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一生の思い出になるもの

 結局、二人が話す機会は修学旅行中には訪れなかった。


 帰りの電車、僕とカズキは隣同士で座っていた。


 アカリとコハルたちは、少し離れた席に座っている。


 チヒロは僕に体を預けるようにして眠ってしまっている。


 内密の話をするなら今かもしれない。


「な、カズキ……」


 僕はカズキに声をかける。


「ん、ああ。アカリのことか?」


 察しが良くて助かる。


 僕は頷き、言葉を続けた。


「うん。僕は適当に理由をつけて離れるから、帰り道で話をつけてしまえよ。これ以上引きずってもよくない。ある程度回復はしてるみたいだし、再発する前に気持ちに整理をつけてもらったほうがいいと思う」


「そうか。そうだな。じゃあ、よろしく頼む」


「ああ、ちゃんと話す内容は頭の中でまとめておいたほうがいいと思う。これは幼馴染としてのアドバイス」


 ちょっと笑ってカズキは答える。


「わかってるよ。大丈夫、ちゃんとやるさ」


「だな。よろしく」


 ~ ~ ~ ~ ~


「僕はちょっとチヒロを送っていくよ。けっこう眠そうだし、電車を乗り過ごしちゃうといけない」


 そう言って僕はチヒロを家まで送っていった。


 彼の親に挨拶をして、再び帰路に着く。


 突然、どっと疲れが僕を襲ってきた。


 自然、ため息が漏れる。


 僕は、今アカリには必要ない。


 そのことが、どうにも僕を締め付けるようだった。


 助けたい人を助けられるのが僕ではないこと。


 そのことが、どうにも僕を苦しめる。


 彼女がつらい時、僕の言葉では救いきれない。


 苦しい時、僕が隣にいても助かりきらない。


 それがわかってしまうのが、どうしようもなく嫌だった。


 けれど、仕方のないことだ。


 仕方のないことなんだ。


 そう勝手にケリをつけた気になって、家の前まで来た僕は、ふと、誰かが立っていることに気が付いた。


「あ、カズヤ、おかえり~」


「……、アカリ?」


 どうして、待っているのか。


 晴れやかな顔で、つきものが落ちたような顔で、僕を待っているのか。


 戸惑う僕を知ってか知らずか、アカリは口を開いた。


「カズキとちょっと話した。いろいろ、吹っ切れた。カズヤも、気にかけてくれてたって、言ってたから、その……、まってた」


「そっか、よかったよ。アカリが元気になってくれて、僕は嬉しいよ」


「ありがとね、いろいろ。その、時々声も欠けてくれて。助けになってた。ありがと」


「!!」


 その言葉は、僕の疲れなんてすぐに吹き飛ばしてしまった。


 僕の声が救いになっていたと、僕がいてよかったと、肯定された。


 その事実が僕を救い出した。


「いや、よかったよ」


 そう言った僕は、きっと笑っていただろう。


「そういえば、呼び方」


「うん、合わせようかと思って」


「そうだな。とーちゃん呼びはちょっとな」


「だよね、よくよく考えてみると、ちょっとあれだよね」


「ちょっとあれだったね」


 笑いあって、僕らはそれぞれの家に向かった。

ありがとうございました。

本当は僕自身の修学旅行での経験を使えるといいかなと思ってたんですが、僕の修学旅行例のウイルスでなくなっちゃいまして……。

そんなわけで、修学旅行編でした。

またそのうち後日談も投稿します。

いろいろ忙しいのでしばらく間があると思いますが、そのうち、必ず。

とりあえずは終わりということで、いったん完結とさせていただきます。

感想など書いてってくださいませ。

ではまた、どこかで。

文月幽でした。

またね。

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