†第13章† -16話-[中間チェックポイント]
すげぇ暖かい冬ですね……どんな服装がベストなんだよ。
福岡日中15℃とか行くんだが?
その後も森を抜け川を渡り平原を駆け抜ける間にも見たことの無い瘴気モンスターに多数襲われた。
六足角兎の集団に襲われた時は多少焦った俺とは対照的にアルシェは冷静に魔法で一掃してくれたので事なきを得た。四本の後ろ足で行われる跳躍は縦にも横にも強力だし、こいつも例に漏れず一部メタル化していた為回転する角は貫通力を異常なまでに高めていたので処理を間違えると大ダメージを貰いかねない敵だった。
もちろん空からの敵も居るには居るけれど、地上の瘴気モンスターに比べると数が少なく襲い掛かって来たとしてもAGIに重きを置くステータスの為すぐに瞬殺されていた。運良く空に逃げられた個体もマリエルによって消し飛ばされる始末。苦労らしい苦労はしていないものの常に敵が襲い掛かって来る状況と瘴気で段々と具合が悪くなってくる二重苦で度々[俺式サンクチュアリフィールド]で休憩を挟まざるを得なかった。
「すみません。私の所為で……」
「マリエルが謝る事ではないわ。妖精の貴女が瘴気の影響を受けやすい事はわかっていて連れて来ているのだし、人間も短時間で体調不良に繋がる濃度なんだもの」
顔色が明らかに悪くなっていたマリエルが何度目かの謝罪を口にするがアルシェがすぐにそれを咎め慰める。
俺達でさえ「なるほど」と分かる程度に顕著な体調の変化を察することが出来るのだから対処を怠ればどこでPTが崩壊するともしれないのでマリエルだけではなくこの休憩は俺たちにとっても必要な処置なのだ。
「精霊石の御守りを装備していてこれだからな、俺たちも長期間滞在するのは危ないだろうさ」
「私達は皆様に比べる瘴気の影響が薄いように思います。闇属性だから相性が良いのでしょうか?」
「体調の話だからあるラインから一気に悪化するタイプかもしれねぇぞ」
メリーの言う様に瘴気は黒い、だから闇属性と相性が良く影響を受け辛いなんて可能性はあっても警戒は怠れない。
セーバーの言う様に戦闘途中で一気に悪化したりすれば絶対に急な落差で身体は付いて行けないし[ユニゾン]が解けてクーが瘴気精霊に寄生される可能性も生まれるんだ。やっぱり適度な休憩はしておこう。
それにレベル帯は下の敵ばかりとはいえ、こうも長期的に連戦と体調不良を繰り返していては疲労の溜まりも早いというもの。
「(ノイ、異世界の入り口はまだ持ちそうか?)」
『(お父さん? 確認するからちょっと待ってほしいです)』
撤退も考慮して判断材料になるかと念話で第二長女に連絡を入れると眠たげな声音で返事が来た。
もしかしたらあっちは明け方か? ずっと薄ぼんやりとした天気で陽が出ているのか月が出ているのかもわからない世界なので時間の間隔がマヒしていた様だ。
『(まだ大丈夫だけど縁が震えているから数時間以内に閉じ始めるだろうって闇精は判断してるですよ)』
「(わかった、ありがとう。あ、あとそっちは何時くらいだ?)」
『(時間? えーと、早朝四時過ぎです)』
「(わかった。折り返して戻るって伝えてくれ)」
『(気を付けて帰って来るですよ)』
マリエルにも[サンクチュアリフィールド]の範囲で瘴気を祓いつつ頑張って戦ってもらって一先ずは寄って来た集団を片して一息付ける状態になった。突入した時間は覚えていないけど夕方前くらいだったと思うから十時間~十二時間ってところか? それだけ戦えれば普通は十分だけど、ここから戻りの道も地道に帰るしかない。
ゲートを設置して次の機会を自分で勝ち取る為にここで全員の魔力を一気に無くしては戦力がガタ落ちになるし、変に強い奴が追ってきてゲートを通っても厄介だから地道にコツコツだ。
「少し息抜きしたらゲートを設置して引き返そう。
アルシェとマリエルは先に出来る限り高い所まで上昇して瘴気の無い空間があるか調べて来てくれ」
「わかりました」
「りょ~かい」
普段ゲートは別位相に隠しているから瘴気の影響は無いものと考えているが、それでも念の為瘴気の影響が全くない空間があればそちらに設置しておいた方が気持ちが軽くなるはずだ。俺の指示で持ち直したばかりのマリエルを伴ってアルシェが上昇していくのを見送る。
アルシェは直角に上昇することが出来ないのでマリエルが腰に抱き着き連れて行ったが、空に一人で上げるのはサポートが間に合わない事も考慮してアルシェを同伴させた。上がってしまえば自力で降りることも出来るし俺達上がれない組は大人しく待って居よう。
『(お父様ー!瘴気が無い層を見つけましたわー!)』
「(わかった。メリーを影転移でそちらに送るからそのままゲートを設置したら戻ってくれ)」
『(かしこまりーですわー!)』
数分でニルから念話が届きメリーを向かわせて代わりにゲートを設置をお願いした。
戻って来てからはアルシェから別の報告もあった。
「空に星の輝きが一切ありませんでした。
もしかしたらこの星と同じ様に瘴気に覆われているのか……、もしくは世界樹が瘴気に侵された影響で他の星はすでに崩壊しているのかもしれません」
「世界樹らしき物も見えましたよ。地上からだと瘴気の所為で視界不良で全く見えないですけどちゃんと雲を突き抜ける高さに天辺が出てましたよ。クーちゃんが感じている光の方向とも一致してます」
メリーにも目配せして意見が一致しているか確認を取っても「同意」の返事なので間違いは無さそうだ。
しかし、ここまで移動しても影も形も見えないとなると相当に遠い場所に入口は開いたのか……。光をクーが感じられるなら反対なんてことは無いだろうけど、大陸横断くらいは必要かもな。
「よし!じゃあ今回の遠征はここまで!
元の世界は朝の四時過ぎらしいけど時間の間隔がズレてるから正直元の世界との時間の差とか全くわからんな」
「眠気は微かにありますからそれなりに時間は立っていると思いましたけど、もうそんなに経ってましたか…」
「微か!?アルカンシェ様も宗八に鍛えられ過ぎておかしくなっているんですかね? 俺はもう五割くらい眠気がありますよ。単純に戦闘続きで高揚して誤魔化せてるだけですけど」
「姫様、隊長。セーバーさんが使えるうちに帰りましょう」
「行きは土地の観察もしていて多少抑え気味でしたが帰りは飛ばして帰る事が出来そうですね」
アルシェも眠気をコントロールして今は抑えられている様子だが、隣で驚くセーバーは瞼が怪しくいつものようにパッチリはしていない。マリエルもそれに気づいており戦力が落ちるに帰る事を希望して来た。メリーも念の為ではあるが依頼していた地図の作製は大雑把に出来ているのか帰りの考慮は不要らしい。
「目立たない様に休憩以外は光竜系を使わなかったけど帰りはバンバン使いながら一気に抜けよう。
基準はセーバーに任せるから休憩がしたくなったら遠慮なく声を掛けてくれよ」
「了解だ。魔法で移動速度は上がってスタミナ消費も抑えられるけどヤバイ時はヤバイと伝えるよ」
上空と地上にゲートの設置も終えた。世界樹の方向確認も一応取れた。
ナユタの世界の敵戦力もある程度収集出来たし適宜浄化休憩が必要な事も判明した。
あとは撤退して情報共有。休息が取れたらまた侵攻を再開してのローテーションをすれば一ケ月程度で世界樹まで辿り着けるかなぁ?
「休憩終わって大丈夫か? 帰るぞぉ~!」
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