閑話休題 -93話-[再会+対策+事後報告①]
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『(お久しぶりですわね、<万彩>)』
「これどうやって会話してるんだ…?」
『(ふふふっ、この町。ハルカナムの植物なら私の支配下にありますもの。
念話に近い会話程度なら可能ですわよ。すぐ向かいますのでお待ちになってくださいませ)』
「わかった」
木精ファウナは特別な精霊だ。
元は風精であるがグランハイリアに住む事で普通の樹を精霊樹へと変化させ、自身をも特別な加階を経るに至った。
結果、植物と意思を交わし蔦や枝葉を操る事が出来るようになっている。だから魔族に利用された時もトレント種であるキュクレウス=ヌイにその身を窶したらしい。
木精となっても風精の扱いなのか里の守護者はそのまま役割を担っているのだそうだ。
『お待たせ致しましたわ。ラフィートから<万彩>が今から向かうと伺ってお待ちしておりましたのよ』
先ほどまで触れていたグランハイリアの幹からヌルリとファウナが姿を現した。
肘先と膝先と髪の毛が植物で形成されているファウナと地に降り立つと出迎えのカーテシーと言葉で再会を果たした。
件の事件で位階が落ちたはずだがそれでも中学生くらいの姿を保っている。中位階くらいか?
『お久しぶりですファウナ様。その後お加減いかがでしょうか』
『うふふ、御機嫌ようクーデルカ。位階は戻りませんけれど里の守護者としては十分働けますわ』
『こんにちわファウナ様』
『はい、こんにちわ。よく遊びに来て下さったわねベルトロープ。ゆっくりして行って下さいな』
子供たちが挨拶を交わす間にカレイドハイリアはどこかと見回すとグランハイリアにブッ刺さる我が剣を見つけた。
え? これヤバくね?
近頃のカレイドハイリアは自力で浮かび上がり自由に行動するアグレッシブさを発揮し始めていた。
普段は俺の腰に収まるか背後を浮遊して良い子にしているのに自身の親とも言えるグランハイリアにブッ刺さるとか各方面的にもヤバイ。誰にも見つからない内に回収しておかなきゃ。
『あ、<万彩>。カレイドハイリアの状況については研究所職員に説明しておきましたから問題にはなりませんからご安心してくださいな。あの程度の傷ならグランハイリアも自然治癒出来ますので』
「アッハイ……スンマセン」
すでにバレていた。
フォレストトーレに着いてから勝手にピューンと飛んで行って俺はラフィートの元へ行ったから。
上映会を考えればそれなりに時間が経っているわけだしね。そりゃそうか。
「さっそく相談なんだけど、カレイドハイリアみたいな武器って量産可能かな?」
『可能ですわよ。材料はグランハイリア自身と使用者の魔力ですから全属性は大変ですけれど。
どなたの武器をご所望なのですか?』
「俺の弟子の全属性弓と全属性棒。あとは試しにアルシェの水氷属性の槍も欲しいかな」
『相も変わらず欲張りセットですわね……。
全属性はグランハイリアも大変ですから本人を連れて来てみてくださいませ。気に入れば製作致しますわ。
ちなみに<万彩>の事はお気に入りですわよ♪』
グランハイリアに巣食う魔物を倒しまくったのは確かに俺達だし、ファウナを救出したのも俺達だから好感度が高いのかもしれない。それならファウナ救出に協力していた愛弟子たちも希望はあるかもしれない。
活躍という意味合いならトワインだけかもな…。ディテウスは当時まだパッとしていないから。
「アルシェの武器は大丈夫そうか?」
『アルカンシェは槍……いえ、槍と剣の複合でしたわね。
造形に関しては私もハイリア達も知識がありませんわね……。魔力にイメージを乗せて流していただければなんとかなるかしら?』
「あと別の素材を合成するとか出来るか? 糸みたいな」
『形成と組み立て。仕上げなどは全て[精樹界]で行いますから大丈夫ですわ』
今のアルシェの武器って基本は杖を装備しているけど実際に戦いが始まるとアクアが龍玉で槍剣を創成している。なので持ち運びに苦労は無いけど、カレイドハイリアみたいに実体を持つ槍を持ち運ぶのは少々不便だ。
だから折り畳み式にしたいだけど強度とかその辺りはわからないし、まずは実験的に造ってもらおう。
上手く行ったらトワインやディテウスの武器も折り畳み機能を持たせたい。
「また明日素材とメンバー連れて来るからアルシェの武器と弟子たちの判断を頼む」
『わかりましたわ。グランハイリアと共にお待ちしておりますわね』
* * * * *
ファウナとグランハイリアに別れを告げて次に向かった先は旧王都。
エルダードワーフとドラゴドワーフ。そして地竜達も避難先として一時的に生活してもらっているのだ。
普通の生活をしている人たちに比べれば岩だらけという意味で島の生活と大きな違いは無いけど、出来る限り便宜は図る様にラフィートと調整はしていたはずなのでストレスはあまり貯め込んでいないといいけどどうだろうか。
「こんにちわー」
「ん? おお!水無月殿!いつも通りいきなりの来訪ですな!」
旧王都には何度か顔を出しているから今回も顔見知りに声を掛ければこの通り。顔パスだ。
彼は作業場の監督員の一人で建築物担当のドワーフ。ずんぐりむっくり髭もじゃの方な。
「もしや用事が終わってエルダードワーフの方々を迎えに来られたので?」
「ほぼ正解ですね。用事は片付いたんですけど、いつ戻せるか予定は未定で……」
「それでも近々ここを去る事に変わりはありません。彼の方々の故郷へは中々こちらから訪問する訳にも行きませんからね…。
一緒に侵食を共に出来る機会が巡って来た事は我が人生に置いて幸運であった」
聞けば彼らドワーフは自分達より上位存在が居ることなど露にも知らずに暮らして来た。
だというのに出会った瞬間に崇敬の念が沸き上がったそうだ。何それ野生生物みたい。
その血の定めに目覚めた彼を筆頭に作業員として配置されたドワーフの皆さまはエルダーの為であれば苦も無く働くことが出来た。
作業効率は当社比3倍。瓦礫除去に更地作業、土木作業はどんどんと進みさらに作業員を増員出来るほどに居住区が広がったそうだ。
そんな劇薬が居なくなる。激務から解放されるというのに何故悲し気なのだ……。
「ま、まぁ予定は未定。未定だから…。とりあえずソニューザのところに連れて行ってもらえますか」
「わかりました。おい!しばらく任せるぞ!」
「へい!」
ひと声掛けてからドワーフの案内に付いて行くと生活感のある区画に辿り着いた。
ほとんどが手付かずの土台だけだったり水道管用なのか長い大穴が空いていたがここだけは完成した家が集まっていて施錠も出来るようになっている。
傍には地竜が数匹寝転がってもいた。
「ソニューザ様のお宅はこちらです。ご本人は別の作業場に行かれているので自分が呼んで来ます。
中にご家族がいらっしゃるので訪ねてお待ちください」
「案内ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします」
最後に言葉を交わすと彼は颯爽とソニューザの元へと走り去ってしまった。さも、早く逢いたいかの様に。
種族内の崇敬問題は傍から見ると複雑な気持ちになるな……。
俺はそんなドワーフから視線を引き剥がし、改めてソニューザ宅のドアをノックした。
家族って事は村長とお母様も一緒に暮らしているという事だろう。
「はいは~い!おや、アンタは青竜の……。なんとか宗八だ!」
「青竜の守護者で水無月宗八だ。なんでネフィリナが出て来るんだよ」
なんとドアを開いて顔を出したのはソニューザの恋人。ドラゴドワーフのネフィリナだった。
褐色で身長も大きい彼女は魔石加工で魔糸や装備品を仕立ててくれる職人さんだ。一石二鳥ではあるけどもう同棲しているとかうらやまけしからんなぁ!ソニューザめ!
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