†第13章† -23話-[魔神族ナユタ&メルケルス②]
先週は投稿せずすみませんでした。お待たせ致しました。
悪い意味で臨機応変にナユタとメルケルスを作り出した為、技とか性格とか考え直しを余儀なくされてしまいました。特に悪い奴の台詞回しって本当に想像できなくて……不良やチンピラってどうやってあんな頭の悪そうな言葉を口にしてるんですか?
「う~ん、時間稼ぎしている間に各魔法の対処方法も確認できたしマンネリ感のある追いかけっこにも飽きて来たな」
『(アクア姉様から一度倒してほしいと言われていたではありませんか。あちらは大規模攻撃をしても大した効果が出ない事にイライラ試しだしていますし今なら楽では?)』
『(ベルも飽きましたああああ!)』
アルシェの方はちゃんと話し合いが進んでいるらしく魔神族復活のシステムも聞き取ったそうだ。そのうえでナユタを倒せるようであれば一度倒して欲しいと依頼も受けているからここらで一発倒して復活の様子とリスポーンタイムを記録しておかないと。
とかとかとか考えながらマリエル達を巻き込むわけにも行かないからさり気無く位置を確認するとなんかすげぇ激しい空中戦を繰り広げて高高度で光の帯が何度もぶつかり合っていたから……まぁ大丈夫だろ。
「今更だけどお前、なんで俺達を待っていたんだ? それに世界樹の根元で生き残っている人達を何故殺していない?」
「シュティーナがお前達が攻め入って来るから撃退しろと言ったから待っていただけだ。散々邪魔をしてくるお前達を殺せるならこっちでもあっちでも俺は構わなかったからなぁ!後ろの質問には答える義理は無ぇっ!《サンダリオフルゴーリス!》」
「《ブレイズレイド!》」
前半の回答はある程度予想は出来ていた。つまり苛刻のシュティーナは破滅側の立場としての仕事をしている体を示す為にナユタに自分の世界防衛を指示したんだ。そして今までの戦いからナユタ単身で当たらせては他の従順な破滅の将からか、もしくは破滅本体から不振を買ってしまう可能性があるから叢風のメルケルスを増援に回したのだろう。
ついでに後半の回答を濁したのは世界樹が神人を創り出す際に課した誓約とかがあるのかもしれない。自分の世界の住人を害さない、とかな。
ナユタの空いている手から急速に発達した雷が巨大な槍の形を取ると腕の振りに合わせて俺へと射出された。漫画とかで見そうな幻想的な格好いい槍がバチバチと音を弾けさせながら向かってくるのに対してこちらは有利属性の火球を放って相殺すると爆炎と煙の間を雷が駆け抜け一瞬互いの姿を見失う。
「一気に攻め立てるぞっ!」
『(ミョルニルの直撃以外なら肉体に反映されないように対応します)』
『(反射もいつでもいけますよおおおお!)』
とはいえ、あちらは磁界でこちらは瘴気感知で互いの位置は把握している。
「《球雷の監獄!》」
「《火竜一閃!》」
ナユタの詠唱後に俺の周りを稲妻が走ったかと思うと一瞬で雷へと成長して球状の檻が完成した。
出鼻を挫かれた腹いせと試しを合わせて一閃をナユタに向けて放つも檻は鬩ぎ合う事も無く普通に貫通してナユタへ向けて爆炎と煙の向こうへと消えて行った。
どうやらこの檻は天然の雷に近い性質を持っているようで破壊しようとしてもすり抜ける様だ。それに徐々に球体が小さくなっているらしい。
「はははは!どうだ!お前じゃどうあがいてもその監獄は破壊出来ないぞ!」
そんな言葉を宣いながら煙の向こうから現れたナユタは先の火竜一閃がちゃんとヒットしたのか少し煤を纏った状態で姿を現した。
片手をこちらに向けて何かを掴んでいるような動作をしている事からこの雷の檻の収縮速度を操作して弄んでいるつもりなのだろう。
というか甘い。
「この程度でどうにもできない奴が魔神族相手に喧嘩売るかっての……。《短距離転移!》ふんっ‼」
「なっ!?ぐあっ‼なんで俺の後ろに突然っ!?」
「驚く暇があったら防御を固める事をお勧めするぞっ‼《アクセラレーター!》」
一度痛い目を見ているはずなのに何故か余裕を持って近づいて来たから[短距離転移]で背後を取れてしまったのでとりあえず大振りの一撃を叩き込んだ。その一撃は瘴気の鎧を抜けてナユタの背中に大きな切り傷を付けたけれど皮一枚だけなのかドス黒い血が浮かぶだけで飛び散る事は無かった。
そのまま加速魔法を掛け連撃で押しながら斬り付けることでナユタは後方へと逃げて行きマリエル達とはどんどんと離れていく。
「糞がっ!調子に、ぐぅぅ!」
「ははははははは!らぁっ‼《火竜一刀っ!》」
『(どちらが悪かわからなくなりますね……)』
『(やっちゃえパパ~!)』
背中への一撃以外は防御を固められてそこまでダメージを負わせられなかったがミョルニルが挟まれる度に力で退かし、逆転を狙ってこそっと伸ばされる空き手ももちろん斬りつけて小さな傷を負わせ続けた。最後に[アクセラレーター]が切れるタイミングで地面へと叩きつけ……。
「《フレイムタワー!》《火竜嵐閃!》」
「があああああああっ‼熱い!クソクソクソ!うわあああああああああっ‼」
「はははははっ……はぁ、まだ死なないなぁ……」
『(炎の中で瘴気は膨らんでいる様ですよ。一点黒味が帯びている所にナユタが居ますね)』
七精剣カレイドハイリアは今まで使用していた魔剣よりもさらに武器攻撃力も魔法攻撃力も高くなっている。
さらに七本それぞれがグランハイリアという精霊樹から分けられ造られた剣の為、本体とは別に小さな精樹界を共有しているので七本が生産した魔力の余剰分はそちらへ貯め込んでいる始末。
その貯蓄魔力を引っ張り出し斬撃や一閃を強化した上でまだ叫ぶ元気を見せる霹靂のナユタに宗八はドン引きしていた。
炎の中は延焼と無数の一閃が飛び交う継続ダメージゾーンになっている。しかし黒紫のオーラを展開したナユタの叫び声が徐々に小さくなっていき、やがて一切声を発さなくなったタイミングで一旦魔法を解除した。炎が晴れた中心には黒く染まったナユタが佇んでいたがすぐには動き出さない様子から結構いいダメージソースになったと判断し、続けて左腕をナユタに向けて次なる魔法を放った。
「《青竜の蒼天咆哮‼》」
左腕装備の[青竜の蒼天籠手]から放たれた高濃度魔力砲は著作権を侵害していた魔法名のアレのデチューン版である。
素材が青竜産水氷属性の高純度魔石という事もあって属性は限定されてしまったし砲の口径も縮んでしまったけれど威力は逆に向上しているから満足している。さらにアクアと水精霊纏した際に使用できる魔法をほぼコレが補完してくれるのでかなり助かっている。
少しスリムになった極光は見事に地面で棒立ちになっているナユタを捉えたが上がった腕に握られたミョルニルで防がれてしまった。
しかし青竜の蒼天咆哮の威力も桁外れだから直撃はせずとも周囲に分散された極光が暴れ回りナユタ以外の全てを凍てつかせていく。厚くなっていく氷は青竜の蒼天咆哮の衝撃で砕けては凍てつく事を繰り返し守っているだけでもダメージが通り始めた様だ。
それでもトドメには程遠い。だが足止めには十分な環境を整えられたと判断して左手からの放射はそのままに右手の七精剣カレイドハイリアを上段に掲げる。
「《赫焔よ蹴散らせ!炎刃剣戟‼|赫焔溶滅斬っ‼》」
練り上げ込められた魔力が濃度を上げて剣自体が赫焔のオーラを纏う。
振り下ろすと同時にそのオーラは一瞬で消え去る代わりにナユタの足元から赫焔色の巨大な剣身が出現して魔神族の防御を貫通してその身を刺し貫いて中空へと持ち上げた。
「うごああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”っ‼‼あ”つ”い”い”い”い”い”い”ぃ”ぃ”‼あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ‼」
巨大な剣身が発する超高熱で周囲に発生していた厚い氷はすぐに融け出し胸から背にかけて刺し貫かれているナユタも内側から焼かれるダメージ量に叫び声の質も変わった。熱いなら脱出すればいいだろうに……。魔神族ならその程度の魔法や術はあると思うから痛みで思考力が低下しているのかもしれない。
一応剣身が発している炎は[聖炎]だから威力だけでも強力なのに瘴気関係には特攻仕様となっている事もあってドス黒い血は全て沸騰しては浄化されていく度にナユタの叫ぶ声は酷くなる一方だ。
『(黒紫のオーラは浄化され、属性相性も合ってこのまま焼け死にそうですね)』
『(ベル何もしてなぁ~い!)』
「いや、ここで殺したとしても世界樹ですぐ復活するらしいから。何が起こってどのくらいの時間で復活するのか要観察だ」
自身を貫いている巨剣から抜け出そうと暴れ騒いでいたナユタも全身を黒焦げにされ瘴気から切り離されては抵抗らしい抵抗も虚しく空振り、徐々に動きが鈍くなって最後はボロボロと身体が崩れ去って霹靂のナユタとの戦闘は宗八の勝利で幕を閉じた。
ナユタの最後を見届けた後にアルシェ達に連絡しようと念話を意識した時。ドクン……、ドクン……。と空間が振動する様な音ではないはずなのに感じ取れる鼓動が世界樹から発され始めた。
早くも復活の動作を始めた世界樹を睨みつけながら俺はアクアへ念話で戦いが一時的に終わった事を告げるのであった。
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