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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第13章 -1stW_ナユタの世界-

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†第13章† -34話-[エピローグ①]

「~~~~~~、~~~」

「~~~ー!~~~~~~~~ー!」


 パチ。微睡の中。瞳を開くとエルダードワーフの家屋の天井が視界いっぱいに広がっていた。

 身動ぎすると魔物の毛皮で造られた大きなベッドで眠っていたことがわかる。ぬくぬくだぁ。

 目覚める切っ掛けとなった微かなに聞こえた会話は俺の胸元が発生源の様だ。


『お父様。おはようございます』

『起きるのが遅いですわー!アクア姉様たちは先に起きていますわよー、お父様ー!』


 もぞもぞと姿を現したのは黒猫姿のクーと垂れ耳兎姿のニルだった。

 残りの子供達は既に起きているのか、ニルの言う通りに姿は見えなかったので空いている腕を持ち上げて二人を撫で繰り回す。


「おはよう。のんびりしたいけど起きるか。ドワーフ達にこの村を返さないといけないしな」


 今もフォレストトーレで慣れない生活を強いているのだ。

 危険が無くなったならば彼らの避難は解除されるし俺達もこの島に控える必要は無くなる。

 二人を抱き上げて家屋から出ると知らん奴らと視線が絡み合う。誰だ?


「おはようございます」

「お、おはよう……ございます…」

「おはよう……」


 寝起きの頭のまま戸惑いながら返答する意味も理解しないまま水場へと移動して顔を洗う。

 キンキンに冷えている地下水を何度か顔にバシャバシャ掛けていれば自然と眠気眼が少し開き、頭も起きて来た。

 そうか、さっきの人達はナユタの民か。


『タオルです』

「ありがとう。みんなはどこにいる?」

『お父様が起きたことはメリーさんに念話済みです。主要メンバーは村長宅に集まり始めているのでご飯を食べて来るようにと』

「了解。食事場に作り置きがあるのかなぁ…?」



 * * * * *

 村長宅に顔を出すとクランメンバー・協力者(竜含む)・ナユタ村代表三名が揃っていた。

 どもども、お疲れ様ですぅと言いながら仲間の視線の先に足を進めてアルシェの隣に腰を下ろした。


「まず初めに、一人も欠ける事無く皆とまた再開出来たことを嬉しく思う。

 今回。この村はナユタの世界攻略の為に一時的にエルダードワーフ並びにドラゴドワーフには避難してもらっている上に寝床も借りている始末だ。早めに戦後処理を行って速やかな撤退をする為、ここで情報の共有を図る事とする」

「協力者の精霊と竜各々には説明義務としてお呼びしております。必要ないという事であれば退席、もしくは睡眠をとって頂いても結構です。では、始めにナユタの世界での取得物をゼノウ達散策班、マリエル、宗八(そうはち)の順でお願いします」


 俺の挨拶に続けて進行役を率先して行うアルシェの言葉を受けて、集まる面々はそれぞれ頷き理解を示す。

 最初に指名されたゼノウが代表して村の散策時に回収した品々をこの場に出して説明し始めた。


「ゼノウPTリーダー、ゼノウです。

 村に到着後、アルカンシェ様方と分かれた我々は方々に分かれて様々な物を回収しました。

 それこそ特に使用用途も考えず片っ端から回収させていただきました。もちろん住人の方へ確認をし、納得の上で頂戴したものもあります」


 ゼノウのアイコンタクトでライナーとトワイン、フランザの各員が箱を手に持ち込んで来た。

 この三箱の中身がナユタの世界から回収した品々だと言い、一つ一つ手にしながら説明を続ける。


「畑の土は耕すだけで野菜が短期間で生えて来るとの事を聞き調査した結果、魔力に似た反応がある事がわかりました。

 この魔力に似た何かにより種不要、成長促進の恩恵が発生していたと判断し持ち帰りましたが、二日程度で普通の土に戻ってしまいました。条件としては世界樹が定める範囲でしか効果を維持出来ないと想定しております」

「野菜は何が取れていたんだ?」

「豆です。収穫時期によって用途が違う様で青い時に食べれば触感の良い豆。枯れてから収穫するとソースや飲料などにも使えるとの事です」

「豆の根には根野菜も出来るそうです。これは煮て食べるのが主流の様です」


 大雑把な説明はゼノウが行い、質問内容によってはトワインやフランザが回答する。

 ライナーは各員が収集物の実物を確かめられるように少量ずつをまとめて配る仕事をしていた。

 先の説明だと大豆かと思ったけど根野菜は出来ないよなぁ……なんだろ?


「肉は取ることが出来ない世界でしたので野菜が主食。時折地面から生えて来る低木から木の実を入手するとの事です。

 その実を食べれば一週間は空腹感を覚えないし気だるげになる事もないと聴取しています」

「低木から実? 時折って事は植えたから生えたってわけじゃなくて、自生って事か? なら……」

「師匠の考えている物だと思います。実物は複数個確保しておりますがあまり長持ちしないそうなので今日明日にでもギルドで確認をされた方がいいと思われます」

「わかった」


 ——可能性の実だ。

 俺達の世界でも時折発見される低木から3つ取れると言われるレベル制限解除アイテムだ。

 健全な世界であれば世界中どこでも自生する可能性もあるが、末期世界ともなると健全に近しい場所は世界樹のバリアの内部だけ。

 だからこそ住民たちはそれなりの数を収穫出来たのだろう。あんな弱った世界樹がどうやって実の生成を行っていたのかは謎だが、手に入るならそんな謎どうでも良い。


「続いて世界樹の根元で沸いておりました水です。

 これはアクアーリィ様が鑑定してくださり[本物の聖水]という事が判明しています。

 これにより水属性の浄化魔法を創造することが出来るようになり、今後の浄化作業を見習い精霊使いでも容易に熟せるようになりました。また、フォレストトーレでアルカンシェ様が行った大規模浄化に際しても、以前より強力な浄化が可能になりました」

「あの村に川や井戸は無かった。生活水や飲料水、畑に撒く水も聖水を使っていたのか?」

「その通りです。なので畑の実験は継続してフォレストトーレにて行う予定です。

 ただし、通常の初級魔法に比べると消費魔力の桁が違うので現在はアクアーリィ様が改良中です。

 加えて飲料水として飲み続けた場合のデータもあった方が良いとアルカンシェ様ならびに複数の方から声があったのでどこかで実験が行われる予定です」

「その辺りはアルシェのお父さんがなんとか回すだろうな。次」


 様々な異世界持ち出し品の説明を受けながら気になる箇所は確認を挟みつつゼノウ達の報告は終わった。

 俺的には世界樹の枝がこちらの世界に根付くのか気になる所だ。


「続いて。アルカンシェ姫護衛隊、マリエル=テンペスト=ライテウスからの報告です。

 先の戦いの折に世界樹と対話をする事に成功しまして、世界樹の散り際にお願いと褒美として[雷帝樹の加護]を頂きました。

 それに伴い、カエル妖精[ネシンフラ]という種族から[ライテウス]へと進化が起こり、ステータスで確認する名前もネシンフラからライテウスに変更しております」

「ちょっと待て。妖精って進化するのか?」

「私も初耳でした。そもそも妖精は戦いに不向きとされているので細々と家業の様な生活をしていました。

 島の外にも出ないので他の妖精族に出会う機会もありませんでしたし……。精霊の様に分かりやすい進化ではなく一晩寝たら加護が浸透した、という感覚です」

「普通の進化とは違うのかもしれないな。了解した」


 休暇をもらったらネシンフラ島にマリエルを連れて行って親父さん達に説明しないとなぁ。

 彼らにとってネシンフラ姓は絆の一つだろうに旅先で娘の名前が変わったとあっては真摯にご報告しなければならない。

 ともかく基礎ステータスの上昇と加護の影響で雷属性の魔法の威力が高まったという報告も続けて受ける。


「それと雷帝樹からのお願いにナユタの保護がありました。

 現在は別宅で休んでいますが救出してからも目を覚ましていませんので魔神族のナユタとどのように違うのか。記憶は共有しているのかなど不明な事ばかりです。ただ、ナユタに関しての処遇は私、マリエルに一任していただきたい事をここに表明させていただきます」

「代表たちは今の話をどのように受け止めているのですか?」


 話を振ると女性の代表が口を開いた。名前はセフィーナだったか。

 聖職者と聞いているからナユタの身柄について何かと気を揉むのは彼女の役目か。


「もちろん納得は出来ていませんわ。私達からすればナユタ様は生き神そのもの。

 ですが、世界樹からの意思を私達は受け取った事もありませんしナユタ様本人の意思も確認できていませんから……。今は保留と伝えておきます」

「わかりました。ナユタの処遇についてはこちらの代表はマリエルとする。

 何かしら希望や要望があればマリエルに相談してください。彼女だけでは対処できない事は俺達も協力して行います」

「わかりました。その時はよろしくおねがいします」


 渋々、なれど立場もあるから分を弁えてもいる、か。

 もしナユタが生贄となった時から何も変わっていない時は彼女たちに身柄を預けて平穏な一生を暮らしてもらうのもアリだろう。


「以上が私からの報告です」

「世界樹…いや、雷帝樹との対話。ご苦労だった。マリエルにしか出来ない大役を良く果たしてくれたな。

 これからは新たな加護の力も把握して次の魔神族戦で活躍してくれ」

「了解です!」

いつもお読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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