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 なぞなぞ。大人になってその言葉を、更にこの男、大男・長石が提示するとは意外だったけれど。

 

 はてさて、そんな提案をするのは、大人になってから、久しく、スフィンクスくらいだけれど、如何。


「なぞなぞ、謎解きは考えてからの遊びですから。抜かりなく、考える事は多いですし、先にキンジ君の思考メーターを枯らす事だって出来るのではないですか?」


 思考メーターって、MP多い目の敵キャラなのか、僕はそれほど厄介なキャラクターなのか。メーターを気にされるくらい。


 いや、違うか、それほどまでに危険な作業態度だとそう言いたいのだろう。考え事の危険性を、その裏返しだ。


「なるほど、謎解きね。悪く無いんじゃ無いか」

 提案に対して、カツ。


「それではなぞなぞ、謎解きですか。始めましょう」

 スタートを告げる長石。


「始めるにあたり、改めて自分は気にしますけれど、あと一人来ていないようで、どうしますか?」


 あと一人来ていない。一人というのは、いつもの5人組のあと一人であろう。


 僕、イゾウ、カイシュウ、長石、アキラ。これがいつものメンバー。今は、アキラがいない。

 長石を中心にして、北に僕、東にイゾウ、南にカイシュウ、西にアキラ。同僚であり、隣人。


「あぁ、アキラなら用事があるとか何とか、管理の偉い様方が言ってたぜ」

 と、イゾウ。


「そうですか、それは残念です。しかし、では自分から、出題させていただきます。題名は『四面楚歌!ジェノサイダー隣人』と、そう言います」


「四面楚歌…えっと何だって?」


「『四面楚歌!ジェノサイダー隣人』です、イゾウ君」

「では、内容に移りましょうか。それでは始まり始まり」


4

 これは本当にあった話。有名なある荒廃した町の、ある一画での出来事。


 そこは、『空き地』と呼ばれる地域で、ビル群が立ち並ぶその地域に打って変わって、表層には、一つの入り口がたたずむだけの広場がある。


 有名なある荒廃した町。この言葉の羅列、変な感じはするだろうけれど、それも仕方ない。有名であるのに、荒廃しているこのような小さな矛盾が生まれるのが、あの町。


 『シーハイニュータウン』。太平洋側に出た港を大きく埋め立てて、海を奪った新都市として名前が売れた町のこと。


 『シーハイニュータウン』は人口増加と、大都市の極化を避ける為を想定された都市だったのだが、それは水の泡となった。


 まあまあ、待てよイゾウ君。なぞなぞ、謎解きには場面制作は重要なんだ。リアルにある都市でも、意外に知らない事ってのはあるし、知らない人ってのもいるでしょうから。


 『シーハイニュータウン』は無駄となった、いやそこまでは言わずともだが、一極を担う大都市には程遠いのがリアルだ。


 水の泡。理由はたったの一つ。ただ、増えた人口の質が悪かった。

 本島より橋を渡って行かなければいけないニュータウンには、今ある大都市の代替としては弱く、そして、ある人種にはリゾートすぎたのです。


 そのある人種たちというのが、いわゆる法の外に住まうものたち、つまりのアウトサイド達である。


 人が遅々として土地を、建物を買っている間に、彼らは先にまさに魔の手を広げていった。気がつけば、コンビニに行く事も命懸け、戦々恐々の水上都市の完成となってしまった。


 安全上の規定も、それを維持する団体も侵入不可能。牢獄よりも自由で、牢獄よりも危険な地域と化した。


 そこの『空き地』という一画があるのです。

 先ほどの説明の通り、ここは都市を想定されて作られた、ベッドタウンではない、車軸のニュータウン。そのため、広がるのは、一面のビル群。


 さぁ、そこにあるただの空き地が何故、不思議か分かりましたか?

 では何故、そんな不可思議が。という事ですけれど、説明されれば簡単なのです、単純に地盤沈下が影響しているようです。埋立地ですから、抜かりあった、泥濘(ぬかる)んだ土地だったという事です。


 高級集合住宅。その最上階、屋上の扉だけが地表に現れて、残っているという訳です。

 さて、ここからが本題です。ここまでは場面設定ですから、内容に入ります。


『四面楚歌!ジェノサイダー隣人』。これには、四人の殺し屋と、一人の何者かが出演します。


 四人の殺し屋。

 一人は悪名高い剣客けんかく北野きたの黒刀こくとう

 一人はマッドサイエンティスト・東尾ひがしお青薬(せいやく)

 一人は早撃ちのガンマン・南原なんばら銃赤(がんせき)

 一人は爆弾魔・西方にしかた爆白(ばくはく)


 彼らはすべて、この空き地の住人だった。

 もちろん、殺し屋だからといって、皆殺しが趣味ってわけじゃ無い。頼みがあれば、人を殺し、それ以外はしないそういう奴らだ。もれなく、彼らもそうだった。


 しかし、殺し屋だった。離れずの関係。呼ばれずとも、集まるのが習性というか、何かに誘われるように、皆が近くにやってきた。

 我々のように隣人であった。


 そして、殺し屋であったが人間だった。奴らは嫌いな奴がいた。4人全員がある一人の人物を嫌いだった。


 剣客はその一つ下の人物を忌避して、科学者はその左側の人物を呪って、ガンマンはその一つ上の人物を睨みつけ、爆弾魔はその右側の人物を空想上で爆破する。


 何者も情報の共有をしないままで、彼らは嫌いあっていた、何者かを。


 事は安寧で、睨み合いのままで終わる事は無かった、離れずの関係ではあれど、離れたいなら殺すのが彼らのやり方。


 ある一日。彼らは全員が動いた。対象の人物が、その日、部屋から出るというを察する事が出来たから。奇襲、彼らは正当なもの達では無い、決して無い。方法も青天井、際限なく、ズルなどない。


 そして、彼らは誰ともなく、部屋を飛び出して、意気揚々と人殺しのために出発して、そして、その日に死んだ。

 全員が、メチャクチャな状態だった。


 誰も生き残らなかった瞬間の大戦争だったが、生き残りが一人だけいた。


 隣人。皆殺しの隣人、ジェノサイダー隣人だった。

 しかし、おかしな事なんだ。肉片の少しどころか、血の一滴すらも残らずだったというのだ。


 四人の殺し屋を殺したジェノサイダー隣人。それはその日を持って、一片の証拠を残さず消え失せたという事なんだ。



 

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