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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
閑話休題 -|霹靂《へきれき》のナユタ討伐祝い休暇-

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閑話休題 -96話-[亡命のナユタの民。新天地にて。①]

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 アルシェに続いてトワインも精霊樹グランハイリアに無精セルレインと共に魔力を奉納して武器の創成をしてもらった。

 アルシェの武器創成だけかと考えていた人々は持ち上がりから一旦落ち着いていた。が、その後再び今度は白色の光をグランハイリアの一部が光り輝いた事でもうひと盛り上がりを見せた。


 その神々しい様子をディテウスが羨ましそうな顔で見上げていた。

 仕方がない。それを理解はしていても強くなる為に与えられる特別な武器なのだ。特別な力は誰もが取得出来るならば欲しいだろう。その横顔を俺は何度も見ていた。

 ゼノウPTのライナー=ライボルトが何度も同じ顔で仲間を見つめていたのだ。


 ライナーは風属性に傾倒した片手剣士であるのだが、真なる加護の取得が難しい状況にあった。

 フランザはアルシェへの祝福から十年以上のインターバルが開いていたので問題なくナデージュ王妃から祝福頂けた。トワインは七精使いとして育てているので亜神の加護で問題ない。ゼノウはアルカトラズ様へ顔繫ぎ済みだしあと数か月もすれば真なる加護も祝福頂ける予定だ。

 そんな中でライナーだけが無精の変質も出来ていなければ真なる加護の取得も出来ていない。PTメンバーの中で一歩も二歩も遅れていると考え感じてしまうのは仕方の無い事だ。


 その問題を解決するには風精王テンペスト様と謁見する必要がある訳なんだけど……。

 フォレストトーレ旧王都奪還作戦中にマリエルに真なる加護の祝福をいただいたのでライナーは少なくとも半年は後回しになってしまっている。さらに無精の変質にしても接触の機会をいただけていないので俺にはどうする事も出来ない状況なのだ。アスペラルダの宮廷魔導士に就いていたセリア先生もしばらく姿を見ておらず連絡も取れない状態で知らぬ間に宮廷魔導士も辞職していた。


「羨ましいか?」

「正直に言えば凄く羨ましいです。でも、ファウナ様が言われた事も納得出来る内容でしたから……大丈夫です」

「まぁあまり気にするな。精霊樹の武器はまだ未知数な点が多いから俺も含めて試金石扱いだ。

 ディテウスが創成してもらう頃にはある程度不満点も出ているだろうし改善した武器を手に出来るさ」

「……師匠を踏み台にする弟子ってどうなんですか?」


 俺の顔を見ながら困惑した表情のディテウスが問い掛けて来た。

 もちろん答えは決まっている。


「どちらかと言えば師匠を超える事が弟子の仕事って考えてるけど?

 というか、使えるモノは親でも使えって言葉が俺の世界にはあるよ。あれ取って、これ買って、食べてみてくださいよって毒見までさせても俺は文句を言わないよ。俺がしてることだからな」

「俺の認識とは隔絶した違いがありますね。親なら身内ですし何かを取ってもらうことはありますけど、流石に師匠には難しいですよ」

「そう言っていたトワインは普段は俺を立たせる態度だけどすぐに慣れたぞ。

 どっかに連れ出したら珍しい食べ物食べに行きたいとか訓練の集中力が切れたら別の訓練に変えましょうとか。結果、強くなればそれで良い。抜ける所は抜いて、締める所は締める。ケジメを付けるって奴さ……」

「真面目なトワインさんが毒されたなら俺も時間の問題ですね」


 そんな冗談を口にしながら慣れない師弟の慣れ合いにディテウスは戸惑いながらもはにかんだ。

 それでいいんだと背を叩くことで肯定を示した俺は足を進める。もうトワインの手には新しい精霊樹の弓が握られていたからだ。

 アルシェもトワインも試したいのだろう。二人で喜びを分かち合った後に俺達の方へ振り向くなりじっと俺に視線を送って来る。


『早く試したいって顔に書いていますね』

『アクアも試したいから迷惑の掛からないところに移動しないとねぇ~♪』

「じゃあ、一旦島に戻るんですかね?」


 クーの言う通り目は口ほどに物を言う。使用感は使いながら慣れる必要がある=訓練や模擬戦を希望ってことだ。

 アクアも[ユニゾン]すればアルシェの身体を使えるから笑顔を浮かべて楽し気に地竜の島へ想いを馳せている。が、トワインやディテウスのステータスを強化するなら称号が必要不可欠。簡単に手に出来る称号は特定の場所で特定のモンスターを大量に討伐する事で得られる。

 ならば……。


「今日は3人でPTを組んでダンジョンなり周囲の魔物討伐なりに専念してくれ。

 近場ならマリーブパリアの[≪ランク3≫バゼド飲食店地下]もあるし、何なら教国のダンジョンがある町もいくつか暇な時間にゲートを設置済みだからそっちでもいいぞ。もしくはギルドで魔物の生息域を調べて片っ端から討伐してもいい」

「周辺魔物の討伐はタルちゃんがそれでステータスを上げていましたね……」

「確かに私達ってダンジョンにあまり潜る機会がなかった気がします。師匠が送り迎えしてくれるなら教国のダンジョンは興味がありますね」

「お、俺は……アルカンシェ様と姉弟子にお任せします。どこでも外れは無いですから」


 アルシェが口にしたタルを参考にするならば長年の生活の中でただ邪魔者を倒していただけ。その積み重ねだ。

 称号の効果を考えれば各々が1種類の魔物を300体討伐しなければならない。3人なら合計900体だ。計算なんてしていられないから誤差を考えても1200体を求めたい事情を加味してもそんな群れをいくつも討伐することが現実的じゃない。

 なら、師匠をアッシーとして計算するトワインの案が現実的か……。


「じゃあ周回前提でまずは[《ランク1》レイブリアの眠る丘]のあるフォントレの町に送るよ。アルシェはギルドで帰還門の登録と出現モンスターの確認を忘れないようにね。ボスまで駆け抜けながら討伐。[エクソダス]で戻って周回な」

「わかりました。広範囲を探し回るよりは確かに周回の方が効率は良さそうですね。

 称号を得られたらお兄さんに連絡でいいのでしょうか?」

「うん、それでいいよ。ゼノウ達も少数で回らせる予定だしお前達が先に予定を消化してくれれば残置戦力として運用出来る。

 クランメンバーだけでなく他に協力者にもステータスの底上げをしたいところだけど……とりあえずは俺達を優先だな」

「私達のレベルとダンジョンランクが合っていないとしてもそれなりに時間は掛かるかと思います。その間お兄さんはどうするご予定ですか?」


 俺の予定は他のメンバーを少数に分け同じ様にダンジョンに放り込む事。その後はユレイアルド神聖教国へクレアと教皇様相手に報告とナユタの民の診察出向のお願いだ。彼らは数世代に渡って長らく瘴気に蝕まれた為、子孫を残す機能が著しく落ちてしまっている。

 フォレストトーレの民になったとしても遺伝子不全を起こしているなら今後も彼らの子孫は子を作り辛いはず。正常な遺伝子を持つ者と結ばれたとて問題はずっと一族に付きまとう問題になるからクレアに何とか出来ないか相談したいのだ。


「そうですか。クレアはこの間10歳になったそうですから何か贈り物を持って行った方が喜ぶかと思いますよ。

 私はお兄さんとは別口で用意して今度会った時に渡す約束をしています」

「誕生日かぁ。アドバイス通り何か喜びそうなのを用意して持って行くよ。

 アスペラルダで懇意にしているケーキ屋にも寄っておくかな……」

「ケーキ屋さんに行くなら私も食べたいです♪」

「はいはい、みんなのお土産も買っておくよ」


 妹に可愛くおねだりされると嬉しくなっちゃうのが兄の悲しい性だよな……。

 いつも苦労を掛けているしケーキ程度いくらでも買いに行かせていただきますとも。

 3人をさっそくゲートで教国方面へ送り出した俺はひとまずアスペラルダの城下町にあるケーキ屋に出向くのであった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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