14、クラス替え
4月になってヒナとリオ兄は大学生になって私と仁くん、春雪は進学。そして、唯は明日、うちの高校の入学式に出席する。
「おはよう」
「はよ」
「クラス替えドキドキする。仁くんは?」
「別に」
「今年も同じクラスだといいね」
仁くんは顔を背けて頷いた。
それから電車に乗って駅に着くとタクミンと侑希に会った。
「おはよう。タクミン、侑希」
「おはよう、蓮ちゃん」
「レンレン!じんじん!おはよう~!久しぶり!」
「ああ」
それから学校に着いて靴を履き替えてクラス発表の張り出されている廊下に向かった。私がクラス発表を見る前に侑希が私の方を向いて笑顔になった。
「あ!レンレン同クラだ!2組!」
「え!ホント!?やった!」
私と侑希が手を取り合って喜んでいると後ろから肩を叩かれた。
「蓮、久しぶり」
「久しぶり、翔弥」
「同じクラスだな。今年もよろしく」
「うん!よろしく」
私は改めてクラス発表を見た。あれ?一番最初の人が井藤くん?ってことは……。
「俺と仁は1組だな」
「そう、なんだ。タクミン、仁くんが寝てたら起こしてあげてね。皆怖がって近付いて来ないから」
「ああ」
「じゃあね」
仁くんとタクミンと別れて教室に入って席に着いた。私は思いきって隣の人に話し掛けることにした。
「あ、あの!倉橋蓮です。よろしくお願いします!」
「知ってる~!莉央先輩の妹でしょ?それと蒼井くんの友達?ヤンキーなのに怖くないの?」
「全然!仁くんは中学のときはちょっと尖ってたけどずっと守ってくれるし家族思いで優しいんだよ」
って、なに熱弁しちゃってんの私!恥ずかしい~!両手で顔を覆うと隣の席の子はプッと吹き出して笑った。
「倉橋さんって可愛いね。顔もだけど仕草とかがすごく可愛い」
「え、そう?」
「うん。あ、うちは中条都。好きに呼んで」
「私のことは蓮って呼んで、ミヤ」
「うん」
それから先生がやって来て体育館に行って始業式をして教室に戻ってきた。
ホームルームを終えてクラスのグループチャットができて私も入れてもらった。
「レンレン!ヘルプ!」
詩音が教室のドアの前から手を振って叫んだ。私と侑希は荷物を持って廊下に出た。ちなみに、詩音のクラスは仁くんとタクミンと同じ1組だ。
「何を手伝ってほしいの?」
「じんじんが全然起きないんだけど」
私達は1組の教室にお邪魔して仁くんの席の前に行った。するとタクミンがもう一度仁くんをさすった。
「早く起きろよ。帰らねえのか?」
「……」
「マジで起きねえ」
私は仁くんの肩を軽く叩いた。
「仁くん、起きて。早く帰ろう」
「ん、はよ」
「おはよう。もう学校終わったよ。それにタクミンが何度も起こしてくれたみたいだし」
「マジか。」
「マジだよ。てか、蓮ちゃんすごすぎ。こんなにすぐに起こせるとかマジですごい」
「仁くんは肩を叩くと大体起きるからね」
私がそう言うと皆感心したような顔をした。
「蓮、なんか食って帰るか?」
「じゃあハンバーグ?」
「分かった。早く帰ろうぜ」
仁くんが鞄を持って立ち上がった。皆に手を振って教室を出た。
その後、ハンバーグを食べに行って家に帰った。
1週間後、今日は唯も一緒に登校する。
「唯、制服似合ってるね」
「だろ?」
「うん!困ったことがあったらなんでも言ってね。私、先輩だし」
「じゃあ蓮センパイ、荷物重いんで持ってくれますか?」
「残念ながら唯が重いと思う物を私が持てると思わないで」
「確かに」
唯はそう言うと笑った。せっかく先輩面してみたのに全然のってくれないなんて唯らしいな。
駅にから出て学校に向かっているとミヤに会った。
「あ!蓮!おっはー!隣のイケメンは彼氏?」
「まさか。ないない有り得ない!ただのバレーバカだもん」
「誰がバレーバカだ」
「唯」
「バレーバカじゃねえよ。俺は蒼井唯です。蓮の幼馴染みで1年2組です。」
「よろしくね~。じゃあうちは友達が待ってるから先に行くね~」
「はい、また」
唯が手を振って答えた。ちょっと、私とミヤの態度の差みた!?ヤバくない?別人じゃん!
「仁くん、ミヤと唯が話してるときめっちゃ無言だったね」
「知らねえやつと話す意味が分からねえ」
「知らないって言っても私の友達だよ?」
「俺からしたら他人だ」
「まあ、それはそうだけど」
でも、仁くんが新しいクラスで怖がられてないか不安だな。去年のクラスは演劇のお陰で怖がられなくなったけど。
それから学校に着いて唯は自分の教室に向かった。私と仁くんは隣のクラスなので途中まで一緒に向かった。
「じゃあ、また昼休みに」
「ああ」
「なるべく起きて授業受けてね」
「ああ」
「じゃあね」
仁くんに手を振って教室に入った。仁くんも新しく友達ができるといいな。それから4限目、体育でサッカーボールが額に当たって保健室で寝させてもらうことになった。
「倉橋さん、お友達が制服を持ってきてくれたわよ」
「ありがとうございます。ここで着替えてもいいですか?」
「ええ。」
私は制服に着替えて体操服を畳んでいると保健室のドアが開く音が聞こえた。
「蒼井くんじゃない」
「え!仁くん!?」
私がカーテンを開けると仁くんは私の方へ来て強く抱きしめた。
「仁くん?」
「怪我、大丈夫か?頭を打って倒れたって」
「確かに額を打ったけど倒れたんじゃなくてボールの勢いで転んだだけだよ。ちゃんと手は着いたから頭は打ってないし」
「じゃあ怪我は大したことはないんだな?」
「う、うん。というか苦しい」
「わ、悪い」
仁くんが慌てて離れると顔を背けた。ホント最近目が合わないな。
「それじゃあ、失礼しました」
「お大事に」
先生にお礼を言って保健室を出た。
「お弁当とってくるからちょっと待っててくれる?」
「蓮の弁当も持ってきた」
「ありがとう。じゃあ唯のクラス行く?」
「そうだな」
それから1年2組に向かった。それにしてもやっぱり他学年の階は目立っちゃうな。1年2組の教室に着いて唯を呼んでもらった。
「遅えよ」
「ごめん。体育で怪我して保健室行ってて」
「大丈夫か?」
「うん。早く中庭行こう」
「ああ」
中庭のベンチに3人で並んで座ってお弁当を食べていると男子生徒に話し掛けられた。
「あの、倉橋さんってどっちかと付き合ってますか?」
「え、あの、どなたですか?」
「4組の吉田です。それで付き合ってますか?」
「付き合ってないですけど」
「良かった。俺、倉橋さんのことずっといいなと思ってて。俺の彼女になってくれませんか?」
吉田くんはそう言って微笑んだ。笑顔がチャラい。
「すみません。好きな人がいるので」
「好きな人がいてもいいよ。好きになってもらえるように頑張るし」
「いや、」
「好きな人と付き合えそうなの?そうじゃないなら自分を好きだって言ってる奴と付き合った方がよくない?」
最近、仁くんはなかなか目を合わせてくれないし付き合えそうとは言えないけど。
「好きな人がいるのに吉田くんと付き合うのは失礼ですし絶対に傷つけると思うのでお断りします」
「そっか。」
「はい」
私が頷くと吉田くんは走ってその場を去った。仁くんは完全にスルーでお弁当を食べ進めていた。
「兄貴の前で告白するとかいい度胸してんな」
「確かに。怖がってたらどっちかと付き合ってる?なんて普通訊けないね」
「だろ?ヤンキーになれてんのか?」
「さあ?」
放課後になってクラスの子が親睦会がてらカラオケをしないかと提案をした。
「侑希とミヤも行く?私、他に話せる人とかいないから知らない人だらけはちょっと行き辛くて」
「私は行くよ」
「うちも行くよ」
「良かった。」
「隆也~、レンレンとミヤりんもカラオケ行くって!」
侑希がそう言うと隆也と呼ばれた男子生徒が何人かの生徒とやってきた。
「倉橋さんと喋るの初めてだね。俺のことは隆也でいいよ」
「だったら私のことも蓮でいいよ」
「おう!じゃあそろそろ行くか」
「あ、待って。仁くんにちょっと用事があるから1組に行ってくるね」
1組の教室に行くと仁くんが女の子と腕を組んでいた。そして仁くんが顔を上げた時に目が合った。すると仁くんはぶっきらぼうにその子から離れてこっちへやってきた。
「帰るか?」
「その事なんだけど、クラスの親睦会でカラオケに行くことになったから今日は一緒に帰れない。仁くんはさっきの子と遊んで帰ったら?」
こんなこと言いたくないのに。仁くん、傷付いた顔してる。
「んだよ、それ。変な勘違いしてるんじゃねえよ」
「ごめ、」
「先に帰ればいいんだろ?じゃあな」
仁くんはそう言い捨てると教室から出ていった。あ~もう!私のバカ!嫉妬ばっかして仁くんに嫌なこと言っちゃうとかホントやだ。
それからカラオケに行って早めに帰ることにした。駅から帰っていると若い男性数人に声を掛けられた。
「ねえ、俺らさ、ちょっとお金ないんだけど貸してくれない?」
「貸すほどのお小遣い持ってないです」
「少しでいいからさ」
「ないです」
「だったら遊んでくれない?」
そう言うと1人の男性が私の腕を掴んだ。離そうとしても力が強すぎて振りほどけない。怖い!助けて!
「仁くん、」
来るわけないのに。勝手に嫉妬して仁くんを傷付けたのに自分が危ない状況のときはきてほしいとか都合よすぎだね。諦めて素直に着いていこうとした瞬間、聞き覚えのある犬の鳴き声と人の声が聞こえてきた。
「大福!どこ行くんだよ!」
仁くんと大福が私の方へ走ってきた。すると私を見て状況を察した仁くんが男性を私から離した。すると男性はパイプのような物私を殴ろうとした。思わず目をつぶった。あれ?痛くない?
目を開けると仁くんが庇ってくれていた。そして、仁くんがその男性達を睨み付けてゆっくり近付くと男性はパイプを振り回して仁くんが近付けないようにしていた。でも、仁くんは避けれるはずなのな真っ直ぐ歩いて男性達を1発ずつ殴った。
「蓮に手出してんじゃねえよ」
「あいつが、蒼井仁の女って知らなくて!悪い!知らなくて!」
そう言うと男性達は走り去った。私は気が抜けてその場にへたりこんで泣いてしまった。すると仁くんが大福を私の前に連れてきた。
「大福が連れてきてくれたんだ」
「うん。ありがとう、大福」
「昔、拾われた恩を返したんだろうな」
「うん。」
「もう泣くなよ。俺がいるだろ」
「でも、仁くん。私のせいで怪我してるし」
「気にするな」
「そんなの無理。家に来て。手当てするから」
仁くんの手を引いて家に帰った。
「大福は家に置いてくるわ」
「うん」
1分後、仁くんが大福を置いて戻ってきた。私は仁くんをソファに座らせてTシャツを脱いでもらった。
「やっぱり、ボロボロじゃん。なんで無茶するの?お腹のところみたいに傷が残るかもしらないよ?」
「蓮は俺に傷があったら怖いか?」
「そんなわけないじゃん」
「なら残っても別にいい」
そんなこと言っても腹筋の傷だって私を守って出来たものだし。私がいじめられてたところを助けなかったら傷なんて残らなかったのに。
「仁くん、もっと自分を大切にして。私、仁くんに傷付いてまで守ってほしくないよ。仁くんが代わりに怪我をしたら意味がないじゃん」
「悪い。って泣くなよ」
「だって、私が弱いせいで仁くんがボロボロだし。あの人達、力が強すぎて怖かったし」
そう言うと仁くんは私を抱きしめた。
「怖かったよな。好きなだけ泣けよ」
「仁くんのバカァ~!」
「なんでそうなんだよ。怖かったんじゃなかったのか?」
「それとごめん。勘違いして仁くんにきつく当たって」
「それは俺も悪かった。蓮には誤解されたくなかった」
「ごめん。」
「もう気にすんな」
「うん」
仁くんから離れて笑って見せると仁くんが笑った。仁くん、久しぶりに笑ったな。私よりも仁くんの笑顔をみたことがある人っていないと思う。多分、結愛さん達よりも多いんじゃないかな?もしそうだったら1番の自慢だ。
「手当て終わり。」
「サンキュー」
「あのさ」
「ん?」
「仁くんって好きな人とかいたりする?」
「あ、まあ」
「……そっか。じゃあ明日からは別々で帰ろう。私、唯と一緒に帰るし」
「唯が部活あるときはどうすんだよ」
「部活が終わるのを待つ」
私がそう言うと仁くんが私の腕を掴んだ。
「蓮は、好きな奴いるんだろ?唯と帰ってたら勘違いされんじゃねえの?」
「仁くんだったら勘違いする?」
「いや、しねえけど」
「だったら大丈夫だよ」
「そう、だな」
仁くんはそう言うと顔を背けた。さっき気付いたけど私と仁くんっていつも一緒に帰ってたから仁くんは好きな子と帰ったりできてないんだよね?私ばっかりいい思いして悪いし、仁くんがその人と付き合ったら諦められるだろうし。
「登校はどうするんだ?」
「それは一緒でもいい?」
「ああ」
やっぱり仁くんは優しいから私から言わないと好きな子と一緒帰ったり放課後に遊んだりできないよね。これまでごめんね。これからは独り占めはしないように気を付けるね。




