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15、ゴールデンウィークのプチ旅行


 今日は朝から車に乗ってコテージに向かっている。お母さん達が仕事が休めないからせっかくの休みだし遊んでおいでと予約をくれたのだ。保護者はジュン兄とヒナとリオ兄でメンバーはその3人に加えて私、仁くん、唯、春雪が一緒に行く。


「めっちゃ楽しみ!潤くん、あとどれくらいで着く?」

「もう30分ぐらいで着くから」

「やった!蓮ちゃん!着いたらアスレチック行こうね!」

「いいよ。でも、私運動音痴だから春雪のペースに着いていけるか分からないけど」

「大丈夫だよ。蓮ちゃんのペースに合わせるし。楽しみだね」

「そうだね」


それからコテージに着いてジュン兄がチェックインをして部屋に荷物を置いた。ちなみに、このコテージは居間の他に2部屋あって女子3人と男子4人で分かれて寝る。


「早くアスレチック行こ!」

「あ、待って。部屋の写真撮ってお母さんに送る」

「私もストーリーにあげるようの写真撮らせて」


私とヒナはそれぞれ写真を撮ってから部屋を出た。


「唯も一緒にアスレチック行く?」

「ああ。兄貴は?」

「俺はいい。温泉行ってる」

「じゃあ俺も。ついでにサウナも行こうぜ」


リオ兄がそう言って仁くんの肩を組んで歩いて行った。


「ジュン兄は?」

「俺はアスレチックで」


それからアスレチックに行って全部のコースをクリアした。


「あ~楽しかった~」

「春雪、めっちゃ速すぎて全然追い付けなかった」

「ごめんごめん。唯兄いるし大丈夫かなって思って」

「まあ、無事クリアしたけど」

「でしょ?」


春雪はそう言って笑った。すると唯が手招きをした。


「なあ、蓮。兄貴と何があったんだ?」

「特に何もないけど」

「じゃあなんで一緒に帰らねえんだよ」

「だから仁くんのためだってば」

「なんで一緒に帰らなかったら兄貴のためになるんだよ」


唯は私が仁くんと帰らなくなってから何度もこの質問をしてきた。でも、仁くんの好きな人のことなんて話していいのかな?


「言わなかったら兄貴に蓮が兄貴を好きなことバラすぞ」

「分かった。言うからやめて。」

「ああ」

「仁くん、好きな人がいるらしいんだけど私と帰ってるせいで放課後に遊んだり、一緒に帰ったりできないかなって思って。それに、仁くんに彼女が出来たら諦められると思ったから」


そう言ってため息をつくと唯は私以上に盛大なため息をついた。


「蓮、もうこれからは兄貴と一緒に帰れよ」

「なんで?あ、もしかして唯も好きな人がいるの?」

「いや、いねえけど。兄貴が可哀想すぎて。とりあえず今日中に兄貴に“また一緒に帰ろう”って言えよ」

「改めて言うのも恥ずかしいんだけど」

「言えよ」


唯の圧がすごくて私はコクコクと頷いたのであった。


 それから、お昼になって皆でカフェでご飯を食べて近くの植物公園で遊んだ。


そして、仁くんに何も言えないまま夕方になった。


「あ、蓮。肉焼けてるぞ」

「ありがとう、ジュン兄」


今はコテージのウッドデッキでBBQをしている。しかも、準備は全てスタッフの方がしてくれた。


「あ、仁く」

「蓮ちゃん!後でスモア作ろ!マシュマロ焼いてクッキーで挟むの」

「美味しそう」


私が微笑むと春雪は大きく頷いて微笑んだ。するとお皿を見て叫んだ。


「あ~、莉央くんひどい!私のお皿にナス入れないでよ!」

「好き嫌いするな」

「じゃあ食べさせてくれたら食べる」


春雪がそう言うとリオ兄がうっ、と言って後退りをしていた。


「ほら、早く食べろよ」

「え、冗談で言ったんだけど」

「いいから早く」


春雪は嫌そうな顔をしてパクッとナスを食べた。


「あれ?美味しい、かも。苦くないし」

「良かったな」

「うん!莉央くん、もっかい食べさせて」

「絶対無理。ほら見ろ。兄貴と黄雛の手元を。スマホ準備してんぞ」

「ホントだ。」


春雪が苦笑してお肉を食べた。それからスモアを皆で作って食べ終わってから皆で花火をして、温泉に行った。


「ヒナ、なんで帽子とマスクなんて持ってきてるの?」

「なんか、ジュンにすっぴんを見せなさすぎてすっぴん見られるのが恥ずかしいっていうか」

「お姉ちゃんって変なところ気にするよね」

「春雪と蓮はいいな。元々すっぴんだし。私、メイク濃いから。」


ジュン兄は気にしないと思うけどな。まあ、ヒナが気にするなら好きにしたらいいと思うけど。

温泉からあがって施設のロビーに行くとジュン兄達はすでにあがってフルーツ牛乳を飲んでいた。


「ジュン兄、イチゴミルクいいな。1口ちょうだい」

「ほい」

「ありがとう」


私がジュン兄にビンを返すとジュン兄はヒナの肩を叩いた。


「ヒナも飲むか?」

「いや、いい」

「めずらしいな。というか、なんでそんな格好してんだ?」

「だって、すっぴんだし。私、ジュンが思ってる以上にメイク濃いから絶対違う顔になってる」

「それで。そんなに気にするもんか?」

「気にするよ。高校の知り合いですっぴんが見たことあんのなんて修旅で同室だった子と遊びに行った部屋にいてた人だけだし」


ヒナがそう言うとジュン兄がへ~と言いながらリオ兄を見た。


「莉央に会いに行ってたのか?」

「んなわけないじゃん。」

「俺が飛鷹と同室だったからな。」

「リオ、余計なこと言うな」

「いつも余計なこと言ってんのはどっちだよ」


リオ兄が苦笑して言うとヒナはキッと睨んだ。それから牛乳も飲み終えたのでコテージに帰った。


「ヒナ、ちょっと来て」


ジュン兄がヒナの腕を引いてコテージから出ていった。



 * * *



ジュンが私の腕を引いてコテージから飛び出すと街灯の下で立ち止まった。そして、振り返って私のマスクをずらして唇を重ねた。


「隠されてると見たくなるもんだよな。」

「だからってわざわざキスはしなくても」

「マジで可愛すぎて我慢できなかったわ。あ~あ、ヒナと同室が良かったな。」

「同室だとしてもまた邪魔されると思うよ」

「確かに」


ジュンがそう言って私を抱き上げた。


「ヒナ」

「ん?何?」

「夏になったらさ、旅行しないか?2人で」

「いいよ。」

「どこにする?沖縄とか?」

「沖縄いいね!海入りたい!」

「じゃあまた帰ったら予定立てようぜ」

「うん」


ジュンと手を繋いでコテージに戻ると唯と春雪がニヤニヤしながらお帰りと言った。



 * * *




 どうしよう。もう11時なのに仁くんにまだ伝えられてない。なかなか2人になれないし仁くん寝に行っちゃったし。


「蓮、兄貴にまだ言ってねえんだろ?部屋に行って話してこいよ」

「うん」


私は仁くん達の部屋をノックしてそっとドアを開けた。


「仁くん、起きてる?」

「ん?ああ。なんだ?」

「その、前にさ、別々で帰ろうって言ったけど。やっぱり一緒に帰ってくれない?」

「ああ」

「やっぱり私から言い出したのにダメだよね。……え!待って!いいの!?」

「ああ」

「好きな人は?」

「俺の好きな奴は他に好きな奴がいるんだと」

「そっか。じゃあ来週からは仁くんのクラスに迎えに行くね」

「ああ」


良かった~。断られると思った~。


「なあ、蓮の好きな奴ってどんな奴だ?」

「え、」


本人に言えと?告白みたいなもんじゃん!でも、ちょっとは意識してくれるかな?


「えっと、優しくてカッコよくて動物と子供が好きだけど怖がられてショックを受けてるところがすごく可愛くて愛しくて抱きしめたくなる感じ」

「へえ。付き合いたいって思うか?」

「思うよ」


私が頷いて答えると仁くんは布団に入った。


「そうか。頑張れよ」

「うん。おやすみ、仁くん」

「おやすみ」


それから部屋に行ってヒナと春雪と恋バナをすることになった。


「そういえば、仁兄って腹筋のところに傷があるよね?私が聞いても勲章の傷って言って教えてくれないんだけど蓮ちゃんはなんでか知ってる?」

「知ってるって言うか私を庇ってくれてついた傷だから」

「どういうこと?」



 * * *




私が小学5年生の頃、仁くん以外にとても仲良しの男の子がいたの。その子は畠中(はたなか)くんっていって運動も勉強もできてクラス委員もやってた。


「倉橋、ノート半分貸して。運ぶの手伝う」

「ありがとう。畠中くん」

「いいよ。」


って感じですごく優しくて女の子から人気だった。でも、畠中くんは女の子と喋ることがほとんどなくて私は仁くん繋がりで仲良くなったんだけど他の女の子が話し掛けてもすぐにサッカーをしに校庭に行くような子だった。


それで、私が手紙を預かって渡してって言われたことがあって渡したんだけど畠中くんが読まずに返してって言って私が女の子達に手紙を返したらその子達が私が畠中くんを好きだから畠中くんに言わずに返してきたって思ったみたいで突き飛ばされたの。


それで、たまたまその場に居合わせた仁くんが庇ってくれたんだけどちょうど花瓶が割れてその破片で仁くんのお腹が切れて、その傷がまだ残ってるの。



 * * *



「知らなかった。でも、確かに。勲章の傷だね」

「そうなのかな?」

「そうだよ。だって幼馴染みを守ってできた傷だって自慢できるじゃん」

「私は手当てするときに見るたびに早く消えないかなって思うけど」

「仁兄が気にしてないんだから蓮ちゃんが気にする必要ないよ。ね、お姉ちゃん」

「そうそう。仁の自慢を否定しちゃダメだよ」


自慢、か。やっぱり私の幼馴染みは優しい人達ばかりで私のせいでって思わないんだよね。


「そうだね」

「そうそう。じゃあたくさん話したことだし早く寝よっか。」

「うん」


翌日、リビングに行くとヒナとリオ兄が朝食を準備してくれていた。すると、ジュン兄も起きてきた。


「はい、リオ。味見」

「ああ」

「おい莉央!なにヒナと新婚みたいなことしてるんだよ!そこは俺の立ち位置だ!」

「誰が新婚だ!旦那だったらパシりにしない!」

「パシりになんてしてないじゃん!ちょっと買い出しのために車出してもらっただけだし!」


朝から元気だな。


「買い出しならしてからコテージに来ただろ?」

「そうだけど、フレンチトーストにかけようと思ってたジャムがなかったからドライブがてら美味しいジャムが売ってるところ行ったの」

「朝からドライブデートねえ」

「マジで兄貴ウゼえ。」

「いや、だって莉央の方が彼氏っぽいことしてるような気がするんだけど」


ジュン兄がムスッとしてリオ兄とヒナを見るとヒナがこっちに歩いてきた。そして、背伸びをしてジュン兄にキスをした。


「言っておくけど 私、ジュン以外の人に口にキスしたことないから。これが一番恋人っぽいんじゃないの?」

「ヒナ~、マジ好き!ヒナならこうしてくれると思ったわ」

「は?なに?わざとキスさせたの?」

「わざとっていうか俺がめんどくさく嫉妬したらなだめるためにキスしてくれるかなって思っただけ。ヒナからって全然してくれねえからさ」


ジュン兄が笑うとヒナがジュン兄の胸ぐらを掴んだ。


「騙したの?」

「騙してはないよ」

「もう一生しない」

「それはダメ」


ジュン兄がもう一度ヒナにキスをするとヒナが顔を真っ赤にしてジュン兄から離れた。てか、なんか、ちょっと長かった?


「ちょっと、レンとリオがいんのにバカなの!?」

「バカじゃないで~す。上目遣いしてくるそっちが悪い」


するとさっきまでフレンチトーストを焼いていたリオ兄が火をとめて溜め息ついた。


「そこのバカップルは寝てる奴らを起こしてこい。」

「おい莉央。そこは秀才カップルだろ」

「うるせえ。早く起こしてこい」

「ヒナ、行こうぜ」

「分かってる」


相変わらずヒナとジュン兄は仲良しだ。もし、私が仁くんと付き合えても仁くんがあんな甘い感じにはならないよね。


 それから唯と仁くんと春雪が起きてきて皆で朝食を食べた。ヒナの作るフレンチトーストはホントに美味しい。お店に出てきそうなぐらいふわふわとろとろで甘さ控えめなパンにジャムとホイップクリームをかけて食べるのが一番美味しいんだよ。


「ヒナはいいお嫁さんだね」

「は?そこはいいお嫁さんになるねでしょ?私結婚してないし」

「え、未来の俺の嫁だろ?」

「私、プロポーズに夢があるタイプなんだよね」

「大丈夫。結婚するときはちゃんとプロポーズするから」


ジュン兄が笑うとヒナは顔を背けた。てか、今のはプロポーズみたいな感じじゃないの?


「バカップル」

「唯まで!ひど!」

「ひどくねえよ。ここにいる全員が思ってることを代弁しただけだ」

「え~、春雪はそんなこと思ってないよね?」

「あはは」

「え、お姉ちゃんマジでショック!こう見えても偏差値70超えの天才なのに」


ヒナがそう言うと皆笑った。まあ、仁くんはもくもくと朝食を食べてるけど。ヒナってノリが良くてホント面白いんだよね。ジュン兄はこういうところも好きになったのかな?それから朝食を食べ終えて片付けをして家に帰った。


楽しかったけど疲れたな~。お母さん達に感謝だなぁ。ちょっとお昼寝してから溜まってるアニメみよ。

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