†第14章† -14話-[影の主を追う]
職場の人にオンラインで何かゲームしませんか?って言うのめちゃ難易度高くね?
おかげでゲームは出来ましたw
火の国[ヴリドエンデ]のユグノース王家に今後どのような顔をして顔を合わせばいいのか……。
阿鼻叫喚のはずなのに何も聞こえない。確かに水無月さんの言う通り事前に契約を交わしていたとはいえ流石にやり過ぎなのではと冷や汗が止まらない。協力者=タルテューフォちゃんとノイちゃんの二人だけと勘違いさせたのは意図したとはいえ、監視役は確実に張り付いていたと思う。だから、ドラウンド国王はアルカンシェ様が王都に来ている事は認識したはずなので双子殿下にも目を光らせている、と思っていたのに何故こんな状況になってしまったのか……。
当然、俺達の会話も阻害されているので意思疎通は出来ない。
けれど俺以外の全員が特に何も思っていないのかもしくは、この程度は当然と思っているのか表情は変わらずに音を気にしなくても良くなった途端さらに躍動し始めたタルテューフォちゃん達を必死に追っている。協力を仰いだとは言え、俺達の仕事と言えばシャドウラーカーが化けていた人物が誰なのかを周囲に居た人々に筆談で確認し、その情報を城下町を警邏している兵士を捕まえて伝えて生存確認に走ってもらう。これは果たして俺達って必要なのか?
「(これ俺達じゃなくてもいいんじゃない?)」
「(気持ちは分かるけど依頼を受けたのは俺達だ。責任ある立場としては仕方がない)」
「(タルちゃんが相手を補足するまで少し時間もあるし丁度いいんじゃない?)」
筆談で仲間にも愚痴ってみた。
どうやらマクラインもミリエステも勇者PTのクエストとして責任を持って最後まで全うするつもりの様だ。こうなるとこれ以上言い募っても俺の映りが悪くなるだけだし大人しく俺も全うするしかないか……。愚痴は収めて魔物の対処を数体こなしている間に世界に音は戻り話し合いが出来るようになったおかげで円滑でスムーズに魔物が化けていた人物の確認と生存確認の手配が進むようになった。流石に今日は昼に合流したから難しいと思っていたんだけど彼女たち、特にノイティミルちゃんがタルテューフォちゃんを急かしたお陰様で王都に侵入していたシャドウラーカー61体が本日中に討伐された。大きな影に逃げ込んだ個体も居たけれど、正体がスライムなら窮めて薄く伸びただけである事に変わりなかったので普通にタルテューフォちゃんが叩き潰していた。
二人とは一旦別れて翌日は王都から離れて方々へ飛んだ。
とは言っても村程度なら1~3体しか居なかったし被害者の状況確認も速やかに行うことが出来た。2~3日目は町や村を巡っておそらくすべてのシャドウラーカーを討伐出来たと二人は報告して来た。それとテイマーの存在もおそらく複数人いてすでに事態を把握して王都から脱出している事も教えてもらったのでさっそく国王との謁見をセッティングしてもらい報告した。
「では、敵の正体はまだ特定出来ていないという訳だな?」
「その通りですが、協力者が人間や獣人とは違う種族の臭いを覚えたそうなので明日から追って行こうと思います」
「勇者様へ依頼をして2カ月程度で予想以上の収穫ですな。ここまで解決が早いとは驚きです」
「宰相の言う通りだな。信じて依頼したとはいえ勇者殿に依頼して良かったと思っている」
正体不明の影の事件。正体はシャドウラーカーという魔物でおそらく操る存在が複数存在する。
ここまでの情報もヴリドエンデ王国軍が数か月調べても何も情報を得られず被害者の数も合計で数万人に及んでいたらしい。これ以上の被害者は出ないという報告には国王だけではなく宰相も兵士達も安心した息を吐きだす程だった。そして……。
「それでだ……。先のハカヌマの一件に関しては……」
「私達で出来得る限りの注意喚起と予防線を張らせていただいた結果ですので私達からは何も言葉はございません」
はっきりと言葉にせずとも伝わるだろう。自業自得。俺達に責任は及ばないと契約しただろう、と。
ドラウンド国王と視線を交わし互いに外さない時間はしばし続いた後に国王はため息と共に瞳を閉じた。
「そう、だな……。考え直してみれば教育に始まりすべてが王である俺の失態だな……。知っていれば教えてもらいたいのだが息子は今後無事に生きて行けるのだろうか?」
「症状としては病気も無く身体の怪我も全て完治しているはずです。ただし、強制的な治療の為にすべての栄養が失われている状態でしょうから食事関係は病人に出すような流動食で栄養が高い物を用意する必要があるでしょう。咀嚼しずらい物や胃に負担の掛かる食事では吐き出し続けてそのまま亡くなる可能性もございます」
「その情報提供に感謝する。同時にアスペラルダの王女一行が謁見に参られた際は今回の件はもちろん問わない上で細心の注意を持って歓迎させていただく事を約束しよう」
それは勝手にしてください。こっちも今回の件はヴリドエンデの自業自得とはいえ冷や汗を掻く羽目になったのだ。危ない橋は俺も渡りたくは無いので敵勢テイマーを捕えたら最上の褒美を要求してやるんだ!
今回の報告はこれにて解散となり、翌日早速テイマーの捜索にタルテューフォちゃんの指差す方向へ[ヘルリオ・ルラ・トレイン]で少しずつ刻みながらテイマーが隠れ潜む位置の特定に務めた。
「テイマーって何人居るんだい?」
「20人かなぁ~? でも、動きは速くないから馬車に乗ったりはしてないと思うんだよ」
「何かしらの手段で人間に化けていないなら移動馬車にも乗れないのは納得ね。それでも移動距離を考えれば徒歩ではなく移動用の魔物を確保しているのかもしれないわね」
町や村からの逃走を昨日開始したにしては村を3つ分も移動している。
今は近くに居るというタルテューフォちゃんの言葉を受け徒歩に切り替えた俺達は彼女たちの先導の元、捜索しながらタルテューフォちゃんに質問を投げかけ、その回答からミリエステが移動用魔物の存在を挙げ口にした。元が魔物である彼女は警戒心が強く認めた者以外には馴れ馴れしく話をしないので道中は基本的にノイティミルちゃんとずっと雑談しているほどだ。気になる事は聞かないと教えてくれない。
「移動用魔物って実際居るの?」
「居るのだ。でも、こっちの魔物じゃないんだよ」
「また魔族領の魔物ということだな……。こっちは馬がほとんどでアーグエングリンだけオオトカゲだったか?」
「俺達はまだアーグエングリンに行けてないんですよクライヴさん。あっちはオオトカゲが馬車を引くんですか……」
具体的な魔物の正体は不明なままだが少なくとも馬よりは走行能力は高そうだ。
そこまで村間が離れていないとはいえ1日で3つも先の村に辿り着いているならあちらの警戒は薄れて安心しているかもしれないな……。馬車引きや単身移動をする場合の魔物情報をクライヴさんとマクラインが話し合っている途中でタルテューフォちゃんの足が止まる。
「あそこに居る。丁度休憩してるみたいなのだ」
『追いつけたですね。勇者、捕縛でいいです?』
「そう…だね……。出来れば実際の犯人を王城に連行したい所ではあるけど……」
俺達に視認出来ないほどに離れた先の森に隠れている対象が魔族だろうが獣人だろうが種族は関係ない。
誰が犯人なのかはっきりさせないとスッキリ解決したとは言えないだろう。どれだけの戦闘力を保有しているのかもわからない中でどのように捕縛しようというのか……。
「う~ん……まぁ大丈夫かなぁ~?」
『何か気になるです?』
「多分どこかに秘密の通路とか用意してると思うんだよ。だから今後合流するだろうからそこで叩く方が楽かもしれないのだ」
『荷物が増えるとその負担は勇者達に及ぶということですね。確か20人という話ですけど、どうするです?』
個別に捕縛する方が危険も少ない事は十分に理解している。
ただ、捕縛した対象は王城に突き出した方が良い事は確実でその辺の村の簡易的な牢屋に入れておくとロクな事にはならなさそうだ。常に連れ歩くのも抵抗するだろう事を考えれば面倒な事この上ない。だったら複数人が集まった段階で襲撃して捕縛がベストとなる。
問題点は敵の強さがわからない事。彼女たちはその辺どうお考えで?
『浮遊精霊は多いけれどタルのステータスを考えれば抜けるです』
「参考までにステータスはどの程度なのかしら?」
「言っていいの~?」
『味方ですし、いずれ彼らも同じくらいになってもらう事を考えれば問題ないですよ』
ミリエステの質問にタルテューフォちゃんはノイティミルちゃんに意見を求めた。
一般人はともかく冒険者にとってステータスは強さの指標になるしあまり開示しない事は暗黙ルールになっている。もちろん犯罪者に知られれば厄介な事になるのでどこから漏れるか警戒して身内にも伝えない方がいいとされている。
タルテューフォちゃんは振り返り小さな背を活かした上目遣いで俺達に答えてくれた。
「——平均700オーバーだよっ!」
絶句した。
伝説的な魔物である事は理解していたけれど彼女は水無月さんに懐く魔物で顎で使える戦力の一人だ。少なくともリーダー格である二人と幹部級の数人のステータスはかなり近い数値になっている可能性が高い……。
「俺達の倍……マジかよ……」
それは誰の声だっただろうか……。
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