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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
閑話休題 -アスペラルダ国境道~関所~フォレストトーレ国境道-
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閑話休題 -15話-[ハイラード共同牧場~マリーブパリアⅠ]

「クーっ!!」

『お父さまーっ!』


 私たちは予定通りに、

 その日から2パーティに分かれて行動します。


「クーーっ!」

『お父さまーーっ!』


 私を含めてお兄さんとマリエルはそのまま次の町を目指して移動し、

 メリーとクーちゃんは、オベリスク調査の為と闇倉庫(シャドーインベントリ)の効果範囲確認の為に、

 先日討伐したハイイヌの生息域である山向こうへと一時向かう事となります。


「クーーーっ!」

『お父さまーーーっ!』


 前日には2人にお話をして納得してもらい、

 クーちゃんは昨夜お兄さんと2人きりで過ごしていました。

 今までずっと一緒にいて、

 城でのメイドの修行中でも会おうと思えばいつでも会える状況でした。

 でも、今回は初めてしばらく自由に会えなくなるという事で、

 私とアクアちゃんも昨夜はお互いに我慢をしてお兄さんに近寄りませんでした。


「クーーーーっ!!」

『お父さまーーーーっ!!』


 そして、今日。

 朝から少し静かなクーちゃんと、

 そのクーちゃんの様子を心配そうに伺うお兄さん。

 私たちも2人をこのまま離してしまって大丈夫かと気が気ではありませんでした。


「クーーーーーっ!!」

『お父さまーーーーーっ!!』


 いざ、牧場を出発しようと道まで出ると、

 牧場の方々や子供達が仕事を中断してお見送りに来てくださいました。

 お互いが感謝の言葉と健闘の言葉を交換して、

 お兄さんとクーちゃんに懐いていたメイフェルちゃんともお別れを告げ、

 言葉はなくともメイフェルちゃんは笑顔で手を振って私たちを送ってくれました。


「クーーーーーーっ!!!」

『お父さまーーーーーーっ!!!』


 問題はここからで、

 牧場関係者の方々がお仕事に戻られてから、

 私とマリエルは軽い言葉で2人に気をつけてほしいと伝えました。

 お兄さんとクーちゃんはしばらく抱き合っており、

 私たちも会う時間が少なくなることも考えて、2人が離れるのを待ちました。


 1分・・・3分・・・5分・・・の時点でどうしようかと、

 同じく2人を待つメリーとマリエル、それからアクアちゃんに目配せをして、

 もう少し待つ事にしましたが、

 10分を過ぎた頃には、これはお兄さんもクーちゃんも、

 私たちの介入がなければ踏ん切りが付かないと判断して、

 私とマリエルがお兄さんの両腕を掴んで引きずって進み、

 クーちゃんはメリーに抱きかかえられて離れていきました。


 その後はずっとこの掛け合いが続いています。


「隊長・・・いいかげんに大人になりましょうよ・・・」

「マリエル・・・大人だからこそなんじゃないかしら」

「うちはこんな過度な愛情を感じる別れじゃありませんでしたよ?」

「マリエルはもう大きいですからね。

 お兄さん達が守ってくれるということで許可を出した手前、

 あまり行動に出しづらかったんじゃない?」

「クーちゃんは小さいから親として離れるのは心配ってことですか?」

「そういうことね。

 とはいえ、少し過剰な気もするけど」

「ですよね~」



 * * * * *

「さて、マリーブパリアに向けて出発するか・・・」

「格好つけているところ悪いのですが、

 すでに出発は済ませて100m以上進んでいます」

「師匠、ずっとクーちゃんとメリーさんの進んだ方向を見て呆けてましたからね」


 はて?いつの間に牧場を出ていたのだろうか?

 それとなんだろうか・・・。

 こう、今さきほどまで胸の中に収まっていた大事な何かが、

 遠くへ行ってしまったようなこの感傷は・・・。


「はい。アクアちゃんを抱いて平常心を整えてください」

『ますた~、だいじょうぶ?』

「あぁ、大丈夫だよ。

 アクアを抱きしめたら落ち着いてきたよ、ありがとう」

「そろそろ自分で滑ってくださいよ。

 私と姫様でここまで引きずって進んだんですよ?」

「あ、そうなのか。

 なんかお尻が痛いと思ったらそういうことか」


 ヒリヒリと何かに打ち付けたような痛みのあるお尻をさすりつつ、

 胸の中に収まるアクアへ頬ずりしたくなりすりすりする。

 アクアも嬉しそうではあるが、

 どこか寂しげで浮かない表情をしているのは、

 妹分のクーが離れてしまっている事が原因だろう。


「食事をした後と寝る前にクーに会えるんだから、

 あまり心配しすぎてクーに今のアクアの顔を見られたら、

 逆に心配を掛ける事になるぞ」

『あい。ますたーもね』

「そうだな、気をつけるよ」


 むにむにとお互いのほっぺを触り合う。


「メリーさんも影を通れば会えるんですよね?」

「そうだけど、どちらかがあちらに残らないといけないから、

 お風呂以外の時間は控えると思うわ」


 そんなこんなで牧場を後にして、

 俺達とメリー達の移動は開始された。

 おおよそ1週間と少しで目的地には到着出来ると予想しており、

 そこで発見次第影を通って合流する事になっている。

 最終的な距離としては2週間ほどの距離が開く為、

 その時点で影倉庫(シャドーインベントリ)が利用出来れば、

 2町間分に相当する距離を限定的な瞬間移動が可能となるのだ。

 クーの事も心配ではあるが、今回は師匠のメリーに任せて、

 俺は俺で幼い少女達の護衛を頑張らないとな。

いつもお読みいただきありがとうございます

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