†第13章† -15話-[寄生体に想う]
気付けば300話投稿していましたねw
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とりあえずゲート傍から離れる事を元の世界に残る仲間たちに伝えておかないと、と考え俺だけが入口から出て全員に説明をした。
「ゲートが開通出来る目途が立ったから今回は無理せず進めるところまで進めて撤退する予定だ。
だから今のうちに瘴気に侵された世界ってのを全員の眼で見ておいて欲しい。安全は確保しているから」
まずはずっと侵攻を防いでくれていたセプテマ氏を先頭に続々とナユタの世界に踏み込んだ仲間たちは一様に真剣な表情で戻って来た。それだけ想像していたよりも酷い有様だったのだろう。景観が悪いだけでなく普通の生物が見回しても居ない。そして全てが死んでいる様に感じる世界に絶望的なイメージが湧きあがるのは仕方のない事だと思う。
「《コール》アルシェ」
………。反応なしか。流石に闇精カティナ謹製のアーティファクトでも世界間の通話は無理か…。
「それで今回は進めるだけ進むと言っていたな。俺達はこのままここで待機すればいいのか?」
「二PTに分けて中で戦闘組と外で休息組のローテーションでいいだろう」
「あれだけ懸念していただろう? 俺達が入ったまま長時間の戦闘はいいのか?」
「戦った感想から浄化はなんとかなると判断した。怖いのは寄生前の浮遊瘴気精霊と瘴気精霊だけでそいつらは浄化魔法で一掃出来る。
浄化魔法はしっかり施して出発するからゼノウ達でもランク五~七の敵なら問題なく対処出来るだろう?」
戻って来たゼノウは相変わらず冷静に今後の動きを聞いて来た。
俺とベルが創った魔法は[俺式サンクチュアリフィールド]だけでなくもう一つある。それらが合わさればより効果的に浄化は出来るだろうから外組は寝ずの番を一人立てれば他は仮眠を取る事も可能と考えている。
「もちろんだ。今は俺達だけでなく剣聖に拳聖も居るからな」
『にーにぃ!タルも入っていいのだ?』
「いいよ。でも光っている地面の外には行かないようにね」
『やったー!わかったのだー!』
ゼノウと話していると背後から腰に抱き着いて来たタルテューフォが元気に質問して来るのを頭を撫でながら答えると大喜びで休んでいる拳聖エゥグーリアの元に向かって行った。同じ獣属性として懐いたのか…。拳聖にタルの相手をしてもらうとは恐れ多いんだが邪険にしてないところを見ると彼も今の状況を楽しんでいるのかな?
『ねぇねぇ僕は? 僕も入っていい?』
「フリューネは……こっちで留守番かな…。お前が飛び回れるほど浄化範囲も広くないから寄生されるのが怖いんだ。
悪いけどナユタの世界や瘴気に支配された世界については連れて行けないと思う」
『ぐぬぬ…。白に感化されて珍しくやる気が出たってのにこんな事って無いよぉ~……』
「ごめんなぁ。瘴気に有効な技能でも生えてくれば別だけど現状は安全の為にこっちで待っててくれ」
竜種お断りを伝えたらしぶしぶ納得するような事を言いながらも痛くない頭突きを俺にかまし続けて不満を漏らすフリューネを構ってご機嫌伺いをしておく。安全を第一に考えるとどうしても頼もしい戦力であるフリューネは留守番させないといけないんだよ。悪いね。
「というわけで、最悪あっちで二日ほど篭る事になりそうで……、大変申し訳ないのですがクラウディーナを明日送る事は難しそうですので切りが良い所で離れていただいて結構ですよ」
『全く人間はコロコロと話が変わってしまう生き物なのですね!
でも気にしていただかなくても結構ですわ。<万彩>が戻るまで私も滞在すれば済む話ですし』
「あー……それは…いいんですか?」
『本来人間に指図される謂れもありませんもの。ただ、協力もしているのですからご褒美が欲しいですね』
そう仰るクラウディーナの視線がフリューネと俺を言った来たりしている。あと恥ずかし気に真っ白い肌が薄ピンク色に紅葉しモジモジしているのも…なんかエロい。
別にケモナーとか竜種に興奮する性癖でもないけど美しく女性的な竜であるクラウディーナがそんな様子を見せるとちょっと揺れ動いちゃうよ。
「どのような褒美をご所望ですか?」
『名を呼ぶときは青や黄のように愛称で[ディ]と呼んでください。
それと……試しに青の様に愛情込めて撫でてもらえますか? 今後の褒美の参考にしたいので』
「わかりました。今後はディとお呼びさせていただきます。
時間もないのでさっそく撫でてもよろしいですか?」
『情緒がありませんけれど仕方ないですね。許可します』
少々不満そうな表情を一瞬浮かべたものの直ぐに切り替えたのか瞳を閉じ俺に向けて長い首を伸ばして来た。フリューネから向き直り正面に捉えたディの肌理細やかな鱗に手を伸ばし優しく撫で始めると少々くすぐったそうに身を捩じらせるも慣れて来たのか俺の手に押し付ける様にもっと撫でろという要求に応えて両手で撫でる一方、放置されたフリューネからは背中に頭突きをもらっていた。
とりあえずこっちの指揮系統はゼノウとノイに任せて、念の為[俺式サンクチュアリフィールド]を掛け直して俺は再びナユタの世界に戻った。
* * * * *
「《スターライトピュリフィケーション》」
空へと打ち上げた魔法は高高度に達すると直径二十m程の球体に膨らみその場で停滞し始める。
星の光を浄化する、なんて大層な名前を持っている割には星のほんの一部にしかその光は届かないけれど。高高度から放たれる全方位の浄化の光は空に漂う黒紫の雲と大気を正常に戻し黒い大地を徐々にゆっくりと健常なものへと取り戻していく。
「あっちへの指示出しは済んだから俺達は進めるだけ進もう」
「隊長の新しい魔法はちょっと眩しい気もしますけど、出口の位置を見失わないで済みそうですね」
「瘴気モンスターが反応しそうですがデータ収集はゼノウ様方に任せましょう」
俺の宣言に空を見上げて眩し気に評価するマリエルに釣られてアルシェやセーバーも見上げている。
皆の視線の先には二つ目の浄化魔法[スターライトピュリフィケーション]がさながら太陽の様に燦燦と輝きサンクチュアリフィールドよりも広範囲の瘴気を緩やかに浄化し続けていた。
二重の光魔法が寄生を狙う二種類の精霊を完全に浄化し尽くし仲間を守ってくれる。とはいえメリーが懸念するようにこの頼もしい輝きが敵の感知に引っかかる可能性は捨てきれないから今後の事も考えてあとで聞き取りはさせてもらおう。
そうこうしている内にこの場を引き継ぐメンバーがやって来た。
「待たせた」
「ちょうど小休止に入っていたからタイミングばっちりだったよ」
顔を見せたメンバーは、ゼノウ・フランザ・トワイン・ライナーの四名と最後に拳聖エゥグーリアだった。
休憩組にはセーバーPTの四人と剣聖セプテマ、リッカ&フラム、タルティーフォとお目付け役兼指示出しのノイが付くことになったか。
真なる加護持ちが多いゼノウPTへの支援を薄くして調整をしているみたいだな。
「エゥグーリアも本当は参加させるつもりはなかったんですが……」
「手前が手前の意思でこちらに赴いたのだ、貴殿の作戦に参加するのも当然である。
歯ごたえは思った以上に無かったがここを突破すれば期待出来るからな、遠慮なく頼ってほしい」
「ありがとうございます。ゼノウ達なら大抵のことは大丈夫ですけどゼノウが撤退すると判断したら従ってくださいね」
「了承した」
相も変わらず武人だな。とはいえ、散発的に敵が来る程度に収まった今の状況であれば基本的にこの場は任せて問題ないと思う。遠くのデカブツが反応した際はゼノウの判断で元の世界へ撤退するように言い含めてあるし心配はあまりしていない。
「じゃあ、ここは任せる。
[揺蕩う唄]は異世界越しだと使えないから何かあればノイか中の奴が揺蕩う唄してくれ」
「了解」
ゼノウやエゥグーリアと話している間に手透きになったアルシェ達も各々残るメンバーに声を掛けていた。
最後に俺も残る全員にひと声ずつ声を掛けて出発を告げると代表してゼノウが心強いいつもの返事で見送ってくれた。
* * * * *
「《光竜一刀‼》」
クーとメリーにしか感知出来ない光へ向けて道標を作る為だけに一刀を飛ばす。
直線状に浄化されて色が戻った道が出来上がったので俺達はさっそく出発する。
「なんだかお兄さんとこうやって旅をするのも久しぶりですね」
「最近は隊長がゲート設置して私達は留守番でしたしねぇ」
「実は私もアルシェ様、マリエル様同様に高揚しております」
「あー、俺も宗八に連れられて移動するのは初めてかもしれないなぁ」
女子三人衆からはむず痒い事を言われセーバーからも感想を述べられる。
確かに最近は地力を付ける為に訓練に重きを置いた行動が多く、俺は俺で他国との兼ね合いもあって別行動をしていたからみんなの意見に俺もほぼほぼ同意する。
「放置気味になって悪かったなとは思ってるよ。
ただ効率を考えるとどうしても別行動が必要だったからさ、今後ナユタの世界だけじゃなくて魔神族を攻略するならこういう場面も増えるだろうし、ひとまずは景色最悪だけどこれで勘弁してくれ」
「ふふふ、皆わかってますよ。ただ、少し寂しかっただけです」
「旅していた時はご飯も寝るのも訓練するのもずっと一緒でしたからねぇ。私も姫様ほどじゃないけど寂しかったですよ」
「私も姫様ほどではありませんが…」
「もう!二人共‼」
敵に囲まれている状況で笑い合いながらも進める程度に強くなれて本当に良かった。
頼もしい仲間たちに育ってくれて本当に良かった。
過ぎ行く景色の中には廃村や廃宿もちらほら見受けられ、そういうところに限って寄生体も多く襲い掛かって来るが難無く撃退出来ている。それでも人型や動物の形を色濃く残す寄生体の討伐は心苦しく思う。
完全支配されて幾星霜の時をあの状態で過ごしているからか、浄化を試しても肉体は砂の様に崩れるだけで助ける事は叶わなかった。
「誰が悪いってのは分かり切っているし別世界の奴らの事まで背負う必要は無いんじゃないか?」
「わかってるよ。別に背負うとかじゃなくて……何か助ける方法があるんじゃないかと考えているだけだ」
「それを背負うなって言ってるんだよ。助けられる方法はあるかもしれない、でも今出来るのは解放だけだろ。
一朝一夕で出来るほど容易い訳がないんだからある程度で満足するように心掛けるべきだぞ」
「ふぅ……努力するよ」
アルシェ達だって同じ気持ちで寄生体を倒している事が分かっているから不満を口に出さなかったが、アルシェやメリー程にポーカーフェイスを繕えない俺やマリエルを気にしてセーバーが声を掛けてくれた。当然彼は年上だし冒険を経ていろんな経験をしてきた先輩冒険者だ。だからこそ俺やマリエルを見て声を掛けずにはいられなかったのだと思う。同じように先輩から諭されたことを過去の自分と似た苦しみをしている俺達へ先輩として心配してくれている。
「次の異世界までに何か掴めると良いですね。隊長」
「だな。特性とか彼らの状況とか調べられるものを調べてみよう」
持ち直した俺やマリエルをみてアルシェもメリーも口角を微かにあげる。
自分達も出来る限り力になろうと。
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