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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第16章 -勇者 VS 魔王-

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†第16章† -06話-[魔族の隠れ里]

執筆遅れすみません。3月に入ってから熱だけが異常に高い状態が続き、コロナを疑ったのですが原因不明のまま熱は下がり。現在再び謎の高熱にうなされながら書き上げました。流石に38.9℃を見た時は「人間って40℃で死ぬんだっけ?」と少し覚悟しましたw

今は解熱剤で死を先延ばしにしております!

 ——再び場面は宗八(そうはち)に移る。

 宗八(そうはち)達三人は目的の村に向けて街道を歩いていた際に結界を通り抜けた事を察した。

「いま、精霊王の守護域を抜ける時と同じ様な感覚があったな……」

 気付いたのは宗八(そうはち)だけで同行して居る二人は気付いていない様子だ。

『(精霊王達とは比べ物にならないけど、狭い範囲で近しい気配はありました)』

 アニマも同様に先の違和感を認識していた事で村人に侵入がバレたと宗八(そうはち)は理解する。


「周囲を警戒しろ。村の戦力から接触があっても反撃せず防御にまわれ」

「かしこまりました」

 顔の向きも歩き方も変えずに発せられた宗八(そうはち)の指示にアナスタシアは疑問を抱かず即答した。

 その隣でジラフは宗八(そうはち)の言葉の意味が分からず首を傾げながら大人しくついて来た。思えば、エムクリング山脈側から村に入った時点で人間とバレている可能性は非常に高いし、魔族と認識してもらえたとしても何故亡命ルートを逆走しているのかの回答を考えていなかった、と内心反省した……。

 予想以上に村の警戒心が高かった事で亡命屋との接触に不穏な空気が混じり始めた。


「そこまでだ!」

 足元に矢が突き刺さると同時に声が響く。

 警告に従って足を止めた宗八(そうはち)に従い二人も足を止めてキョロキョロと声の主を探すフリをする。ジラフは当然演技ではない。気配は上手い事隠しているが魔力制御が甘く魔力を隠せていないのでどこに居るのか丸わかりだ。

「何が目的でこの村へ来たっ!」

「魔族領で暮らせなくなったので辺境に逃げて来ただけだ。追っ手を警戒して街道を逸れて来たのだが、警戒し過ぎたのか辺境の村を素通りしている事に気付き戻ってきたところだ」

 堂々とした嘘八百に真偽を疑い一旦黙った襲撃者は話を続ける。

「騙されるかっ!貴様らは知らないだろうがこの村は特殊な結界が張られているのだっ!街道を逸れていたとしても結界を掻い潜る事など出来ないんだよっ!」

 やはり結界だったのか……。とはいえ、アニマの言った通り狭い範囲だ。

「知ってるよ。気付いたから念の為大回りしてこっちまで抜けたんだ。まさか辺境の村が結界を張っているとは思いもしなかったがな……」

 またしても宗八(そうはち)の堂々として嘘に彼らは目線で会話を行い、長い協議の末に入村許可が下りた。


「…………いいだろう。村でおかしな真似をするなよ」

 村内の生えている太い樹木の影から一人が出てきて警告を発する。もう一人と更に村の中で身を潜める面々はバレていないとでも思っているのだろうが、こちらが何をしようとも制圧できる様にと囲う形で配置されていた。


 * * * * *

 村民の自警団と思われる人物は、実のところ情報屋からとある報告を受けてこの場で待ち構えていた。

「魔王に匹敵、もしくは超える魔力を持つ者が近日中に山側から来る。こちらから攻撃を仕掛けなければ危険は無いから警告程度に留める様に。貴方達が束になっても敵わないから無理せずここまで案内して」

 自警団の魔族は真っ先にあり得ないと思った。

 何故なら魔王級の魔力持ちならば周りの魔族が庇護下に入りたいと自然と集まり領地を得る事となるだろう。その後は領民を養いながら隣領の魔族と領地戦争をしてばかりなのだ。こんな辺境に現れるはずがない。


 とはいえ、情報屋の予言がよく当たる事は周知の事実。【星詠み】というらしい。

 念の為それから仲間を配置し待つ事数日、本当に魔王級の魔力を持った魔族がエムクリング山脈側から現れた。連れの二人のうち男は歳を取っており魔力はあまり感じられないが、女の方は角が見当たらない割になかなかに高い魔力を保有していた。

 これから村に入れる予定ではある。しかし、魔王級となれば基本的に理不尽を力で通すだけの実力がある為、平穏を守りたい自警団としては入村させる事に危機感を覚えざるを得ない。

「そこまでだ!」

 矢を放つ。その瞬間、魔王級の男と角無しの女から形容し難い視線を受けた気がした。まるで何かも見透かされている様な……。

 いや、そんなはずはない。自分も含めて相棒も、仲間達も身を潜める事に関しては完璧と自負している。魔族が嗅ぎ分ける魔力の漏れは一切ない。


 冷や汗を掻きながら警告をしたが、結界まで見透かされていたとは思いもしなかった。

 明らかに異端の魔王だ。しかし、この村は情報屋を中心に回っており指示には従わざるを得ない。自分達の懸念を諦める為に相棒と視線を交わして意思疎通を数度行いやっと諦める踏ん切りがついたので彼らを客人として案内することにした。

「…………いいだろう。村でおかしな真似をするなよ」


 ただし、村内の仲間達の解除は行わない。最低限の自衛だ。

「ウチの村に来た奴は最初に挨拶が必要な奴らが居る。そこに案内するから付いて来てくれ」

 返事を聞かずに踵を返すと距離を置いて付いてくる気配を感じた。村人たちは彼の魔力を感じ取っては家の中に逃げ帰っていく為、普段は明るい村内が暗く閑散とした村に変貌していた。

 約150名以上居る村民が一切出歩いていない状況は初めて見た。やがて目的地である情報屋の店にやって来た。

「ここだ。問題を起こせばすぐに俺達が駆けつける事を念頭に置いて行動は選べよ」

 情報屋が何の目的があって彼らを誘導したのかは知らないが、いままでの経験上悪い事にはならない予感は確かに存在した。


 * * * * *

 案内された場所は酒場だった。

 正確に言えば異世界に良くある昼は喫茶店で夜は酒場を経営している様な店だった。——カランカランとベルが鳴る。

「やっと来たな。まったく占いは毎回当てにならないわね……」

 カウンターの向こうから気怠そうな声が聞こえた。そこには妙齢の魔族がカウンターに肘をつき顎を掌に乗せた状態でだらけていた。

「パメラ様。例の方々をお連れしました」

 自警団の魔族からパメラと呼ばれた女性魔族は、礼儀正しくお辞儀する魔族に対し気怠そうに空いた掌をヒラヒラさせて適当に指示をする。

「お前はいつもお堅いね。いいよ、ここからは私達が相手するから解散して」

「しかしっ!?」

 尚も言い募る魔族に睨みを利かせて黙らせるとパメラはこちらに視線を向けて来る。

「立ち話も何だからカウンター席に座って頂戴。お連れの方もどうぞ」


 ジラフの様子からここが目的の亡命屋で間違いは無さそうだ。

 誘いに乗り宗八(そうはち)達は自警団の魔族と別れ、カウンター席に宗八(そうはち)とジラフは腰を下ろした。唯一アナスタシアだけは宗八(そうはち)の背後で侍女のように立ち振る舞い優越感に浸っている。日頃どれだけメリーやクーデルカが諜報侍女隊の中で羨望されているのかを目の当たりにしたのは初めてな気がする。


「お久しぶりですパメラ殿、お変わりない様で。以前亡命時にお世話になりましたジラフです」

 パメラはジラフの顔を覚えていたのだろう。当時に比べて年齢を重ねたその姿に笑みを溢す。

「あぁ、覚えているとも。あの時の若造がまさかのこんな大物を連れて戻って来るとは驚いたよ」

 次に視線が動いて宗八(そうはち)を見つめて来る。

「先に言っておくけどここでは個人情報を口にする必要は無いよ。この村に辿り着けるという事は私達の力が必要になる者だけだ」

 人間だとバレているわけでは無さそうだ。本当に身分などどうでもいいという空気を醸し出している。それにしても、達…?亡命屋は個人経営ではないのだろうか?


 その時、店の入り口から複数人が話ながら近づいて来る気配があった。

 とはいえ、自警団の様な警戒心はおろか本当に村娘と変わらぬ態度の魔族達は入店して来る。

「ただいまぁ~。例の人、来たんですよねぇ~?」

「わー!すっごい魔力!」

「ちょっと、初対面なのだからもう少しちゃんとしてよぉ!」

 姦しく入って来た娘たちはそれぞれが別部族の魔族の様だった。中でも角が額からでは無く左右のこめかみから生えた娘はアナスタシアに迫る魔力を持っていると感じられた。

「煩いよ!今さっき自警団が連れて来て挨拶している所さ。アンタらは挨拶したらさっさと夜の準備してな」

「「はぁ~い……ごゆっくりどうぞ~」」

「すみません!失礼します!」

 嵐の様な姦しさはパメラの一喝により一瞬で過ぎ去った。

 カウンターを越え厨房の方へ引っ込んだ彼女たちは尚も喋り始めたが、パメラが通じる扉を乱暴に閉めた事でほぼ聞こえなくなった。


「うちの従業員がすまない……」

「いえ、お気になさらず」

 身内の行動を恥じたのか少し微妙な空気が流れたが、いつまでもお見合いをしているわけにも行かない。

 魔族領についての情報をここを起点にして集めて勇者に届けなければならない。

「ゴホン、今の魔族領の勢力図はどうなっているか知っていますか?」

「その前に。私らは長年情報屋として活動している。時折亡命にも手を貸しているが本業はこっちだ。つまり……払える物はあるのか、と言う事だよ」

 思わずジラフに振り返りそうになったが何とか我慢した。その話が本当なら起点どころか欲しいと思った追加情報もここで手に入るかもしれない……。

「支払い方法にもよる」

 ギルドは中立の立場を取っているので魔族領にも支店を持っていると聞いている。ただ、人族と魔族の区別はしており領越しによる情報共有は行われていないとのことなのでギルドカードからの支払いは可能。他の方法を提案された場合は……要検討だな。


「なに簡単な事さ、アンタが只者じゃない事は理解してるんだ。いま魔界で起こっている面倒事を一つ片づけてくれるだけでいい」

 口調も表情も本当に簡単な事の様に語る。しかし、こちらが何も要求していないというのに先に()()と条件を示したことが逆に厄介な面倒事の予感を強めている。

「流石に条件が怪しすぎる。先に情報屋が扱う情報の信頼性はどの程度のものだろう?」

「そうだねぇ……。七割程度は信頼して貰って良いよ」

 普通にイメージする情報屋は確定した情報を提供する職だと思っている。それが七割という中途半端な回答とはどういう事だろうか?

「わかるよ、胡散臭いよね。でも、ここでしくじると私達まで巻き込まれる事になるからこっちも必死なのさ。だから、七割の理由についても教えてあげるよ」

 宗八(そうはち)だけを指名するのではなくジラフもアナスタシアも含めた三人に対して手の内を晒す覚悟だ。

 しかし、そこは一般人のジラフ。この場に居るのは拙いと考え席を立つ。

「私は聞かない方が良いでしょう。少し村の中を見学して来ても宜しいですか?」

「かまわない。すまないね……」

 パメラ達は何らかの方法で宗八(そうはち)達がこの村に来ること予見していた。

 結界を潜ったあとの自警団の配置が早すぎたことも、先の娘の一人が溢していた言葉からも。少なくとも宗八(そうはち)が訪問する事を認識したうえでここまで案内させたのだ。ただ、そのネタを自分が教えられてもパメラの依頼に手を貸す事は足手まといが増えるだけだと考えたジラフの退席にパメラも許可を出す。

 念の為、視線でアナスタシアに指示を出しジラフの側に付いてもらい二人して店を出て行った。


「さっそくだけど、ネタバラシだ」

いつもお読みいただきありがとうございます。

『続きが気になる』『面白かった』など思われましたらぜひ、

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よろしくお願いします。

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