんでも似合うから迷ってさ」

「アクセじゃねえとダメなの?」

「特にそういうわけじゃないけど」


私がそう言うと唯はアクセサリーショップから私を連れ出した。


「アクセもいいと思うけど他にいいやつもあるかもしれないし先に見てから考えようぜ」

「そうだね」


それからまず、服屋さんに行った。


「唯、これよくない?キャップ」

「蓮のセンスって独特だよな」


唯が苦笑いをして棚に戻した。そうなんだよね。私のセンスって正直微妙なんだよね。


「唯が来てくれて良かった」

「感謝するなら兄貴に告って付き合ってくれるのが一番嬉しいんだけど。それで姉になれよ」

「唯って結構無茶を言うよね。」

「俺さ、真面目に蓮に姉になってほしいんだよ。俺的には蓮は親友なのに男と女だから付き合ってるとか勘違いされることがあるだろ?」

「そうだね」

「でも、姉になれば気にせず遊べるだろ?」


唯はそう言うとニカッと笑った。そんなこと思ってくれてたんだ。嬉しいな。


「こんなに仲良いのに恋愛に発展しないってことはもしかしたら前世は姉弟だったかもね」

「今世は幼馴染み止まりか。まあ、俺が気を遣わずに外で遊ぶためにも早く兄貴と結婚しろよ」

「それは仁くん次第かな。私が告白したとしても仁くんが私を好きじゃないと付き合えないし」


私がそう言うと唯はグッドサインをした。


「それなら大丈夫だ。」

「ホントどこからそんな自信沸いてくるの?」


私は唯の自信気な顔を見てお腹を抱えて笑ってしまった。恥ずかしくて言えないけど私も唯が弟になればいいなって思ってるよ。だからって仁くんと結婚とか言われても仁くんが私を好きでいてくれないと無理だけどそうなればいいなとは思ってるけど。


「やっぱり仁くんにはピアスかな?」

「兄貴、ピアスめちゃくちゃ持ってるぞ」

「あはは、だよね。毎年ピアスプレゼントしてたから」

「じゃあ今年は別のものやったら?」

「だね」


それから色んなお店を見て歩いていると仁くんにぴったりのものを見つけた。


「ねえ、これ良くない?」

「お守りキット?」

「うん。仁くんっていつも守ってくれるけど怪我多いからそのうち大怪我しないかなって心配だから」

「いいと思う。」

「手作りとかウザくない?」

「蓮に去年作ってもらったって言ってたブレスレットも普通に使ってるし気にしねえと思うぞ」


使ってくれてるんだ。私も仁くんが作ってくれたヘアピン使ってるけど。


「じゃあそれで決定だな。早く買って帰ろうぜ」

「ダメだよ。今からヒナと待ち合わせして浴衣買うんだから」

「はあ?誕プレだけじゃねえの?」

「うん。ついでだよ、ついで」


唯はハァと溜め息をついて私の肩を組んだ。


「仕方ねえな。蓮に似合うのを選んでやるよ」

「ありがと~」


それからヒナと待ち合わせているシアター前に行った。


「ごめんレン、待った?」

「ううん」

「待った」

「唯、着いてから1分も経ってないよ」

「でも、30秒くらいは待った」


なに言ってんの?30秒なんて待ったのうちに入んないでしょ。と思っているとヒナが歩いてきたジュン兄に後ろから抱きしめられた。


「映画終わって彼氏を放ってシアターから出ていく彼女はそういないぞ」

「あ、ごめん。レンと待ち合わせしてたことジュンに言うの忘れてた。今から浴衣買いに行くけど一緒に行く?」

「行く。ヒナは買わねえのか?」

「うん。去年も浴衣着てかなかったでしょ?」

「そうだけどさ」

「バイトのシフト減らしたから金欠なんだよね。だから無理」


ヒナがそう言うとジュン兄がショックを受けた顔をした。


「あ、じゃあ俺が買うからヒナも好きなの買えよ。それで着て見せて」

「まあ、それならいいけど」

「よし。選びに行こうぜ」

「そうだね」


それから浴衣売場に行った。私は目の前にあった浴衣を着てみた。私は中学の頃に家庭科の授業で着付けをやったのを覚えていたので自分で着ることができた。


「レン、着替え終わった?」

「うん」


試着室のカーテンを開けると唯とヒナがひきつった笑顔をしていた。


「なにこの柄。」

「キノコ。え、可愛くない?」

「可愛い。蓮はどんな柄の服でも可愛い」

「ジュン兄、私じゃなくて浴衣のことを話してるんだけど」

「浴衣は蓮っぽくはねえな。どうしてもそれがいいのか?」

「いや、そこまでではないけど」


私がそう言うとヒナが私の手を握った。


「私が選ぶからその中から選んで!」

「わ、分かった」


ヒナの勢いがすごくて少し驚いたけど浴衣を選んでいるヒナは楽しそうだ。


「レン、これ着てみて」

「うん」


私は浴衣に着替えて試着室を開けるとヒナがパシャパシャと写真を撮った。


「めっちゃ可愛い!似合ってる!」

「そうかな?ありがとう」

「マジで可愛い!レン、ホント可愛いよ」

「そんなに褒められると照れる。」


そう言うとヒナが抱きついた。仁くんも可愛いって思ってくれるかな?すると唯が浴衣を見てあっ、と言って手を叩いた。


(はす)の柄だな。(れん)の漢字と同じだな」

「確かに。ヒナ、これにするよ。ありがとう」

「どういたしまして」

「唯は浴衣買わないの?」

「俺は持ってる」

「そうなんだ」


それから私は浴衣から着替えて試着室を出た。


「じゃあ次はヒナのを選ぶ番だね」

「私は蓮のを選んだときにいいのを見つけたからもう選んだよ」

「え!そうなの?どんなやつ?」

「水色の生地にレモン柄。可愛いでしょ?」

「めっちゃいい!可愛い!」

「でしょ。もう一目惚れした」


ヒナがニカッと笑って言った。それからお会計に行った。ジュン兄が私の浴衣も買おうかと訊いてきたけど私はお父さんに浴衣代をもらっていたので断った。


「ジュン、ありがとう」

「いいよ。俺が着てほしかっただけだから。でも、明後日から会えないのか~」

「お祖母ちゃんの家に行くからね」

「そうだ。ヒナもいつか一緒に行こうな。そんときは婚約者として祖母ちゃんと祖父ちゃんに紹介したいし」


ジュン兄がそう言うとヒナは顔を真っ赤にしてバッグで顔を隠した。


「な、もう、バカ。急に冗談言わないでよ」

「マジだけど。」

「え、。っ、でも!そうだとしても気が早い」

「そうだな」


そう言うとジュン兄は笑ってヒナの手を握った。唯は私のとなりでわざとらしく溜め息をついていた。


「マジでバカップル」

「まあいいじゃん、仲良しで。ヒナは絶対に幸せになってもらわないと飛鷹さんも負い目を感じるだろうし。なんなら大学で見せつければいいんだよ」

「蓮って優しいよな。」

「え、怖。唯が褒めてくるとかなんか変なのでも食べた?」

「さっきの言葉は撤回で」

「ウソウソ。ありがとう」

「最初からそう言え」


唯はそう言うとデコピンをした。


「唯ってさ、ツンデレだよね」

「はあ?」

「ほら、優しいけどぶっきらぼうだし」

「どこがぶっきらぼうなんだよ」


照れるときもぶっきらぼうだからツンが強めのツンデレだな。


「蓮、唯。ヒナがフラペチーノ飲みてえって言ってるけどどうする?まあ、行くんだけど2人とも飲むか?」

「飲む」

「俺も」


それから1階のカフェでフラペチーノを頼んで席に着いた。


「そういえばさ、ヒナも見てる?一昨日から始まったアニメ」

「見てるよ。あれでしょ?ヤンキーと生徒会長の」

「そう!それにでてくる(たつ)くんカッコよくない!?黒髪のヤンキーキャラってめっちゃ好きなんだよね」

「確かにレンが好きそうなタイプだね」

「そうなの。ホントカッコいい。しかも中学のときは金髪で生徒会長の好みに合わせて染めたっていうのがめっちゃ好き。可愛い」

「分かる!意外と一途なのも可愛いよね」


ヒナが私の手を握ってうんうんと頷いた。


「ヒナは黒髪が好きなのか?」

「私はジュンの髪色くらい明るい方が好きだけど」

「まあ、俺はヒナの好みに会わせたりしねえけどな。」


ジュン兄が笑ってそう言った。私がなぜか訊くとジュン兄はニッと笑った。


「ヒナの好みが俺になれば合わせなくていいだろ?」

「それ、ジュンじゃないと言えないね」

「そうか?」

「そうだよ」

「まあ、俺は自分に自信があるからな。なんたって高校で学校のマドンナと称されたヒナの彼氏だし」

「私の友達が勝手に言ってただけだよ」


そう言ってヒナが苦笑してフラペチーノを飲んだ。それからフラペチーノを飲み終えてカフェを出た。


「私達、ちょっと見たいショップあるから蓮と唯は好きにまわってて。帰りはジュンが送ってくれるって」

「分かった」

「サンキュ」


ジュン兄とヒナと別れてゲームセンターに行った。


「プリクラ撮ってみたい」

「いいけど。俺、撮るの5~6年ぶりだから分かんねえよ」

「私もヒナと撮るけどなんか落書きとかは分かんない」

「じゃあどうやって撮るんだよ」

「う~ん、勘?」

「分かった」


とりあえずプリクラに入ってお金を入れたなんかモードとかあるけどなんでもいいよね?


「なんのポーズする?」

「そこはやっぱり」


恐れ多いながら推しの決めポーズをして写真を撮ることにした。


「ヤバい、めっちゃ面白いんだけど。プリクラってこんなに面白いんだな」

「いや、普通は違うと思うけど」


それから落書きをしてプリクラを出た。


「今度は仁くんと撮りに来る」

「そうしろ。それで付き合え」


ホント付き合え付き合えっていってくるけ仁くんが私を好きじゃないと付き合えないって分かってるの?


「蒼井?」

「おお、天宮。そっちも買い物か?」

「うん。従兄弟が遊びに来てて」


天宮さんはそう言うと驚いた顔をして私に視線を移した。


「ちょっと唯、ちゃんと紹介しないから私のこと勘違いされてるよ」

「ああ、そっか。俺の幼馴染み」

「倉橋蓮です。高2です。お母さんがオーストリアと日本のクォーターで髪と目の色は自前です。」

「そうなんですか。」

「それと唯とは付き合ってないので勘違いしないでください」

「蓮が好きなのは俺の兄k」


私は笑顔で唯の頬をつねった。


「余計なことは言わなくていいよ。必要なことだけを言おうね」

「うす」


私達のやり取りを見ていた天宮さんはプフッと吹き出した。


「なんかコントみたいでおもしろいですね」

「コント?」

「はい。あ、私は天宮愛理(あいり)です。」

「あ、もしかして唯とお祭りに行く子ですか?」

「まあ、一緒に行く約束はしてますけど」

「え、めっちゃ可愛い子じゃん。ヒナ呼ばないと、ヒナ」

「呼ぶな!俺がどうなるか分からねえ」

「天宮さん、ヒナってこの写真の私の隣にいる唯のお姉ちゃんなんだけど会いたいですよね?」

「はい」


私は急いでヒナに連絡をした。すると1分もせずにヒナが走ってきた。


「唯の彼女!?あの唯がね。告られても早く部活の練習がしたくて断る唯が」

「なんで知ってるんだよ。というか彼女じゃねえし。喋ったのまだ3回目」

「え、なんで?連絡先は?」

「そういえば交換してないね。連絡先教えてよ」

「ああ」


唯がスマホを出して天宮さんのQRコードを読み取った。唯も天宮さんも嬉しそうだな。


「愛理ちゃん!ママが呼んでる!」

「あ、そうだった。じゃあね、蒼井。お姉さん達もまた」

「またね」


ヒナが手を振り返すと天宮さんを呼んでいた女の子の元に走って行った。


それからジュン兄の車で家に帰った。


「ありがとう、ジュン。じゃあまた来週」

「旅行は明後日からなんだけど。6日も会えないんだから明日は1日ヒナに甘えようかと思ってたんだけど」

「明日は無理。佳代(かよ)ちゃんに会いに行くから」

「誰?」

「私らのお祖母ちゃん。言うて県内だけど」

「そっか。それじゃあ仕方ないな」


ジュン兄がそう言って家の門を開けるとヒナがジュン兄の腕を引いた。


「ジュンも来る?」

「いいのか?」

「まあ。どうせまた会うかもだけど」

「かもじゃねえけどな」

「それは分かんない」


ヒナがそう言って笑うと手を振って家に入っていった。ジュン兄も笑って家に入った。


「じゃあお守り作り頑張れよ」

「うん。ありがとう」

「じゃあな」

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