10話 私のせいで迷惑かけて、ごめんね……!
「う……うう……」
体中が痛い。でも胸あたりは柔らかく、温かい温もりを感じる。
頭がなかなか働かず、その温もりをギュッと抱き締めると……「う?」とか細い声が聞こえてきた。
……少し思い出してきた。そうだ、僕たちは魔界からの追手に追われて落ちたんだ。この……人間界に。
今、ここがどこなのかというのも分からず、そのまま、アークが目覚めるのを待つ。ただ、紅色の壁にもたれかかるようにして倒れていた。そしてアークの体を傷付けないように庇っていた。
そっか。それでこの胸元の温もりか。
…………。
「セイ……さん……。」
僕がただ何も考えずにボーッとしていると、アークが目を覚ました。
アークは僕の体から離れ、同じように壁にもたれかかる形で僕に話をしてきた。
「……私、ね。魔界の中で忌み嫌われる存在だったの。その理由が、悪魔の心じゃないから。誰よりも綺麗な心だって。……悪魔にとっては最悪だって。魔界全体から、嫌われてた。
なのに、少し天界に足を踏み入れただけで『裏切り者』だって……。
セイさん、私のせいで迷惑かけて、ごめんね……!」
彼女は最初は躊躇するように、ポツリポツリと話してくれた。けれど、最後には涙を流した。
……そっか。僕は決心すると彼女を再び抱き締めた。「え……?」




