†第14章† -14.6話-[一方その頃。|水無月《みなづき》編⑥]
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魔石の精製はある程度までは下位竜と中位竜でも竜工的に行う事が出来るのだが高濃度魔石となると[竜玉]を受け継いだ上位竜の竜王、またの名を竜長が行う必要がある。今のところ魔石が欲しい人間の魔力を竜が吸収して専用魔石を精製し、その魔石の中で高濃度になった魔力からさらに竜が魔石を精製を繰り返すことで最終的な超高濃度魔石が完成する。
青竜フリューネは現在クランメンバーでもあるフランザ=エフィメールの魔石精製を行っており、黄竜と白竜の二竜は俺の魔石を精製してくれている最中だ。一応連絡は取れるように角に装備出来るように彫金された[揺蕩う唄]をそれぞれが付けているので完成したら取りに行く事になっている。しかし、黄竜はともかく白竜が意外と人間臭くて息抜きしたいとか聖女クレアに会いたいから連れってってとかで呼び出される事もある。
『魔石精製の希望者は<万彩>とマリエルですね?』
「「よろしくお願いします」」
魔石精製にはそれなりに時間が掛かり、竜が吸収できる魔力量と魔石化する効率技術も影響するので最後の仕上げだけを緑竜に行ってもらう事となった。それまではひとまず風竜が行い翆煇竜が繋いで魔石を精製してくれるとの事で、さっそく選ばれた風竜に魔力を注ぎつつ緑竜とセリア先生を交えて雑談タイムへと移行した。
『顔合わせだけは終わりました、ここからは一人称などは気にせず話をしましょう。そういえば青の事を略称で呼んでいると伺いました。事実ですか?』
「私は青の守り人になったので対等の証として敬称を付けずにフリューネと呼んでいますが、アルシェやマリエルなど他のメンバーは敬称を付けて呼んでいますね」
「お兄さんは青竜だけでなく黄竜と白竜からも略称を許可されているのです」
「グリーズ様とディー様ですね」
竜玉を受け継いだ上位竜の彼らは特に互いに害を成そうという意志は無いが他の中位や下位の竜が少々排他的で遺物が紛れた様な視線を送って来る。その辺りの機微は理解されているのか緑竜もフリューネには寛容で話に入らず俺の傍で眠り始めた彼に敵意も剥けずに母親の様な寛容さで対話を続ける。
『では、私のことも略称で構いません。そうですね……、クイナとでも名乗りましょうか。敬称については黄も白も許しているのであれば同じように呼んでください』
「クイナですね。今後はそのように致します」
「クイナ様、ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
その後程なくしてアクアとニルが暇を訴え始めたのでマリエルに御守を頼んで緑竜の島を探索に出掛けさせた。
アクアたっての願いでアニマも強制連行されていったが姉妹とコミュニケーションが取れる点と知らない土地を好き勝手に歩く冒険心から各々楽し気に遺跡を後にした。
「今回は顔合わせということもあり俺とマリエルだけの魔石精製をお願いしましたが、今後新しい人間の魔石精製をお願いする予定ですので引き続き協力をお願いいたします」
『頭を上げよ。青と接しているなら分かるだろうが魔石精製は大したことではない。自然に吸収し排泄される我ら竜が生きる上で行われる普通の事である。何ならその辺の魔石も持って行くと良い』
当然、竜の魔石は人間で言うウンコだ。空気中には自然魔力という誰の魔力にも染まっていない魔力が含まれているので竜達はそれを普段の食事として吸収し、やがて小さな魔石として排出する。それらは長い期間ずっと繰り替えされて来た行為なのでその辺に山となって小さな魔石が積みあがっている。竜達もこの魔石をどうこうする予定も無ければアイデアもないので、青竜の島と黄竜の巣と白竜の島に積まれていた小さな魔石は時間を見つけて適当に集めて各国に融通している。いずれその魔石を使った魔道具が多く世に出回る様になったら必要になるであろうとかなんとか言い含めてゴミ掃除に協力してもらっている。
「それではいくらか見繕って出向する度に頂戴いたします」
* * * * *
一方その頃、マリエルと子供達は1匹の翆煇竜の案内に従ってずんずんと島の奥地へと足を踏み込んでいた。
周囲が暴風と厚い雲に覆われているにしては息苦しくもなく、植物なども普通に生えている。まぁ時々見たこともない植物があるのでマリエルだけは採取をしてはインベントリに放り込んでいた。子供たちは仲良く手を繋いで竜の背に乗って辺りを見回し会話に華を咲かせていた。
「ん? なんだか魔物の気配がしますね。この島って竜以外に魔物も生息しているんですか?」
『魔物はいない。が、ダンジョンがあるから時々大量のモンスターが出てくる事はある』
「ダンジョン!? こんな島に出来るモノなんですか!?」
『ダンジョンは魔力溜りが影響して異世界の一部が切り取られ融合したモノとされている。この島は一定の周期で同じ航路を取っている。故にグランハイリアから自然魔力が吹き上がるタイミングでこの島はほぼ上空にあるからこそ魔力に不足しないのだ』
マリエルも宗八から伝え聞いている程度だがこの世界の魔力事情に精通している。
冒険者がダンジョンで戦闘して消費したHPやMPはダンジョンに吸収された後にエネルギーへと変換されて敵や宝箱の再リポップに利用される。ダンジョン外ではHPはともかくMPに関して生物が使用したり死亡した場合、地中へと吸収され濾過されたうえで自然魔力の流れに合流する。これは星の中を巡る血管のような物で物体を透過して星という身体を常に巡っている。
その自然魔力が一定周期で決まった場所から噴き出るタイミングがある。それはマリエルの故郷ネシンフラ島と隣接している港町アクアポッツォであったり、グランハイリアがある大樹の街ハルカナムであったりだが、竜達は噴き出るスポットを探し出して巣を作っていると聞いている。
『良くこんな島都合よく見つけたよねぇ~』
『浮かんでいる技術も謎ですわー!』
『おおかた遺跡に残された魔法陣が生きているだけでしょう。航路に関しては知りませんが自然魔力が影響して魔法陣の魔力が切れる前に補充されているのでしょうね』
「お、アニマちゃんが隊長が喜びそうな話をしてる。あとで報告しないと……」
マリエルは心のメモにアニマの言葉を刻み付けた。
翆煇竜の案内で魔物の気配がする方向に向かうと地下へと続く遺跡の残骸の周囲をウロウロしているモンスターの姿が見えて来た。明らかに魔物群暴走の前兆だったがいつもの事なのか翆煇竜は焦る事もなく息吹を吐いて地表に出ていたモンスターは全て根絶やしにされた。ダンジョンランクは定かではないけれど安全の為に子供達と共に現時点での調査はしない方がいいと判断したマリエルは親の目を盗んでダンジョンを攻略する事を夢見る子供達に残酷な提案をする。
「あ、ダンジョンには入らないからね。脅威度合が分からないし隊長に怒られるのは私だから」
『『え~~~!!?』』
『姉様達……それはそうですよ。二人はともかく私ぁ戦力にならないんですよ?』
「報告はするからこの後合流した時におねだりするしかないね」
その場でマリエルとアニマから諭されたイケイケ姉妹は頭を垂れて落ち込みはしたがすぐに切り替えておねだりに全力を出す決意を固めた。そのままダンジョンはスルーしてそこまで大きくもない島を一周してから宗八達の元へ戻ってさっそく子供達がダンジョン攻略をおねだりする幼い声が遺跡の中に響いた。
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