遠くて、近い。
「えと、お兄ちゃん。その、相談があって……」
コハルとのデートの翌日。
家で勉強していると、フタバが僕の部屋に入ってきて言った。
なにやら、相談事のようだ。
彼女は、困ったことがあるといつも僕に聞きに来るのだ。
「ん? ああ、いいよ。僕に解決できるかはわからないけれど、聞いてあげるよ」
いつものように、僕はそう返した。
「ありがとうございます! じゃあ、お話しします。実は、──」
「──というわけなのです」
「ふむふむ。うんうん、なるほど」
僕は頷き、うむうむと言ってから、顔をあげて、答えようとした。
「ごめん。返答に時間がかかるかもしれないから、悪いけど、十分ほど待ってほしい」
「は、はい。わかりました。待ちます」
僕の口から出たのは、時間稼ぎだった。
答えが出てこなかったとか、そういうのじゃない。
きっと彼女の状態を僕は知ってる。
彼女が今どんなことに悩んでいるのか。
僕も通った道だから、わかる。
きっと、彼女は、妹は、フタバは、
カズキに恋心を抱きかけている。
僕はカズキの気持ちも知ってるし、両想いになってハッピーエンドになるなら、万々歳だ。
それだけで済むのなら、僕だって悩まずに答えてあげただろう。
フタバはきっとカズキが好きになったと、そしてカズキも君のことが好きで、両思いだから、告白するといいよと。
でも、だけど。
現状はより複雑だ。
カズキがフタバを好きなことを、僕は知ってる。
応援できるならば、幼馴染として応援してあげたい。
でも、僕のもう一人の幼馴染である、アカリがカズキを好きなことも、知っているのだ。
そして、僕はそれを長年応援してきた。
なるようになるだろうと思ってそこまで真剣に考えたことはないままここまで過ごしてきてしまったが、ここへきてさらにもう一つ情報が飛び込んできてしまった。
フタバがカズキのことを好きなようなのだ。
状況的に恐らくそう。
逆に、違うとしたら、それはそれで怖い。
さあどうしよう。
誰かが幸せになる状況では、誰かが不幸になっている。
ああ、これが三角関係という奴だろうか。
まあ、外から見ている感じでは、フタバ×カズキが最良に見える。
でも、でもだ。
僕にとっては三人ともが同じように大切だ。
どうしろというのか。
僕はアカリにだってフタバにだって泣いてほしくはない。
もちろんカズキにも。
悩む。
悩む。
僕が手を出してしまっていいのだろうか。
僕が手を出してしまえば、どうなろうとも僕はきっと後悔するだろう。
なら、いっそのこと誰かに丸投げしてしまうか?
投げるなら誰に投げるだろうか。
アカリか。
いやだめだ。
アカリはあれでいて本当にカズキが好きだ。
フタバの話を聞いたら、きっとフタバを応援してしまう。
そして、一人で泣くんだ。
そんなのは許せない。
そんなことになったら、僕は僕を許せない。
きっと後悔する。
ダメだ、他の誰かに丸投げしたとしても、きっと後悔するだろう。
なら、ならば。
だとするなら、僕が手を出すべき、ということになる。
本当にそれでいいのか?
当人たちに任せるべきではないのか?
僕は、傍観者であるべきなんじゃないのか?
手を出すべきか、出さざるべきか。
そんなことを悩んでいると、十分なんてあっという間に立ってしまった。
「ん~と、ね。フタバ」
「はい。わかりましたか。お兄ちゃん。さすがお兄ちゃんです!」
「うん、わかった。でも、これはフタバが自分で気づくべきものだ。人に教えてもらっていいようなものじゃあない。だから、フタバが自分で考えるんだ。大丈夫。きっとわかる。フタバなら、そう時間をかけずに気づくかもしれない」
「は、はい。わかりました。自分で、考えることにします」
「うん。それがいい」
僕は結局、ごまかして、また時間稼ぎをしてしまった。
でも、フタバなら、本当にすぐに気づいてしまうかもしれない。
それまでに、解決策を考えなければ。
う~ん……。
ようやく本題に入った感じですね……。
デートのお話は、今日か明日にでも出すつもりです。
気長に待っていてくださいませ。
シリーズの他作品も、よろしくお願いいたします。
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