†第15章† -15話-[再探索開始]
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異世界の気温を再現した[マグマルーム]で一定の空間を超高温にして風の魔法で耐えられるかの実験は行われた。
いきなりセーバー達に試させて大火傷を負わせても仕方ないので魔法が試作出来たらまず宗八かアルカンシェ、もしくはフランザかリッカが魔法を掛けてもらいその超高温空間に足を踏み入れてどのくらい暑さが緩和出来ているかの実験が繰り返し行われた。
魔法瓶の魔法[エアロサーモス]。風だけで再現した魔法瓶構造だからもうそのまんまだ。
あくまで発動した時点での気温を保つだけの魔法で効果範囲も人一人分、異世界に入ったら掛け直しが利かないなどのデメリットは存在する。風精使いとして魔法制御力の高いマリエルとセーバーは上手く空調をコントロール出来るらしいがライナーはまだまだ未熟なので先のデメリットを抱えたまま突入メンバーに参戦する事となった。
■異世界探索メンバー■
◇宗八PT
・水無月宗八/七精使い
・アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ/水精使い
・マリエル=テンペスト=ライテウス/風精使い
・リッカ=サラマンダー=ニカイドウ/火精使い
◇ゼノウPT
・フランザ=シヴァ=エフィメール/水精使い
・ライナー=セリアティア=ライボルト/風精使い
・トワイン=パウエル/七精使い
◇セーバーPT
・セーバー=テンペスト=カルドウェル/風精使い
・ディテウス=マレマール/七精使い
上記九名が探索に参加することとなった。
トワインとディテウスは宗八の様に無精の無精霊纏がまだ使用出来ないので今回は水精との水精霊纏で参戦する。また、セーバーPTのモエアも火精と契約しているものの加護がないので今回は参加出来ず留守番メンバーに組み込まれた。あくまで水精/火精/風精のいずれかの契約精霊が居る事、加護があり精霊纏もしくは[ユニゾン]が使用出来ることが条件なのだ。いろんな危険を鑑みたうえでの条件なので仲間を守る為にもこの基準を覆すわけには行かない。
「しばらくは苦労を掛けると思うけど亀裂の方はよろしく頼む」
一団の代表として宗八が頭を下げる。相手はもちろん王太子アルカイドと第二王子ラッセンだ。
「いや、出来る限りヴリドエンデと七精の門の両方の安全を確保する為には必要な事だろうと理解はしている。この程度の苦労で被害を抑えて世界の脅威も一つ減るなら安い物だ」
アルカイドの言葉にラッセンが続く。
「どちらかと言えば宗八達の方が脅威度は高いだろう。悔しいがそちらは任せるしかないからな。王都の方の戦力はある程度整えてもらったうえに勇者PTが控えてくれる事になっている。心配しなくてもお前たちはお前たちの役目を全うしてくれ。俺達も自分達に出来る事を全うする」
ここ数か月は宗八の助言通りに勇者プルメリオは各地のダンジョンに潜っては称号を稼ぎまくっていた。仲間であるマクライン、ミリエステ、クライヴは一緒に強くなったと聞いている。元剣聖セプテマも今回までは勇者の側で見守ってくれると確約してくれているので宗八としても安心して城下町の亀裂については任せることが出来る。
「闇精と光精は引き続き協力してくれるそうだから亀裂が開いても時間をかけて闇精が閉じてくれるし出て来た瘴気モンスターは浄化して攻撃が通りやすくしてくれる。これは今と同じだから今更説明は不要だろうけど。ただ、俺達がのんびりしている内に亀裂発生の間隔が短くなり広がりも大きくなっていると闇精から報告も受けている。出来る限り急いで異世界を滅ぼさないと戦力的に抑え込めなくなる時期が必ず来るからな……」
互いの世界に流れる時間を統一する為に次の探索時は[ゲート]を繋げたままにする予定だ。前回の反省を生かしたわけだが、城下町の亀裂が開閉を繰り返す中、ゲートは毎日数時間繋げる予定なのでその間魔物が押し寄せ続ける事になる。なので七精の門の残留メンバーにはこちらの世界で魔物を食い止める役割を担ってもらう事となった。苦労は宗八達突入組が一番だが、残留組も暇に過ごせるわけでは無いのだ。
「以前に比べると間隔が極端に短いという話だったね。危なくなったら勇者と元剣聖がどうにかしてくれると言っている。それに君たちの隠密も潜ませて様子を見るつもりなのだろう?」
アルカイドの鋭い一言に宗八は不敵な笑みで答える。
「さて、何のことか皆目見当も付かないな。まぁドラウンド陛下が許可を出してくれたからうちの諜報部隊が活動しやすくなっている事は事実ではあるし被害を出したくないところは意見が一致しているけど、だからといって城下町に配備する意味があるかと言えば微妙じゃないか?」
仲間であるのに何故か牽制し合う二人を尻目にラッセンは溜息を吐いた。
「兄上も宗八もそこまでにしてくれ。俺達だって少ない休憩時間でこうやって息を抜いているんだから変な緊張感を出すのは止めてくれ。そういうのは戴冠して俺が居ない所でやってくれ。ところで念の為に聞いておきたいのだが宗八肝いりのその部隊は異世界の魔物相手に戦えるのか?」
突然飛んできた真剣なラッセンの質問に宗八は否定の言葉を口にする。
「いや、魔法も使えるがそれでも時間稼ぎが関の山だな。避難誘導や救助は任せても良いがやはり戦闘面はそちらが請け負う必要がある。だから居ない者と考えて行動してくれ」
あくまで冒険者で言えばBランク程度の実力しかない隠密部隊だ。軽装で攻撃力も低い為、伝えた通り後方支援や救助でしか活躍は難しいだろう。ならば変な期待を持たせるべきではないと判断して宗八は断じた。
ラッセンは了承しアルカイドも気を付ける事を約束した。
宗八達が異世界の、それも真反対に移動するにはどうしても時間は掛かるだろうし急いでくれると約束してくれただけでも重畳なのだ。自分達で出来る限りの防衛を担いせめて宗八達は役割に集中してもらう事がヴリドエンデ王族として、そして臣民を守る力を持つ者としての義務だからだ。以前宗八を心配していなかったのはそれだけ彼ら兄弟が宗八を信頼している事の裏返しでもあった。
「こちらはこちらの仕事をやり遂げる。宗八も私達を信じてアルカンシェ様を支えてやり遂げてくれ」
顔を合わせなくなるわけでは無いが頻度は確実に落ちるだろう。微笑むアルカイドに宗八も微笑んで軽く請け負った。
「任せてくれ。俺達も全力で事に当たる。殿下達も亀裂の間隔次第で緩みそうな気配があれば気を配って兵士達を鼓舞してくれよ」
常に緊張感を張る事は難しい。亀裂に関して言えば閉じている期間はどうしても気が緩んでしまうので緩急をうまく調節出来ないと思わぬ被害が出てしまう可能性が非常に高い。その点はすでに心得ているとラッセンも軍団長に口を酸っぱくして伝えていると答えてくれた。
両殿下と別れた宗八は仲間を引き連れ場所を変えた。
先のアルカンシェと共に異世界から帰還した原っぱだ。周囲に人の住む集落は無く大きな木も少ないので視界も良好で討伐漏れが出辛くなっている。ゲートから流れて来る熱気はどうしても抑えることが出来ない為、冷却魔法で緩和してもある程度は距離を離して対処を強制されてしまう点は残留組でフォローし合ってもらうしかない。そのリーダー役はゼノウに任せる事にした。
「戦い方はまとめてある。こちらは光魔法が使える人材が二名も配備されているんだ。問題ない」
確かにメンバーを考えれば苦戦する事の方が難しいくらいの戦力が整っている。宗八としては拳聖エゥグーリアも招致しようかとも考えが過ぎったがこれにはゼノウが戦力過多と遠慮したので今回は呼んでいない。何故混ぜなかったのかとあとで文句の一つくらいは言われるかもしれない。
■残留メンバー■
◇宗八PT
・メリー=アルカイド=ソルヴァ/闇精使い
・サーニャ=ソレイユ=クルルクス/光精使い
・タルテューフォ=ティターン/地精使い
・青竜
◇ゼノウPT
・ゼノウ=アルカトラズ=エリウス/闇精使い
◇セーバーPT
・ノルキア=ハンバネス/地精使い
・アネス=ソレイユ=ミレボリア/光精使い
・モエア=ラメンツィラ/火精使い
ユニゾンまで使用出来るのはメリーとゼノウ、そしてサーニャの三名だけだ。サーニャに関しては宗八の五女ベルトロープの他に以前から契約している光精リヴィエルが居てそちらと[ユニゾン]出来るようになっている。聖女クレシーダと同時期に無精と契約させていたからかなり絆を築いていたのだろう。何よりも全員が称号稼ぎでステータス強化が入っているうえ戦える光精使いが二枚あるという事実が何よりも安心感を与えていた。光魔法でHPと怪我の回復も出来るから多少の迂闊も帳消しに出来るからだ。
今まで目立った戦果も無かったセーバーPTも強くなった自負と自信に付いて行けない悔しさはあれどやる気に満ちている。
別に今までもやる気は満タンで影で戦いサポートして来たのだが、あまりにも陽が当たるメンバーが人間離れし過ぎていて目立てなかっただけという話でもある。宗八も彼らの影ながらの活躍を忘れておらずいつも感謝は伝えていた。それでも彼らは彼らで悔しい思いを抱えていたのも事実であった。
今回は異世界の過酷環境も相まって影の役割となった面々だが貧乏くじとは思っていない。探索組が代わる代わる声を掛けて頼りにしていると伝えて来るから戦力外通告よりも断然マシと思える。戦えない事の方が、頼りにされない方が余程辛いと知っていたのだ。
「じゃあ、後は任せるぞ。夕刻頃にゲートを一旦閉じてチェックポイントを更新するからそれまでよろしく頼む」
宗八は背後に並ぶ残留組に振り返ると背中を任せる事を伝えるとゲートを繋げた。一気に異常な熱量が平原に流れ込み混ざる瘴気はサーニャとアネスの魔法で片っ端から浄化されて行く中、探索組は次々と宗八とアルカンシェを追って世界を渡って行った。
「さあ皆、自分達の仕事に従事しよう!仲間が気兼ねなく進める様に世界を守ろう!」
普段物静かなゼノウの掛け声に残留する仲間達は声を重ねて気を引き締める。今日から修羅場が始まった。
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