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第一話 ザ・ドロッパー

ねこねこです。

受験勉強してます。

 ***




 私は国内有数の大企業を一手に担う父を持った。

 巨額の資産を、なんの苦労も無く手に入れた。

 持ち前の要領の良さで、資産は膨れ上がった。

 ーーー私は紛れもない強者だった。




 ーーーーーーーーーー 




 私が本当に、本当の本当の本当にハマっていたゲーム…それが、『Throne Honors Era of revolution』、通称”THE(ティーエイチイー)”である。これは平たく言えばストラテジー系、さらに言えば建国ゲーだ。

 数ある種族の中から自身の種族を選び、その種族の中で王となった所から話が進み出す。自身の強化はもちろん、部下の強化や交配、他種族の征服、合併などを行なって、小さな村を強大な国家へ育て上げる、そんなゲームである。また、最終的には人間、というより人類との戦争を行うことになる。ちなみにその時は人類以外の全ての種族が自分の下に付いている、というなんとも壮大なゲームである。

 

 ぶっちゃけ超絶課金した。それはもう課金した。


 このゲーム、人類に勝利するまでが「一周」であり、育成し終わった国家はその完成度や強度、死者数などにより評価されることになる。例えば人類滅亡、死者20万、国民数500万、内戦回数1、文明強度1600ならば大体AランクからSランクである。ちなみに文明強度とは地球の歴史が参照されており、文明強度1600ならば西暦1600年代程度の文明を築くことができた、ということになる。

 …このゲーム、とりあえずクソほど面白いのだが、課金しないことには最初の3周は領地の拡大もままならず、国家が崩壊して終わりだ。逆に言えばある程度課金することでそれぐらいのことは行えるわけだ。

 ちなみにここまででも普通に面白いわけだが、勿論最大限にこのゲームを楽しむ上では更なる課金が必要となる。




 その課金コンテンツの名はーーー

 

 

 

 ーーーーーーーーーー




 「ちょっと…ネフィリアったら…起きなさいってば」


 「………えぅ…うん…うぅぁ…起きてる…」


 「起きてんなら起きなさいよ!もう、お母さんたち行っちゃったじゃないの」


 …硬いベッドだ。

 私が買ったベッドの、頬に吸い付くような最高級の柔らかさは一体どこへ行ったのか。

 どこか違和感がある。そういえばクーラーをガンガンに付けて寝ていたはずだし、そういえば高校時代の名残のジャージを着て寝ていたような気もする。


 ーーー全部、無い。空調のくの字もなく暑いその部屋と、ジャージが比較にならないほど着心地の悪い…服のような、布のような…タオルのような…


 「ーーーえっ」


 「おわっ…いきなり起きないでよ…びっくりしちゃった」


 「私…何、これ、えっ」


 「…?何?ねえ、早くご飯食べよ?待ってんのよ、アンタの事」


 「ーーー…嘘でしょ…ねえ…」

 

 

 床に無造作にしかれた布。


 窓枠だけの窓。


 布を腕と足が通るように切っただけの服。


 木造の壁、床、テーブル、椅子、その他。


 

 ああ、これ…



 ーーーTHE、だ。




 涙が溢れた。


 THEの世界に入り、自身の手で国家を育成し、部下を、敵を、世界を、全てを飲み込む。

 何度夢想した事だろうか。そのためにならば死んでも構わない、そんな決意ともいえるものすらあった。


 …死、か。

 

 たった今、私が前世で死んだ理由(・・・・・)を思い出した。

 私は無力な弱者だった。

 父の会社は倒産、何もかもを無くし、父は自殺。そして理解した。私は父がいないと何も出来ない、本当の弱者だった。その後、私は父の後を追うように自殺した。

 もしも次があるなら…と、考えながら。


 “次“は存在した。最高の形で。


 

 

 「ちょっとアンタ、泣いてんの?………よしよし」


 「…う…」


 この、恐らく私の姉だと思われる女性は、柔和な笑みと共に私の頭を抱きしめて撫でた。

 不思議と心に平静が戻ってきた。…恥ずかしいので、もう二度と人前で涙は流さないと誓う。


 「怖い夢見たの?ねーちゃんがいるから大丈夫だよ」


 「…いや、そうじゃないけど…ありがと」


 「もう、強がりなんだから。ほら、朝ご飯食べよう?」


 「うん」




 私のTHE(物語)が、始まった。




 ***

受験勉強してるってことは、頻度超低です。

がんばります。

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