一話目に主要人物が揃わないという不具合が発生中?
本日のみ三話投稿予定です。
小説とは、文字というものを使って産み出される、一つの芸術作品だ。
一つ一つではそう大きな意味を持たない文字たちを並べて、誰かを感動させ、楽しませ、時には泣かせ、また、ひどく辛い気分にしたり、その人の人生を変えてしまうことすらある。
僕は、それを享受し、そしてまた、生み出すこともしてみたいと思ったこともある。
だが、文章とは、音楽や絵画がそうであるように、誰にでも書けるものでありながら、そしてそれらがそうであるように、才あるものの産み落としたものが優れているというだけで、どこにでもいるような普通の高校生であるところの僕には、作ることのできないものでだった。
書いてみて、読んでみて、そして、これはダメだと、諦めた。
僕はもう、小説を書くことはないだろう。
* * * * * * * *
高校二年生になった。
僕たちの関係は、まだ続いている。
アカリはいまだにカズキに思いを伝えられておらず、カズキはカズキで、うちの妹であるところのフタバに、執拗にアプローチしてはいるが、振り向いてはもらえていない。
僕はといえば、コハルとの交際関係は特に何の波乱もなく続いている。
しばらくこの関係が続くのだろう。
高校二年生になって、クラス替えがあった。
僕とコハルと幼馴染み二人は、四人とも同じクラスになった。
「まじで、忘れ物をしても借りられないっていうのは、結構なディスアドバンテージだよな……」
とは、新学期二日目で忘れ物をしたカズキの談だ。
それにたいする僕の回答は当然、
「まず忘れ物をするなよ……」
だったことも付け加えておこう。
チヒロや、サチとも同じクラスだった。
よくもまあこんなに揃えたものだ。
何かしらの意図があるんじゃないかと、疑ってすらしまうほどだ。
あるわけがないんだが。
さて、今は部員を集める期間で、人数が低限を超えていなくても活動ができる。
というわけで、受験勉強で先輩が引退してしまい、現在は二人きりで部室を使っている。
「てか、なにげにこの部活また活動停止の危機なのでは?」
そんな当たり前の事に、僕はやっと気づいた。
「え、ああ、そっか。人数が三人を越えないと活動停止だっけ」
「……新入部員探さないと」
「よし、私も頑張ってみるね」
「よろしく。まあでも、今日はもう誰もいないだろうし、明日からかな」
「ああ、そうだね~」
なんて話していると、時計はいつのまにか最終下校時刻の三十分ほど前を指していた。
「そろそろ帰ろうか」
「はーい。ちょっとまって。あと五ページで読み終わるから」
「了解。じゃあ、僕ももう少し読もうかな」
そう言って僕は、小説投稿サイトで読み途中だった小説を開いた。
「結局遅くなっちゃったね~」
「まあ、大丈夫だろ。最終下校時刻には間に合ってるし」
そんなことを話しながら、僕らは校舎を出て、校門へ向かった。
と、
「あれ、カズヤと春山さんじゃん」
横合いから、声がかかった。
振り向くと、カズキがいた。
「部活の帰りか?」
尋ねてみた。
聞くまでもないことなのだが。
「ん、ああそう。いや~、そろそろ先輩と同輩の妬みがうざいからやめようかと思ってんだけどな。どっかいい部活ない?」
「ちょうどいいとこがあるぞ。一人足りなくて活動停止の危機に陥りかけてる部活が」
「おお、ちょうどいいじゃん。どこ?」
「うち」
「ああ、そういえばそうか。お前ら二人だけだっけ?」
「そうなの。ああ、確かにちょうどいいね。下の世代を入れちゃうと、私たちが抜けたときに困りそうだし」
「確かに。どう?」
「う~ん、考えとくわ」
「なんだったら、アカリとか誘ってくれてもいいし」
「そうだね~」
「そういえば、あっちもあっちで今フリーか」
「ああ」
幼馴染み二人が入る未来が見えてきた。
これで文芸部は安泰かな。とりあえず今年一杯は。
次話からちゃんとアカリさんにも出番が来るはずです。
妹ちゃんは知りません。
家に戻らせないと出番無いのですよね、彼女。
次話は、本日十三時投稿予定です。
シリーズ化してありますので、そちらの他作品も是非ともどうぞ。
人物たちが把握しやすいかと思います。
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