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ルーン魔術師と護衛の依頼

 俺は城に軟禁されていたこともあって、これまでの人生で、女の子と接点を持つことはほとんどなかった。


 そんな童貞ルーン魔術師が挙動不審になりながらも、泣き出す姫様をどうにかなだめたのはほめてもらいたいね。


 賊たちは、あの場を離れる前に、【木縛】のルーンを応用して大穴をふさいでおいたから、死にはしないが、今すぐ穴から這い出て追いかけてくるのは、無理だろう。


 凶暴な魔物なんかに襲われなければいいが。まぁ、その場合は天罰ということで大目に見てもらいたい。


 姫様を連れて、森から出て、あの他国の兵士君のところまで連れていく。


「姫様!」


「ディアン! 本当に生きていたんですね!」


 ディアンと呼ばれた騎士君は、走ってこっちによって来ようとしていたが、すぐにふらついて、ひざをついていた。

 無理をするから。


「ディアン。すごいケガをしてますよっ! 大丈夫ですかっ!」


 ディアンに駆け寄った姫様が、彼の血まみれの姿を見るなりそう言った。


「ケガのほうは。彼が治してくださいました。ですが、部下たちは……」


「そう、ですか」そう言ってから、姫様は俺のほうを向いた。「本当に、なんとお礼を言っていいのか。あの、お名前をうかがってもいいですか?」


「俺はヴァン・ホーリエン。えっと、俺も聞かせてほしいんだけど、君たちは?」


「あっ! これは失礼しました。わたしは、ここから西にある国、ラズバード王国の第三王女、アリシア・ラズバードです」


 彼女は長い桃色の髪を揺らしてそう言った。

 どうやら王女様だったらしい。

 まぁ、わざわざ姫様なんて呼ばれてるしそうだよね。

 さっきまでそんな余裕なかったけど、なんか意識してみると、容姿もめちゃくちゃ整っている気がする。それになんか気品も感じる。

 あぁ、それにしても王族か。逃げたくなってきたな。


「俺も自己紹介が遅れたな。俺は、ラズバード王国騎士団所属、第三王女近衛騎士隊の隊長、ディアン・ウェズマだ。この度は、力添え、本当に感謝する。君がいなかったら、俺たちは……」


 隊長ってことはこの人も結構偉い人だったのか。

 無精ひげに、鋭い目。改めて顔を見ると結構怖い顔をしている。


「いえいえ。困っている人を助けるのは当たり前です。それよりも、助けるためとは言え、馬車を壊してすみません。あと剣を。貸してもらって助かりました」


「そうか。役に立ってよかったよ。馬車は気にするな。もとより馬も殺されている。どのみち置いていくしかなかったさ」


「そうですか。では、これで」


 さて、剣も返したし、馬車を壊してしまった謝罪も済んだしさっさと行こう。王族なんて関わってたらろくなことにならない。十年間、王宮に軟禁されていた俺の勘がそう告げている。


「お待ちください!」


 背に投げられた言葉に思わず立ち止まる。

 あぁ、なんで俺はこういうのを無視できないんだ。


「な、なんでしょうか……」


「まだ、お礼をできていません!」


「い、いや、そういうのは――」


「そうですね。姫様。命の恩人に礼もしないとなれば、俺たちの沽券にもかかわります。ぜひ、我が国に招いて礼をさせていただきたい!」


「う、うーん……」


 正直、ほっといてほしい。


「で、では! 依頼をさせていただきたい」


「い、依頼?」


 俺が渋っていると見たのか、ディアンさんは切り口を変えてきた。


「あぁ。あなたは見たところ、冒険者……? なのか?」


 どうなんだろうか?

 でも確か、冒険者は冒険者ライセンスがいるって聞いたことあるし、たぶん違うんだろう。

 しいて言うなら、


「いや、無職の旅人? かな?」


「ふふ、無職の旅人か。では、どうだろう。俺たちの護衛をラズバード王国までかって出てくれるというのは。もちろん礼とは別に報酬も払う。俺もこんな状態で、賊に襲われたばかりだ。ラズバード王国までは二週間、いや、馬もいない今もっとかかるかもしれない。その間、俺一人で姫様を守り切れる自信が正直にいうとないんだ。だから、あなたの力を貸してくれないだろうか」


「わたしからも、どうか、お願いします!」


 うーん、確かに。このまま彼らを放っておいても、それはそれで不安だなぁ。

 それに、困っている人を助けるのが、ルーン魔術師だしなぁ。ま、俺みたいな時代遅れが役に立つかどうかはわからないけど。


「じゃあ、一つお願いがあるんですけど」


「なんでしょうか?」と、アリシア様が首をかしげる。


「軟禁はしないって約束してくれるなら……。いいですよ」


「「な、軟禁?」」


 二人は、なんだそれって、感じで目を丸くしていた。

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[一言] 悪人に優しい世界
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