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13、縮まらない年の差


 蓮から春雪の場所を聞き出して俺は春雪を追いかけた。よく行く大福屋の前で春雪は店長と喋っていた。


「春雪!」


俺が叫ぶと春雪は荷物を持って走り出した。ったく、まともに顔を合わせるのも出来ねえのかよ。


横断歩道を渡ってもうすぐ中学校に着く辺りで春雪と同じ制服を着た女子生徒が手を振って春雪に駆け寄る。


「おはよう、沙理」

「おはよう。ところで、後ろのイケメンが春雪にナンパしようとしてるけど無視していいの?」

「その人ならナンパなんかしない。好きな人がいるからね」

「そっか~。春雪の知り合いさん、また今度」


そう言って女子生徒は頭を下げると春雪の腕に抱き付いて中学校に入っていった。


 俺は春雪の部活が終わるまで暇潰しをしようと駅内をてきとうに彷徨いていた。1時間半ほど歩いていると声を掛けられた。


「そこのお兄さん。ハンカチ落としましたよ」

「あ、どうも……って涼香(すずか)かよ」

「なに、ショボくれてんのよ」

「リア充には分からねえ悩みだよ。颯真とラブラブしてろ」

「まあまあ。昔、黄雛と莉央と私でよく行った公園行かない?ちょっと早いけど桜が咲いてるかも」

「確かに」


それから公園に向かった。まだ桜は全然咲いていなかったけど日差しが暖かくて心地よかった。涼香はベンチに座って梅昆布茶の缶を開けた。


「で、何があったの?」

「前に好きな子がいるって言っただろ?」

「黄雛の妹だっけ?」

「そう。5歳年下」

「へ~」

「へ~ってそれだけ?キモいとか思わないのか?」


俺が訊ねると涼香は頷いた。


「私の母さんと父さんは10歳離れてるけど別にキモいなんて思わないよ。2人が付き合い始めたの母さんが16で父さんが26のときだよ。まあ、母さんが未成年だったから親の許可はもらってたらしいけど」

「その、お父さんとお母さんは何か言われたりしてたのか?」

「まあ、知らない人からはちょっと言われたりしてたみたいだけど。金目当てとか、高校生に手を出してるとか。でも、2人とも理解くれる親友がいたって。その人達は今も仲良しだし」


理解してくれる親友か。黄雛とかは受け入れてくれるんだろうな。でも、春雪を傷付けるって分かってながら付き合うことは出ないな。


「そういえばさ、なんであんなところを彷徨いてたの?」

「春雪が蓮に伝言を預けてて好きじゃないなら関わるなって言われて。春雪に話をつけようと思って」

「……春雪ちゃんが部活終わるのっていつ?」

「もうそろそろだと思うけど……」

「じゃあ行くよ」


そう言うと涼香は俺の腕を引いて立ち上がった。


「え、なんで?」

「話つけるんでしょ。早く行くよ」

「無理だ。春雪に会って冷静に話せる気がしない」

「大丈夫よ。冷静じゃなくなったら私がビンタ喰らわすから」


ええ~、ビンタ喰らわすとか笑顔で言うんじゃねえよ。なに、なんなの。マジでこいつ怖いんだけど。


「颯真はどこに惚れたんだ?」

「さあ?私も気になるから今度訊いてみてよ」

「自分で訊けよ」

「無理に決まってるじゃない。ほら、一応、彼女なんだし。どこが好きなの?とか重いって思われそうだし」

「訊くのが恥ずかしいだけだろ。それかパッと答えられなかったら嫌だから訊けないとか?」

「……悪い?仕方ないでしょ。私の方が年上なんだし気を遣わせて好きなところを絞り出されたりされたらショックだし」


涼香はそう言って顔を背けた。本気で颯真のことが好きなんだな。俺も堂々と恋していいのか?それで春雪に迷惑を掛けてもか?


 それから中学校の近くまで来たとき涼香が足を止めた。目の前には颯真が立っていた。


「莉央先輩、涼香先輩。なんで、手を繋いでるんですか?」

「え、あ、これは……」


涼香が慌てて手を離して答えようとしたとき遠くから颯真を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お兄ちゃん!涼香さん!」

「沙理、」


お兄ちゃん、ということは妹なんだろう。女子生徒は走ってきて涼香に抱き付いた。


「悪い、沙理。ちょっと涼香先輩と話があるから待っててくれるか?」

「あ、うん」

「ありがとう。それで、なんで2人で手を繋いでたんですか?」

「俺がここに来るのをビビってたら涼香が引っ張って来たんだよ」

「なんで中学に来るのを怖がるんですか?それに何か用があるんですか?」

「それは……」

「疑いたくはないですけど答えられないってことは浮気ってことですか?」


ヤバい。言い方を間違えた。涼香はショックを受けすぎて何も言えない様子だ。すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「颯真くん、莉央くんは浮気なんてしないよ。絶対に。お姉ちゃんが傷付いたのを間近で見てたもん。だから莉央くんと彼女さんの話を聞いてあげて」

「春雪ちゃん。すみません、カッとなってしまって先輩の話を最後までちゃんと聞いてませんでした。もう一度話してください」


颯真はそう言うと頭を下げた。


「春雪に用があって。でも、話せなくて。彷徨いてたら涼香とたまたま会って、相談に乗ってもらって連れて来てもらったというか連れて来られたというか。」

「そうだったんですね」

「ああ。それと、これは言い訳になるけど手を繋いでたんじゃなくて腕を掴まれてた。しかも握力強すぎて腕に後が残るくらい。マジで骨が折れるかと思った。颯真も気を付けろよ」


俺が小さくため息をついて腕をさすると涼香に肘で突かれた。


「ってえ。何すんだよ」

「変なこと言うからでしょ。颯真は莉央と違ってそんなに貧弱じゃないから心配しなくても折れないわ」

「はい?それだと俺が貧弱みたいに聞こえるんすけど」

「そう言ってるけど」

「言っておくけど俺はこう見えても筋肉がついてる方だからな。なあ?春雪。俺の腹筋、結構固かっただろ?」


そう言って振り替えると春雪は顔を真っ赤にしてすぐに鞄で顔を隠した。


「莉央先輩と涼香先輩の誤解は解けましたから莉央先輩はもうこれ以上変なことを言わないでください。春雪ちゃんが可哀想です」


颯真がそう言ってため息をついた。


「いや、でも、春雪に話したいことがあって来たんだけど」

「じゃあ別の場所に行ってください」

「だってさ。結愛さんには連絡入れておくから場所を移動しようぜ」


俺は春雪の手を握ってその場を歩きだした。とりあえず、結愛さんにメッセージを送って電車に乗って兄貴のバイト先のカフェに行った。


「いらっしゃいませ。2名様、ご案内します」


兄貴には事情を伝えておいたのでカーテンで仕切れる席に案内された。


「カラオケか迷ったんだけどさすがに密室で2人は嫌かと思ってここにしたんだけどいいか?」

「え、あ、まあ」

「昼飯なに食べる?」

「ハンバーグランチ」

「じゃあ俺はパスタにしようかな。」


タッチパネルから注文をして料理が来るのを待った。その間、どれだけ話し掛けても春雪は黙っていた。そして、料理を食べ終わってデザートを頼んでいるとき、春雪がやっと口を開いた。


「ねえ、蓮ちゃんから何も聞いてないの?私からの伝言」

「聞いたよ。めっちゃへこんだ。反抗期だって言い聞かせたからなんとか耐えてるけどショックで泣くかと思った。」

「反抗期って。莉央くんはやっぱり、私のことを妹同然にしか思ってないんだね。ホントさ、あんまり優しくされると両想いって錯覚しちゃうからやめてほしい。好きじゃなくなりたいのに莉央くんと話すと好きになっちゃう。もうやだ。疲れるよ」


春雪はそう言うと切ない顔をした。


『錯覚じゃねえんだけどな』


「ん?なに?」

「はゆ、」


「お待たせしました~。ベリー&ストロベリーパフェです」


兄貴が春雪の頼んだパフェを持ってきた。タイミング悪すぎる。というか、意図的だな。顔に“やり返しだ”って書いてあるし。黄雛といたときに俺か春雪が邪魔したことがあったんだろうな。


 兄貴が出て行くと春雪は嬉しそうな顔をしてパフェを口に運んだ。


「美味い?」

「うん!めっちゃ美味しい!食べる?って言っても払うのは莉央くんだけど」

「あーん」


俺が口を開けると春雪は顔を真っ赤にしてかたまった。


「あれ?ダメだった?」

「いや、ダメというか好きな人に頼んでよ。私、他に好きな人がいるのに振り向かせれるほどの魅力が自分に備わってないのぐらい分かるし」

「そうか?俺は春雪以上に可愛い子は見たことないけどな」

「ってことは莉央くんの好きな人は美人系の人なんだ」

「俺の好きな人、教えようか?」

「無理。聴きたくない」


春雪が慌てて耳を塞いだ。マジで可愛すぎるんだけど。からかいたいけど嫌われそうだからやめておこう。


「ごちそうさま~。ありがとう!莉央くん!マジで神!」

「料理に負けた気分」

「なんで?」

「なんとなく。」


それから会計をしてカフェを出た。


「これからどこか行く?」

「帰る。」

「カラオケ行かね?」

「無理」


うわ、即答。割と傷付くな。無意識に春雪の頬に手を当てていた。すると後ろから声を掛けられた?


「会長じゃん!何やってんの?こんなところで。あ、もしかしてそっちは妹さん?」

「麻耶。なんでここにいるんだ?」

「だってうちの近所だし。てか、妹2人もいたの?」

「いや、春雪は」

「幼馴染みの蒼井春雪です。まあ、莉央くんの妹みたいな存在なので認識は間違ってないです」

「いいな~、会長。こんな可愛い妹が2人もいるなんてホント真央と2人を交換してほしい。蓮ちゃんはダメだったし春雪ちゃんが真央と結婚すれば2人とも妹になるんじゃ」


いや、何言ってるんだ?俺の後輩はどれだけ妹に飢えてるんだよ。まあ、だとしても……


「春雪は誰にも渡さねえよ」

「莉央くんってホント勘違いさせるの上手いよね。この天然タラシ」

「はあ?なんだよ天然タラシって。俺は別に思ったことしか言ってねえけど」

「そういうところがタラシだって言ってんの!」


春雪はそう言うと駅に向かっていった。


「じゃあな、麻耶。真央にもよろしく」

「はいは~い」


麻耶に手を振って春雪を追いかけて一緒に電車に乗った。


「ホントさあ、好きじゃないくせに優しくしないでよね」

「……」


電車を降りて家までの帰り道、無言の中俺は口を開いた。


「さっきのことだけど好きじゃないくせに優しくするなって言ってただろ?」

「うん。好きな人に他の人が好きって勘違いされるよ」

「じゃあ、好きなら優しくしていいんだよな?」

「そうだよ」

「じゃあ、俺が春雪に優しくしても問題ねえな」

「うん……はあ!?言っておくけど恋愛的な好きだよ!?」


春雪が振り返って叫ぶ。ホント可愛い反応。


「うん。俺、春雪のこと好きだから優しくしてもいいよな?」

「待って!好きな人は!?てか、私のこと振ったじゃん!」

「好きな人は春雪だ。断ったのは春雪が周りから色々言われるんじゃないかと思ったから」

「……えっと、莉央くんは私が好きなの?」

「ああ。大好きだぞ」


春雪は顔を真っ赤にすると俺に背中を向けた。


「可愛い」

「へ!」

「うん。可愛い。」

「莉央くん、キャラ変した?」

「心の中を声に出してるだけ」

「あのさ、莉央くんは私と付き合うの?」

「さすがに今の年齢で5歳差は犯罪ギリギリだからな。春雪が高校生になってまだ好きでいてくれたら俺と正式に付き合ってくれるか?」

「うん。莉央くんが私のことを好きでいてくれたら付き合う」


春雪はそう言って俺に抱き付いた。


「まだ付き合ってないんですけど」

「いいじゃん。お姉ちゃんになら何度も抱き付かれてたんだし」

「黄雛と春雪は全然違うけど」

「えへへ」


それから家についてすぐに蒼井家に行った。


「結愛さん、大和さんって帰ってきてますか?」

「え、まだだけど。いつも夕方まで帰って来ないし。大和になんか用?私が伝えようか?」

「いえ、俺から伝えないといけないので」

「まさか、春雪と付き合ったとか?」

「付き合ってはないです、まだ」

「へ~、まだ、ねえ」


結愛さんがニヤニヤと笑って俺の顔を見た。


「お母さん!莉央くんに変なこと言ってないよね!?」

「春雪が嬉しそうに鼻歌歌って階段をスキップして転びそうになってなんとか耐えたことは言ってないよ」

「それを言わないでほしかったのに~!恥ずかしすぎて爆発する」

「やめてよ。壁紙換えたばっかりなのに」

「お母さん、心配するところが違うよ」


春雪が真っ赤な顔を俺の胸に突っ込んで顔を隠すようにして言った。


「付き合ってはないんだよね?」

「付き合ってないですよ。春雪のことは好きですけど、春雪が高校生になるまでは付き合いはしません」

「じゃあ、手は出さないってこと?」

「ハグくらいならするかもしれないですけど、少なくとも俺からは黄雛にしないようなことは付き合うまではしないつもりです」


俺がそう言うと春雪が顔をあげた。


「え、じゃあ、手を繋いだりデートしたりは出来ないってこと?」

「まあ、2人で出かけるくらいなら黄雛ともするから出来るけど、手は繋がないから出来ないな」

「え~、今までと変わらないじゃん」

「いや、変わるだろ。これまで2人で出掛けたりしたことねえし。黄雛は荷物持ちによく駆り出してたけど春雪はそんなひでえことしねえからな」


そう言って春雪の頭を撫でると春雪が俺の手を握った。すると、話を聞いていたのか階段から下りてきた黄雛が俺に笑顔を向けた。


「いつも逆ナンから助けてあげてるのはどこの誰だと思ってるの?」

「そうですね。すみません」

「よろしい。それで、春雪となにイチャついてんの?私にしないことは春雪にもしないんじゃないの?」

「“俺からは“な。春雪からしたんだから約束を破ったことにはならねえだろ?」


俺がそう訊くと黄雛は黙り込んで結愛さんは頷いた。


「でも、それだと春雪からキスされたら受け入れるってこと?」

「さすがに止めますよ」

「なんで私がキスする前提!?さすがに付き合ってもないのにしないよ!?」


春雪は慌てて答えた。春雪の頭を撫でて謝ると許してくれた。


「とりあえず、大和さんが帰ってくるのを待ってもいいですか?」

「いいわよ。早く帰ってくるように伝えておくわね」


結愛さんはそう言うと家にあげてくれた。マジで元ヤンなのか疑いたくはなるくらい穏やかな人だよな~。昔はキレられるのが怖すぎてイタズラなんて20回ぐらいしかしてなかったのにな。


 それから6時頃になると大和さんが帰ってきた。


「おお、莉央。どうした」

「お話があります」


大和さんと結愛さんに向かい合うように俺と春雪は席に着いた。


「なんか、嫌な予感が。今じゃないとダメか?」

「はい」

「じゃあ、ちょっとトイレに」

「大和、逃げんな」

「はい」


立ち上がっていた大和さんは大人しく座り直した。


「俺、春雪が好きです。なので春雪が高校生になったら付き合いたいと思います。でも、そのとき俺はすでに成人しているので黙っているわけにはいかないので先に許可を頂きたいです」

「ちなみに私は許可したから大和だけよ」

「無理に決まってるだろ!」


大和さんは立ち上がって俺の隣に立った。そして上から俺を見下ろした。


「春雪はもっとたくさんの人とこれからも出会う。それは莉央も一緒だ。春雪が高校生になるまで他の人を好きにならないとは言いきれないだろ?気持ちは変わるんだ。」

「確かに、気持ちは変わるので春雪が高校生になるまでずっと好きでいるとは言いきれません。でも、初めてなんです。初めて、人を好きになったんです。もし、他に好きな人が出来たら隠したりしません。だからどうかお願いします」


椅子から立ち上がって頭を下げると春雪も同じように頭を下げた。すると後ろから黄雛の笑い声が聞こえた。


「莉央がそんな必死にお願いする姿とか初めて見たんだけど!いつも言いたいことがあっても我慢して言わないくせに」


大和さんは俺の肩に手を置いて顔を上げろと言った。


「本気で、春雪が好きなんだよな?」

「はい」

「春雪は後悔しないか?」

「今ここで許してもらえなかったら告白したことを後悔する」

「っ、分かった。莉央、もう一つ約束がある。」

「はい」

「付き合うなら結婚を前提とする事。それだけの覚悟があるなら許可をする」

「はい」

「言っておくけど許嫁になるからにはユリアと叶多(かなた)にも報告して書類を書かせるからな」

「はい」


いまいち状況を分かっていない春雪が許嫁という言葉を聞いた瞬間え!と叫んだ。


「許嫁って結婚するってこと!?」

「春雪は嫌なのか?俺としてはどこの誰か分からん奴よりは叶多とユリアの息子で幼馴染みの莉央の方がよっぽどマシだからいいと思ったんだが」

「全然!全然嫌じゃない!」

「そうか。言っておくが莉央、少なくとも高校に上がるまでは手を出すんじゃねえよ。高校生になったら俺が言えることじゃねえから目は瞑る」


大和さんはそう言って俺を睨み付けた。


「分かりました。」


手を出すなって言われたってどこまでが手を出すになるか分からねえんだけど手を繋ぐとか抱きしめるくらいならいいってことか?


 それから母さんと父さんが帰ってきて大和さんが作った婚前契約書に署名した。条件は


・どちらかが別の人を好きになったら即刻契約を解消する

・莉央は春雪が高校に上がるまでは一切手を出さない

・周りの混乱を防ぐため婚約については他言しない。そして、誰かに知られた場合も契約は解消する

・以上のことが守られない場合も契約は解消する


の4つだ。


「お父さん、一緒に出掛けるくらいならいいの?」

「それはいいぞ」

「良かった」


春雪はそう言って笑った。俺の気も知らないで呑気に笑ってるな。春雪が高校生になるまであと丸二年あるんだな。


「まあ、とりあえずこれからよろしく」

「うん!学校中に自慢したい」

「早速、契約解消するつもりか?見ろよ、大和さんの嬉しそうな顔」

「ホントだ。気を付けないと」


春雪が慌てて両手で口を塞いだ。大和さんはすぐになんでも話す春雪の性格を考えた上で誰かに知られたら解消するって条件も付けたんだろうな。多分、この感じだともって一年、早くて2ヶ月で解消になるだろうな。


「それにしても莉央がはゆちゃんを好きだったなんて驚いたわ」

「ユリアは鈍感よね。潤と黄雛が付き合ってることも気付いてなさそうだし」

「え~!そうなの?叶多は知ってた?」

「知らない。潤はすぐに彼女変わるから。」

「でも、黄雛とは半年以上付き合ってるわよ」


結愛さんがそう言うと母さんと父さんが俺の顔を見た。


「知ってたのか?」

「まあ」

「言ってよ。私、潤は一生、2ヶ月でフラれる運命だと思って不安だったのに」

「さすがにそれはねえだろ」


まあ、30人近くの人と付き合って全員に2ヶ月経たずにフラれてたら多少は心配にもなるか。


「黄雛、これからも潤を末永くよろしくね」

「え、うん!」


それから約1時間後。


「じゃあ、そろそろ帰るか」


父さんと母さんが立ち上がって荷物を持った。


「そうだな」

「莉央くん、もう帰るの?」

「春雪は明日、始業式だろ?早く寝ろよ」

「じゃあ今日はゲームしないの?」

「明日、帰ってきたらできるだろ?」

「約束だからね」


春雪が小指を出して言った。


「じゃあ俺からも約束。マジで、誰にも言うなよ。颯真の妹にもちゃんと隠せよ」

「分かってるよ。破ったら契約解除だもんね」

「そうそう。じゃあな」


俺は春雪の頭を撫でて蒼井家を出た。マジで心配だな。春雪が自分で言わなくてもなんかがあったってことはすぐに態度にでるからバレバレだろうし。でも、そういうところが好きなんだよな。

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