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異世界軍師補佐官  作者: ダブルチーズ太郎
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異世界軍師補佐官2

私は先月まで

レーマ龍聖帝国のしがない地方文官だったレシリア・エステルハーズィである。


故あって、本国より英雄付補佐官の任を 第98代レーマ龍聖皇帝 レイル6ゼハン・ゴットフリート・アウエルバッハより拝命し


故あって10年ぶりの帝都にに辿りついた訳だ・・・


流石に人類最大の都市と謳われるだけはある・・・観光客で賑わっていた温泉街ワーヘンもそれなりに都会的だが

それとは比べものにならないくらい洗練されている。


道路は綺麗で水平な石畳で舗装され

3階建て以下の建物など見当たらない程の建造物の密集度

そして行き交う「人」「人」の洪水


耳を澄ませば商売や談笑や諍いの様々な喧噪が聞こえ

食べ物やら建物やらの様々なものが混じった臭いが鼻につく





この帝都バーゼルの歴史は、血と策謀の歴史である

1000年前はエルフ王族が治めた天上都市であり

我々でいう悪神ドウナウゼルを主神として崇め

繁栄を謳歌していたと言われる。


何と言っても一番の産業は

安価な労働力、弾除けになる便利な番犬、性的玩具にもなる最下層種族の「人間」の奴隷市場だったとされ

エルフの奴隷商人が大陸中に手広く商売をしていたらしい


その人類にとって屈辱的であり絶望的な状況を救ったのが異世界から転移して

この帝都バーゼルの奴隷達を解放して建国した「英雄」である・・・


そう、今私の平穏を奪った憎い英雄である

私は所々に建ててある救国の英雄オルティスト1世の馬に跨った勇ましい石像を

恨めし気に睨みつける。

人類救世の英雄に対して随分罰当たりなのは話である。



すると、何処からともなく

「安いよ 安いよー 処女だよー 生娘だよー 初物だよー」という

八百屋の客引きのような気軽い口調に、全く合わない品性のかけらも無い呼び込みが聞こえた。



かつて、エルフが人間を売りさばく事で繁栄していた都では

今はエルフが奴隷として人間に売買されていた。



数百人以上が広場でひしめき合っている 帝都名物エルフの奴隷市だ


私自身の故郷の田舎やワーヘンでも度々奴隷位置は見かけたが

少数の豚人や犬人などの獣人系の種族がほとんどで

エルフなどの上位種とされる種族は帝都以外ではお目にかかった事は無い。


エルフは希少であり、200年以上生きた大人1人買うのに生涯年収程の値段がするとされている



見れば客層はいかにもザ金持ちといったような成金趣味のオッサンやオバサンばかりだ

市場でオークションにかけられているエルフ達は全員目が死んでいる。


いくら、先祖の業とはいえ見ていて気持ちいいものではない

帝都は故郷の様に、一度買った奴隷を大切な労働力として扱う習慣も無いし、奴隷間での結婚などのある程度の自由も無い

どれだけ酷使しても虐待しても・・・命すら奪っても何も問題は無いのだ。



私は、そそくさとその場を去ろうとしたその時 それが耳に入ってきた


「それでは次のエルフだっ 辺境で隠れ住んでいた所をオークのグ・グルガ士率いる漁人団に捕まえて貰った エルフの娘っ子だ」

見れば舞台で進行役が隣にいるオークに語り

オークは頭を掻きながらギャラリーの声援に応えている


このレーマ龍聖帝国ではエルフ種を筆頭に、かつて人間を迫害して奴隷、家畜扱いした他種族を迫害して

人間を頂点とする教育を行い人間同士の団結を図っている側面もあるが


同じく1000年前に戦奴として前戦で消耗品として扱われていたケンタウロス種

異端の神を信望して迫害されていたダークエルフ種

一方的に醜いという理由から淘汰虐殺されていた蟲人種

品性、知性に劣る劣等種とされ家畜にすらされない扱いを受けたオーク種の4種族長は

エルフへの反乱時に英雄オルティスト1世と同盟を結び

臣下の誓いを交わした為

人間と同等の優性種族として扱われている。



あのグ・グルガと呼ばれるオークは大陸各地に隠れ住むエルフを見つけては捕まえて

この帝都の奴隷商人に売り込むハンターといった所であろう


選民主義に凝り固まってる奴隷市場の人間達からは、一切の差別心の無い純粋な称賛が投げかけられている。




ここで何故オークが紹介されたかというと、ある理由がある・・・

エルフの美的感覚的にオークは最も忌み嫌う存在ではあるが

それはオークからも同じで、エルフ種を最も醜く感じるらしい

また、オーク種は余程の変態的趣向を持った異端児ではない限り他種族に異種姦をする事は無い

短い繁殖期以外に欲情しない非常に紳士的な種族だ。


これが他の種族のハンターであれば、捕まった奴隷は、市場に流れる前に暴行を受ける可能性が高く

怪我や病気・・・最悪の場合妊娠しているのを気づかずにブローカーは奴隷を売買して


売買後にそれが発覚した場合

信頼を失い多額の損害賠償を支払わせられるデメリットがある。



だから、捕まえた獲物には手を出さない安心のオーク印の奴隷は信頼の商品なのである。


奴隷商人に突き出されるエルフの少女

称賛を受けるオークのハンター

これがこのレーマ龍聖帝国内において

エルフとオークという同じ非人間種の差の表れだ。




「なんと、この娘は自然豊かなマクスウェル地方の森林で育った天然物 それが今ならたった1000万レンだよ 安いよーお買い得だよー」


そのエルフの少女は人間でいう10歳程度の容姿でボロ絹をまとっていた 


商人の軽快なセールストークに対しての客達の反応は微妙であった




エルフ種は人間でいう10年が1年に該当して成長する種族である為

このエルフが仮に人間で言う結婚適齢期とされる15歳にるまで50年はかかる


明らかに30~50代の客層だ

その頃にはもう肉欲なぞとっくに枯れ果てているであろう



が一部の趣向を持った人間は別だった

「500万」


不細工、デブ、禿げ、ジジィと女がお近づきになりたくない代表例のような男がその少女のオークションに名乗りを上げた


ご愁傷様としか言いようがない

いくら憐れんだところで私には何も出来る事はない


それに彼女を救ったといても、この市場で他に売られているエルフはどうするのだ?

自分の10分も1の人生も生きていない、まだ成人前の金持ちに享楽として買われるエルフの女性

変態ババァに買われた少年エルフ

熊みたいなオッサンに買われた中年エルフ


彼らは見捨てて、あのエルフだけ救うというのも

大変おかしな事だ


私は腰を浮かして足取りを新たにしようとした矢先


あのエルフがこちらをガン見している

助けてくれという眼差しでも

媚を売る眼差しでもない

ただ、状況がいまいち理解していないと思われる能天気なエルフの少女こちらをガン見していた



「それでは 他にお客様もいないようなので10番の方が落札という事でよろしいでしょうか?」


だが、そんな事

知ったこっちゃない

私には関係ない




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本国の案内役を務める

ゲオルク・フォン・キュヒラー殿が待ち合わせ時間の10分前に

集合場所の噴水広場で待つ私を馬車で迎えにきてくれた




「お初にお目にかかります エステルハーズィ殿 私は聖ネヨハ騎士団所属のゲオルク・フォン・キュヒラーです、団長から名代として、エステルハーズィ殿の案内を任されました 以後お見知り置きを・・・」



「よろしくお願いしますわ キュヒラー様」


紳士然とした彼の対応に私も応える


「ところで・・・エステルハーズィ様・・・」


何かしら?エステルハーズィ様



そのエルフの少女は?


ボロ絹を纏ったエルフの少女がレシリアの膝の下で呑気に林檎を両手で持ってかじっていた



「買いましたの」


「へっ? 」

何故この時期に?という疑問を持つキュヒラー公に対して


「買いましたの」と次は更に強く言い放った



シクシクとレシリアの胃がまた痛みだす

















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