表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/52

プロローグ『とある研究員の手記』

 『ゾンビ』という名を君たちはご存じだろうか。それは死体のまま蘇った亡者の総称であり、映画や漫画などでいくつも題材にされた存在だ。

 噛まれた人々もまたゾンビとなり、パンデミックとして日常を破壊する。その発生理由は作品によって様々で、ウイルスや寄生虫や宇宙人による外的要因など多岐に渡る。


 しかしそれらは、あくまで創作物の世界にしかない。

 きっとこの手記を読んでいる君も、そう思っている……いや、そう思っていたはずだ。

「アガアァ!! グラオォ!!」

 バンバンと激しく扉を叩く音と、奴らによる死の呼び声が聞こえる。どうやら私がここに隠れていることがバレてしまったようだ。


 ゾンビとなった者たちは人間本来が持つ力の枷が外れ、恐ろしい怪力と嗅覚聴覚を持つようになる。その肉体は腐り落ちても果てることなく、脳を欠損させなければ半永久的に動き続ける厄介な怪物だ。

 もし外に出てしまえば、瞬く間に世界を埋め尽くすのは目に見えている。


 ゾンビ研究所の一研究員として、今回の事件の詳細を知りたいと切に思う。発端は不明だが、完全管理されていたゾンビ因子が研究所内に蔓延したのには確かな理由があるはずだ。

 他国からのスパイ工作によるものか、世界の滅亡を願う悪しき者の仕業か、どちらにしても尋常ならざる悪意によるもので、間違っても事故などではないはずだ。


「……どうかこの原因を究明し、世界に平和が続くことを祈っている」

 そう文章を閉じた瞬間、部屋の扉がゾンビに打ち破られた。勢いのまま雪崩れ込んでくる死体の群れを見て、私は明確な死を悟った。


 ゾンビたちの目は一斉に私を向き、身体を起こして飛び掛かってくる寸前だ。

 即座に手元にあった爆薬のスイッチを入れ、手記を頑丈なアタッシュケースに入れた。そして身体が吹き飛ぶ直前に、ケースが壊れぬよう部屋の物陰に放り投げた。


「――残念だったな。私は貴様たちの仲間にはならん」

 怒号を上げて突っ込んでくるゾンビと、爆発が重なるのは同時だった。死の瞬間に研究員が願ったのは、創作世界のような救世主が現れることだった。



本日はもう一話投稿します。毎日投稿目指しますので、どうか応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ