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ドラッグストアのおとぎ話  作者: あおかえる
15/43

15 利益確保の大号令 (4)

事は起こらなかった。


薄汚れたおっさんの心のように

白衣は白さを取り戻す事は二度となかった(ポエム)


ていうかよぉ。卒倒するくらいの白さに戻るんじゃなかったのかよぉ

あの弾けるような女優さんの笑顔、嘘だったんかよぉ

よぉ、よぉ……。


 その日の夜、俺はバケツにお湯を張って、洗剤と少量の漂白剤を投入した混合液体を作り、そこに汚れた白衣を漬け込んで寝た。

 起床して付け置き洗いの白衣を洗濯機に掛けた。余り変わらない。卒倒するほど汚れは落ちていない。

 憤怒にかられた俺は風呂桶に水を張って、そこに漂白剤を投入。分量は多めの方が効果があるだろう。と多めに入れる。典型的な男性的志向。一杯より二杯、二杯より三杯が効きまっせ!

 風呂場が心なしか、学校のプールみたいな匂いを発しているが気にしないことにした。数時間後、風呂場から引き揚げた白衣を洗濯し、漂白剤を使ったあと特有のヌルヌルした風呂桶を丁寧に洗った。


結果発表


風呂桶が驚くほど綺麗になった。ピカピカやん!


白衣がすこぉしだけ白さを取り戻した。


あかん、半日かけてこの程度か。一度繊維の奥にしみ込んだ汚れは落ちないのか。CMでは顕微鏡動画を使って「繊維の奥の奥の汚れまで!」ってやってたけど、時間が経った汚れは無理なのか。今度、巡回に来たメーカーの営業さんに訊いてみよう。

明快かつ詳細な説明を要求する(立腹中)


 ほんの少しの白さを取り戻すための代償は大きかった。漂白剤って、濃い濃度で使用すると繊維を痛めるんやね。知らんかった……。

 白衣は心なしか生地の厚さが薄くなっていた。いや、これ、絶対薄くなってますよね?俺は白衣を外で乾かした。夕方とは言え夏の強い日差し。二着の白衣は、ちょうど俺の正面に位置する夕日を遮ってくれる形になっているが、レースのカーテンのように光を透過している。眩しい。


 外で白衣を干すと一時間も経たないうちに乾燥する。俺は乾いた白衣を着て鏡の前に立った。黒のTシャツを着た上から白衣を羽織ったが、下に着た黒色のTシャツが透けてしまって、白衣が全体的に黒っぽくなっている。うーんまずいな。これ、どっかに引っ掛かったらビリビリに破けそうやん。


 しかも服装規定では『色の透けるTシャツは着用禁止』となっている。白の無地Tシャツしか着てはダメになってしまう。面倒くさい。

マニュアルなんて気にしなかったら良いのだが、俺が気にしなくても軍曹が非常に気にしている。もし店舗巡回中に、下に着用している色物が透けた白衣を着ていたら、俺もまた、拷問部屋に連行されるだろう。


 翌日、俺は白のTシャツの上から白衣を着用して勤務についた。その日たまたま軍曹が店舗巡回に来た。俺は再度、白衣の発注申請許可をしてくれるようにお願いした。


「本部が経費削減を打ち出したのは知ってるやろ。メールで返信したと思うが、漂白したんか?」

「しました。昨日は休みで、半日掛りで漂白したのですが、汚れが染みついて落ちな

いんです!」

「確かなんやろうな? その割には汚れてるな」

「本当に漂白しました。それがこの結果なんです。漂白しすぎて生地が薄くなって、白衣がセクシーアイドルのスケスケ水着みたいになってしまったんです!これ以上無理です!見えちゃいますっ!」


俺は申請許可欲しさに必死になるがあまり、訳の分からない事を口走った。

その迫力と懇願にうんざりしたのか

「分かった分かった、もうええ、申請許可したるから再発注せえや」

軍曹はイラついた口調で答えた。

やったね! 大勝利だよ! これで新しい白衣を入手出来る!

 俺は浮かれていた。その時、軍曹が、ひやりとした氷のような冷たい口調で新しい話題を口にした。

「そうや、店長、今度の栄養ドリンクのお試し会。目標何箱や」






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