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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
閑話休題 -アスペラルダ国境道~関所~フォレストトーレ国境道-
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閑話休題 -13話-[ハイラード共同牧場Ⅲ]

「ギルドでどうにか出来ますか?」

〔オベリスクの調査ですか・・・。

 アスペラルダ王も準備を整えていらっしゃるのですが、

 まだ決まっていないんですよ〕

「俺達で行くべきかちょっと迷っていて、

 もしギルドの方で対応出来るのであれば先に進みたいと思ってですね」

〔わかりました。

 国によって運営方法にも違いはありますが、

 情報自体は行き渡っていますので、

 どうにかフォレストトーレ側の冒険者に動いてもらえるように、

 パーシバルへ急ぎ相談いたします〕


 パーシバルはギルドフォレストトーレ支部ギルドマスターのドワーフで、

 アインスさんとも面識のある頼れる方らしい。


「ギルド間でも通信って出来るんですか?」

〔いえ、魔法ギルドの受付を通してになるので、

 時間が掛かってしまいます。

 でも、かならず動かしますから皆様は旅を進めてください〕

「わかりました、お言葉に甘えさせて頂きます。

 何か協力が必要になりましたら声を掛けてください」

〔はい、では失礼します〕


 牧場生活2日目。

 朝ご飯を食べた後、皆は各々した事をやり始め、

 俺は先にオベリスクに関しての報告をアインスさん経由でさせてもらう。

 今回のハイイヌの件で魔物や動物はオベリスクに反応して逃げるのだから、

 わざわざ人海戦術で探さなくとも、

 そういう情報を集めればいいのではないか?と考えたわけだ。

 その動物の異常な行動すら破滅の呪いでまぁいいかとなりかねないけれど、

 抜け穴を探す為にも可能性の模索を繰り返す必要があった。


 そのついでに冒険者を派遣して先のハイイヌが生息している地域の調査を、

 ギルドのクエストを利用して出来ないかと話をしてみたのだ。


「今回の場合は逃げ出したハイイヌが被害を出したから、

 牧場主の人達も認識出来たって事かな・・・?」


 アインスさんにはまかせると言ったけれど、

 オベリスクの調査は俺達が対応すべきだと俺の中でアラームが鳴っている。

 どうにも納得し切れていない頭を振りきって、

 マリエルと一緒にブルププクの討伐へと出発した。



 * * * * *

 ハイイヌの時は一度に3匹までしか相手にさせなかったが、

 ブルププクは走り出せば曲がるのがヘタクソな魔物なので、

 慣れれば5匹くらいの相手も可能だと判断。

 ぞろぞろと皆で動いても手持ちぶさたで時間が勿体ないと言う事で、

 アルシェには魔法の調整、メリーも制御の訓練、

 アクアは操れる水の種類を増やす為色々と試させて、

 クーはメイフェル達と折り紙をさせている。

 折り紙は遊びも兼ねて閻手の組み合わせを勉強させている。


「出来ればちゃんとした格闘家に習って欲しいところだな」

「師匠の教えでも十分戦えているんじゃないですか?」

「それはそうだけど、俺は足技をあまり知らないからさ。

 マリエルはカエル妖精の特性を持っていて、

 蹴りの威力が人間よりも高いからもっと・・ってな」

「でも、リーダーは普通に防いでますよね?」

「そりゃ防ぐけど武器防具で守らないと痛いからな?

 拳は武器を装備してるし、

 蹴りは装備無くても痛いしでお前の相手も大変なんだぞ」

「へへへ、なんだか褒められているみたいで嬉しいですね」


 魔法の扱いは流石にアルシェとアクアに負けるけれど、

 こちらも少しずつ時間を設けて勉強させている。

 指向性(ベクトル)を持たせる事に関しては、

 まだ早いと判断をして教えてはいないけれど、

 いずれは俺達を見ていれば勝手に気付くだろう。


 とはいえ、俺自体が魔法剣に頼りきりで汎用魔法を使わないから、

 その辺はアルシェ先生に任せるしかない。


 牧場に戻ってくると、

 与えられた小屋にはアルシェ達が全員集まっており、

 それぞれが魔法の練習をしていた。


「お兄さん、マリエル。おかえりなさい。

 どうでしたか?」

「ただいま戻りました姫様」

「ランク1なら囲まれない限りは対処が出来ると思う。

 あとは、オベリスク環境下での対応方法を考えないとな。

 アルシェは新しい魔法の具合はどうだ?」

「アクアちゃんと一緒に組み上げた魔方陣でいろいろと試してますけど、

 まだまだ実用的じゃないですね。

 見ててください。《アイシクルアンカー!》」


 前に翳した手の平から氷の錨が飛び出し、

 そのまま以前教えた鎖も続けて精製され、前方へ進んでいく。

 しかし、5mも出てくると在庫切れなのかその先は出てくる事はなく、

 アンカーと連なる氷の鎖はその場でふわふわと停滞する。


「今のままだと使い勝手が・・・」

「制御は全体でやってるのか?」

「はい。細かい動きに対応出来るようにと全体を制御してます。

 でも、そうなると鎖の輪ひとつひとつに意識を配ることになって・・・」

「それだと辛いですよね?

 隊長の言ってた流れるような動きの為とはいえ、

 このままだと戦闘では使えないですよね」

「あぁそうか・・、

 制御をするのはそこまで細かくなくて良い。

 全体にするなら頭のアンカーの後に続くように設定するのもいい。

 フランシカ副将の武器みたいな感じだな。

 他だと、数個の感覚毎に制御する方法かな?

 ただこれだと弛みが生じて美しくはない」

「美しさは二の次でいいかと・・・」

「姫様の意見に私も賛成です・・・」


 自由自在に動かして自身を守る事も、

 攻撃に転ずることも出来る動ける氷魔法を目指した結果。

 アクアの水は元より液体だから流動的に動かせるし、

 クーの閻手もそれなりの自由が効いて、

 カーブしながら目標に刺さる事が出来る。

 氷は固体なので、魔法になっても基本的に物理的に曲げたりは厳しい。

 射出後は敵に当たるのを待つだけで、

 リリカルな魔法少女のように上手な遠隔操作は出来ない。


 間接駆動も考えたけれど、

 正直いまの俺達では処理しきれないと断念し、

 シンプルだが安心と信頼を確立している鈍くて硬い鎖を採用。

 構造上の丈夫さも折り紙付きでそうそう破壊される事はない為、

 その頑丈さを買って、先端には重厚で超攻撃的な錨を選択した。


「あ、でもですね、見ててください!」


 先にある大岩に狙いを定めてアイシクルアンカーを操るアルシェ。

 真っ直ぐ一本の槍の如く聳えるアンカーに対して、

 姿勢は真横を向き、

 岩に差し出す左手はアンカーの鎖に添えるように上向きに、

 右手は鎖の最後尾に触れないけれど支えるような体勢を取る。

 次の瞬間には右手の中指と人差し指でチョンッと鎖を触ると、

 ものすごい勢いで大岩へとすっ飛んでいき、

 刺さるだけでなくそのまま貫通し、

 ドデカい音と土煙、そして砕け散った元大岩の欠片が全身に降り注ぐ。


「こうやって使うと、勇者の剣(くさかべ)の上位互換ってかんじじゃないですか?」

「意味ねぇ~(笑)」

「流石です、姫様!」


 従来の氷魔法のような扱いをすると確かに高い威力を発揮した。

 しかし、俺が目指しているのはその威力を発揮したまま、

 半永久的に駆動可能な魔法なのだ。

 このままでは遠距離水氷魔法の中級といった位置づけで終わってしまう。


「通過点として使うのはいいけど、

 2段階魔法になるから、咄嗟だと勇者の剣(くさかべ)使っちまうだろ?」

「それはそうですけどね。

 時間は掛かりますけど、私だけのオリジナル魔法になりそうですし、

 頑張って改良を加えていくつもりです。

 実は槍のように扱えないかと持ってみたんですけど、

 重すぎて持ち上がらず、

 制御で槍のように操作して振り回してみたんですけど、

 これも制御力が足りなくて断念しまして・・・」

「それでこれか・・・。

 まぁ、本来の使い方が出来るまでの繋ぎにはなるか・・・」


 この場では口にしなかったが、

 ならアンカーじゃなくて専用の魔法を作れば良いじゃんと思った。

 ベクトル操作や勇者の剣(くさかべ)と違い、

 鎖という部分で苦戦しているみたいだけど、

 息をするように操れるようになれば弱点らしい弱点もない魔法に仕上がる予定だ。

 俺もだが、魔法制御の訓練は毎日行って、

 少しずつ制御力は上がっている実感もあるし、

 まだまだ色々試していこう。


「そういえば、アイシクルエッジって地面のどこまで凍らせられるんだ?」

「え?どういうことですか?」


 槍のような形に固定したままヒュンヒュンッと回転しながら、

 アルシェの側に戻ってくるアンカーを見つめながらアルシェに質問をする。

 実際広範囲に発動出来るのは知っているが、

 地面の下はどこまでが凍り漬けに出来るのか知らなかった。


「地面の表面を凍らせる魔法なのはわかってるんだけど、

 地面自体を凍らせることは出来るのか?」

「やったことはないですね。

 地面って土属性の領分という認識なので考えてもみませんでした」

「もし地面の下も凍らせられるならアンカーの魔法に組み込んで、

 地面から伸びるようにしたらいいかと思ったんだけど・・・」

「わかりました、アクアちゃんと色々と試してみますね」

「あぁ、頼むな」



 * * * * *

 自由時間になると牧場の子供達がアクアとクーを遊びに誘いに来た。

 バッ!と振り返るアクアと、

 捨てられた猫のように訴えかけるような目をして振り返るクー。


「行っておいで。

 喧嘩はしてもいいけど怪我はさせるなよ」

『あい!いってきま~す!』ぴゅ~

『え、えっと・・行って参ります』ペコ


 ありがとうございますや行ってきま~すと、

 子供達がアクア達を真似て俺達に挨拶して遊びに出かけていった。


「・・・・(クイクイ)」

「お、メイフェル?

 急いで行かないと置いてかれちまうぞ」

「・・・・(ふるふる)。・・・・・(ばっ!)」

「よっと。俺と一緒に居たいのか?」

「・・・・(コクコク)」


 彼らを見送ってから俺達5人は、

 コテージのベランダにあるテーブルで、

 メリーが淹れてくれたお茶を飲みつつまったりする。


「あの、お兄さん・・・。

 なんでメイフェルちゃんを抱いてるんですか?」

「ん~?遊びに行くより俺と居たいんだってさぁ~。

 明日には出て行くわけだしなぁ、仕方ないんじゃないかぁ~?」

「幼女にモテますねぇ」

「俺からしたらお前等も幼女だよ。

 俺の世界なら挨拶しただけで罪人扱いだからな」

「こっちの世界に逃げられて良かったですね、リーダー」


 獣人だからかメイフェルは俺の匂いを良く嗅いでは目を細める。

 まさか羊の獣人に懐かれるとは思っていなかったが、

 この抱き心地は最高だなぁ。

 膝の上に座らせてるんだけど、

 メイフェルの頭にちょうど俺の顎を乗せられるから前面で彼女を感じられる。

 あ、イヤラシイ意味じゃないですよ?


「ご主人様もリラックスされていますけれど、

 メイフェル様も気持ち良さそうな顔をされていますね」

「抱き心地もいいんだけど、

 アクアが次に進化したらメイフェルくらいに成長すると思うからさ、

 予行演習だと思うとなんだか楽しいもんだよぉ」

「そういえば、アクアちゃんはそろそろ進化するかも知れないんでしたか?」


 アスペラルダで進化をしてからおおよそ8週間。

 強制進化の召喚で浮遊精霊3体分の能力を有していたアクアは、

 それからアルシェの魔力を取り込みまくって1ヶ月で進化したけど、

 その能力は浮遊精霊5~7体分くらいだと考えている。

 その度に経験値を貯めるわけだから、

 次は2~4ヶ月くらいかと予想しているが、

 未だに眠そうな様子を見せない。


「前に進化して2ヶ月だからそろそろかと思ってるけどさ、

 核の様子も見れないしどうなんだろうなぁ・・・・」

「核なら見せてもらいましたよ。

 少し色合いが深くなっていたような気もしますね」

「え?どうやって見たの?

 俺、進化してから1回も見た事無いんだけど・・・」

「私も見た事ないですね。いつか見せてくれるかなぁ」


 衝撃の事実が判明した。

 曰く、女子部屋で夜に集まる機会がある時に、

 時々アクアは宝物を見せてくれるように核を出してくれるという。


「こう、胸の前に両手を翳すと、胸の奥から核が出てくるんです」

「へ、へぇ・・・」

「クーデルカ様も出せるようですが、

 お父さまに頂いたクーの一番大切な宝物なので、

 あまり人前に出そうとは思いませんとの事です」

「あ、別にアクアちゃんも軽々しく扱っているわけじゃないんですよっ!?

 アクアちゃんからしたら大事な物だからこそ見て欲しいって事で、

 私達にしか見せた事はないんです」

「俺、見てない・・・」

「父親に大事な物を見られるのは恥ずかしいですから。

 ご主人様はご息女の成長を喜ばれると宜しいかと」

「あぁ~、それはありますよねぇ。

 私も大事に隠してる物を見られるのは嫌ですもん。

 お母さんは見て見ぬフリをしてくれますけど、

 お父さんとお爺ちゃんは、これ何?って聞いてくるんですよねぇ」


 それはそうかもしれないけどさ・・・。

 大事にしてくれているという話は正直嬉しかったけど、

 やっぱり成長とか色々気になるじゃない?

 自分の目でみたいなぁ。今度アクアにお願いしてみよ。


「で?アクアの核はどんな感じだった?」

「さきほど言ったとおり色合いが深くなってとても幻想的でした。

 それになんだか以前より大きくなっていた様な気がします」

「大きくなる?核自体が成長してるって事か・・・?」


 どういうことだろうか?

 進化に向かって着実に成長しているということは間違いないだろう。

 可能性としては、

 1.核も精霊のように生きている

 2.鉱物のように魔力を吸うと質量が増える

 3.脱皮する

 こんな感じか?精霊石も魔力が貯まった石だと聞いたし、

 2番が有力だな。

 大穴の3番も捨てがたいが、脱皮した殻はどこへ行くのか・・・・。


 しばらく雑談をしつつのんびりしていると、

 メイフェルが寝息を吐き始めた。

 秋になりかけで少し肌寒いからか、

 俺に垂れ掛かり暖かくなって眠ってしまったようだ。


「・・・メリー」

「はい、ご主人様。どうされましたか?」

「・・・・明日からクーを連れて山向こうへ行って欲しい」

「え?どういう事ですか、お兄さん?」

「2人だけ別行動ってことですか?」

いつもお読みいただきありがとうございます

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