閑話休題 -10話-[ファルクルース関所~ハイラード共同牧場]
ピィーーーーーン・・・。
「今の気付いたか?」
「え?どれですか?」
関所でパスカードを提示して門をくぐる時に、
何か膜を越えるような・・・、
言ってみれば結界を越えたような気がした。
空気を吸ってみると、
若干先ほどまで吸っていた空気よりも乾燥している気がする。
「リーダー、何かありました?」
「関所の門をくぐった瞬間に、
実際目に見えない何かを越えた気がしたんだ」
「私は感じませんでしたけど・・・、マリエルは?」
「私も何も感じませんでしたよ?」
「メリーもか?」
「はい、私も特には何も」
「アクア達は何か感じたか?」
『かんじたというか、かんじてるよ~。
なんかここ、いごこちがよくないね~』
『クーは何も感じません』
アクアと俺だけが感じた違和感?
いや、俺は門をくぐる時で、
アクアは現在進行形で感じている・・・・。
「バイオームが変わったのか?」
「バイオーム?」
「う~ん・・どう説明するか・・・。
たぶんなんだけど、この関所を境に水の国と風の国で環境が違うんだ」
「環境が違うというのがよくわからないですね」
「アスペラルダは水精に適した環境で、
フォレストトーレは風精に適した環境って事で。
アスペラルダの季節とフォレストトーレの季節が違うって言うか・・・。
わかる?」
「なんとなく言いたい事はわかりました」
「今は火の月だけど、
アスペラルダとフォレストトーレで違いがあるって事よね?」
「ご主人様とアクアーリィ様が感じて、
クーデルカ様が感じないのはどういうことでしょうか?」
「クーは闇属性だから、
影があれば過ごしやすいし陽の元だと過ごしづらい。
環境の違いは大した事じゃないんだろう」
『そういうことなら、お父さまの仰る通りかと思います』
これの管理は誰なのかとか、
人の出入りを認識しているのかとか、
どういう意味での結界なのかはまた大精霊様に会った時に聞けば分かるかな?
「アクアは息苦しいなら慣れるまで周囲を加湿してな」
『あい~、そうする~』
「あ、空気が変わりますね」
「うーん、こうなるとわかりやすいかも」
アクアが制御で加湿し、周囲の湿度をいつもの通りに戻すと、
アルシェもマリエルもその変化を如実に感じ取った。
「まぁ、動き始めたら意味なくなるから。
こういうのは部屋に戻った時とかに意味が出るからな」
『篭もりませんから仕方ないですね』
「そういうこと。
さて、メイフェル。君を牧場まで運ぶのに誰かが抱えることになるが、
誰だったら抱きついてもいいって思える?」
メイフェルの年齢は6歳。
保育園や幼稚園だと年長組にいるお年頃だ。
それでも心に傷があるからか、ずいぶんと大人しい印象を受ける。
俺の言葉に良く理解は出来ないと首を可愛らしく傾げるが、
伝えたい事の誰だったら抱きかかえても良いかという部分は分かったのか、
ゆっくりと俺達を見渡していく。
「・・・・(スッ)!」
やがて、信頼に足る人物が決まったのか、指を差して伝えてくる。
「・・・お兄さんですか?」
「結構悩んでたから消去法だなこりゃ」
「じゃあ、さっそく出発しましょうよ!」
『クーどうすればいいですか?』
「メイフェルが離れないんだからクーも一緒に抱っこするよ」
『あー、ずるーい。あくあもだっこしてほし~!』
「1時間程度ですから、我慢しましょうアクアちゃん」
『ぶー』
『ごめんなさい、お姉さま・・・』
『くーはあやまらなくていいの~。
あくあがわがままいってるだけなの~』
わかっているなら、口に出さずに黙って俺の肩にでも乗っかれば良い物を、
衝動的に感情を口に出すところはまだまだ子供だ。
そういえば、アクアが進化してからそろそろ2~3ヶ月くらいか。
特に眠そうなそぶりもないけど、
ちょっと気にするようにしておいた方が良いかな?
「よいしょっとっ・・・!
じゃあ、出発するぞー」
全員が走り始める準備をすぐに終わらせ、
さっそく走り出す。
「火の月とはいえ、そろそろ土の月に近付いてますから、
少し肌寒く感じますねぇ」
「私は寒いの得意だから大丈夫かな。
火の月は漏れ出す冷気で対策も出来ますし」
「流石は姫様ですね!
師匠はメイフェルちゃんを抱えているんだから気をつけてくださいよぉ」
「わかってるよ。
ちょっと風を制御して直で受けないようにしてるから大丈夫だ」
「あ、そんな事出来るんですね。
メイフェルちゃん、寒くない?」
「・・・(コクリ)」
「空気も乾燥してるからいつもの感覚で息してると、
お前等ものど痛めるかも知れないからな。
アクアを見習って移動中だけでも制御して、吸う空気に加湿しておけよ」
「「はぁーい」」
メリーはさりげなく俺の背後を走っていて、
風避けの恩恵をハイエナしていた。
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