†第14章† -05話-[噂の地下遺跡-噂の救世主の鎧④-]
Jから始まる自称ネット会社が支払確認ミスで私の回線を利用停止にしていた為投稿が遅れました。
建物の立地上、某COMしか利用できないのが本当に辛い。
「ははははっ!慣れてくれば面白い戦闘だなぁ!おいっ!」
「《堅固の盾腕!》。クライヴさぁんっ!デカイの来ますからこっちに避難!早くっ!」
「後方メンバー大丈夫っ!?」
「盾裏に入りましたっ!こっちはいいからメリオは鎧の攻撃に集中して!腕部が来ますよ!」
戦闘が始まって20分ほどが経ち、不慣れな異世界の魔法の対処にも対策の目途が立ち始めていた。
様々な声が飛び交った直後に救世鎧リッチの頭上で輝く光の球から無作為にレーザーが幾重にも放たれ、ボス部屋を高速で走り回る。広いボス部屋の壁まで届く為AGIが低い重騎士のマクラインと後方のミリエステは初見時被弾をしてしまった。
他の面々も被弾を避けたり盾で上手く防いだりしたものの全てを捌くことは出来ず、レベルもVITも低いアナスタシアはHPがレッドゾーンまで追い込まれる場面もあった。
今では縦横無尽に走って来たレーザーの対策にマクラインが宝石の盾を装備した岩石の頑丈な腕を魔法で造り出し、前衛も後衛も全員がその幅広の安全地帯に逃げ込むことで一息つく事すら出来ていた。
すぐ横に迫って来たレーザーが地面を高温で熱する音が聞こえていた物が一瞬途切れて右から左、左から右へと自分達の時だけ光は途切れる。この魔法が続く約30秒ほどの間は各々ポーションを口にしたり鎧の攻撃を警戒して息を整えたり、ミリエステに至っては放物線を描く[フレアーヴォム]をレーザーの発射元に適当に投げ込みまくる余裕まで見せている。
「来たぞメリオ!一つはそっちで処理しろよっ!」
「任せてください!」
クライヴさんが殴打で迎え撃つ腕部(右)と違って斬撃で相手取らなければならない腕部(左)の相手は苦慮必至だ。
しかしそこは指南役であるセプテマさんから早々に指導の声掛けがあった。曰く「装飾部を狙って斬り付ける」という事。
確かに無駄に豪華な装いである救世主の鎧だから腕部も凹凸が多い。そこを狙えとおっしゃるのだ。難しい注文っ!
『メリオもサポート無しで一人で出来るようになるべきですね』
「的が……小さくは無いけど結構速いし装飾なんて目が追いつかないって!」
『戦闘も繰り返してレベルも上がっていますから後は慣れですよ。全パーツ攻撃よりはマシなのですから早く慣れてください』
「が、頑張ります……」
レベル100に近くなっているというのに今更剣術の指導を受けるとは思わなかったし、今更こんな神経を使う戦闘をするとも考えていなかった。故に苦戦する。連続で突進貫手と掴み攻撃をしてくる腕部(左)を集中して捌く最中、再び攻撃を捌き損なってまともに受け止めてしまった衝撃に右手に痺れが発生する。こうなると精密な斬り払いは行えない為、左手の中盾で上手く往なすしかなくなる。
「レーザー終わるぞ!メリオ!前へ出ろ!」
「クライヴ殿!儂が代わりますから前へ!」
マクラインとセプテマさんの声が重なると同時にレーザーは収縮して消えていく。
魔法とは別に動く腕部の攻撃を二人に引き継いで俺とクライヴさんが一つの検証の為に救世鎧リッチに接近して腕部との違いを測るべく果敢に攻撃を繰り返す。当然腕部が無くとも暴走している救世鎧リッチは走り回るし蹴りまで放って来るのでこちらも回避と攻撃と並走で忙しい。
「割り込み失礼致します。《魔力接続》《影転移》」
「今ので作戦その2の準備が出来たのか?」
「魔力を吸い取る魔法ですね。これで多少なりとも魔法の通りが良くなる予定です。
それにリッチのMPが底を尽けば魔法を気にする必要が無くなりますから」
アナスタシアが影を通って転移したかと思えば救世鎧リッチに少し触れて再び影へと逃げて行く。
実際、Aランクのボスであり魔導師のリッチが戦闘途中でMPが底を尽いた事例は無い。
ただし魔法耐性を上げるフィールドとやらを少しでも弱体化出来れば儲けものであるし、戦闘が長引くなら保険としてMP切れを期待したいという理由もある。問題としては吸収するアナスタシア組が未熟な精霊使いである為、総魔力量がクーデルカ・メリー組に比べると雲泥の差で低い事と魔法制御力も天と地ほど差があるので吸収効率も遅い2点。
「もう十分だろ。メリオは気付いたか?」
「はい!やっぱり集まっている状態だと防御力が高すぎますね!」
クライヴと頷き合って一旦マクラインが控えるエリアへと退くと後衛にも分かりやすくコンタクトを送る。
仮説は正しかった。これで救世鎧リッチ討伐の目途も立った。
「二人とも、お疲れ様。やっぱりバラバラの所を狙うしかないか?」
「腕部は一回り塊として大きいから苦労するけど、パーツなら小さい。なんとか少しずつ破壊するしかないね」
「ただまぁ……バラバラの時は体当たりをしたら大回りで戻って行っちまうから痛みに耐えながら前衛が攻撃して後衛はセプテマ様に護ってもらい、戻りはミリエステが攻撃して撃ち落とすしかねぇだろうな」
「攻撃チャンスは少ないけど対処方法が分かればあとはルーチンで何とかなる。
気を付けなければならないのはマクラインの盾でも防げない氷津波の魔法と地面を剥がす魔法の2つかな。移動回避と救世鎧が別に動くと被弾覚悟で防がないといけないから……」
キメラ型然り救世鎧リッチ然り、複数の思考を持つモンスターに存在する同時攻撃パターンは組み合わせによっては厳しい局面を迎える可能性がある。先の2つの魔法は地面から氷やら岩やらが生えて来る魔法なので地表で盾を構えるマクラインでは防ぎようがないのだ。とりあえず規模が大きい魔法はその前兆があるから回避に専念すれば攻撃を受けずに済むのは幸いだ。
「さっそく地面の小石が震え始めたぞ。マクラインとメリオは移動しろ。
向かって来てる救世鎧は俺が足止めするからメリオは次に備えて休憩していろ」
「お願いします」
「後衛陣に念の為作戦実施を伝えて休みます」
三者は言葉を交わすと素早く移動を開始した。
クライヴさんは地面が捲れ上がらない位置へ救世鎧リッチを誘導して上手く往なし、マクラインは後衛にボスが向かわない様に広いボス部屋で最適な位置へ移動。俺は移動を始めた後衛に合流を目指して足を速める。
「メリオ、どうしたの?」
「一応口頭でも伝えようと思って。やっぱりパーツの時に一つずつ破壊していくしかないと思う。
これもセプテマさんのお陰です。助かりました」
「念の為鎧破壊を試みて正解であったな。3度目にバラバラになった時にヒビを見つけられたのは本当に運が良かった」
「リッチだけを先に倒す案もあったけれど、そうなると今度はメリオ達前衛がターゲットになって取り込まれる可能性もあるものね。本当にセプテマ様が居てくれて良かったわ」
セプテマさんの得意な事に武器破壊があった。
もちろん斬撃と鎧の相性は悪いので鎧対策に鎧破壊の技術も身に付けたらしい。そして先頭に慣れない冒頭で救世鎧リッチが前衛を抜けて後衛に接近した際に接触を防いでくれたのはセプテマさん。その時の感触からパーツにはそれぞれHPや防御力が設けられていて集まっている間は総合値となるのではとの仮説だった。
セプテマさんの鎧破壊は大ダメージを与えられるけれど俺達の攻撃が通らない訳じゃない。そのような経緯がありこの作戦は実行に移されたのだ。
「パーツがばらけるぞっ!迎撃準備っ!」
近接で殴り合っていたクライヴさんがいち早く気付き叫びながらマクラインの元へと退いていく。
「では、俺も前に戻ります。ミリエステはセプテマさんが斬り払った後のパーツに攻撃宜しく」
「任せなさい!」
「うん。《輝動》」
光の速さでマクラインの背後へと移動するとすぐにクライヴさんも戻って来た。
流石に全身をパーツで攻撃されながらこちらも攻撃とかだと被弾が大きすぎるのでマクラインの盾に半分隠れながら少しずつパーツの耐久力を削る作戦で攻めて行く。
鎧が光の線で満たされた瞬間。パラッとリッチをその場に残して鎧はばらばらに分かれ俺達前衛と後衛に向けて群れとなって突撃して来る。その間にもリッチの魔法が発動して対象となった地面が捲れ昇り大岩が複数宙を舞う不思議な光景の中キラキラと光を反射しながら突撃して来たパーツ群がマクラインの盾に到達した。
ガツガツガツ。と重量を持ったパーツがいくつも大盾にぶつかるもマクラインは魔法で強化しているので何の問題もない様だ。
その脇で俺とクライヴさんは半身にパーツが突っ込んで来るのもお構いなしにとにかく攻撃を繰り返す。数を減らさない事には救世主の鎧を倒すに至れない。とにかく集中!斬って!斬って!斬って!
俺達や後衛陣を抜けたパーツは弧を描いて群れとなりリッチの元へと戻っていく。このタイミングで……。
「行くわよ!フォデール!《ブレイズレイド!6連!》」
『《ブレイズダンス!》《インフェルノ!》』
飛ぶ業火球はパーツの群れに狙い過たず着弾して6回の爆発を起こしてパーツにダメージを与える。
その爆発でバランスを崩して群れから外れたパーツに火精フォデールの焔短剣がトップスピードで鋭角に切り込み小爆発を起こす。それでも尚群れとなってリッチに向かうパーツ群を襲う上級火魔法[インフェルノ]。初代火精王の名を冠する上級魔法は炎の竜巻となってパーツの行く手を遮り尚且つ炎を周囲に拡散するので直撃を逃れたパーツにも多少なりの被害をもたらした。
普段ならこんな魔法を使ってしまえば2周ほどでミリエステのMPが底を尽くが今回はアナスタシアさんの魔法で補給をしているので次に鎧がばらけた時には全回復している事だろう。実に頼もしい。
この一回では流石にパーツは一つとして破壊に至らなかったが繰り返し続ければいずれは倒せる。そう確信出来る手ごたえがあった。
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