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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

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†第15章† -31話-[アルダーゼと炎帝樹]

やっぱり戦闘描写が苦手です。イメージがどうしてもうまく出来なくて時間が掛かってしまいました。というか、技名とかもその場その場で考えるので固有名詞ひとつで毎度執筆が止まるのが問題ですよねぇ……。

 リッカが炎帝樹の中へと足を踏み入れた頃。

 神族アルダーゼは滅消(めっしょう)のマティアスとの激しい戦闘を繰り広げていた。召喚器トリスティヴェルを装備したマティアスは戦技(せんぎ)無しでの攻撃は意味を為さず、アルダーゼが一本の包丁を駆使して戦うのに対してマティアスは両拳を使って攻撃も防御も行う。腕の防御を抜いても全身鎧がその刃を防ぐので強烈なダメージを与える事が出来ないでいた。

 また、アルダーゼ自身も炎の嬰児の一人が姿を変えたエプロンが被弾を防ぎダメージを抑え、継続回復の効果も与えていた為に戦闘がどうしても長引いてしまっていた。


「何故我らの様に彼らを力づくで排除しなかったんだ?」

 槍の如く鋭い突きを連続で繰り出しながらマティアスは問うた。その拳は掠りはするものの直撃することは無くアルダーゼは答えた。

『何故? アンタらとあの異世界人じゃ目的が違うからだよ!』

 炎を纏った包丁を振り抜く。マティアスは余裕を持って回避したのだが、撒き散らされた細やかな火の粉は刃の様な攻撃力を持っており鎧にカンカンカンカンと連続した音を立てる。避け辛い範囲攻撃の本当の効果は刃の方ではなく超高温で熱する事だった。マティアスは火の粉の攻撃力を軽く考え敢えて避けなかったが鎧から音が立ち始めてすぐにその場を離脱して火の粉を避け距離を取った。

『アンタらは世界樹の力を奪う事を目的にしている!しかも一方的に侵略して来たじゃないかっ!でも、異世界人はアンタらに世界樹の力が渡らない様に。魔神族の戦力が増えない様にって順番に攻略しようとしてくれたんだ!そういう配慮が嬉しいってもんじゃないかっ!』

 アルダーゼの踏み込みにより発生した炎の壁が衝撃波と共に地面を走りマティアスに迫る。

「効率が悪いの間違いだろう!だから我らの介入も招いた!」

 同様に地面を殴ったマティアスが発生させた岩壁が防御壁となって炎と衝突すると広範囲の爆発が巻き起こる。煙幕が視界を遮り火の粉が舞い散る中で金属がぶつかり合う音だけが複数回戦場に響くと煙幕の中から二人は飛び出し移動しながら絶えずに剣戟を繰り返す。

 マティアスは攻防どちらも高水準なうえ、攻撃手段が徒手空拳の為攻撃速度も速い。威力重視の一撃は形勢が傾きかねない大博打なのでアルダーゼも慎重にならざるを得なかった。

『《ねじり梅!》』

 アルダーゼの剣線は逆袈裟の一本だったが実際に発生した剣線は五本発生して五角形を形成する。単発では拳で打ち落とされる事をこの戦いで学んだアルダーゼは、マティアスが同時に二閃以上の攻撃を警戒する事を理解した上で五回攻撃を繰り出したのだ。

「っぐぅぅぅっ!」

 両腕を交差させて防御態勢を取ったマティアスに攻撃が通った事でアルダーゼは連続して同時攻撃を重ねて行く。


『《三枚おろし!》』

『《四枚おろし!》』

『《五枚おろし!》』

 一方的な攻撃が続く。如何な戦闘巧者のマティアスとはいえ同時発生する剣閃を対処するには限度があり、魔法などで対抗する様子を見せなかった為、アルダーゼは肉体のポテンシャルが高すぎて魔法が不得手なのではないかと考え新たに見つけた隙に強烈な一撃を穿ち込んだ。

『一瞬千撃!《柳葉五月雨押斬り!》』

 姿の変わった包丁の切っ先が同時に千回マティアスの全身を余すことなく穿ち込まれ、防御力を大きく超える攻撃を受けたマティアスは全身を刺し傷を作り一瞬で血まみれとなって吹き飛ばされた。

「うおおおおおおおっ!ぐっ!がっ!」

 地面を転がっていく滅消(めっしょう)のマティアスを見送ったアルダーゼは残心を取りつつまだ動くであろうマティアスへより一層の警戒心を保ち再び構えた。


 * * * * *

 一方その頃。一人炎帝樹へと辿り着いたリッカは長い通路をキョロキョロしながら奥へ進んでいた。

 世界樹という存在についてナユタの世界で収集した情報を仲間達で共有していたので当然リッカもそれらの情報をひとつひとつ確認しながら炎帝樹の中へと足を踏み入れた。

 まず、炎帝樹は雷帝樹と違って生存者を保護していなかった為、バリアを広範囲に張っていないし聖水も沸き出していなかった。また、現在リッカが歩いている通路の壁や天井にはエネルギーが奥に向かって走り続けていると聞いていたのだが、それも無く暗い通路がただただ続いているだけであった。

「フラム君。このまま進んで大丈夫でしょうか?」

 不気味な雰囲気に呑まれたリッカの質問に泰然自若な火精フラムキエは堂々とした返答をする。

『(大丈夫。お父さんの話だとエネルギーはいくつかの機能で利用している。けど、機能を極限まで抑えた場合は流れが止まる、らしい)』

 フラムキエの回答で少し不安が取り払われたリッカは落ち着きを取り戻して足を止める事無く奥へ進んで行った。


 おそらく最奥に到着した。

 おそらくというのは広い空間には出たもののリッカが進んで来た通路とは別に二本の通路があったからだ。

『(これも聞いてる。世界樹は大きいから出入口が3つある、らしい)』

「そ、そうですね。じゃあやっぱりここが最奥の部屋という事……ですよね」

 相変わらず不安そうなリッカは部屋の中央部に視線を送った。そこに生贄となったアルダーゼが居るはずだからだ。

 近付くリッカの視界に枝が重なり合ったベッドで眠り、樹液の膜で覆われ守られたアルダーゼの姿が映る。

「この方がアルダーゼ様ですね。とりあえず声掛けから始めてみますね」

『(がんばって)』

 フラムキエの応援は淡泊なエールだったが彼の性格を知っているリッカにとっては十分に力となる言葉だった。

 リッカは贄となったアルダーゼの前に跪くと癖で両手を握りそうになりつつ、枝で出来た床に手を置くと語り掛け始めた。


「(世界樹、いえ。炎帝樹よ。私の声にお答えください。魔神族も攻め込んで来ている状況はご理解されているでしょう。私達は貴方様の力を破滅勢力に奪われたくありません。また、貴方を護る聖獣の二名とアルダーゼ様も我が世界で保護する事も可能です。どうか私の声にお答えください)」

 どれくらいだろうか。意識を炎帝樹へ集中させた事で徐々に周囲から聞こえる戦闘音が消えていき、しばらくそのまま返答を待つと微かに何かが聞こえた様に感じたリッカはその音に意識を向けると、だんだん音は意思となって明確にリッカへビジョンを持って伝えてきた。


 力不足、諦念、後悔、感謝、そして未来。

 神族であるアルダーゼを通してこの世界の状況、さらに目覚めてから宗八(そうはち)とかわした会話内容と戦闘。それらの意味と今後の事を世界の根源である炎帝樹はアルダーゼの意思と同意を示した。ここまで世界が追い詰められ、ただ世界樹である炎帝樹が世界を保っているだけで聖獣以外の生物は誰一人として存在しない寂しい世界が滅ぶ事に何の未練があろうか。心残りと言えば長年自身を護ってくれた二体の聖獣と贄に選ばれたアルダーゼだ。

 炎帝樹の心残りや未来への絶望を受け取ったリッカは安心してほしいと伝える。

「(ご安心くださいませ。我が主たちは聖獣様もアルダーゼ様も我らの世界に迎え入れる心積もりがございます。貴方様の後悔も多少は和らげる事に繋がりましょう)」

 歓喜、滅亡、希望。

 攻め込んで来た魔神族の正体は瘴気によって乗っ取られた世界樹が顕現させる神族の成れの果て。ここで倒したところで世界樹にエネルギーが残っている限り何度でも黄泉がえり敵となって再び姿を現す事だろう。炎帝樹自身もアルダーゼがその円環に加わる事を良しとしたくない。故にエネルギーを奪われる前に自身の死を希望する。

 自身の死は世界の死。されど世界の破滅を目論み力の奪取を狙う魔神族達の主は他の星の生命体など片手間で殺し、世界樹のある星に迷いなくやって来た。自身が捧げさせてしまった時間をアルダーゼに返すことが自身に出来る最後の仕事だ。

「(必ず貴方様に我が主が死を与えるでしょう。確と希望をお伝えいたします。叶うならば炎帝樹様が安らかな死を迎えられますよう祈っております)」

 ————感謝。


 断片的な感情と共に浮かぶ言葉を繋げて文章として受け取ったリッカは立ち上がる。

 炎帝樹からも許可を頂けた。これで一気に決着を着けることが出来る、と考えたリッカの足元が突然揺れ出し炎帝樹の感情が悲鳴を上げ始めた。

 恐怖、怨嗟、早期、滅亡。

 外で何かが起きていると察したリッカは契約火精フラムキエを通して宗八(そうはち)へと連絡を取るのであった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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