表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ギャラクシーサーガ エピソード37 -スペースヘルモンキーの襲来-

 オレはジム。白人だ。

 スペースポリスに所属していたが、有能故に組織の在り方や人間関係に嫌気がさして辞めた。今はスペース傭兵をしている。


 なんてこったい、いつものようにアングラの酒場でビリヤードをしていたら、変な男に声をかけられた。

 場違いなこじゃれたスーツに身を固めたそいつはトーマスと名乗った。黒人だ。


 トーマスはスペースアニマル研究員らしい。

 なんでも彼は地球で働いていて、宇宙から害悪なスペースアニマルが入ってきていないか日々チェックしているそうだ。


 数年前の、惑星ゴーンからの貨物船にスペースヘルモンキーが潜んでいた事件はとても有名だ。

 その貨物船が地球の大気圏に入る直前に、貨物船ごと爆発させて死んでいったマイケルは地球の救世主である。


 しかし、そのスペースヘルモンキーが実はずっと昔から地球に潜んでいて、密かに研究されていることがわかったのだ。


「たのむジム。スペースヘルモンキーを皆殺しにしてくれ」

「おいおい、落ち着けよトーマス。スペースヘルモンキーは実は地球にとって良い存在かもしれないんだぜ」

「そんなわけないだろ。スペースヘルモンキーなんだから」


 オレが渋っていると、トーマスは札束の詰まったバッグを突き出してきた。


「これで頼む」

「ふん、いいだろう」






 作戦決行日、オレたちはスペースヘルモンキー秘密研究施設に続く地下通路に来ていた。

 仲間はオレとトーマスの他に2人いる。

 1人は秘密研究施設の元職員で、エリザベス。白人だ。この作戦は彼女の誘導なくしては成功しない。

 エリザベスは、まぶしい金髪に吸い込まれそうな青い瞳をしている。

 もう1人はリン。東洋人だ。






 オレたちは地下通路から秘密研究施設に潜入した。

 エリザベスの案内に従い、スペースヘルモンキーがいる檻を目指した。


 ズダダダダダダダダダダダダダッ!!!!


 駆けつけたスペース警備員がオレたちにサブマシンガンをぶっぱなしてきた。


「くそっ、これじゃ進めない」

「助けてジム!」

「任せろ」


 パァン!パァン!パァン!パァン!パァン!パァン!


 オレはサブマシンガンの弾を華麗に避けてスペース警備員に弾丸を一発ずつ送り返してやった。

 動かなくなったスペース警備員を後にして進む。


「この奥よ」


 エリザベスが、タンクトップからこぼれそうな乳房を揺らせながら固く閉ざされた扉を指差した。


「この扉の奥にスペースヘルモンキーがいるわ」

「しかし、この扉は電子ロックされていて開かないぞ」

「任せて」


 肩を落としたトーマスの横でリンがノートPCを開いた。


 タカタカタァーン!


 リンがものすごいスピードでキーボードを叩くと、ジムたちの前に立ちふさがっていた扉が静かに開いた。


「ハッキングして扉を開けたわ」

「よし、よくやったリン」


 ジムは、エリザベスの白くて滑らかな手を引き、2人で慎重に部屋に足を踏み入れた。

 すると、外の廊下の奥からスペース警備員の増援がやってきた。


 ズダダダダダダダダダダダダダッ!!!!

 ズダダダダダダダダダダダダダッ!!!!


 再び雨のような弾丸が襲い掛かる。

 トーマスはリンの前に立ちふさがるとその弾丸を全て受け止めた。

 全身が血で塗りつぶされる。


「トーマス…あなた…」


 トーマスはリンを見ると、血を吐きながら話した。


「リン…早く、部屋の中に入るんだ…そしてスペースヘルモンキーを皆殺しにしてくれ…」

「リン!トーマス!はやく部屋に入れ!」

「それから…どうしても君に言っておかなければならないことがある…」

「リン!トーマス!なにしてるんだ!」

「リン……君を愛している…会った時からずっと…君の弾けるような笑顔が素敵だと思っていた…」

「リン!トーマス!スペース警備員がすぐそこに!」


 トーマスは血を吐きながらその場に倒れた。その手には手りゅう弾が握られている。


「リン…部屋に入るんだ」

「いえ、私も一緒に残ります」


 タカタカタァーン!


 リンがキーボードを叩くと、扉が閉ざされた。


「厳重なロックをかけたわ。もう誰にもこの扉を開けることはできない」


 リンはそう言うと、もう動かなくなったトーマスの手を握りしめて、手りゅう弾のピンを外した。






 閉ざされた扉の奥から爆発音がした。


「リン、トーマス…」

「2人の犠牲をムダにしてはいけない。行こう」


 オレは、エリザベスの張り出した尻を押して部屋の奥へと進んだ。


 部屋の奥には大きな檻がありその中にはスペースヘルモンキーがぎっしり入っていた。

 目つきの悪い、いかにも地球を滅ぼしそうなサルである。


 オレは檻の中に毒ガスビンを投げ込んだ。檻の中に紫色の煙が充満する。

 最初こそなんとか檻から逃れようとしていたスペースヘルモンキーだが、やがて全ての個体が動かなくなった。


「やったわジム。これで地球は救われたわ」

「ああ」


 オレは、エリザベスを抱きしめると、彼女のプルンとした唇に自分の唇を重ねた。




 2人は秘密研究施設を後にした。檻の中に1匹だけ毒ガスに耐えたスペースヘルモンキーがいたことに気づくことなく。


-完-

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ