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コピペ悪魔

 母親から聞き出した情報としては。母の名前はイセリナ、25歳、隣の騎士の名前はカルマ、26歳。カマセは5歳。

 二人は幼馴染でカルマは幼いころからイセリナに仕えていたらしい。血縁はないらしい。

 ということは托卵は確定だろう。カマセはトンスコンの本当の子供ではない。これはカマセが自称していた時期領主も本格的に怪しく思えてくる。

 これだけ似てればいずれはトンスコンも気が付くはずだ。ゲームのカマセは何故か生きていたけどイセリナ達は殺されているのかもしれない。


 イセリナはトンスコン5番目の妻で、前の妻たちはみんな死んでしまったらしい。

 噂ではトンスコンのハードなプレイに耐えきれず殺されたという話もあるらしい。幸い現在までそんなことはなく無事でいるがカマセがカルマの子と分かればそのハードなプレイで殺されるかもしれない。


 現在トンスコンの世継ぎ候補は4人(ユーリは奴隷だからか女だからか除外されている)いるらしい。


 第一候補はカミュ。4人の中では一番年上、17歳。病弱だが聡明な人物とされている。子供のころから長くは生きられないだろうといわれており、いつ死んでもおかしくないらしい。


 第二候補はカマセ。一番年下ながら現在のトンスコンの正妻の子供であることと、カミュは近いうち死にそうだから実質的に第一候補らしい。


 第三候補はリアル。15歳。トンスコンと町娘との子供で本来時期領主としての立場はなかったが、あんまり他の候補が死ぬものだから急遽連れてこられたらしい。10歳までは平民として暮らしていた。彼が死んだらまた別の平民の認知子が連れてこられることになる。実際そうして何人かなくなって今の第三候補がたまたまリアルと言うだけのようだ。

 トンスコンが胎ませた子供は平民を合わせれば1000を超えるんじゃないかと言われている。どんだけだよ。カマセにもしものことが起きたためのスペアみたいな存在のようだ。


 第四候補はナマ。彼の存在は謎が多い。長兄はカミュのはずだが、実はナマの方が年上なのではないかともいわれている。出自も不明だがトンスコンの実の母との子供であるとも姉との子供であるとも言われている。別館の搭に閉じ込められており人とはかけ離れた異形の姿ともいわれている。夜中になると人の者ではないような叫び声が聞こえるとか、満月の夜には子供を生贄に捧げなくてはいけないとか言われている。


 第四候補に明らかにやばいやつがいるのですが…倫理的にも生物学的にも。異形の姿っていうのは近親でできた子供だからってことだろうか。現実にはちょっと精神に異常をきたすくらいでそこまでグロイ者は生まれないそうだけれどもそこはゲームだしな。そこは近親婚はいけませんという教訓めいたものが込められているのかもしれない。知らんけど。もしかすると一番長兄の可能性もあるである彼が第四候補なのは永遠に候補なだけで絶対に世継ぎにはならないという意味なのかもしれない。仮にカマセ、カミュ、リアルがしんでもトンスコンと平民の子供がいくらでもいるので代わりに世継ぎ候補となる。ナマが世継ぎになるとしたらそれも全員死んだときか。さすがにそんな時は来ない、はず。


 トンスコンの子供たちを殺した犯人は誰かと考えると一番怪しいのはやはりカマセの後見人だろう。イセリナかカルマ。次はリアルか。リアルの前にも何人か平民との子供が召し抱えられていたそうだがリアルでそれが止まって5年くらいたつらしい。リアルにも後見人がおり、そいつらが次の領主として暗躍している可能性はある。その次はナマ。事件が起き始めたのがナマの存在が公式になった時期と一致している。ナマが世継ぎになることはなさそうだが、そんな知能があれば100人も殺し続けないともいえる。一番可能性が低いのはカミュだが、ミステリーだと一番可能性が低いやつが実はというのが定番なので油断はできない。カミュの傍にはユーリという存在もいる。彼女が暗躍している可能性もなくはない。


 イセリナ曰くトンスコンは俺の事を溺愛しているとのことだが、それはちょっと贔屓目が入っているのではないかと思う。確かに俺が階段を落ちたことに激高してメイドの頸をはねるほどであったが、俺がそれを見て取り乱して特に反応していなかった。普通の両親が子供に注ぐような愛情とは意味の異なるものなのかもしれない。普通の両親とは違う愛情と言うと母親もそうだろう。確かに俺に愛情を抱いてはいるが、次の領主にしたいという打算めいたものを感じる。トンスコンへの俺への愛情も何かそういうものが含まれているのかもしれない。


 イセリナはすっかり気分が良くなってメイドを殺すとか言ってたのは忘れているようだ。

 メイドの好感度もあげておいた。だがそれではいそうですかとメイドを助ける話にはならなそうだ。


 この世界では庶民は取るに足らない存在らしい。それを必死に助けることを願うのは貴族として可笑しいみたいだ。

 それにイセリナはトンスコンのことを恐れてもいる。トンスコンにものを言うようなことはできなさそうだった。

 メイドを助けるにあたって正妻であるイセリナの口添えがあればうまくいくのではないかと考えていたのだがそう簡単にはいかなそうだった。

 なら発想を変えるか。メイドを殺すことがカマセの敵にとって都合が良いことだと誘導するか?


「護衛している観点から考えると、もし僕を突き落としたものがいるとしたら誰の可能性が高いですか? 」


 ここはカルマに聞いてみることにする。

 おそらくカマセの本当の父親だしあまりからみたくないのだが、さっきからイセリナはあまりにも感情的な意見ばかりで辟易していた。自分が気に入らないからでこいつが犯人とはいいそうだ。客観的意見が聞きたい。


「恐れながら…それはナマ様でしょう。ナマ様がトンスコン様の子供を殺して回っているのは半ば公然の噂です」


 あら? そうなの。

 意外な答えだ。実を言うと一番可能性が低いかと思っていた。聞いた話ではナマは人とは違う異形の存在だという。知能も人並みにあるか怪しい。他の子供たちを殺したのは兎も角、カマセを階段から突き落とすなんて器用な真似はできないと思うのだが?


「あくまで噂ですが、トンスコン様ご自身で子供たちをナマ様に与えているという噂もあります」


「そんなことあるわけないでしょう。適当なことを言うのは不敬よ」


 イセリナが咎めるが


「不敬は承知です。ですが私は奥方様に傷ついては欲しくありません」


 カルマはまっすぐにイセリナを見つめる。対するイセリアは少し煩わしそうにカルマを見る。


 おやおや?


 イセリアと不倫関係にあるらしいからとんだ屑かと思っていたがそれなりに忠誠心はあるらしい。しかもこいつらあんまり肉体関係があるようには見えない。


 そこは大人だからあからさまにそういう関係にあるというのは隠せるということかもしれないけど。今の俺は見かけは子供だし油断してそういう片鱗が見せてもよさそうだと思うのだが、今のところ忠犬とご主人様の間柄にしか見えなかった。


「ナマ様はトンスコン様と最も親しい間にあった者との子供です。愛情とは別の何か特別な思いがあるのかもしれません。勿論最も愛しておられるのは奥方様とカマセ様だとは思いますが」


 一番愛してるのはカマセとイセリナだということを念押しして非常に丁寧に進言している。さすが幼馴染。イセリナが熱しやすい性格を熟知していて刺激しないように発言しているようだ。


「では、カルマはナマがカマセを突き落としたと考えているの? 」


「いえ、ナマ様には契約している悪魔がおりおそらく彼が…」


「それは僕の事かな? 」


 どっから出てきたのか紫髪の少年がひょっこりと現れる。

 紫の紫の瞳。目は爬虫類のように縦に割れており、ひつじのように渦巻の角が生えている。見るからに悪魔だった。


「誰なのこの子? カマセの知り合い?」


 怪訝な顔をするイセリナ。一方カルマはすぐさま反応して守るように俺とイセリアの前に立つ。


「僕の主様を随分な言いぐさじゃない? 僕の事はいいとしてそれはちょっと看過できないかも」


「不敬なのは貴様の方だろう? ここはカマセ様のお部屋だ。誰の許しを得て入った? 」


 気勢を張っているがカルマの顔は青い。首元には大粒の汗が浮かんでいる。どうやら危険な相手であるらしい。彼にとっては。


「ちゃんと許しは貰ったよ」


 少年は扉の方を指す。部屋を護衛していたはずの兵士がとろんとした瞳で立ち尽くしている。

 明らかに普通ではない。心を操られているといった風だ。


「僕はアスモ。ナマ様の使者さ。ナマ様は大切な弟が怪我をしたと聞いてそれは心配しておられたんだよ。だから代わりにね」


 ウインクして見せるアスモ。場違いな明るさ。彼なりに大物感を演出しているのかもしれない。


「お気を付けください奴は悪魔です」


 見ればわかるが注意を促すカルマ。


「悪魔ですって!? 」


 驚愕するイセリナ。いや今初めて気が付いたんかい!

 あからさまに悪魔の見た目なのに気が付かなかったり、俺とカルマの顔が似ているのに気が付かなかったり、この世界の住人は何か認識疎外の魔法でもかかってるのだろうか?


「失礼しちゃうな。悪魔だなんて。僕はただの魔だよ。ナマ様の使い魔さ。悪魔じゃない。魔とは即ち純粋なエネルギーに過ぎない。それに善悪を付けたのは人間たちだ」


「ああ…」


 気を失うイセリナ。抱きとめるカルマ。

 なんかイセリナやカルマはものすごい強敵に対峙したみたいな反応をしてるしアスモも強者の余裕を醸し出してはいるが…

 俺はこいつを知っている。そりゃもう見飽きるほど見た。リセマラの時に。彼は☆3の悪魔。通称コピペ悪魔だ。髪の色によって属性魔法が分かるようになっている。カラーリングが違うだけで10種類以上同じキャラがいるのでついたあだ名がコピペ悪魔だ。他にも人間種にも亜人種にもコピペ種族はたくさん存在している。☆3にそんな沢山キャラデザ用意していられるかということだろう。

 つまりこいつは雑魚だった。

 ガチャは300年前の戦士しか現れないがこいつらも表れる。しかし普通にプレイしててもこいつらを仲間にする機会は訪れる。これは何を意味するかと言うと。300年前にも現在にも同じキャラが腐るほど存在しているという設定ということだ。

 事情を知っている俺としてはそんな何処にでもいるキャラのくせにいきられてもいまいち危機感がわかない。


「君は強い子だね。僕を前にしても怖気づかないなんて」


 でもまぁカマセなんて☆1のキャラだしカルマもこのビビりようだと☆2くらいの力量なのだろう。相対的には脅威ではある。

 脅威ではあるが、もし俺がこのゲームをプレイしていたら噴き出していたかもしれない。☆3のくせにめっちゃいきってるし。


「なんだろう。君からものすごい失礼な感じを受けるよ?」


 俺は何とか心を引き締めようと努力した。トンスコンの時だって☆3だからと油断してたらメイドの頸をはねてきたのだ。この世界では☆3でも十分強いのだ。危機感を持て俺。


「あまり舐めていると殺しちゃうかもよ。もちろん冗談だけどね」


 ああでも駄目だ。ふいてしまいそう。

 ただの☆3ならまだしもこいつコピペ種族だしなぁ。


 しかしこいつの髪の色は紫か。紫は確か状態異常属性だったはず。もしかするとカミュが病気なのはこいつが関係しているのかもしれない。俺は余裕がありすぎてそんなことを考えていた。


「どういうことだ? 」


 一方のカルマは極限までびびっていた。見ていて可哀想なくらいだ。


「先生は守ってくださるのではなかったのか? 」


 先生? 何やら意味深な言葉をもらしている。

 イセリナ達にも協力者がいるということだろうか。

 正史では最終的に生き残るのはカマセサイドだし、彼らにも強力な協力者がいるということかもしれない。基本的には味方とはいえ、真実を知りたいなら彼らの情報も鵜呑みにすることはできないのかもしれない。


 リセマラ完了の時に☆3のコピペ悪魔は一緒に獲得していた。ヴァルキリーアーマーと一緒に。この世界にあの時出たキャラや魔道具が関与しているならこの先生というのもそれに絡んだ存在かもしれない。☆6確定ガチャの内訳を思い出す。

 ☆3キャラが3人。☆5キャラが1人。☆6キャラが2人。☆3魔道具が2つ。☆4魔道具が1つ☆6魔道具が1つ。内訳は


☆3キャラ、紫のアスモ。怪人エンドー。魔女メロ。


☆5キャラ。深緑の聖女ユリッペ。


☆6キャラ。方舟を燃やす邪神ノーレア。黄金創世竜王エクセリオルドラゴン。


☆3魔道具。ヴァルキリーアーマー。妖刀カラスマル。


☆4魔道具。電磁スパークランス。


☆6武器1つ。三種の炎剣。


 魔道具が存在するなら是非とも確保しておきたいところだ。装備はできないと思うけど電磁スパークランスは初級全体魔法と同じ効果があるし三種の炎剣は特級単体魔法と同じ効果があったはずだ。ちなみに特級は初級中級上級ときてその上にあたる。

 キャラに関しては300年前の戦士だけにアスモみたいな人外でないとこの時代にはいないかもしれない。邪神とか竜王とかならいけそうな気もするけど、設定では死亡しているはずだ。逆に顕現できているのならナビ子が絡んでいるということになるだろう。


「まぁ安心してよ。君たちは殺さないでおいてあげるよ。君が世継ぎになることはありえないからね。なにせ」


 意味ありげに俺とカルマを見るアスモ。

 どうやらはカルマがトンスコンの子供ではないと気が付いているらしい。

 カルマは全く理解できていないようだが。


「それに今回僕は本当に見舞いに来ただけなんだよ。今回の件は僕たちがやったことじゃないと断っておこうと思ってね。なにしろカマセは正妻どのの子供だからね。僕達も殺していい相手は選ぶのさ」


 そういうとアスモは踵を返す。


「それじゃあね。バイバイお兄ちゃん達」


 お兄ちゃん達と言っても俺は見た目アスモより年下なのだが、それを見抜いての事だろうか? たんに言葉のあやだろうか?

 散々馬鹿にしていたが、見抜いていたとするなら中々油断ならない相手ということになる。

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