閑話休題 -100話-[タレア漁村、開港]
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クレア達は帰って行った。ゲート向こうから手を振るのでクランメンバー全員で見送りゲートは閉じられた。
さて、健康状態は確認できたし経過を見る上で安心してセッセセ出来る環境に置いて様子を見なければこれ以上の手助けは難しい。
故に準備が済んでいるタレア族グループを先に漁村に連れていく事とした。
そういえば魚人のセッセセってどんな感じで行うのだろうか? 何の川魚かは覚えていないけど卵を川底に産んでそれに精液をズブシャッて掛けるとかだった気がする。彼らは何魚かな?
「隊長、タレア族の皆さんの準備完了してますよ」
「なのだ~!」
魚のセッセセについて熟考していた俺の元へマリエルとタルテューフォが小走りで報告に来た。
俺が離れている間もタルとまともに打ち合う訓練が出来るのはマリエルくらいなので任せていたけどさらに仲良く成った様だ。彼女たちから視線を外すと残るナユタの民との別れは完了しているらしくタレア族皆が俺の次の行動に注視していた。
「二人ともありがとう。一度皆であっちに行ってみましょう。
生活に不足している物に気付きがあれば今日の内に用意しますので」
「水無月殿。よろしく頼む」
「こちらこそ。じゃあさっそくゲートを繋げます」
タレア族の代表をしているボンド氏がたどたどしい口調で話しかけて来たのを機にゲートを海辺に急遽作られた漁村へと繋げる。
大勢が移動するから大きめにゲートを広げていく。そのゲートから土の国よりも冷えた空気が流れて来る。
奇しくも季節は火の月初旬。これからの季節に打ってつけの避暑地と言えるだろう。
肩で風を斬り先頭を進む俺にマリエルとタルが追随し地竜の島に居たメンバーもナユタの民も続々と漁村に移動して来る。
「おぉ~♪故郷にも似た雰囲気の砂浜ぁ!いい場所じゃないですかぁ~!」
「ひろ~いのだ~!わははははは~!」
「ここが我らの新しい、故郷……」
「簡易的な家がいくつかと大きい家を一つ建てているそうです。
資材は相当量持ち込んでいるので新しい家屋は自分達で造ってもらって構いません。この村は貴方達で開拓してください」
後続の邪魔にならないところまで進んで立ち止まった俺を追い抜きテンション高めに砂浜に駆けて行った二人は放っておくとして、感慨深げに周囲を見回しながら俺の隣に来た代表のボンド氏に一応軽い説明を行う。
ここはかなり前に廃村となった跡地らしい。その復興の一環としてもタレア族の受け入れをアスペラルダ上層部は好意的に受け入れ、急ピッチで一般的な漁村の家屋をささっと工兵達が組み上げてくれた。大きい建物も同様だが超短期間で受け入れ準備が整ったのも俺がゲートを繋いで建材の運び込みや人員の行き来に協力したからだ。
「海に、入ってみても良いか?」
「どうぞ。沖に行き過ぎると高ランクの魔物が居るので慎重に行動範囲を自分達で定めてください」
「わかった。少し潜って来る」
ボンド氏はそう言い残すと氏族に指示を伝えた後に数人を連れて海へと潜って行った。
残されたタレア族の面々は村の方々へと生活圏内の確認に散り散りとなり、セフィーナ女史とジョイザイル氏のグループは所在無さげに周囲を見回しながらも余り動き回らない。
「ここと残りの方々が住む村はゲートを繋げっ放しにする予定です。
フォレストトーレは海無し国なのでこちらで取れる魚と野菜などを取引すればいいんじゃないかと考えていますが具体的には互いがちゃんと生活出来るようになってからの話ですね……。ジョイザイル氏達の後見人はラフィート殿下なので運用は彼が考えてくださるでしょう」
「……今でも信じられていないのです。あの先の見えない世界で死んでいくのだと思っていたのにこの数日ですべてが塗り替えられていく。アルカンシェ王女殿下もそうですが、何故この世界の方々はここまで親身になって下さるのですか?」
「セフィーナの考えは私達も同様の気持ちだ。敵対しているわけでは無いにしても住む場所やタレア族に至っては村まで用意している。
ここまで親切に手助けする意図が見えずこちらとしては感謝の気持ちを持ちつつも素直になれん」
セフィーナ女史とジョイザイル氏の言い分はよくわかる。
彼らの村は3つの別グループから成る集団だった。それぞれが牽制しつつ協力して生活するなぞストレスが貯まる事この上ないだろう。
そんな生活をしていた彼らを偶然とはいえ助け出した俺達が衣食住を整えてこれからの生活を手助けする、というのは裏があるのではと考えるのも仕方ないのかもしれない。
「アスペラルダはそもそも穏やかで優しい人が多いですし、フォレストトーレは最近臣民が減ったので補充も兼ねて受け入れたという下心がありますよ。アルシェや俺に関しては助けた手前そのまま受け入れ先に押し付けるってのも見捨てたみたいで夢見が悪くなる。
だから憂いなく生活出来るようになるまで見届けて魔神族との戦いに万全の心持ちで臨みたい。そういう下心があります」
自分達の為に出来る事をしている。あぁしておけば良かったかもと心配事を残すよりは自己満足の済む様に手助けをする。
予定外だったとは言え救えた命。言い換えればエゴでノブレスオブリージュでお節介。ここから先に彼らが頼るのは俺達グループではなく国に代わるのでこれが本当に最後のお助けの予定だ。
「これから自分達で生活環境を整えていく必要はあります。当然異世界なので常識からして違う部分は出て来るでしょう。
助けた手前ここまでは協力しましたが長く見守る事は役目もあって出来ないので、まぁ……。今回だけもらえて当然。0Gで始められる異世界生活。引っ越し祝い。とでも受け止めればいいんじゃないでしょうか」
「引っ越し祝い……という文化は初めて聞きましたが。言いたいことは理解しました。
今回の件までは感謝をするだけにしますが、もし村を訪れた際は歓迎はさせてくださいね」
上手い言い方が思いつかなかったけど何とか理解してもらえた。
感覚としては捨て犬を拾ったのに里親に出すみたいな複雑な感覚なので理解してもらえて本当に良かった。感謝はもちろん皆嬉しいけどいつまでも「あの時は助かりました」とか言われたり扱われるのは……。言い方は悪いけどウザイと感じるだろう。俺だけかもしれないけど。
ありがとうで終われるなら後は自分達の事に集中して自立してくれた方が俺は嬉しいのだ。
「私はいずれ住まわせてもらう村を出るかもしれない。それでも感謝は忘れず生き残る事を諦めない事は誓おう」
「はい。せっかく異世界にまで来て生き残ったんです。精一杯あがいて希望を見つけて下さい」
この日は周囲の散策などを俺達同伴の元行い、危険性がある魔物の生息範囲の大雑把な確認と自生している植物の散策を進めた。
ある程度の情報はもちろん最初にアスペラルダから受け取ってはいるものの自分の足で範囲を理解し目や手で安全の確認を行わないと実際に危機が迫った時に対処出来ないと困るのは彼らだ。せっかく保護したのに目を離した隙に全滅しているとかは出来れば勘弁願いたい。
あとはラフィートからの連絡を待って残るセフィーナ女史とジョイザイル氏のグループとエルダードワーフ達を入れ替えればひとまず移住は完了か……。とりま、休暇を頂けたら牧場で羽を伸ばしたい。
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