目指すもの。目指す場所。
前話の続きとなっておりますので、未読のかたは先に前の話をお読みください。
「ええ、まあ、はい。そうですね。もう書く気はないです」
「なんだよ。結構頑張ってたのに」
「才能なかったですよ。僕」
「才能なんてどうでもいいだろ。要は、やりたいかどうかだ。できるできないじゃなく、やるかやらないか。だと、私は思ってる」
「夢ですか?」
「そう。夢の話だ」
「僕は、夢とかはないんですよね」
そう答えた僕に、先輩は言う。
「小説を書いてたのは? 勉強をしてるのは? 辞書を読むとかいう奇行に走ってたのは?」
「何となくではじめて、何となくやって、何となくやめました」
立ち止まって、僕は続ける。
吐き出す。
「僕は、何がしたいのか、見つけられてないんですよ。それで、自分にできることをやってみてた。でも、だから、僕はそこまで本気になれなかった」
僕のその言葉を聞いて、先輩は黙って階段を上った。
先に行かれまいと、慌てて追いかけ、追い付くと先輩は僕に言った。
「今どの段階で悩んでるか、自覚はあるか?」
「ええ、まあ。本気になれることを見つければいいんですよね。きっとそれが、僕のやりたいことだ」
「違う。お前は、逃げてるだけだよ。全力でやってみるのが、失敗するのが怖いんだ」
立ち止まることなく、先輩は続けた。
「全力で挑んで、それで達成できなかったら、そんなことを考えてるんだよ」
止められない。
実は、僕は気づいていたのかもしれない。
その事に。
続く言葉が、言われる前にわかった。
「だから全力で取り組めない。だから本気になれない。それだけのことだ。本気でぶつかれる何かを見つけたいなら、何かを本気でやってみればいいんだ。諦めるのはそれからだろ」
「かもしれませんね。でも、深層心理で恐怖しちゃってると思うんです。意識なんてできないような、深いところで。僕は変われません。きっと、ずっと」
「なら、期待することを諦めるんだな。本気でやろうとしないやつには、本気でできることなんて見つからないよ」
その言葉は、僕のなかに、深く刺さった。
「って悪かったな。別に説教しに来た訳じゃなかったんだが。さ、行こうぜ」
僕は何も答えず、黙って後についていった。
「うっす、久しぶり~って、知らないのが多いな」
「あ、久しぶりですね、マシロ先輩!」
「真白先輩っていうんですか。はじめまして」
「ああ、新入部員か? 高三の、上山マシロだ。よろしく」
「よろしくお願いします。僕は木山チヒロって言います」
「あ、私は前山アカリって言います」
「俺は横山カズキって言います。カズヤの幼馴染みっす」
「アカリもですよ。全員高二です」
最後に僕が締め括って、挨拶が終わる。
「来年以降は厳しそうだな。残念だけど、仕方ないか」
「ですね。そこまで意欲的に活動してるわけでもないですし」
「ああ、そういえば、今年もやるのか?」
「やりますよ。テストが終わったら公示してもらう予定です」
「そうか。またくるよ。その時には、集まった作品見させてくれ」
「いいですよ。勉強頑張ってくださいね」
「おう。じゃあな」
「またです」
「ああ、そうそう。使っていいってさ。部室」
「お、そりゃよかった」
「やったね~」
「じゃ、ちょっと早いけど、今日はこれで終わりにするか」
「いいよ~」
「じゃ、帰りましょ」
帰り道、僕は歩きながら、考えた。
僕は、どうすればいいんだろう。
いや、どうすればいいのかは、示してもらった。
僕が変われれば、全部の見え方が変わる。
きっと、あの言葉に間違いはない。
僕が、前を向けるようになれば、きっと、変わるはずだ。
でも、変える必要が本当にあるのか?
何かを目指さなくちゃならないのか?
どうなんだろう。
わからない。
わからない。
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