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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

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†第15章† -25話-[VS神人アルダーゼ①]

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「わかっていると思いますがこの機会を魔神族は利用して世界樹を狙うでしょう。その時は共闘、でいいんでしょうか?」

 戦場で相対するアルダーゼに宗八(そうはち)は問い掛ける。

『それはアタシも理解してるよ。最後まであいつらの思い通りになるのも癪だね……。その時は一緒に追い返してやろうじゃないか』

「ありがとうございます」

 アルダーゼに一瞬自虐が浮かぶ。しかしすぐに快活なおばちゃんへと表情を変えて肝っ玉節で共闘に了承を示した。

 変な意地を張られて魔神族達に世界樹のエネルギーを搔っ攫われる方が痛いのでアルダーゼが気の良いおばちゃんであった事に宗八(そうはち)は安堵した。


 アルダーゼは両手に何も持たない状態で名を呼ぶ。

『おいで、私の可愛い子供たち』

『『あ~い!』』

 聖獣たちが嬰児(やや)様と呼んでいた炎の双子。以前見せてくれたように人型の炎だった双子は姿を変えて片手剣と小盾になった。それぞれに赤子の顔が浮かんでいて少し不気味ではあるものの声が幼子で楽しげなのでついつい気が削がれそうになる。気を取り直して戦闘に集中して精神統一を行うと余計な雑音は消えて行く。


 大将戦に合図は無い。

 互いが構え、張り詰めた緊張感の中で同時に踏み込んで剣が交差する。ただし、アルダーゼに剣術の心得はないらしいとすぐに宗八(そうはち)は気が付いた。何故なら複数回の打ち合いの間でまるっきり剣の扱いに慣れておらず振り回しているという印象が強く、尚且つ意志ある剣がその適当振りに合わせて剣と剣が打ち合うというチグハグな感覚を覚えたからだ。

 つまり全く関係のない場所に剣を振ったとしても姿形を自由にできる剣自身が時に伸びて時に巨大化して敵を斬り付けてしまう。しかもアルダーゼ自体は神族なので高ステータスが全てを支えて戦闘が成り立ってしまっている。


「やり辛いなっ!」

 こちらも生きた武器とはいえアルダーゼの武器の様に変幻自在ではない。直前までどんな動きに変化するのか気にしながら戦うのは正直面倒くさいし遠距離攻撃に移行しても……。

「《氷竜一閃(ひょうりゅういっせん)!》」

『キャハハ!ワイドシールド!』

 盾の赤子が喋ると頭の悪そうな横長の盾に姿が変わり一閃を受け止めた。

「冗談だろ……。ギャグマンガと戦うのは分が悪いなんてもんじゃねぇぞ!」

 赤子が武具に変化するという事を知ってから嫌な予感を宗八(そうはち)は感じていた。剣戟の間も絶えず楽しそうな笑い声が聞こえ姿形も自由となれば事象改変も有り得るかもしれない。斬ったのに斬れてない。刺したのに刺さっていない。いずれの攻撃も決定打になり得ない可能性が脳裏を掠める度に嫌な感じが広がっていく。

『異世界人ってのはこんなもんかいっ!それっ!』

「マ~ジでやり辛いから仕切り直させてもらう!《中距離転移(ミディアムジャンプ)!》」

 捌いた剣が枝分かれするように形を変えて突きが繰り出されたり、捌いた剣が伸びて鎌のように背後を取ったり、捌いた剣が、捌いた剣が……変幻自在が過ぎる!と、判断した宗八(そうはち)は距離を開いて不可視の攻撃を始める。


「《空間征服イグノアパースペクティブ》」

 視界内が効果範囲となる時空魔法を発動させて剣を振るうとアルダーゼの近くで斬撃だけが発生し迫る。一瞬遅れて盾の嬰児が間に合って防がれたが先の変幻自在流の返しとしては十分にストレスは与えられるだろう。

 遠近感を利用した接触手段であるこの魔法は遠くに居る対象を摘まみ上げたり、握り込んだりと今までは自身の拳を巨人の拳に見立てて利用していた。その実態は空間征服による時空圧縮だ。

 傍目から見れば宗八(そうはち)は手遊びしているだけであり、対象は見えない何かに摘ままれたり縛られたりしているだけだ。今回はその空間圧縮が斬撃を再現しているだけの違いに過ぎない。


 連続する不可視の斬撃に辛うじて反応しているのは盾の嬰児のみで剣の嬰児は先ほどまでの変幻自在は鳴りを潜め、今は短刀程度の大きさに収まり防御の邪魔にならない様にしている。アルダーゼに至っては何が起こっているのは本当にわかっていない困惑顔を浮かべながらも宗八(そうはち)に向けて接触しようと足を進めて来る。

『さっきの仕返しかい!子供が反応出来ている限りこれだけじゃあ勝てやしないよっ!』

 短刀を握る腕が突きの構えを取る姿を視界に捉えた宗八(そうはち)はその剣が異常に伸縮すると察して回避行動に移った。

『……ハハ……キャハハハハハハハ!』

 ドップラー現象を起こしながら剣が顔を掠めて通り過ぎる。ここから変形して先の攻防が再び始まるのを嫌って宗八(そうはち)は攻撃の手を一度止めて剣の嬰児を大きく弾き返した。その間にアルダーゼは一気に距離を詰めて来る。

「アルダーゼ様は魔法をご使用にならないのですかっ!?」

『おやおや、こんなおばちゃんの秘密が知りたいとはずいぶんと面白い趣味だね』

 超絶美人という訳でも無い小太りの女将が思っても無い事を口にする。って言うか貴女、本体は妊婦なんだから人妻ですよねぇ!?

『坊や達!異世界人は魔法をご所望だそうだよ!一端でも見せてやんなっ!』

『『はい!母様!』』

 中距離を保ちつつ後退する宗八(そうはち)と追走するアルダーゼ。その攻防に嬰児の魔法が加わる。

 アルダーゼの指示に返事をした嬰児は高速詠唱で何かを口づさむと宗八(そうはち)の身体が自然発火し、巨大な炎の赤子が姿を現す。

「スポンティ…いや、パイロキネシス!?ダメージも異常だぞこれ!?《ウォーターボール!》」

 宗八(そうはち)が驚いている間に火傷のデバフが発生し体力も一割削れてしまう。すぐに発動した水球の中に飛び込むと自然発火は治まってくれた。削れた体力と火傷の方は戦闘に響く前にアニマが[レストア]で回復を行う。


『っ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!』

 次に動き出したのは新たに出現した巨大な赤子。脂肪を豊富に含んだ赤子ボディで丸まると高速で転がってきて接近して来た。

 産声に特殊な効果は無くただ煩いだけ。ただし無造作に振るわれた無邪気な叩きつけで大地が割れた。ハイハイの一歩一歩が破壊の行進なので右に左に回避しつつ一刀両断してみるも切断面から炎同士が再結合して致命傷には成らなかった。

「《氷鮫の刃(ブレイドシャーク)!》」

 ナユタの雷獣みたいなものと考えて次に氷の刃を走らせて炎の赤子を両断した。今度は即再生に阻害が掛かったけれど結局炎が結合して復活した。その間動きが止まる事も観測したのでこれ以上は相手する必要は無いだろう。そう考えた宗八(そうはち)はわざと誘って強烈な叩きつけを誘導に成功する。

『っ~~~~~~!!』

「《聖壁の欠片(モノリス)》《守護者の腕(マイストガーディアム)》」

 叩きつけをノイティミルのオプションで受け止め動きを止めた所で聖壁の欠片(モノリス)の一部を変化させて巨腕を精製する。それは宗八(そうはち)の左拳の動きに合わせて稼働し炎の赤子の全身を飲み込む一撃を放つ。

「《魔拳極砲パンツァーマクスィール!》」

 射程は極めて短いが攻撃範囲と威力が高い魔力砲が炎の赤子を燐火すら残さず消し去った。


 炎の赤子が消えた事を皮切りに宗八(そうはち)とアルダーゼの両者は手を止め決定打に至らない軽い攻防は終わりを告げる。

 アルダーゼは嬰児たちを解除して肩が解れたらしくグルグルと両腕を回して気合いを入れている。その様子に宗八(そうはち)もここからが本番か……、と剣を地面に刺し精神を統一して自身の魔力と剣の魔力を混ぜて捏ねて濃度を押し上げて行く。

 ——神力(エーテル)

 高次元体を相手取るなら高濃度魔力ではなく更に純度を上げた神力(エーテル)でステータスを強化するしかない。


「《統べる無色が無彩限の導べに従い蒼天(そうてん)穿(うが)つ蒼の雫を焚べ、聖壁(せいへき)()す黄の一粒が変化を促し、闇光(あんこう)を刻む黒の残滓で支え……。》」


 詠唱しながら胸を叩く。エンジンを噴かすように強く、強く。


「《翠雷(すいらい)を砕く翆の天鼓が攪拌し、星光(せいこう)の煌めく白の燐光が濃縮し、赫焔(かくえん)の緋の火の粉で抽出した無彩限の一滴を我に。脈動せよ》」


 精霊の呼吸(エレメンタルブレス)で認識出来る()()に魔力を加えて混ぜて濃度をどんどんと上げていく。

 やがてエンジンが掛かり、神力(エーテル)が身体を巡り始める。


「《———神の心臓(ディバインハート)》」

いつもお読みいただきありがとうございます。

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