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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

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†第15章† -32話-[破滅の主、神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇《ウロボロス》]

ニコニコ動画復活おめでとう。

 リッカが炎帝樹の中央部で対話を試みていた同時刻……。


 水無月宗八(みなづきそうはち)苛刻(かこく)のシュティーナを相手取り優勢に攻め続けていた。ただし、魔神族の中でも破滅の衝動に支配されておらず依然として出会った時から自我を保っている稀有な存在でもあり、敵でありながら助言をしてくる為、相手をするには少々面倒な立ち位置のシュティーナを相手に会話を挟みつつ空間を越えて迫る複数の刃を視線を向ける事無く宗八(そうはち)は防ぎきって見せていた。

「じゃあ、今回退けない理由ってのが破滅本体がやって来る予定だからなのか?」

 宗八(そうはち)の問い掛けにどれだけ攻めても防がれる事を面白く思わないシュティーナは笑顔を繕って答える。

「そうよ。こっちも自我は保っているけど本体である世界樹を押さえられている以上破滅の将としての仕事を熟さないといけないの。もう間もなくこの世界にも破滅が訪れるわ。だからイクダニム。貴方は早急に選択しなければならないわよ」

 シュティーナの答え、そして突き付けられた選択権にこれから何が起こるのか、と嫌な予感を過ぎらせる宗八(そうはち)だが、決定的な情報を漏らさない事はわかっているので結局事が起こってからでなければ宗八(そうはち)にも配られた手札を見ることがない。いまは破滅についての情報収集を優先すべきと考え会話を続ける。

「破滅には名はあるのか?」

「名前なんて無いわよ。多少の争いはあっても穏やかな私達の世界を破壊し滅ぼした存在。だから破滅と仮称しているだけで、そもそもどういう存在かすら私達魔神族にもわからないわよ」

 宗八(そうはち)の攻撃に対し空間を固めて障壁を成したシュティーナに舌を巻くも、すぐに対抗魔法で障壁を割って剣を振り下ろした。

「どうして破滅は始めから自身で乗り込んで来ないんだ? 強いなら魔神族を送り込むなんて回りくどい事する必要は無いだろう?」

 振り下ろされた剣はシュティーナの大鎌で防がれた。そのままポールダンスかの如く器用な立ち回りを見せ大鎌を支点に様々な動きと攻撃を繰り出すシュティーナに付き合い宗八(そうはち)は防御に回る。

「それはおそらく世界樹から得たエネルギーを少しも漏らしたくないからね。破滅は自分で神力(エーテル)を精製出来ないから得るには世界を滅ぼすしかない。戦うなら攻撃にしろ被弾にしろ神力(エーテル)は消費してしまうから、そこを嫌っているのだと思うわ」

「だからエネルギーの保険と合わせて手駒として神族を魔神族に仕立てて尖兵にしているのか……」


 世界樹に詰まっているエネルギーは【神力(エーテル)】という最高品質の魔力だ。

 何を目的に活動しているのか不明な破滅だが、シュティーナの言葉を信じるならばとにかく神力(エーテル)の吸収を第一として考えている様子だ。そして、消費を抑える為に非常食の様に世界樹に禍津大蛇(オロチ)を寄生させ生き地獄を与えつつ守護者システムに介入して魔神族を産み出し尖兵にした。以前のナユタの様に攻め込まれた場合は世界樹に残った神力(エーテル)禍津大蛇(オロチ)が回収して本体の元へ送り届ける算段だったのだろう。

 シュティーナの言う破滅の訪れとは禍津大蛇(オロチ)の寄生に関する事だろうと宗八(そうはち)は推測していた。だが、それ以外にも聞き出せる情報があれば今回だけではなく今後の対策にも活用出来ると思い質問を繰り返す。

「他に破滅についての情報は無いのか?」

 そんな宗八(そうはち)の思惑を見透かしながらもグレーゾーンを歩く事を決めたシュティーナが悩み、答えた。

「確定情報では無いけれど、破滅は今まで吞み込んだ神力(エーテル)分で存在が加階して神格位を得たのではないか、と考えているわ」

 その発言には流石の宗八(そうはち)と剣が乱れた。危うく被弾するという所で第二長女ノイティミルの聖壁の欠片(モノリス)が大鎌の一撃を弾くことで事無きを得たのだが宗八(そうはち)はそれどころではなかった。位階というのは何も精霊だけに充てられる言葉ではない。魔物だって成長すれば存在進化という加階を果たすし、元の世界でも高次元存在は精神生命体というのが通説だ。

 物語の中では人間のまま神格位を得る場合もあるが、これは高次元存在が祝福をして得るのが大半で基本は人から別の存在に加階ないし変質している事がほとんどだ。


 では、破滅が神格位を得ている場合に考えられる存在とはどういう存在だろうか?

 方々の世界を滅亡寸前にまで破壊し滅ぼす手口はナユタの世界とアルダーゼの世界を見て確定だろう。だが、そもそもが神力(エーテル)を吸収しまくるだけで神の座に足を掛けられるかと言われれば疑問だ。様々な世界がある中で宗八(そうはち)も知らない神格位を得られる手段が存在するのだろうとは思う。

 本体がどの様な姿をしているのかは想像するしかないが、禍津大蛇(オロチ)を見る限り蛇の姿をしていると考えた宗八(そうはち)達は破滅=ウロボロスと呼称する事に決めていた。蛇と神のワードが交わるならば[白蛇]が妥当だろうか?

 縁起の良い存在や神の使いとも言われる白蛇だった存在が何かの拍子に反転して厄災を振り撒くウロボロスになった。これが一番しっくりくる想定だ。どちらにせよ未だ対峙した事も無いウロボロスとの相対に宗八(そうはち)の胸はざわついた。

「神が相手では勝てないかしら?」

「やってみないとわからない……。少なくとも情報が足りなければ糸口は得られないからな。今回出て来るなら可能な限り情報収集してみるさ」

 宗八(そうはち)の顔色が陰った事を察して質問したシュティーナに希望的観測を口にする宗八(そうはち)。まだ破滅の本体と遭遇していない事で折れてはいなくても神という言葉に心が揺らいだように見えたシュティーナは手を止め空を見上げた。事実宗八(そうはち)は頭に浮かんだ白蛇という実在する存在から神を連想させた事で【神と仮定したアンノウン】が【本当に神に連なる者】に紐づけされた事で急に実感が湧いたのだ。

「……まだ勝てない様なら今回はすぐに逃げる事をお勧めするわ。じゃあイクダニム。また会える事を期待しているわ」


 そう言葉を残したシュティーナは大鎌の召喚器[アムネジア]で空間を斬り裂くとそのまま姿を消した。

 ただ、シュティーナに言葉を返すよりも宗八(そうはち)が優先したのは、神を相手取るにあたり不安要素を排する事だった。魔神族はあくまで高次元存在の神族が変質した存在だ。身体は世界樹の神力(エーテル)を用いて構築されているので一般的な魔法では効果が無く、高濃度魔力で強化した魔法を使用する事で戦う事が出来るようになった。それでも神力(エーテル)まで濃縮されていない高濃度魔力は所詮下位互換の攻撃であり、完全体になった魔神族には効果が薄く、ナユタ戦の際は彼が使用する魔法を闇精クーデルカの魔法で神力(エーテル)を吸収する事で討伐するに至れた。

 ただし、完全体になったとて神ではない。神族時代は想定していない世界樹の神力(エーテル)を全て注ぎ込むことで至れる存在進化ではあっても所詮は神族のスペックの延長線上である為、便宜上半神(デミゴッド)の位階だろう。


 半神(デミゴッド)も一応は神格位を得たと言っても過言ではない。

 更にそのうえの位階だったなら本当に【神】という存在かもしれない。そうなれば効果的な攻撃をするには経験上、高濃度神力(ハイエーテル)を扱えるようになるしかない。今ですら満足に神力(エーテル)の精製を行えていないのに高濃度に濃縮する技術も手段なんてまだ……


 果てしない上り坂を宗八(そうはち)が幻視した直後。

 空が落ちてきたのかと勘違いしそうな程に強烈なプレッシャーが世界に掛かると同時に——ビシッ!と天蓋(そら)から異音が降って来た。ヒビは途轍もなく大きく広がっていて、今尚もピキリピキリと天蓋(そら)に黒いひび割れが広範囲に伸びて行く。闇精クーデルカが警告を発するまでも無く誰が見ても分かる緊急事態だがそんな光景を見上げる全員が息を飲み何者かの登場を待つ事しか出来ない。


 バリンッ!と大きな穴が天蓋(そら)にひとつ開いた。

 空間の向こうは真っ暗な深淵となっていて、そこからゆっくりと姿を現した頭部は瘴気特有の黒紫(こくし)の空気を纏いながらユルリと覗き込む様に顕現した。蛇だ、と思ったのも束の間。すぐに宗八(そうはち)は自分の思い込みを否定する。確かに蛇に酷似はしているが舌を頻繁に出さないうえに頭部の形が明らかに違うのだ。大きく裂けている口は異常に筋肉質でありズラリと並ぶ歯は肉を食い荒らす為に鋭利な歯が生えている。更に瞳も蛇特有のものではなく三対六眼。それぞれがギョロギョロと同じ方向を見ることは無く気味の悪い挙動をし続けている。

 断じて神ではない。——化け物だった。


 続けて二つ目、三つ目の大穴が開き同様に頭部が覗いて来る。

 気付けば天蓋(そら)のひび割れは彼方まで広がっていた。周囲を見回しても視界に映る天蓋すべてにヒビが入っており、いつ身体も現れてもおかしくはない状況だとようやく正気を取り戻した宗八(そうはち)は急ぎ全員に声を飛ばそうとした矢先に天蓋(そら)が落ちてきた。いや、世界樹を覆う様に蜷局(とぐろ)を巻いた|神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇ウロボロスが落ちて来て自身の身体を用いて世界樹を中心にドーム状の結界を張ったのだ。


 いつの間にか魔神族は皆撤退しておりこの世界に残っているのは宗八(そうはち)達突入組とアルダーゼ一味のみ。

 気味の悪い模様の身体を(もつ)れさせながらウゾウゾと止まることの無い動きを見せるウロボロス。幸い身体が超巨大過ぎてゲートも結界内部に含まれていたので宗八(そうはち)は改めて撤退の言葉を飛ばす。


「総員撤退!アルシェの安全を確保しつつゲートまで駆け抜けろっ!!」

 宗八(そうはち)の言葉は突入組に強制接続して届けられた。結界内部はウロボロスの体鱗から液体が漏れているのか黒い高濃度瘴気の雨が降り始めていた。了解と返事が返って来る中、炎帝樹内部で対話を試みていたリッカから連絡が入る。

〔隊長、炎帝樹との対話完了しました。アルダーゼ様達の保護を条件に世界の消滅を承諾してもらえましたが今しがた突然炎帝樹が苦しみ始めてしまって……どう致しましょう〕

 リッカの報告に瞬時に選択肢が頭に浮かび優先順位を決めなければならなくなった。

 1.アルカンシェの脱出 2.世界樹の破壊 3.聖獣の保護 4.アルダーゼの保護 5.仲間達の脱出

 世界樹の破壊は宗八(そうはち)自身が行うにしろウロボロスが何かするにしろ炎帝樹の神力(エーテル)は奪われてしまう点はもうどうしようもないだろう。慈悲を与えるならば宗八(そうはち)の手でトドメを刺すべきだ。それにゲートに向かう仲間の協力が無ければアルダーゼと聖獣の救出は絶望的だ。加えて心情的にも危機意識的にも救出に手を割くよりも早くこの世界からの脱出を行うべきだと訴えかけて来る。

〔黒い雨の中に10㎝前後の蛇みたいなのが混ざってます!障壁で防御しても魔力を食べているのか障壁に穴を空けて来てキリがありません!〕

 追加されるマリエルからの情報でさらに時間を掛けられない事を突き付けられた宗八(そうはち)は、自分の出来る処理範囲で行動することを決めアルカンシェには皆を率いて脱出してもらう為に連絡を取ることにした。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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