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幸運

めっちゃ怒る人がいます

私は立っていた。

川の流れと静かな風。その風が小さな草を撫で、通り過ぎていく。ここに立ってても何も進まないし、何も変わらない。

夕日が沈んでいくのが見えた。空の色がとても変で…これが世界の終わりみたいで少し悲しくなった。

まったく、困ったものだ。この社会は金で回っている。何も持たない者はどんどん追い出されていく。


「やあ。黄昏てる嬢ちゃん。」

周りを見ても、ここには私しかいない。私の事だろうけど嬢ちゃんなんて言われるとなんだか腹立たしい。

「シカトされると悲しいんだけどな。ちょっとオイシイ話があるんだ、聞いてみないか?」

馴れ馴れしく話しかけてきた人間は白衣をきた20歳後半くらいの男性だった。

「聞くくらいなら。」

「オレ見ての通り研究者なんだわ。でな、実験とかしてるんだけどねー…人のデータが必要不可欠なんだよ。」

「…。」

何が言いたいかはすぐにわかった。

「ちょっと協力してよ。」

「……いくら?」

「これくらい。」

「…!!!」

ありえない額だ…。私が一生かかっても稼げないほどの金…。

その時、きっと人生で一番冷静じゃなかっただろう。

「どうだ?」

「…協力するよ。」

「ありがとう。」

にやりとした男の事など考えもしなかった。


数日経った。男に言われた場所…恐らく研究所…に行くことになったが、我ながら何故あんなにも冷静さを欠いていたのだろう。

「やあ、来たね。遠慮せず入りな。」

「今更なんだけど…」

「やめるなんてとんでもないよ。」

「いや、なんでそんな馴れ馴れしいの?」

「…えっそれ?馴れ馴れしいじゃなくてフレンドリーっていって。」

フレンドリー?フレンドリーなのか?フレンドリーってこういうのも含むのか?

まあ正直どうでもいい。


研究所の中はまあまあ綺麗で、研究所というより病院っぽかった。病衣のようなものを着せられ、謎の装置に寝転がった。いや、寝転がるとはいったが垂直よりちょっと斜めくらいに機械に体を任せている感じだ。

「じゃ、目ェ閉じて楽にして。閉じるよー。」

目を閉じる。不安になる。もしかして、と思ってしまう。暗闇が友達。

重々しい扉がガチャンという音を立てて閉じた。何かを操作する音が聞こえる。カチッ?この装置の作動音だろうか?

ピチャ

ピチャ?

ジャァアア

ジャァアア?


水?

いやいや水って色じゃない。青だったり緑だったり赤だったりする。禍々しい…いや待てよ!もっと考えろ!このただでさえ狭い棺桶みたいな装置に水でもなんでも入ってきたら息なんてできない!

あのクソ研究者!クソメガネ!クソ!文句タレてる場合じゃない!

頭、首、肩、腕、あらゆる関節、手、胸、腹、腰、脚、足、指の先まで苦痛が走る。これが私の幕引きなのか?これで終わるなんてそんなの!そんな…。

絶望した時、私の胸元の…ロケットペンダントが光った。



「よっ」

「おひさ。」

「ここはまだ終わりじゃない。」

「むしろ始まりだよ。」

「その為に代償が必要だ。」

「片目の…色。」

「じゃあ、またな。」

「兄ちゃんの事覚えててな。」


…幻聴かな。おかしいな。兄さんはもういない筈なのに。死ぬ前ってこんなにおかしくなっちゃうんだな。

私は静かに目を閉じた。



次に目を開けたのは無機質な部屋のベッドの上だった。状況がわからない。私は死ななかったのか?

「起きたな。おめでとう、君は見事に生還した。よかったな。まあいいかどうかは知らないけどな?」

「まずは謝罪だろうが。」

「あーはいはい?なんで?」

はらわたが煮えくり返りそうだったがなんとか耐えた。罪悪感が無い奴はヤベエ奴って確か兄さんが言ってた。


「毎回説明が面倒なんだよなー…オレの実験は『能力付与』。滅多に生還なんてしないし、お前はほぼ死亡確定だったのによく生きてたな。」

「…能力付与?」

「ファンタジーだって思ったか?実はリアルなんだ。んで、生還者で能力組織作ってるんだわ。お前の二つ名、どうするかな。」

話し方的に考えるとその組織に所属しろって事なんだろう。何をする組織なんだ…。実験は成功した…私が生きている事が証拠だろう…という事と、能力付与の実験という事を合わせると私は能力者になったのだろう。このクソ研究者が言う事は全く信用ならないが信じられる言葉がこれしか無い。消去法も選択肢が無ければ消せないし。

「私は…どういう能力が付与された?」

「能力はまーそのうちわかるだろ。お前、もう体とか全然正常だし立てるよな。」

苦痛を感じた体は全て正常に動いた。サンダルを履いて、ベッドから立ち上がった。

「よし、立ったな。ついて来い。」

「…。」

腹立たしい。少しは悪びれたらどうだ、なんて言ってもこの野郎は耳を傾けないのだろう。お互い名前も知らないのに、いつの間にかこんな嫌な関係になってしまってる。私でなくてもこうなると思う、たぶん。



「あー諸君。重要な発表がある。直ちに集会所に来い。」

最近じゃよくある幾何学模様が光る電子的な部屋。恐らくこいつの部屋だろう。

「今更な質問だけどさ…お前何者?」

「ああ名乗ってなかったか。ニキだ、よろしく。よろしくするつもりはネェ。」

「そういう事じゃ無いんだけど…私は」

名乗ろうとすると、手を出された。黙れって事?

「名乗らなくていい。お前の名前は決めてある、キルだ。今度からはそう名乗れ。OK?」

「…OK」

ただの一本道だ。

キル騙されやすいけど、彼女はお金が手に入るならなんでも良かったんだと思います。

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