†第14章† -11話-[緊急クエスト!やり返し許可証を獲得せよ!]
フェリス・ナヴィダ!このワードが気になる人はGoogle先生に聞いてみよう!
〔はぁ? タルを貸してくれぇ?〕
「事情はいま説明した通りで……水無月さんも気にしていたじゃないですか、影の件!」
〔そりゃ諜報侍女には情報を集めろとは言ったけど魔族がやってるならただの侵略の足掛かりってことだろ? そっちはお前の領分じゃねぇか〕
「ま、まだ確定じゃないですからっ! その後ろに魔神族が居ないとも限らないでしょう!?」
夜。各自の部屋へと別れた俺はさっそく水無月さんへ連絡を取っている。
正直に言えば時間さえ掛ければタルテューフォちゃん抜きで解決は出来ると思うけど、俺達も此処で足止めするわけには行かない。しかし、勇者として見て見ぬ振りも出来ないので早期解決の為に必死に乗り気じゃない水無月さんに言い募る。
〔ん~……そういえば、王子と王女がその後どうなったとか聞いた?〕
「あ、はい。メイドさんから聞きました。王子は普段は謹慎と兵士に混ざって訓練させられているんですよね。王女は厳しい淑女修行が課せられたとか……」
〔悔しさをバネにすりゃいいけど変に恨まれて更にやらかされても困るんだよなぁ〕
「あ~そうですよねぇ……。やらかしそうですよねぇ……」
水無月さんの不安はなんとなく分かる。
彼は子供達だけでなく身内に甘く、敵に対して容赦しない。魔物とはいえタルテューフォちゃんはもう彼にとって身内なのだろう。だから火の国に入国する事を嫌がっているのだ。不安を完全に払拭するとはさすがに確約出来ないけれど、仲間のうち一人は簡単に水無月さんの味方をするだろうし他のメンバーも水無月さんには何かしらの恩義を感じているから極力チカラにはなりたいと思う事だろう。
「明日の登城で陛下には魔物で炙り出すことは伝えますけど猪獅子が協力者とは伝えない様に配慮します。あとは嗅ぎつかれても抵抗する許可ももぎ取ってきますよ!」
〔あと怪我を負わせても自業自得、こちらに一切の非は無いって約束も取り付けておけ。タル一人じゃ不安だから第二長女のノイティミルを一緒に連れて行くからそこは確実に約束しとけ。何なら書面も作成させろ。そしたらお前らが城から宿に戻り次第連れて行ってやる〕
「ありがとうございます。絶対もぎ取ってきますから吉報を待っていてください!」
〔はいはい、期待してるよ。じゃあな〕
個人的に緊張する山を一つ越えて通話が切れた。
翌日、さっそく謁見をした際にエクスから聞いた影の正体と今後の方針を伝えた所、陛下からは当然その魔物とはどの魔物を用意するのかと聞かれた。シャドウラーカーを探すのは基本的に街中なので強い=大型の魔物と思えば何を用意するのかは国王として気になるのは当然だ。
「協力者の魔物なので借りる代わりに正体は伏せる様に言われています」
「それでは許可は出せない。国の問題解決とは言え城下町の中で主の居ない魔物が暴れては事だからだ。分かるな?」
「こちらも陛下直々に依頼された以上早期解決に動きたいと考えています。協力者の懸念はもちろん双子殿下が関わって騒動が起こる事ですのでその魔物の特徴を伝えるだけでお許しいただきたいのですが……」
「ふむ、そう言われると耳が痛いな。では、特徴とやらで許可を検討する。言ってみよ」
文官が紙に記入する準備を整えたのを確認して俺は猪獅子の特徴を伝える。
「山の魔物でとても有名です。知能が高く人の姿を取れますし人の言葉を解します。個としても強いですが群れで行動しております。体毛は白く、幼体でも大人と同じ体高をしています。大きな牙があります。以上です」
「わかった、しばし外に出て待たれよ。予想を付けて許可を出せるか検討する。そう時間は掛けぬ」
「よろしくお願いします」
国王も特徴を聞いてある程度の範囲までは絞れた様だが特定には至れて無さそうだ。
しかし、隣に居る宰相と将軍はポーカーフェイスをキープしていた為よくわからなかった。他にもこの謁見の間には人が居るので情報を出し合って範囲を絞るつもりなのだろう。
ドラウグド=ユグノース陛下から退室を求められたので仲間を連れて退室する。時間で言えば10分程だろうか。扉が開き「お入りください」と兵士が伝達に出て来たので再び入室して膝を折る。
「検討した結果、許可は出そう。伝説の魔物ともなれば名を出したくないという協力者の意図も理解出来る」
「ご理解いただきありがとうございます」
「ただし、臣民に被害や建物の損傷は極力出さぬ様に心掛けてほしい」
「それはもちろんでございます。それと失礼を承知で協力者からの希望を伝えてもよろしいでしょうか?」
ここまでの山は低いと予想通りに事が進んだ。ここからが二つ目の大きな山!
「いいだろう、聞かせてくれ」
「ごほん。もしも魔物の正体に感付き騒乱を起こす者が出た場合は抵抗する許可をいただきたい。怪我を負わせても自業自得、こちらに一切の非は無いという約束を書面にて作製し契約とする事。これには王族も含まれる、との事です」
「……いったい、その協力者に我らが何をしたというのか。勇者殿は何か知っているか?」
「情報収集した結果、双子殿下を警戒しているとは聞いています。彼の方はやられたらやり返なければ気が済まない方なので私としても結果的に廃嫡や人としてまともに生きていけなくなったり王城が半壊するところは見たくありません」
「なんだその傍若無人な者は……。出来るとは思わぬがその様な返しをする程に我が子らは評価を下げているのか?」
まぁ……はっきりとは言わないけれどいつか城下町はもちろん離れた村落にも双子殿下の我儘っぷりは有名だ。
時折視察と称して屋台や飲食店を周っては無銭飲食を繰り返して、その我儘を言うシーンを大勢が見ているのでそこから口コミで国中に広がっているまである。さらに王太子や第二王子の様に戦場に立つ事もしていないにも関わらずその我儘なので益々評価は下落していくのだ。
はっきり代弁してもいいのかと宰相に視線を送ると渋々ながら頷いてくれた。殿下達の将来を見据えれば周りがもっと早くに言っておけばいいのに……。
「何も期待されておりません。市井に出て来る時は迷惑を掛けられたくない人と迷惑を掛ける所を見に来る野次馬の二者に分かれています」
「戦争と政に注力している内に何故その様な事になっているのだ……宰相っ!」
「表現は控えましたがお伝えはしておりましたし、両殿下にも忠言は繰り返しましたが効果がありませんでした。最終的な決断を陛下に求めましたが終ぞ気付いてもらえませんでした」
「俺がはっきり言われなければわからないと知っているだろうがっ!馬鹿者がっ!」
武力こそ正義の国とは言え国王が宰相に言う台詞じゃないでしょ……。俺達もここに居るんですよ~……。
つまり馬鹿が馬鹿なりに必死に国王をしている間に遺伝した馬鹿が馬鹿をしていたって事が顛末かな? 隣にいる王太子が俺達をチラチラ気にしている所を見れば彼は母親似で聡明なのかもしれない。
「陛下、お客人の前です。冷静になってください」
「ハァハァハァ……! そう…だな……すまなかったな勇者殿。宰相と周囲の反応からして嘘を言っているわけでは無いと信じよう。勇者殿と協力者の懸念事項に理解した上で希望の契約は履行しよう。契約書の作製に入るぞ!」
陛下の決断を機に協力者への攻撃的接触に関する契約書の調印までスムーズに進み、無事に水無月さんとの約束を果たせたことに安堵する。
どうやら監視役を付けて我儘を抑制する様に宰相は命令していたが度が過ぎる我儘を止める度に限度が分からなくなって役割を果たせなくなっていたことが後々判明するのだが、それは俺達には関係のない話だ。双子殿下が強制勉強させられている時間帯だったのでそのまま城下へと逃げる事に成功した。
まぁ猪獅子の脅威度を考えれば監視は俺達にも付くだろうけれど気にする事は無いと思っている。どうせ各村へ移動する時は魔法でひとっ飛びなので付いてくる事は出来ないだろうし。
やり遂げましたよ!水無月さん!緊急クエスト達成だああああああ!
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