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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
序章 -王都アスペラルダ城編-
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-04話-[あと少ししたら俺、お城から出て城下町で暮らし始めるから]

序章最終話です。

 謝罪の言葉を口にした姫様と向かい合う。


 この子は人見知りと2人の衛兵から聞いていたが、

 あの大声は緊張から発してしまった物だったのかも知れない。

 この小さな身体からどうやってあの大音量が発されたのか甚だ謎だ。

 先ほどの防具屋で俺が少しでも良いから声さえ掛けていれば、

 あんな悲劇は起きなかっただろうと今になり後悔している。

 この幼い少女は俺に何かしら伝えたいことがあり、

 なけなしの勇気をかき集めてあの防具屋で俺に接触をしてきたのだろう。


 でなければ、あそこまで他人を凝視することはないだろうし。

 そんな健気な少女を俺は放置してしまった。

 あの時の彼女の絶望は計り知れなかっただろう。


 そんな後悔は今更遅く本当に後悔は先に立ってくれない。

 召喚されたあの時に自分のことを冷静だと判断した俺はどうかしていた。

 今の俺を見てみろ!

 明らかにネタを突っ込めそうなタイミングを見つけては余計なことをしているお調子者だ!

 完全にオタク野郎だよ!

 冷静だったのは召喚時の記憶混濁が原因だろう。


 謝罪を口にする少女を前に俺は何も出来ずにいた。

 なんてったって。


 今の俺は、うがいおじさんの集団に囲まれているからだ。










 はっきり言おう!













 恐怖しかない!!!!












 うがいの音が輪唱を奏で続け、

 おじさん達の口から飛び散る飛沫が俺にかかりまくっている。

 俺の周りをグルグルと回り、

 背後を取った人は漏れなく背中に頭突きを食らわせてくる。


 姫様に何かしらアクションを取らなければこの包囲が解けることはないのだろう。

 いや、声を掛けても姫様が傷つくような結末になれば、

 俺はこの街に居られなくなると確信する。

 声を掛けようと息を吸うたびに俺の一字一句聞き逃さないように彼らの輪唱と徘徊が止まる。


「姫様、私こそ申し訳ございませんでした。

 姫様がおそらく私に御用があるであろう事は薄々承知しておりました。

 もし機会を、お許しを頂けるのであれば私に・・・」


「私こそ、重ねて謝罪いたします。

 宗八さんにご迷惑をお掛けする心積もりではありませんでした。

 こちらこそ、此度の失態を挽回する機会をいただけないでしょうか?」


 王族に謝られると胃が痛くなるな。

 幼くとも王族に相応しい所作で謝ってくる姫様を目の当りにすると、

 自分の矮小さが浮き彫りになって、

 今にも安易に土下座してしまいたくなる。

 そんな小物な自分を押し殺し今は目の前の少女に尽くそう。

 心から向き合おう。

 今出来る事はあまりにも少ないが、

 誠意を持って言葉を交わそう・・・そう決意をする。


「では、一度城へ帰りましょう。

 落ち着いた場にてお話を伺いたく思います」

「承知いたしました。では・・・帰りましょう」


 と、手を出してくる姫様。

 顔の緊張は解けリラックスしたようにこわばりが無くなっている。

 この姫様は王妃様によく似て本質はお茶目なのだろう。

 年齢的にも甘えたい盛りを卒業していないだろうし、

 姫という立場上甘える機会が少ないのかもしれない。


「では、お手を拝借させていただきます」


 姫は満足そうに微笑んで先頭を切って歩き始めた。

 気がつけば、いつの間にかうがいする住民の姿はなくなっていた。



 * * * * *

「では、私とお話をしましょう宗八さん」


 時刻としては後はお風呂と寝るだけで、

 いつもなら外の修練所でダガーを振って身体の使い方を試行錯誤している頃だ。

 城へ帰還を果たした俺は姫様と手を繋いだまま門番をしている兵士へ帰還報告をした。

 当然の如くひと騒動あったが王妃様と姫様の鶴の一声で早急に静まった。


 今居る場所は客室のひとつで、

 いつも生活している宿舎から20分も離れた場所にある。

 友達の家に行くくらいの距離だろ?信じられるか?敷地内なんだぜ。


 チラッ


 なぜか王妃様が同じ部屋に居る。

 いや、メイドさんが姫様の両脇に控えているのはわかります。

 おそらくメイドであり兵士なのだろうことも予想がつきますが・・・。

 ただ、王妃様までこの部屋に居るのは、

 警護対象が増えることになり彼女達の負担が増えるのでは・・・、

 しかも誰にも告げずに来たんだろうなぁ。

 現にメイドさんが困惑しているし、

 二人を護るにはどうすればいいのかと視線を忙しなく動かしている。


「俺が位置を変えたり、外の兵士を呼んだりした方がいいですか?」


 いきなり話しかけられたメイドさん達は、

 まさか自分に話しかけてくると思っていなかったのか暫し呆然とした後・・


「いえ、命に代えてもお護りするので結構でございます。

 そのまま姫様とお話ください」

「あ、ではお言葉に甘えて・・・」


 と、目線を姫様に戻すと薄っすらと頬を膨らまして俺を睨んでいた。


 また無意識に無視をしてしまったようだ。本当にすみません。

 視界の端で王妃様が笑っている。


「ゴホンッ。改めましてご挨拶申し上げます。

 私の名はアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ、この国の王女をしております。

 親しい方にはアルシェと呼ばれています」

「紹介痛み入ります。

 私の名前は水無月宗八(みなづきそうはち)と申します、

 異世界人をしております。如何様にもお呼びください」


「「・・・はぁ」」


 目の前の姫様とお互いの口から同時に安堵したような息が漏れた。

 ギョッとして互いの顔を確認したが、

 悪い印象の面持ちでない事から同じ気持ちなのだろうとわかり、肩の力が抜ける。


「じゃあ宗八くんは娘のことをアルシェと呼んで、

 アルシェはお兄ちゃんと呼んでみなさい。

 その固っ苦しい言葉遣いも疲れるでしょう?二人とも辞めちゃいなさいな」


 端にいる婦人から楽しげな声が上がる。

 まぁ、姫様に対して今日一日で愛着が沸いたのも事実だし、

 城からは近々出るつもりだが、

 この国にはまだまだ滞在する予定だから良好な関係を築きたいとも思っている。

 年齢的にも妹のようなものだろうし抵抗はないな。


「わ、っわ、私の呼び方は、

 べ、別に、その・・・アル・・・シェで、かま、か、構いませんけど。

 流石にお兄ちゃんは・・・、

 確かに今日一日手を握っていただいている間に兄の様だと・・思いは・・・しましたが・・・」


 すっごい赤い顔をして愛称で呼んでもいいと言ってくれる。

 ありがたく好意に甘えることにしよう。


「・・・アルシェ。今日は機会をくれてありがとう」


 赤い顔をして俯いていたアルシェがバッと顔をあげる。

 恥ずかしくも嬉しいと思っている顔だといいなぁと内心苦笑する。


「いえ、私こそ!

 おn・・・お、にぃ・・お、おにい・・・ふぅ。

 お兄さんには感謝してます。ようやくお話が出来ますね」


 なんとか俺の呼び方の折り合いをつけてお兄さんと呼ぶことにしたようだ。

 まぁ、血の繋がっていない女の子にお兄ちゃんって呼ばれるのは、

 俺も気恥ずかしさがあるもんな。

 呼び方をお兄さんと決めてくれたアルシェに心の中でも感謝する。


 こうしてアルシェと俺は不幸な邂逅を果たし、

 一晩かけてひと月分のコミュニケーションを取り戻すかのように、

 彼女の就寝時間までお互いの話を繰り返した。

 時折、合いの手(チャチャ)を入れる王妃様も加わり話が円滑に進むように回してくれる。この人も過保護だなぁ。


 ・・・

 ・・・・

 ・・・・・

 ・・・・・・


「あ、あと少ししたら俺、お城から出て城下町で暮らし始めるから」

「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」



 * * * * *

 閑話休題

 -城下町生活3日前-アスペラルダ城図書館-


 お城での生活もあと僅か。

 この世界の魔法は魔導書で習得し、以後魔法名を唱えるだけで使える。

 どうにも、俺にはこの簡易性が納得いかなかった。

 やはり、魔法を使う為の詠唱とか習得までの特訓とか、

 想像の翼を大いに広げた俺は現魔法体制に疑問を持ち、

 その先が有るのではないかと思い、

 今日の午後からの訓練をお休みにして図書館へ来ていた。

 独自性を持った魔法・・・そう、固有魔法とかないのかなぁ。


 そんなことを考えながらソファに身体を預けながら、

 テーブルに山となる数冊目の魔法考察の書籍を読んでいた。

 それにしても涼しいなぁ。

 こんなに優雅なひと時を王族でもない俺が送ってしまっていいのだろうか。

 このひんやりとした空気は何故か左から漂ってきている。

 目を向けるとアルシェが俺の左肩に寄りかかりながら俺が読み終わった本を読んでいる。


「なぁ、アルシェ」

「なんですか、お兄さん?」

「な~んかアルシェがいる方から涼しい空気が漂ってくるんだけど、何かしてるの?」

「私は何もしてないですよー」


 リラックスしながら答えてくれるアルシェ。

 あの夜から4日経った程度でこの懐き様、

 簡単に騙されそうで心から心配になるな。


「ただ、私はシヴァ様から加護をいただいているので、

 魔法干渉力が普通の人より高いんですよ」

「魔法干渉力ってなに?」


 俺の野望に必要な情報のような気がしてアルシェに尋ねる。


「現在世界中で使われている魔法と呼ばれるものは、

 どういう原理で発動しているのか解明されていないとされています」

「はぁ?そんな訳のわからないものを使って大丈夫なのか?」

「解明されていないとされているだけで、

 実際は魔法ギルドが解明しているでしょう。

 帰還魔法[エクソダス]も人工魔導書ですし」

「あれって魔法ギルドが創った魔法だったのか・・・。

 道理で使い勝手が良過ぎるわけだ・・・。

 利益の独占所の話じゃないなぁ、魔法という分野を根こそぎ独占してるじゃないか」

「それが悪いことではなく世界に魔道具などとして還元されてはいますから、

 不満の声はあっても実際に行動にして魔法ギルドに楯突こうとする者はいませんけどね。

 現在確認がされている魔法だけで十分戦力になっていますし」

「そういうもんかねぇ・・・。で、魔法干渉力って何?」


 本題から逸れてきていたので修正する。


「普通の人で言えばエンチャント系魔法を使うときに、

 その強度差として影響を及ぼす魔法力に分類されます。

 ステータスを魔法方面に上げれば強化されていきますが、

 エンチャント魔法とは別に、

 無意識下で体に纏う魔法鎧(マジックアーマー)のような役割も果たしています。

 ただ、所詮魔力を上げたら勝手に着込む鎧なので対した効果は得られないんです」

「ふむふむ」

「私はシヴァ神の加護を称号に持っていますので、

 その影響で魔法干渉力も水系に偏っているんです。

 氷水系魔法も魔導書なしに上位まで開放されていますが、

 MPが少ないので発動できませんし・・・。

 この魔法干渉力だけは戦闘をしないと発見できず、

 魔法ギルドではなく冒険者が発見した物なので皆さん日夜研究をしているんですよ」

「その干渉力がアルシェは水系だから今近くにいる俺は涼しく感じているって事か・・・」

「そうなりますね。

 使い方次第では戦士特化ステータスな方の低い魔法力でも、

 もっと有意義な使い方が出来るかもしれないと現在は鋭意研究されている分野です」

「ふぅん。わかりやすく説明してくれてありがとう」


 この話は1つが解明されれば広く有効利用出来そうな分野だなと納得をし、

 別の可能性も模索するため次の本を開くのだった。



 * * * * *

 次回、城下町編スタート。新章冒頭ステータス公開。

 ()は武具で補正された数値、[]は称号も含めて補正された数値。


 名前   :水無月(みなづき)宗八(そうはち) Lev.7

 ステータス:STR 12   (+00)[+00] =STR 12 

       INT 6   (+00)[+05] =INT 11 

       VIT 6   (+00)[+00] =VIT 6

       MEN 6   (+00)[+05] =MEN 11

       DEX 12   (+00)[+00] =DEX 12

       AGI 6   (+00)[+00] =AGI 6

       GEM 6


 ◆称号◆

 異世界人     [補正なし]

 シヴァ亜神の加護 [INT+5 MEN+5 水氷属性消費MP-2]


 @装備@

 片手剣    :ダガー【レアリティ】雑魚

 要求ステータス:STR 5

         DEX 5


 盾      :ターゲットシールド【レアリティ】雑魚

 要求ステータス:STR 8

         DEX 8


 兜      :バンダナ【レアリティ】雑魚

 要求ステータス:STR 10

         DEX 12


 鎧      :レザープレート【レアリティ】普通

 要求ステータス:STR 9

         VIT 6


 @魔法@

 魔導書    :ヒール 初級

 要求ステータス:INT 6


 人工魔導書  :エクソダス

 要求ステータス:INT 6

いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
勇者としてではなく間違えて(?)召喚されたり、顔を覚えられない人は宇宙人だったり、うがいおじさんの集団が現れたり、ユニークなポイントがところどころにありました。 うがいおじさんは或いは主人公の心理表現…
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