†第14章† -16話-[エピローグ①]
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タルテューフォちゃん達と別れたその日のうちに謁見の予約をした。
答えは二日後という事だったので一日休みとして、夜には今後どの様に行動するかセプテマさんも含めて相談した。
「俺はこのまま魔族領に入ろうと思っている。皆はどう思う?」
「水無月様の意見はダンジョンを巡ってステータスを上げておくべきという話だったわよね? 実際にステータスが高いに越したことはないでしょう。同じ程度まで上げないにしても強化はしておくべきだと思うわ」
「俺も概ねミリエステと同じ意見かな……。魔王がどの程度かわからない上に水無月殿と同様に幹部を育てている可能性も否定出来ない。強くなる為の努力に数か月あてた所で危険が薄くなるならすべきだろう」
最近水無月さん贔屓のミリエステはともかくマクラインまで……。
裏切られたような気持ちを振り払ってクライヴさんとセプテマさんにも意見を伺う。
「俺は魔族との小競り合いに参加した事もねぇからどんだけ危険かってのもわからねぇ。強くなる方法を教えてもらえたなら後は自分次第なんだからやりゃいいだろ。逆にメリオはやりたくねぇのかよ?」
「いや…俺は……」
「すべてがステータスで決まるわけでは無い。だが、強くなる手段の一つとして判明したならば勇者としても一人の男児としても選ばない手は無いのではないか? 儂としては水無月殿への反発から選びたくない様に見受けられますぞ?」
「…………」
俺以外の全員がダンジョン巡りの賛成を表明しセプテマさんには痛い所を突かれた。
苦い顔を見られたくなくて後ろを向いて瞳を強く閉じる。わかってるさ!ただ、これまでの自分の行動を俺は自分で選択したと思っていたのに実際は水無月さんが用意したレールだった事が……ショックだったんだ!
流石に全部が全部ではないとは分かるけど……。
「儂も水無月殿にメリオ殿を鍛える様に依頼されて同行して居る。儂も否定されますかな?」
「否定とかじゃなくて……。これは……俺の冒険なんだっ!俺がっ!マクラインと始めて、ミリエステが仲間になってエクスも加入して……っ!仲間が増えたけど失って……。でも、いつの間にか精霊契約にクライヴさんにセプテマさん……その機会は全て水無月さんが中心でしょ……っ!俺じゃないっ‼」
俺が夢見た勇者の冒険は自分達で道を決めて協力し合って障害を乗り越えて行く物語だ。
現地の住民や騎士や冒険者と力を合わせて事件の解決や魔族と戦う。決して誰かの意思に従った操り人形の様な冒険がしたい訳じゃない!俺が!俺の力で強くなり立ちはだかる壁を乗り越えて行きたいんだ!
なのに、いつも……っ!いつもいつもいつもっ!水無月さんが俺の前を走っていて常に気に掛ける様に振り向いて手を差し伸べる……。そんなに俺は頼りないのか? 何故もっと信頼してくれない? アルカンシェ様も聖女クレア様も、いがみ合っていたラフィートも水無月さんには友好的に接しているし更に交友を深めている。勇者の俺は一体、何なんだよ……。
「……メリオの意見は分かりました。貴方が水無月さんを快く思っていない事は理解していましたがそれは表面上の事だったようですね。実際は心の深い所の問題になっていたのならここ最近の私の発言もメリオにとっては面白くはなかったでしょう。ごめんなさい」
「俺もミリエステ程では無いとはいえ水無月殿からの支援を友好的に受け取っていたな。だが、それでメリオを蔑ろにしていたわけでは無かったはずだろ? 俺は勇者であるメリオを支える事を目的として同行を名乗り出たんだ。その点は信じてもらえないと俺の立場が無い……」
俺の叫びに近い吐露を聞いたミリエステとマクラインが悲し気な表情でそれぞれ謝罪と失望を現す。
そんな顔をさせたかったわけじゃないのに……。胸に痛みが走る……。
「俺はまぁ確かに<万彩>経由でお前らに出会ったわけだがメリオに付いて行こうと思ったのは俺の意思だ。フォレストトーレ城のお前らは危なっかしい上に仲間を減らしたとあっちゃこの先大変だろうと同情もあったが存外楽しい旅を久しぶりに出来ているぞ。だが、俺はSランクの冒険者とはいえ歳も歳だから最後まで付き合い切れないだろうとも考えていた。メリオが俺を必要ないと言うなら俺は別の道を行こう」
「儂はそもそも仲間の括りではないですからな。水無月殿への義理は果たしたと言えましょうぞ」
クライヴさんの優しさと告白にすぐに否定の言葉を言いたかった。
そんなことは無い!まだ半年程度の付き合いでもいつも助けられてきた。年長者としての経験や包容力に何度も何度も……。でも、声を発すると悔しさや苦しさや自分への失望が堰を切った様に押し寄せ涙が溢れてしまいそうで……。喉も閉まってしまい何も言えなかった。
セプテマさんは己の立場を貫き、決めるのは俺次第と断じた。
『メリオ、貴方は今冷静では無いわ。一晩でも二晩でもちゃんと考えて答えを出すべきでしょう。例え誰かしらの思惑が絡んだとしても貴方が紡いでいるこの冒険譚は確かにメリオの冒険なのですから、遍く選択肢の中で流されたり選んだり……今回もメリオ。貴方が選択して物語を進めなければならないでしょう。皆もそれでよろしいですね?』
様々な感情が渦巻き何も言葉を発する事の出来ない俺を見かねた契約光精エクスが剣から人型へと姿を変え顕現しこの場を収めるべく仲裁に入ってくれた。これにより今日の集まりは解散となって各々が眠れぬ夜を過ごす事となった。
次の日の朝。メリオの表情を見た各員はまだ心の折り合いが付いて無さそうだと悟る。今日の謁見はいつもとは違ったものになるだろうと予感せずにはいられなかった。
* * * * *
「それではアルカンシェ王女殿下。謁見の間へ案内させていただきます」
「よろしくお願いします。宗八とマリエルは付いて来て。メリー達は悪いけれどここで待って居て頂戴」
「かしこまりました。いってらっしゃいませアルカンシェ様、ご主人様」
ヴリドエンデでこれから何かしら活動するにしても一旦王族に挨拶はしておかないといけない。
グリーン・ドラゴンにマリエルとニルの分の魔石精製依頼をして数日。諜報侍女がすでに国内を動き回っているので事後承諾となるがそれでも集まった噂や情報をまとめて提出する事で有益な手札として使える為、今後も動くけどもしも見つけることが出来ても黙認してねと伝える予定だ。
一昨日の時点で仕事が終わったと帰って来たタルとノイが伝えて来たのでこれを機に、と考えて翌日には謁見を申し込んだら国王の時間がどうしても取れないので翌日にさせて欲しい。その代わりに城で持て成させていただきたいという話をもらったのでご厚意に甘えてアスペラルダ所属のメインメンバーだけで登城させてもらい他のメンバーは称号稼ぎに行かせる事となった。客室にはメリーとリッカが残りサーニャは稼ぎに行かせている。
「アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ王女殿下一行!入場‼」
ギギギィ……と開かれた先の間にはヴリドエンデ国王と王太子と宰相。
周りには将軍と兵士がズラリと並んでおり明らかに俺達が警戒されている。そんな様相となっている中をアルシェが先頭を切り俺とマリエルが後に続く。当然少しピリ付いた空気など感じていないかのように堂々とした歩きで国王の前に辿り着き膝を折った。
「面を上げよ」
ここで1ターン待つ、と。
「よい、王女殿下よ面を上げよ。よくぞ我が国へおいでくださったなアルカンシェ王女殿下」
「ご拝謁叶いまして光栄です。ヴリドエンデ国王ドラウグド=ユグノース陛下。改めてアスペラルダ国王ギュンター=アスペラルダが第一王女、アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダでございます」
「ほれアルカイド。お前も挨拶しなさい」
「ヴリドエンデ国王ドラウグド=ユグノースが第一子王太子であるアルカイド=ユグノースと申します。アスペラルダの至宝と称されるアルカンシェ殿下にはひと目相まみえたいと考えておりましたが、よもやこれ程早くに訪国されるとは嬉しい限りです」
頭の中で事前に渡されていた資料の記憶を想起する。
年齢は28歳。既に国内の貴族女性と婚姻していて現時点で一人っ子のアルシェの婚約者候補からは外れている。国王や次男とは違って頭が切れる人物なので戴冠すれば国が発展はするものの弱体化する危険性を孕んでいる。だから将軍を目指す次男が弱体化しない様に調整役になる為に今は魔族領との国境で将軍補佐として軍事中との事。ちなみにラフィート陛下と同じく次男の方はアルシェの婚約者候補でもある。その場合、次男はアスペラルダに移る事となるので国は弱体化しちまうけどな。
「お初にお目に掛かりますアルカイド王太子殿下。私も殿下の御噂はかねがね伺っておりました。次代の王族として今後ともよろしくお願いいたします」
「こちらは宰相のフール=ラインバッハ」
「王女殿下、よろしくお願い致します」
こっちはお爺ちゃん。長い事武闘派の王族を言葉で宥め国を支えて来た本当の影の実力者。
この人が老衰で亡くなる前に王太子が決まって本当に良かったね。
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