閑話休題 -22話-[ハルカナム街道Ⅰ]
ハルカナムを出発してから3日が経った。
今はお昼の時間に一旦休憩を挟んで、
アルシェとメリー組は昼食の準備。
俺とマリエル組は模擬戦を行ってご飯が出来るのを待ち。
精霊達は集まって色々と話し合っているようだ。
「うらぁー!おらぁーらららららぁー!」
模擬戦を行っているのは、合計で5人。
対戦相手の後方から俺たち目掛けて飛んでくる矢を首を曲げることで回避しつつ、
襲いかかる剣戟を全て捌き、合間に目の前の男を斬りつける。
俺の横では同じく後方からの援護を受けつつも、
うちのマリエルと近接戦闘を繰り広げる盗賊改めシーフの男がいた。
相手の得物はメリーと同じく短剣で、
俺の相手をしている男の片手剣よりも攻撃間隔が短い。
その上で援護射撃も入れば、
魔法がなくてはなかなか対応が難しい。
その上でも尚、マリエルの動きは種族的な身体能力を遺憾なく発揮して、
時に拳で弾き時に高くジャンプで回避し、
時にギリギリで躱しては相手を殴りつける。
「本当に自分が情けなくなりますわっ!」
援護役の女は弓に矢をつがえつつ愚痴が口から漏れる。
先日から自身の生活が一変し、
戦闘力だけでなく自身の身体を作り替えるような厳しい日々。
それでも今まではしっかりと仲間を援護しているという自信を胸にダンジョンを攻略していた。
「対人は俺たちもあまり経験がない。仕方ない事だ」
「それでも、後輩に手も足も出ない状況は、ちと厳しいだろっ!」
「それもそうだな」
一旦息を整える為に下がった2人を無理に追わず、
こちらはこちらでマリエルと合流をする。
「隊長なら1人で戦えるんじゃないですか?」
「無理に決まってんだろ。
1撃で1人葬るくらいの火力が出せないと、
正直タイプの違う3人を相手になんて無茶だ」
「いやいや、隊長が勝つ事は出来ると思いますよ?
完璧な勝利を理想に掲げすぎてるからそんな答えが出るんです。
隊長はかすり傷でもアウトって思ってますよね?」
「そりゃ、ダメージは少ない方が良いからな。
魔神族が1撃当たっただけで動きを封じる攻撃方法を持っていると仮定すれば、
そこを目指すのは当たり前だ。
ほら、覚悟を決めたらしいぞっ!」
息を整えたわけではないらしい2人は、
思ったよりも早くに再び襲いかかってきた。
俺には片手剣使いの男が、
そしてマリエルには同じくシーフの男が・・・。
「っ!」
「あっ!」
剣を数合交えて捌いた俺の耳にマリエルの間抜けな声が聞こえてきた。
気配を目の前にいる男だけでなく自分を中心に円形の探知を行うと、
軽装の男が俺の方に進路を変更していた。
「へへっ、わりぃなっ!」
「模擬戦ですから、こういうのもありですよ」
「こなクソがっ!」
後方から飛んでくる射撃も気合いを入れ直したのか、
射速も早くなり俺に襲いかかってくる。
流石に矢と剣と短剣を相手に魔法無しでは対処は出来ない。
まずは目の前から斬りかかってきている片手剣を捌く。
しかし、それはわざと浅いパリィにして相手の追撃を誘導する。
「甘ぇ!!」
俺の誘導にうまく従った剣をさらにパリィしたついでに、
俺の剣に風を纏わせて向かってくる矢に叩き付ける。
するとどうだろう。
矢は正面からの強風によりどんどんと失速していき、
戦闘を繰り広げる俺たちに届かずに地面に刺さった。
「疾っ!」
片手剣の男は風に巻き込まれて大きく体勢を崩している。
この分ならすぐに剣を振る事は叶わないと判断して、
横から駆けてきたシーフの対処の為、身体の方向を合わせる。
キイィィッ・・・・シャアァァァァアアン!!
短剣はパリィをしても復帰が早い為、
次の一手を予測しながらでないと、
普通の片手剣を使う俺では途端にダメージを受けてしまう。
「うぉおおおりゃあああっ!」
「ぐえええええぇぇぇぇぇ!!」
目前から逃げたシーフの後を追ってきたマリエルは戦況を素早く判断し、
目標をシーフから体勢の崩れている片手剣士に変更。
脇腹へと強烈な一撃を食らわせて彼を場外へと吹き飛ばしてしまった。
カンカンカァーーーーン!
と、そこへ何かと何かを叩き合わせたような音が戦場に響き渡り、
俺たちの模擬戦の終了を告げる。
「みんな、ご飯の準備出来ましたよぉ!」
「お兄さん達も!アクアちゃん達も!戻ってきてくださぁーい!」
* * * * *
用意された昼食を食べながら、
俺たちの相手をしていた冒険者に声を掛ける。
「どうですか?」
この言葉の主語をわざと外して問いかけた。
顔を上げて反応したのは俺たちとは違うもうひとつのパーティ。
そのリーダーを務めるシーフのゼノウ。
「正直に言って、自分達を過大評価していたと気づかされた。
先のダンジョンでもアルカンシェ様達の戦闘は見させてもらったが、
自力が違いすぎると感じている・・」
「足手まといは十分に理解させられたわね・・」
影が差したような低いテンションで答えるゼノウとトワイン。
この3日間でゼノウとライナーは、
俺たち人間サイドの誰にも攻撃を当てられていないし、
トワインの弓に関しては驚異とすら認識されていない。
そして唯一魔法攻撃を行えるフランザも、
放った魔法を斬られたり撃ち抜かれたりされて、
攻撃としての意味よりも行動阻害程度としか機能できていなかった。
「まぁ、時間はまだありますし。
ゆっくりと検討されて下さい」
「ありがとうございます、アルカンシェ様」
よほど腹に据えかねているのか、
黙々と食事を取るライナー。
それぞれの感情を理解したうえで優しい声を掛けるアルシェに、
フランザが感謝の意を伝える。
実のところ、あの朝練だけではやはり判断がつけられないとして、
俺たちにも彼らにも猶予を与え、
次の町に到着するまでの数日で答えを出す事にした。
俺たちは彼らが使えるか・・・いや、
正確には簡単に死なないか。仲間として信頼できるかを。
彼らは俺たちの状況を見て感じて理解してもらい、
付いてこられるかどうかを見極めてもらう。
街道の移動に関しては、
俺とアクアが水精霊纏をしてニルが加速魔法を掛ける為外で活動し、
他のメンバーは戦技教導やその他の相互理解を深める為に、
クーの影倉庫の中で日中は生活をしてもらっている。
「よっし!再戦だっ!」
「いえ、悪いのですが次は夜になります。
相手がマリエルでもよろしければ中でどうぞ」
「ちっ!」
「ライナー。
いま俺たちが正面から戦ってやっと対等なのがメリーさんだ。
そして、彼らは攻撃魔法を使えるのにまだ使わせてもいないんだぞ」
「いや、俺は時々風を起こしたりしてますけど・・・」
「ダメージに繋がらない風起こしは俺たちの言う魔法とは違う。
もっとアルカンシェ様が使っていたような攻撃的な奴の事だ」
確かに俺たちは魔法剣然り攻撃性のある魔法をこの3日間の模擬戦では使用してはいない。
先ほど言ったように制御で風を起こす程度はちょこちょこ使っているし、
アルシェも戦闘用ライド[輪舞]を使用している。
25歳前後の男の腕力と13歳の女の子の腕力では、
ステータスが勝っていたとしても性差の筋力によって正面から受け止める事は難しい。
その為、足を使い避け捌き、隙を突いて彼らを穿った。
つまり、実質的な従来の前衛として戦闘をした場合、
俺たちに差がほとんどないという事だ。
半年以上の努力の成果と考えると嬉しく思う反面、
実体の見えない魔神族を相手にするには不安が増してしまった。
彼らは冒険者として活動を始めたのは16歳からだと聞いている。
そのダンジョン戦闘だけの経験で約10年。
それぞれが別の町で合流していきペルクパーティとなったとしても、
レベル40前後の戦闘力の上限に達しているのかもしれない事を考えれば、
同等の俺たちも同じく今までとは違う戦闘方法を開発しないといけないかもしれない。
やはり、俺たちに魔神族との直接戦闘は出来ない・・・。
「お兄さん?出発するんですよね?」
「ん?あ、あぁ・・すまん。ちょっと考え込んでた」
『ますたー・・・』
『お父さま、少々顔色が優れません。午後は交代してお休みいたしますか?』
「いや、大丈夫だ。いつもの癖で悪い方向に考えてただけだから。
さぁ、みんな影に入れよ、出発するぞ!」
次の町[フーリエタマナ]に到着するまでの間に、
精霊使いではない冒険者の強化案を考えておかないとな。
* * * * *
()は武具補正値、[]は称号補正値。
名前 :ライナー=ライボルト Lev.38
所持金 :54.560G
ステータス:STR 40 (+01)[+00] =STR 41
INT 6 (+00)[+00] =INT 6
VIT 42 (+01)[+00] =VIT 43
MEN 6 (+01)[+00] =MEN 7
DEX 26 (+00)[+00] =DEX 26
AGI 20 (+00)[+00] =AGI 20
GEM 10
《ランク1》ガガトニスの洞穴:ダンジョン踏破率100%
《ランク2》木人族の大森林 :ダンジョン踏破率100%
《ランク3》バゼド飲食店地下:ダンジョン踏破率 38%
◆称号◆
なし
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■装備■
片手剣 :金剛剣 ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/30 VIT/42
兜 :アイアンヘルム ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :普通
要求 :STR/20 VIT/25
鎧 :フィールドアーマー ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/22 VIT/22
ステ増減:STR+1/VIT+1/MEN+1
装飾品 :ドラウプニル 入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :なし
特殊効果:取得金額50%UP
* * * * *
名前 :ゼノウ=エリウス Lev.38
所持金 :73.900G
ステータス:STR 29 (-05)[+00] =STR 24
INT 6 (+00)[+00] =INT 6
VIT 20 (+00)[+00] =VIT 20
MEN 6 (+03)[+00] =MEN 9
DEX 39 (+10)[+00] =DEX 49
AGI 40 (+21)[+00] =AGI 61
GEM 0
《ランク1》ガガトニスの洞穴:ダンジョン踏破率100%
《ランク2》木人族の大森林 :ダンジョン踏破率100%
《ランク3》バゼド飲食店地下:ダンジョン踏破率 38%
◆称号◆
なし
†ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー†
■装備■
片手剣 :マインゴーシュ ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/12 VIT/12 DEX/16
特殊効果:敵ノックバック補正+5%/武器防御力補正+20%
ステ増減:DEX+2/AGI+3
兜 :黒頭巾 ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/15 VIT/12 MEN/15 DEX/18
特殊効果:クイック+2
ステ増減:MEN+3/DEX+3/AGI+3
鎧 :陽炎 ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :レア
要求 :DEX/35
特殊効果:武器クリティカル補正+30%
ステ増減:STR-5/DEX+5/AGI+10
装飾品 :ファイターブーツ 入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :なし
ステ増減:AGI+5
* * * * *
名前 :トワイン=エレオノーラ Lev.35
所持金 :89.510G
ステータス:STR 40 (+01)[+00] =STR 41
INT 11 (+00)[+00] =INT 11
VIT 25 (+02)[+00] =VIT 27
MEN 10 (+02)[+00] =MEN 12
DEX 30 (+03)[+00] =DEX 33
AGI 16 (+00)[+00] =AGI 16
GEM 9
《ランク1》ガガトニスの洞穴:ダンジョン踏破率100%
《ランク2》木人族の大森林 :ダンジョン踏破率100%
《ランク3》バゼド飲食店地下:ダンジョン踏破率 38%
◆称号◆
なし
†ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー†
■装備■
片手剣 :コンポジットボウ ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/36 DEX/28
特殊効果:睡眠付与+12%
ステ増減:STR+1/DEX+1
兜 :小人の帽子 ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :DEX/18
特殊効果:なし
鎧 :キュアアーマー ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/25 VIT/25 DEX/23
特殊効果:毒・麻痺・沈黙・暗闇に対する耐性+100%
ステ増減:VIT+2/MEN+2
装飾品 :オパールリング 入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :なし
ステ増減:DEX+2
* * * * *
名前 :フランザ=メリオール Lev.35
所持金 :45.800G
ステータス:STR 20 (+00)[+02] =STR 22
INT 35 (+05)[+02] =INT 42
VIT 10 (+00)[+02] =VIT 12
MEN 45 (+04)[+02] =MEN 51
DEX 15 (+00)[+02] =DEX 17
AGI 15 (+00)[+02] =AGI 17
GEM 1
《ランク1》ガガトニスの洞穴:ダンジョン踏破率100%
《ランク2》木人族の大森林 :ダンジョン踏破率100%
《ランク3》バゼド飲食店地下:ダンジョン踏破率 38%
◆称号◆
壊れた歯車 :ALL+2
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■装備■
片手剣 :神の杖 ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/10 INT/20 VIT/8 MEN/25
特殊効果:最大MP補正+20%
ステ増減:MEN+1
兜 :司祭の帽子 ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :普通
要求 :INT/15 MEN/16 DEX/15
特殊効果:最大MP補正+10%
鎧 :真紅のローブ ◇入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :STR/11 VIT/11 MEN/20 DEX/18
特殊効果:魔法防御力補正+10%/最大MP補正+10%
ステ増減:INT+3/MEN+3
装飾品 :ターコイズリング 入手経路:ドロップ品
希少度 :プチレア
要求 :なし
ステ増減:INT+2
いつもお読みいただきありがとうございます




