†第13章† -22話-[世界樹の麓村②]
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「現在私達の世界は破滅の侵攻を受けており、その先兵として魔神族が暗躍している状況です。
先日はナユタとは別の魔神族によって約30万の被害を被りました。その後私達は魔神族が生まれるシステムを理解し各魔神族の起源となっている異世界の世界樹を破壊する事で1人ずつ魔神族の数を減らし来たる破滅との決戦に向けて行動する事となりました。今回はナユタの世界が私達の世界と偶々繋がりましたので侵攻して来たという訳です」
「「………」」
「……なるほど」
簡単に説明すると「異世界から世界樹を破壊するためにやって来た」となってしまいます。それではただの侵略者になってしまうのでこちらも被害者であることも踏まえて説明をしてみましたが彼ら3者ともナユタの名前に反応を示して一瞬ですが眉を顰めるシーンがありました。説明後、セフィーナ殿とボンド殿は返答をせず黙り込んでしまったけれどジョイザイル殿はなんとか反応を絞り出してくれた。
「貴女方が異世界から侵攻して来たのであれば何故対話の場などを希望されたのだ?」
「魔神の元となる世界の守護者は世界樹から選ばれた生贄を捧げる事でメンタルモデルを写し戦力とする事と考えております。そのメンタルモデルが破滅の将として活動しているのですから世界樹自体も瘴気に乗っ取られており生存者はいないものとばかり……。
世界樹は世界の礎。破壊すれば世界は消滅しますので同じ破滅の被害者である貴方方を蔑ろにするわけには行きません」
「攻撃的な意思での侵略ではなく自分たちの世界を守る為の侵攻だから、というわけか……。その心遣いは感謝する。
だが、我らも先祖代々世界樹の守護の中で生き残って来たのだ。そう簡単に世界樹に手を出されるわけにも行かない」
「ナユタ様も今は貴女方の世界を侵略する1人かもしれませんがこの度は神族としての役目を果たす為にこの世界へ戻って来てくださっているのです」
ナユタ様……ですか。お兄さんの考えでは世界樹が生み出すメンタルモデルとやらは精霊と同じ様な精神生命体であり、身体の構成も精霊は魔力であるのに対しメンタルモデルは上位の魔力。マナでは無くエーテルで構成されているからここまで強いのではないかという話だった。つまり精霊が信仰されている世界から見ればその上位存在なら[神]と称されてもおかしくはないのかもしれない。
メンタルモデル=神族が瘴気に侵され魔に堕ちた魔神族になるという訳ですね。
「ジョイザイル殿への回答は生き残った貴方方を滅ぼすのではなく私達の世界へ連れ帰る事を検討しています。ただその場合は故郷を捨ててもらう事になりますが……。もしこの世界に残りたいという方がいらっしゃれば残って頂いても結構です。その方諸共異世界を滅ぼす業を背負わせていただきます」
「……」
「次にセフィーナ殿ですが、ナユタ達魔神族は私達の世界で倒しても不死である可能性がありました。前回の戦いでこちらの攻撃後にナユタが姿を現さなかったのは倒しきったから元の異世界で復活したと考えております。神族の記録でそのような物は残っていませんか?」
「た、確かに記録には神族は倒されても世界樹より生み出されると残されております……。ですが、異世界の人間は神族を倒せるほど強いのですか?」
王族の血を引いていて代表として村の運営を行っているとはいえ国王ではない。王族の様に指示するのが当たり前の時代ではないこの異世界でジョイザイル殿は代表の立場を維持する為にもこの場で応えるわけには行かないのでしょう。
ただし視野は狭くない様で次の言葉を迂闊に紡がなかった事は評価出来ます。
そしてセフィーナ殿の回答で魔神族は不死である理由を推測から確定に至る答えを得た。異世界にある自身の起源となる世界樹がリスポーンポイントとなり改めて侵略中の世界へと乗り込んで来るのだ。ただ、隷霊のマグニだけは例外的な不死であって死体を操ったり乗っ取ったり色々死霊魔法を使う事から本体は別の場所に存在していると考えられる。
「バリアの外でナユタと戦っている人が倒しました。今は世界樹を調べる時間と皆様との対話時間を稼いでもらっていますから出来れば4時間以内に答えの用意をお願いします」
「わかった。俺が聞きたい事。二人が聞いた。子も産まれ辛く終焉が見えていた。俺が村の皆に伝えて来る」
「ありがとうございます」
ここでまさかの異業種ボンド殿が名乗り以降初めての言葉がソレですか。ですが、その言葉に希望を見出してくれ即決してくれた決断力は正直助かる。お兄さんもマリエルも子供達だっていつまでも魔神族の相手をしていられるわけではないのだから。
「私達の世界について聞きたいことがあれば村を見て回っている者へ聞いてください。それとこの世界の生き残り人数は何名ですか?」
「うむ、感謝する。生き残りは200人を切っている」
「お二方はどうされますか? いきなり現れて突然こんな事を言われて混乱するのは当然ですが、この世界は健全な状態では無くボンド殿が言う様に終わりが見えている世界ではありませんか?
魔神族は強力ですし仲間が耐えている間に世界樹を調べて破壊方法の検討にも時間を使う必要があるので早めの決断をお願いします」
「「………」」
席を立ち建物を出て行こうとするボンド殿の背に言葉を掛けゼノウ達に頼る様に伝えると感謝された。
残る二人は黙り込み……いえ、セフィーナ殿は何故かこちらを睨みつけている? 聖職に就いていると言っていたし神族であったナユタを信仰しているのであれば信仰対象が討伐される事と私達の世界へ移動した後の宗教関係での面倒でも考えているのかしら?
彼女はこの閉鎖された世界が全てであり、この小さな集落で満足しているのでしょうね……。
「こちらが止まる事はあり得ません。何せ言ってしまえば自分達の世界を守る為の聖戦になるのですから。
異世界へ移転し生き残るも良し、残って世界と共に最後を迎えるも良し。もちろんナユタと共に抵抗して剣を交える選択も良いでしょう。それを表明した方を私達から攻撃することはありませんが襲って来るならば容赦はしません」
「私は先祖のおかげで今日まで生き残って来たのだ。敵対して無駄死にするなどそれこそあり得ない。
一人では判断を下すことも出来ないから一度退席して相談して来る」
「わかりました、私はここで待ちましょう。セフィーナ殿は如何ですか? 敵対、しますか?」
「……私はっ!——バリアの外に出る事も出来ない身の上ですから外からやってきて傷も負っていない貴女と戦うなど意味がありません。ですが、気持ちの上ではこの世界を離れる事は考えられません。ただしそれは私の考えで信者達はそうではないのかもしれません。ですから私も相談をさせていただきます」
そう言ってジョイザイル殿とセフィーナ殿は続けて建物を出て行った。
「ねぇメリー。彼らは代表と聞いていたはずだけれど何故この場で結論を出さずに相談すると言って出て行ってしまったのかしら?」
「おそらく順序が逆転しているのではないかと。代表と知っても各派閥やグループの代表の集まりであり、彼らはもしかすると別々の集落の住人なのかもしれません」
「……ボンド殿が子が産まれ辛いと言っていたわ。なら、世界樹の麓に存在した3つの集落が集まった最後の村がここなのかもしれないわね。今更この苦境を長く共有した他の村や集落があればボンド殿や他の二人が口にしないとは思えないもの」
「そうですね。なので本来はグループの話を聴取して纏め上げた上で彼ら代表が話し合い結果を下す流れなのだと思います。
さぁアルシェ様。せっかくお時間も出来ましたし少し異世界の村を回ってみませんか?」
私達は国の運営として王政を採用しているけれど彼らはここ数世紀は国の体裁すら持つことの出来ない環境だったと考えられる。国王の治世の元で安定した生活が出来るならともかく、生き残る為に様々な手段を講じつつも人数が確実に減っている状況では合議制は当然かもしれない。ボンド殿は未来を優先した。ジョイザイル殿は今に満足していた。セフィーナ殿は神人ナユタへの信仰心から骨を埋め違った。これほど考え方に違いがあるのに互いが争い数を減らさなかったのは軌跡かもしれませんね。
『アクアは世界樹を近くで見たい~!』
『クーも食材などを見てみたいです』
ユニゾンを解いた二人はメリーに賛成の声を上げた。
兄と親友が魔神族と戦っている最中ではあるものの二人のワクワクした様子に笑みを溢し、メリーを引き連れてアルシェも建物を後にするのであった。
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