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特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-

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†第12章† -18話-[小憩1]

「はい、はい。

 タイミングを合わせる必要はありませんが、

 明日には王城に進めるかもしれませんから休息は取ってください」


 お兄さん達が休息に入った事を勇者メリオ様へと伝えた。

 瘴気の対処とフォレストトーレ城下町の区画ごとの浄化は、

 各国主導のもと既に進め始めている。


 それでも進める間、

 ずっと街中の瘴気から次々と瘴気モンスターも産まれることと、

 街中は無事な建物だったり瓦礫だったりで集団移動に適していない。


 そんな訳で部隊を小分けにして城下町の開放。

 同時に拠点防衛と並行で事にあたっている次第です。


「アルカンシェ様、この後の動きは如何致しますか?」


 私の側にはメリーの代わりと言わんばかりに張り切ったリッカが控えている。

 まぁ、アナザー・ワンなので戦力としても心強いのですが、

 如何せん動きながらの戦闘が苦手ですからねぇ・・・。


 今、手元にいるメンバーは、

 ・セーバー(PTリーダー)

 ・ポシェント

 ・リッカ

 ・トワイン

 ・アネス


 もう1PTが、

 ・私(PTリーダー)

 ・フランザ

 ・モエア

 ・ディテウス


 アルカンシェ護衛隊+七精の門(エレメンツゲート)メンバーは遊撃という役割を与えられていて、

 基本はお兄さんの命令で動くことになっていた。

 でも、状況がころころと変わる戦場でここまで長く戦い続けたこともない初のクラン運営。


 なかなかに難しいですね。


「正直に言えば、今のところは待機が良いでしょうね」

「お言葉ですが姫様。

 兵士達も頑張っているわけですしまだまだ身体も動かせるので一緒に解放を行った方が良いのでは?」

「私たちは遊撃で集団で動くにも組み込みづらいのです。

 途中での交代も考えると兵士の集団と共に行動するより、

 今は体力を温存して不測の事態に備えた方が彼らの助けになります」

「あー、そういう考え方も出来るかぁ・・・。

 すいません、余計なことを言いました」


 ディテウスやポシェントのように場に浮かされてソワソワしている人の代わりに、

 あえて自分が質問して理解をさせる。

 セーバーは自分で伝えるのが苦手なのかしら。


 とはいっても、暇を持て余して勿体ないのも事実。


「《コール》アインス」


 ピリリリリリリリ、ピリリ・・・ポロン♪


〔お疲れ様です、アルカンシェ様。いかがされましたか?〕

「飛び散った瘴気の位置特定は出来ていますか?」

〔おそらくは8割方確認出来ました。

 モンスターが沸く程ではありませんが、

 時間が経てば範囲を広げて産まれる可能性はあります〕


 流石。仕事が早くて助かりますね。

 後方は新兵ばかりを人手として残していたはずなので、浄化までは手が出ていないですよね。


「うちのクランメンバーを動かして浄化をしようと思いますが」

〔本当ですか!?助かります!〕

「戦闘が起こる可能性はありませんが、3人に動いて貰います。

 一旦天幕へ寄りますので地図か何か渡していただけますか?」

〔わかりました、準備しておきます〕


 アインスさんとの会話が終わるとポロン♪という音と共に通話は切れた。

 会話中にも視線でメンバーは選出していたので、

 切電した段階で目の前にはセーバー・ポシェント・ディテウスが前に出ていた。


「天幕の位置はわかりますか?」

「おおよそは。

 わからなくなったらリュースィに空へ昇ってもらい確認して進みます」

「では、後方の状況確認ならびに浄化作業を貴方達にお願いします」

「は!謹んで拝命いたします!!」


 セーバーが膝を折ってそれっぽい事を行った。

 PTリーダーに習ってディテウスと風精リュースレイアが真似するが、

 ポシェントは槍を持ったまま棒立ちしている。


「兵士では無いのだからそこまでしなくてい良いですよ。

 一応、聖獣ヤマノサチが寄ってきている可能性がありますので、そこだけ気をつけなさい」

「わかりました」


 立ち上がった3人から視線を隣に立つポシェントへと向ける。


「ポシェント。

 お兄さんが掛けていた魔法は既に解けているでしょう。

 掛け直します」

『すみません、よろしくお願いします』


 ポシェントもお兄さんを相手にするように肩の力を抜いてもいいのに、

 精霊でもない小娘に律儀なことですね。


「《聖水(セイントウォーター)》セット:細波(さざなみ)のランス」

『ありがとうございます』


 その敬語と恭しく受け取る姿は明らかにやり過ぎですね。

 うちのクランメンバーは触らぬ神に祟りなしという言葉を理解しているので、

 気にはなっても見て見ぬ振りをしてくれますが、

 他の人に見られれば疑問を植え付けてしまいます。


「・・・ポシェント」

『はっ!』


 はっ!じゃない。

 良い声で言うからなおさら目を引くじゃないの。


「私の出生については公表していないの。

 あまりそのような対応をされては困るわ」(コソッ)

『しかし・・・、シヴァ様のご息女に対し・・・。

 御前で口を滑らせる可能性は残したくありません』

「貴方ねぇ・・・。

 もういいです、もしもの時はよろしくお願いしますよ」

『はい、身命をとして彼らを護ります。

 しかし、命令する際の諸々がシヴァ様に似ておられる』


 立ち上がり際に口走った声はしっかりと聞こえていた。

 私も最近は特にお母様に似てきたなと思っていますし、

 城の兵士やメイドもよくそのような評価をしているのを知っています。


 ただ、一点違うのは。そう!それは胸囲!!

 この1年、お兄さんと出会ってからはすくすくと成長している胸囲ですが、

 まだまだお母様には遠く及ばない。

 悔しくはありません。

 お兄さんの好みが分からない状況で大きく育てすぎてしまうと小さくするのは難しい気がしますから。


「さて、残るは女性ばかりですね。

 フロスト・ドラゴン(エルレイニア)様の魔力残量はどうですか?」

『不足。

 3割程度までは回復したが、まだ大物を予定しているのであろう?』


 お兄さんに護衛としての役割を押しつけられ、

 燃費を良くして魔力回復に集中しているエル様は寝転ぶ姿から首だけ上げて回答した。


 魔神族を倒した確証はなく、ハルカナムの守護者(しゅごしゃ)も控えている。

 城下町の制圧は3カ国で同時進行をしていて、

 今ここには女性ばかり・・・。


 優先して動くことってあったかしら・・・。


「スィーネさん、体調はいかがですか?」

『ん~、アルシェの近くに居れば心地良い魔力に包まれて十分な休息になってるわよ。

 何かするの~?』


 ひとまずこの場に残る頼れる水精に声を掛けた。

 街中にあった長椅子に座って膝にはアクアちゃんを乗せて鼻歌を歌っている少女は心地よさげに返事をくれる。


「いえ、状況は小憩に入っていますから動く必要はないんです。

 ですが、見落としがあっては困るので何かあればと・・・」

『そ~ねぇ。一応雨が降り出した時点で広範囲の索敵はしたし、

 以降も色々調べてみたけど特には何もなかったわね』


 じゃあ、無いですね。

 少なくとも私たちのいるアスペラルダが対応する範囲にはないと思って良いでしょう。

 なら、調べるは土の国アーグエングリンと光の国ユレイアルド神聖教国ですか・・・。


 う~ん。教国はまぁ・・・いいでしょう。

 勇者に聖女にアナザー・ワンまで抱えている国ですし、

 何より顔見知りというのは信じる判断材料となります。


 じゃあ、教国の代わりに今は手空きとなった冒険者の調査と行きましょう。

 魔法剣を指導していない冒険者は正面からぶつかる戦力としては心強くても、

 その後の瘴気の処理まで手が出せないので、

 城下町に手が伸ばせる今の状況まで進んでしまえばやる事がなく待機しているはず。


 思考から戻り顔を上げると、

 私の命令を待っている女性メンバーが勢揃いして真剣な顔でこちらを見つめていた。


 危ない命令はする予定はないんだから、

 素直にリラックスしててくれても良かったのに。


「アーグエングリンに直接向かい、状況を確認します。

 メンバーは私、リッカ、トワイン、スィーネさん、エル様の5名。

 フランザとアネス、モエアの3名は冒険者の状況を肌で確認してきてください」

「肌で、ですか?」


 私から離れるメンバーのうちの一人。

 よく会話を交わす魔法使いのフランザが首をコテンと傾げて質問してきた。


「まとめてくれているのはギルドマスターのパーシバルさんですが、

 冒険者同士で情報収集をお願いします。

 愚痴や不満からダンジョン情報でも聞こえる声は全て持ち帰ってください」

「わかりました」


 どうやら、暫定リーダーはフランザになりそうですね。

 まぁ、アネスは年上だけどおっとりしているし、

 モエアも年上だけどリーダーの資質は持ち合わせていませんからね。


「先にパーシバルさんに挨拶をしてから紛れてくださいね。

 別に隠密で行動する必要もありませんから気楽に回ってください」

「はい。2人とも行きましょう」

「行って参りますね」

「行ってきま~す!」



 * * * * *

 私の名前はフランザ=エフィメール。

 元ペルクPTの魔法使いで、今は当時いちメンバーだったゼノウを新リーダーとしたPTに入っている。

 そのゼノウPTが所属するクラン[七精の門(エレメンツゲート)]の実質リーダーのひとりでもあるアスペラルダの姫殿下(ひめでんか)が下した命令を遂行する為に今は後方の天幕群へとやってきました。


「結構な数の冒険者が参加しているのですねぇ」


 同じクランに所属するフォレストトーレ領の冒険者。

 セーバーPTの魔法使いでおっとりしているアネスが周囲を見回しながらそんな言葉を口にした。


「あまりキョロキョロしないでください。

 こちらの陣営として参加していない冒険者とバレると面倒になります」

「あ、ごめんなさ~い」


 年上の彼女は前に出るタイプではなく、

 同様に何故か堂々とした闊歩を見せるゼノウPTの弓使い。

 モエアは違和感を持たせない謎の迫力があるので、まぁ大丈夫そうですね。


 私だってリーダーの真似事は苦手ですし、やる機会もありません。

 でも、おっとりアネスと27歳児モエアに任せる勇気がないもので・・・。

 仕方なくですが、私が敢えて前を歩いている次第です。


「あの天幕ですね、パーシバルさんが詰めているのは」


 幾人かの冒険者とすれ違いながらもやがて見えてきた装飾が目立つ天幕。

 ギルドの印として簡易的な看板も出ているし間違いはないでしょう。


「こんにちわ~」


 ギルド天幕の暖簾を分けて入ると、

 従業員の方々はそこまで忙しいわけではないのか書類整理だったり雑談をのんびり行っている様子だった。


「はい、いかがされましたか?」

「アルカンシェ姫殿下(ひめでんか)の使いで参りました。

 ギルドマスター、パーシバルさんと会えますでしょうか?」

「少々お待ちください、確認して参ります」


 場所や建物が違っても対応は普通のギルドですね。


「ねぇ、フランザ。ここお酒の匂いがするわ」


 私がギルドの評価をしているうちに、

 鼻をひくつかせながらモエアが後ろからこそっと話しかけてきた。


「おそらく、今の状況・・・。

 各国が城下町に張り付いてからは冒険者の手が空く事を予想して娯楽の一環に用意しているのでしょう」

「ふぅん。ねぇねぇ、お酒の品質って調査対象?」

「飲まなくてもパーシバルさんに伺えば情報はいただけます」

「ちぇ」


 全部事が終わってから飲んだ方がお酒は美味しいと思いますけどね。

 それにいざ戦闘が始まったという時にほろ酔いでは仲間にも危険が及ぶ。

 どちらにしろモエアに飲ませるわけにはいきません。


「おー!お前ら、待たせたな!」

「お久しぶりです、パーシバルさん」


 思考の海から引き戻す大声に顔を上げると、

 天幕の仕切られた奥から少女に見えるドワーフのギルドマスターが手を振りながらこちらへと歩を進めてきている姿が見えた。


「で?」


 少し警戒させていますかね?

 必要な報告はしているはずだが、どういう用件だと顔にありありと書かれているようです。


「アルカンシェ姫から冒険者からの情報収集のご命令をいただきました。

 同じ冒険者として溶け込み、なんでも良いので集めてこいと・・・」

「ふぅ~ん、なるほどな。

 こっちの仕事に不満があるわけじゃねぇんだな?」

「それに関しては何も伺っておりませんが、

 私から見ても今のところ足並みも揃っておりますし暴走したお話も聞きませんから十分な仕事はされているのではと思います」


 私ごときの感想ですが、

 一瞬嬉しそうな顔をされると身体的特徴と相まってとても可愛いですね。

 しかし、パーシバルさんの顔はすぐに苦々しい物へと変わってしまった。


「まぁ確かに抑えは効いているが、

 暇を持て余すし娯楽は少ないからな・・・。

 いずれはどうしても出てくる可能性は十分にある。

 そういう今後の部分を考えての采配か・・・、わかった好きにするといい」

「ありがとうございます」


 私のお辞儀に後ろの二人も揃ってお辞儀をする。


「とりあえず、ここのおおまかな地図だ。

 訓練場や酒場、宿がほとんどだな。

 大移動してもそこまでの変化はないはずだ」

「わかりました、回ってみます」


 天幕群の簡易地図をパーシバルさんから受け取ると、

 そのまま会釈をしてさっさとギルド天幕を出てしまう。


「はぁ~、凄かったですね」

「あれで冒険者じゃないってのは勿体ないわね~」


 で?の威圧が凄かった。

 うちのクランメンバーは比較的良心的な人たちだから、

 命令はされてもあんな威圧を味わう機会はなかった。


「私だけが気圧されたわけではなかったんですね。安心しました」

「あれで気圧されないのはクランリーダーと姫殿下(ひめでんか)だけでしょう」

「それは確かねぇ~」


 フフフッと笑い合う。

 笑顔が引きつりそうになり冷や汗をかいた仲間が居た。

 それだけで救われる思いだ。


 さて、と地図を広げる。

 後ろから2人ものぞき込み改めて天幕群を確認する。

 こうして見るとやはりかなり広範囲に広がっているのですね。


「どうしますか?」

「お・さ・け!」

「ダメです。先に訓練場へと出ましょう。

 参加クランのリーダー格の観察はしておかないと・・・」


 冒険者枠で参加しているのはアスペラルダとフォレストトーレが交わって構成されている。

 え~と・・・、

 アスペラルダの冒険者クランは、

 ・水門の槍

 ◇リーダー:サジメイア=オリンポス

 ・無限の羅刹

 ◇リーダー:カルキネス=アーセラティー


 フォレストトーレの冒険者クランは、

 ・風鳴の刃

 ◇リーダー:ボルガーノ=シュトラウス

 ・ストームエタニティー

 ◇リーダー:シェラフ=イレーヴァル

 ・サモン・ザ・ヒーロー

 ◇リーダー:クライヴ=アルバード

 ・シエラシスター

 ◇リーダー:アンジェリカ=ストライド


「あら? ねぇねぇ、アネス。

 ここのリーダーって別の人だったわよね?」

「確かメーフィア=エステバンでしたね。いつの間に変わったのでしょう?」


 後ろから腕を伸ばして、とあるクランを指差すモエア。

 それに追従して問いに答えるアネスが言ったのは、

 フォレストトーレSランククラン【サモン・ザ・ヒーロー】の事だ。


「リーダーが変わっている?」


 もしかすると【人形(ドール)】ですかね。

 ふと、かつての愛しい笑顔が浮かぶのを振り払い、

 接触法法について思案に入る。


「今のリーダーにはかならず接触したい所ですね。

 他のところも見ておきたいので、まずは訓練場の方に顔を出しましょう」

「ふふふ、フランザは少しアルカンシェ様に似てきましたね」

「そ、そうですか?」


 嬉しい半分恥ずかしい半分。

 あれほどの魔法使いに近づけたようで嬉しくもあり、

 年下の14歳の少女に近付いたようで恥ずかしくもある。


 まぁ、行動を共にし始めてからは常にその背中を、時には横顔を見続けてきたのだ。

 暫定PTリーダーとしての行動を意識すると、

 どうしてもアルカンシェ様を参考にしてしまう。


「と、とにかく行きましょう」


 焦って足を進めると2人も軽い足取りで付いてくる。

 その足取りが私を弄るようなのが分かり、頬に少し空気を溜めてしまう。


 なんだかんだでクランの数は合計6つ。

 冒険者は血気盛んな者も多い為、

 騒動を起こさないように気を遣った配置をしているみたいです。


「失礼。少しよろしいですか?」


 戦士の訓練場にたどり着いたので、

 さっそく交代待ちで休憩していた戦士に話しかけた。


「見ない顔だな、新規参戦のPTか。どうした?」

「ここはどちらのクランの訓練場でしょうか?」

「うちは【風鳴の刃】だよ。

 加入希望なら残念だけど、上限に達してるから無理だな」

「加入ではないので大丈夫です。

 先ほど着いたばかりなので少し回っておりまして・・・。

 ちなみに今訓練している戦士はどの程度のレベルなのですか?」


 視線が私たちから打ち合っている戦士2人に戻る。


「あぁ、あいつらは・・・90に入ったところだな」


 レベル90。

 モエア達は平均80台で、私たちは70台。

 アルカンシェ様達も70台に上がったと聞きましたが・・・。


「どうだ?あんたらのレベルに合うならやっていかないか?」


(殺し合いでは無いにしても、ですか・・・)

「では、私が。

 近接戦で大丈夫ですか?」

「おいおい、あんた。魔法使いじゃないのか?」


 戦士の質問には答えず訓練所に進む私を、

 慌てて対戦相手となる方が駆けよって来ます。


「お、おい!お前!

 俺は片手剣で戦うけど、お前は何を使うんだ!?」


 得物?それ当然。


「槍ですけれど?」



 * * * * *

「・・・冗談だろ」


 初めに声を掛けた戦士がフランザの戦いを見てボソリと呟く。

 合流してからは訓練をずっと見ていた。

 だから、私達から見ればまだ速度は上がるはず。


 ステータスのSTRは確実に向こうが上だけど、

 負けても尚あらがえる技術を下地からしっかりと教わり固めたフランザは、

 流して弾いて突き刺し薙いで相手のHPは徐々に減っている。


「なぁ、あの魔法使いみたいな格好した奴。

 あいつのレベルはいくつなんだ?」

「フランザは71だったかしらね」

「71・・・? 二回りは下じゃねぇか・・・」


 私の回答に男はまた尻すぼみに声を発した。


「ちなみに言えば。

 魔法使いみたいな、ではなくて正真正銘の魔法使いですよ?」

「・・・・・・」


 同じ魔法使いのアネスが誇らしそうに事実を伝えると、

 男は声を無くしたように絶句して視線をゆっくりとフランザに戻していった。


 まぁ、実際冒険者の実力はピンキリだしね。

 Sランクのクランとはいえ、

 その多くはクランリーダーのいるPTがメイン戦力となって戦果を上げているし。


 私もちょっと前までは同じだったけど・・・。


 普通は起きた後に訓練はしないし、

 朝ご飯を食べたあとに訓練はしないし、

 模擬戦ひとつ取ってもあそこまで強い相手を用意することだって出来ないし、

 普通に生活している間も魔力操作を繰り返すなんて事はしない。


「練度が違うのよ。

 魔法をひとつだけ使っているけど、Sランククランの前衛職と戦ってコレ。

 下手したらフランザ一人と貴方のPTは(イコール)位の差はあるんじゃな~い?」


 アネスが嬉しそうにする理由もわかる。

 素人目ながら姫様が創った[アイシクルライド:輪舞(ロンド)]を

 使えている。

 その姿は私からみても眩しいくらいに輝いて見える。


「あんたらもあいつと同じくらいなのか?」

「レベル的には私たちの方が一回り上よ。

 でも、強さで言えばどうかしらね・・・」

「同じPTじゃないのか?」

「別PT。クランは一緒。

 合流が私たちの方が後だったからね、

 元はこっちの方が強かったはずだけど今は差が広がっちゃったわ~」


 今まさに相手の剣を弾き飛ばして、

 フランザの強烈な一撃で決着はついた。



 * * * * *

「お疲れ様~」


 観戦する戦士と言葉を交わしていたモエアが声を掛けながら手を振ってくる。


「魔法を使ったからでしょうか。あまり疲れてはいません」


 視線を負けた戦士に向けるとあちらは肩で息をしている。

 私たちも普通の冒険者だった時のスタミナはあんなものだったでしょうね。

 今では朝の準備運動よりも疲れていない自分の成長を実感する。


「これ以上はお邪魔になるので失礼します。

 一応クランリーダーの方へご挨拶したいのですが、どちらの天幕でしょうか?」

「あ、あぁ。それならリーダー会議に行ってる。

 と言ってもただの飲み会だろうけどな。今は暇でよ」

「わかりました。後ほど伺ってみます」


「なぁ!!あんたら!所属クランはどこなんだ!?」


 二回りも高いレベルを相手にして圧倒した私たちが無所属とは考えなかったらしい。

 去る背中へと大声が疑問を投げかけてくる。


「Fランククラン!七精の門(エレメンツゲート)ですっ!!」

いつもお読みいただきありがとうございます

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