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ルーン魔術師とラズバード王都・2

 雑貨屋まで来るのに、なぜ街の人に睨まれ続け、疲労感を覚え始めていた俺だったが、雑貨屋に入った途端にそれは吹き飛んだ。


「では、入りましょうか」


 アリシアに連れられるようにして入ったそこには、素晴らしい光景が広がっていたのだ。


「わぁ……」


 思わず俺はそうつぶやく。

 少し薄暗い雰囲気。乱雑に置かれた商品。瓶、紙、ペン、食器、小物入れ、掃除道具、色んな物がそこら中に陳列されている。


 これもルーン魔術師のさがのようなもので、何も無い綺麗なところよりも、物が多いところの方が安心するのだ。


「どうしましたか?」


「ああ、なんかちょっと感動しちゃって。初めて入ったなあ。こんなところがあるなんてやっぱり街って凄いね。アリシアはいつもここで何を買うの?」


「わたしはこういうアクセサリーを見ることが多いです。可愛いものが多いんですよ」


 そう言って、手に取って見せてくれたのは綺麗に編まれたネックレスだった。宝石とかではなく、よく磨かれた石があしらってある。

 値段も手ごろだ。


「なんか意外だなあ。王族の人ってもっと高価な物を付けてるイメージがあったけど」


「ふふ。そうですね。わたしも、一度だけ式典の時とかにここで買った物を付けていこうとして叱られたことがあります。ですから、あまり身に着ける機会は少ないんですが、この素朴な感じが、すごく暖かい感じがして好きなんです」


 そういうアリシアの顔は柔らかくて、本当に好きなんだろうということが伝わってきた。


「ヴァンは何か目についたものはありますか?」


「そうだなあ……。瓶とか、欲しいかなって」


「瓶……。ですか?」


 アリシアが首をかしげる。


「うん。瓶とか、後は箱とか、そういうものってルーン魔術にすっごく便利なんだ。ほら、例えば、砂とか水とか、そう言った物ってルーンを刻めなかったり、刻みにくかったりするんだけど、瓶にいれれば、瓶にルーンを描くことで中身にその効果を伝えたりできるんだ。瓶に水をいれて【冷却】のルーンで冷やしたり、麻袋に土をいれて【軽量】のルーンで軽くすると、運びやすい土嚢もできる。だからこういう容器みたいな物を見ると色んな事に使えそうでついついわくわくしちゃうなあ」


 と、そこまで言って気が付いた。

 アリシアを置いてけぼりにして自分がルーン魔術の世界に浸ってしまっていることに。

 俺は慌ててアリシアにあやまる。


「……って、ご、ごめんね」


 謝られたアリシアはキョトンとしていた。


「……え。あ、ごめんなさい。聞き入ってました。え、ええと、なんで謝られたんですか?」


 そう不思議がるアリシア。


「ルーン魔術の話ばかり、退屈じゃなかった?」


「退屈なんて、そんなことありません。凄く面白くて、もっと聞きたいです!」


 おおう。

 凄いやる気にこちらがびっくりする。

 そういえば、ミラさんがアリシアは昨日も夜遅くまでルーン魔術の練習をしていたっていってたなあ。

 アリシアの丸い瞳がギラギラと輝く。本当に、それは俺が師匠に教えてもらっていた時の様だった。どうやら、アリシアは本当に真剣に俺の話を聞いてくれていたようだった。なんかちょっと感動する。


 俺は、ミラさんの方をちらりと見る。


 にこりと微笑んで、ミラさんはこう言った。


「わたしの方はお気になさらず。適当に見て回ってますので」


「近くに居なくても大丈夫なんですか?」


「ディアンから聞いています。あなたなら大丈夫だと。それに、そうでなければ、今のアリシア様の状態で外出の許可なんて出ませんよ」


「な、なんか責任が重いね。は、ははは」


「いつも通りしてもらえれば。それでは、わたしはついでに近くに怪しい人物が居ないかもみてきます。どうぞアリシア様の気が済むまでよろしくお願いします」


 そう言ってミラさんは俺たちから離れていく。


 本当に大丈夫だろうか……。

 みんな俺に期待しすぎでは……。


 まあ、見回りも兼ねると言っていたし、なにかあればミラさんの方でも対処してくれるだろう。俺も、気を緩めすぎないようにしないといけないけど。


 気合を入れなおし、アリシアを見ると俺に期待のまなざしが向けられていた。


「あ、あの! 続きを聞いてもいいでしょうか! もっとルーン魔術を知りたいです」


 その言葉に、俺はうなずかないわけにはいかなかった。

 それから結局一時間ほど、ルーン魔術談義が続いた。


 幸いにも、アリシアを襲うような人は現れなかった。

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