告白。
俺は、横山カズキは、知っていた。
何を知っていたかって?
幼馴染みのアカリが、この文化祭で俺に告白しようとしていることをだ。
あれは、完全に偶然だった。
カズヤとコハルちゃんが話しているところに、通りかかりかけたのだ。
話し声が聞こえて近づこうとしたのだが、俺の名前が出てきたので、黙って聞いてしまった。
あの二人は、人の通らない、廊下の端にある小さな空間で話していたこともあって、きっと俺には気づいていなかっただろう。
ともかく、俺は知ってしまった。
最適解などわからなかった。
どうすればいいかなんて考えても思い付かなかった。
俺はフタバちゃんが好きだが、アカリのことだって友達として好きだ。
恋愛じゃなくて、親愛。
告白され、それを断れば、関係にヒビが入るような気がしてしまった。
俺はどうすべきだろうか。
それを考えていたが、結局思い付くことはなかった。
誰かに相談することもなく、そのまま文化祭の日を迎えてしまった。
* * * * * * *
私は、カズくんと同じ時間に当番が来るように、シフトを調節した。
午後になって、私は一緒に回ろうと誘い、カズくんは了承してくれた。
一緒にいくつかの企画を回って、やっと私は決心んを決めた。
断られてしまうかもしれない、でも、どのみちどれだけ時間をかけても答えは変わらないだろう。
だから、私はこの気持ちにけりをつけるために、告白をする。
「ねえ、カズくん。話が、大事な話があるの」
そう言って、コハルちゃんととーちゃんに教えてもらった場所へ、私はカズくんを連れていった。
彼はなにも言わずについてきてくれた。
「話っていうのは?」
木の下について、私が立ち止まって振り向くと、カズくんはいつもと変わらない笑顔でそう尋ねた。
私は、口を開く。
唇が、舌が、喉が。言葉を、紡ぐ。
「私は、あなたが好き。付き合ってって言ったら、恋人になれる?」
* * * * * * *
大事な話がある。
そう言ったアカリの目は、強い光を持っていた。
逆らえるわけもなかった。
ついにその時が来てしまったのだ。
俺は、答えを持たないまま、彼女に続いた。
「私は、あなたが好き。──、──?」
その言葉は、俺の予想していたものだった。
その言葉が今日伝えられることは知っていた。
でも、答えは今まで出せていなかった。
それは、今彼女の告白を受けてなお、変わらない。
俺は、答えが導き出せなかった。
なんと答えればいい?
どう答えるのが正解だ?
俺の望むものが残る選択肢は?
考えても、答えなんてでない。
選択肢なんて、ひとつも作れなかった。
ふと、カズヤの顔が思い浮かんだ。
同時に、フタバちゃんの顔も浮かんだ。
やっぱり、アカリの思いを受け入れることはできない。
そう思った。
カズヤに、悪いがアカリをよろしく頼もう。
俺は答えを口にした。
* * * * * * *
僕が外に出ると、歩いてくるカズキの姿が目に入った。
傍らにアカリはいない。
僕は近づいて声をかけた。
「おい、アカリはどうした? ああ、アカリの件は僕も関知してる。別に何があったかまで言わなくてもいい。聞きたいのは、お前がなんて答えたかだ」
「ごめん。悪いんだけど、アカリのことよろしく頼むわ。その看板は、俺がやっとくからさ」
どう答えたのかはわからなかった。
でも、断ったことだけはわかった。
「場所は?」
「告白されたところにいると思う」
「わかった」
僕は看板を渡すと、駆け出した。
例の場所はそこまで離れていた訳じゃない。
フタバとコハルが、近づこうかどうしようか悩んでいるような立ち位置にいた。
声をかけるにはやや遠いような、なんとも微妙な位置だ。
僕はその横を通り抜け、木の下のベンチに座ったアカリに近づいた。
「話は聞いてる。──、よく、頑張ったな」
結果は目に見えていた。
彼女は、断られるために、失恋するために、告白をしたのだ。
だからといって、悲しくないわけがなかった。
「とー、ちゃん?」
「ああ。遠山カズヤだよ。お前の幼馴染みの」
「ん、知ってるんだね」
「ああ。カズキにお前を任されて、来た」
「そっか。優しい、ね。二人とも」
「当たり前のことをしてるだけだ」
「ふふ。期待、しちゃったんだ」
「え?」
「一瞬、迷ってたんだよ。カズくん」
「そっか」
「でも、ダメ、だったね。やっぱり」
「ああ。……、アカリ?」
「な、に?」
「別に泣いたっていいんだぞ?」
「あり、がと、ありがとう。じゃあ、ちょっと胸借りよっかな」
「今日だけは、貸してやるよ」
僕は手を広げた。
アカリは顔を伏せて、飛び込んできた。
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